この記事を読むと、次のことが分かります。
・技能実習3号とは何か
・技能実習2号から技能実習3号への移行要件と手続き
・技能実習と特定技能の違い
・技能実習から特定技能1号への移行要件と手続き
技能実習3号とは、技能実習を目的とし来日する外国人が、実習の4年目から5年目に取得する在留資格です。技能実習2号の実習を修了した後、技能実習3号に移行した実習生は技能などの熟達を図るための活動を行います。
技能実習2号から技能実習3号に移行するには、実習実施者が「優良な実習実施者」に認定されていることなど、一定の要件があります。
本稿では、技能実習3号の基礎知識や技能実習2号からの移行要件、企業が行う手続きについて解説します。また、技能実習2号および技能実習3号から移行できる特定技能の在留資格についても触れますので、外国人材を受入れている企業の方はご一読ください。
目次
1. 技能実習3号は技能実習のマスターレベル
技能実習制度は、外国人の技能実習生が日本の企業で働きながら母国では学ぶことが困難な技能などを習得し、帰国後母国の経済発展に生かすことを目的としています。
この章では、技能実習制度で来日する外国人が取得する、技能実習3号の在留資格について解説します。
1-1. 在留資格「技能実習3号」とは
技能実習の在留資格は、技能実習1号から3号まであります。技能実習生と実習実施者の希望が一致し、移行要件を満たせば、技能実習1号から技能実習2号、技能実習2号から技能実習3号へと移行し、実習を延長することができます。
技能実習3号は、技能実習2号で習得した技能などの熟達を目指す、実習4年目から5年目の在留資格です。技能実習3号における「技能などの熟達」とは、技能実習2号で学んだ技術を継続して訓練し、さらに高い技術を獲得することを指します。
なお、技能実習3号は、受入れ方式によって「技能実習3号イ」と「技能実習3号ロ」に区分されます。
技能実習3号イは、企業単独型で受入れられる技能実習生が取得します。企業単独型では、日本の企業が自社の海外事業所や海外の取引先から外国人従業員を直接受入れて実習を行います。
技能実習3号ロは、団体監理型で受入れられる技能実習生が取得します。団体監理型では、監理団体(商工会などの非営利団体)が技能実習生を受入れ、その監理団体と契約している実習実施者が実習を行います。
1-2. 技能実習3号の在留期間は?
技能実習3号の在留期間は、法務大臣が指定する2年を超えない期間とされています。
なお、技能実習1号から技能実習3号まで順に在留資格を移行していく実習生は、最長5年間日本に在留することができます。
1-3. 技能実習3号の対象職種
技能実習3号の在留資格で実習できる職種・作業は主務省令で定められています。
技能実習2号から技能実習3号へ移行が可能な職種は、2023年3月31日時点で80職種144作業あります。技能実習2号の対象職種・作業の多くは、技能実習3号への移行も可能ですが、一部移行できない職種もあるので、注意しましょう。
参考)
外国人技能実習機構(OTIT)|移行対象職種についてはこちら
https://www.otit.go.jp/files/user/230331_%E8%81%B7%E7%A8%AE%E4%B8%80%E8%A6%A7.pdf
1-4. 技能実習3号は何人まで受入れられる?
受入れ可能な技能実習生の人数は、実習実施者の規模や、技能実習生の在留資格の種類、受入れ方式などによって上限が定められています(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則[技能実習法施行規則]第16条)。
人数の上限に関しては基本人数枠が規定されていますが、介護、建設分野といった特定の職種・作業の技能実習の場合は、別途人数枠が定められています。特定の職種・作業の技能実習生の人数枠はこちらをご参照ください。
受入れ可能な人数は、受入れ方式によって「団体監理型」「企業単独型A」「企業単独型B」の3つに区分されています。
企業単独型Aは、法務大臣および厚生労働大臣によって、継続的で安定的に技能実習を行わせる体制を有すると認められた企業です。企業単独型Bは、それ以外の企業が該当します。
団体監理型と企業単独型Aの受入れ人数の上限は以下の通りです。
表)団体監理型・企業単独型Aにおける技能実習生(技能実習3号)の受入れ上限人数
実習実施者の常勤職員総数 | 技能実習生の人数 |
301人以上 | 常勤職員総数の10分の3 |
201人以上300人以下 | 90人 |
101人以上200人以下 | 60人 |
51人以上100人以下 | 36人 |
41人以上50人以下 | 30人 |
31人以上40人以下 | 24人 |
30人以下 | 18人 |
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領 ~ 関係者の皆さまへ ~」,2023年4月公表,p120-121を基にライトワークス にて作成,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005219.pdf(閲覧日:2023年5月30日)
団体監理型および企業単独型Aでは常勤職員総数の区分が設けられ、区分ごとに受入れ上限人数が異なります。常勤職員が301人以上いる企業であれば、常勤職員総数の10分の3まで受入れ可能です。
企業単独型Bにおいて技能実習3号の実習生を受入れる場合の上限人数は、常勤職員総数の10分の3です。
ただし、技能実習3号においては、いずれの場合も技能実習生数が常勤職員総数の3倍を超えてはならないとされています。
コラム:技能実習1号、2号、3号の違い
技能実習の在留資格は、大きく3つに分類されています。実習初年の在留資格が「技能実習1号」、2年目から3年目が「技能実習2号」、4年目から5年目が「技能実習3号」です。
技能実習の1年目が修了した後、実習生と実習実施者の希望が一致すれば、順次、技能実習2号、技能実習3号へと移行して実習期間を延長することができます。
それぞれの在留資格で定められている活動、在留期間、対象職種は以下の通りです。
表)技能実習1号、2号、3号の違い
活動内容 | 在留期間 | 対象職種 | |
技能実習1号 | 技能などを習得するための活動 | 1年以内 | 制限なし |
技能実習2号 | 技能などの習熟を図るための活動 | 2年以内 | 87職種159作業 |
技能実習3号 | 技能などの熟達を図るための活動 | 2年以内 | 80職種144作業 |
公益財団法人国際人材協力機構「外国人技能実習制度とは」を基にライトワークスにて作成,https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/(閲覧日:2023年5月30日)
技能実習1号から技能実習2号、技能実習2号から技能実習3号へと移行するためにはそれぞれ一定の要件があります。例えば、技能実習生が規定の試験に合格することなどです。
また、技能実習3号の実習生を受入れるときのみ、実習実施者が「優良な実習実施者」、監理団体が「優良な監理団体」と認定されている必要があります。
技能実習の在留資格について、詳しくはこちらをご覧ください。
2. 技能実習2号から技能実習3号へ移行するときの要件
ここでは、技能実習2号から技能実習3号へ移行するときの要件について解説します。
2-1. 本人が満たすべき要件:技能実習3号に移行するには試験合格と一時帰国が必要!
本人が満たすべき要件は以下の通りです(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律[技能実習法]第9条、技能実習法施行規則第10条)。
・技能実習2号と同一の技術などについて実習すること
・技能実習の内容が、移行対象職種・作業であること
・技能検定3級、または技能実習評価試験専門級の実技試験に合格すること
・母国に一時帰国すること
・技能実習2号と同一の技術などについて実習すること
技能実習2号から技能実習3号に移行する際には、技能実習生が実習実施者を選択する機会が与えられます。ただし、技能実習2号と同一の技術などについて実習できる実習先を選択しなければなりません。
・技能実習の内容が、移行対象職種・作業であること
移行対象職種・作業については、1章で解説した通り、80職種144作業(2023年3月31日時点)です。対象職種・作業は適宜変更されるので、確認しておきましょう。
・技能検定3級または技能実習評価試験専門級の実技試験に合格すること
技能検定と技能実習評価試験は、都道府県職業能力開発協会などが実施している習得した技能などを評価する国家検定です。技能検定は日本人も受検する検定で、技能実習生は随時試験として実施されるものを受検します。
随時試験は、日本語で行われますが、技能実習生が受検することが想定されているため、試験問題に振り仮名を付けるなど日本語を母国語としない人への配慮があります。
技能実習3号へ移行するには、技能検定随時3級または技能実習評価試験専門級の実技試験に合格することが必要です。これらの試験には学科試験もありますが、受検は任意です。
技能実習2号の実習修了後、速やかに技能実習3号に移行する場合、技能実習2号の実習が修了する2カ月前までには技能検定や技能実習評価試験を受検する必要があります。
参考)
厚生労働省|技能実習生向け技能検定の概要はこちら https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/shokugyounouryoku/
ability_skill/ginoukentei/kisokyu.html
・母国に一時帰国すること
技能実習3号に移行する際には、必ず母国に一時帰国しなければなりません。
帰国のタイミングと期間は、技能実習2号の実習修了後に1カ月以上、または技能実習3号の実習開始後1年以内に1カ月以上1年未満です。
帰国する際の費用は、企業単独型の場合は実習実施者が、団体監理型の場合は監理団体が負担します。
一時帰国の際の注意点については、4章で詳しく解説します。
コラム:技能検定とは
技能検定は、習得した技能などを評価する国家検定です。「定期試験」「随時試験」「指定試験機関が実施する試験」の3つの種類があります。
定期試験は、都道府県職業能力開発協会が実施する技能検定で、多くの場合1年に1回しか実施されません。技能実習生も受検できますが、試験問題は日本語で日本語を母国語としない人に対する配慮はありません。
随時試験は、都道府県職業能力開発協会が実施する技能検定のうち、技能実習生を対象とする試験です。可能な範囲で監理団体や実習実施者の要望に配慮し、試験実施場所、実施時期を決定します。試験問題は日本語ですが、振り仮名を付けるなど日本語を母国語としない人に対する配慮があります。
指定試験機関が実施する試験は、厚生労働大臣が指定する試験機関が実施する技能検定です。技能実習生を対象としているのは、ビルクリーニング職種と機械保全職種の2職種のみです。試験問題は日本語ですが、日本語を母国語としない人に対する配慮があります。
移行対象職種の技能実習においては、技能実習計画で技能実習の目標として、技能検定または技能実習評価試験に合格することを記載することになっています。 各在留資格の目標は以下の通りです。
・技能実習1号:技能検定基礎級または技能実習評価試験初級の学科試験、実技試験に合格すること
・技能実習2号:技能検定随時3級または技能実習評価試験専門級の実技試験に合格すること
・技能実習3号:技能検定随時2級または技能実習評価試験上級の実技試験に合格すること
技能検定随時試験の等級区分と対象者は以下の通りです。
表)技能検定随時試験の等級区分、試験対象者[1]
等級区分 | 試験の程度 | 対象者 |
基礎級 | 基本的な業務を遂行するために必要な基礎的な技能及びこれに関する知識の程度 | 技能実習生であること |
随時3級 | 初級の技能労働者が通常有すべき技能及びこれに関する知識の程度 | 基礎級に合格した者 |
随時2級 | 中級の技能労働者が通常有すべき技能及びこれに関する知識の程度 | 基礎級及び当該検定職種に係る3 級の実技試験に合格した者 |
随時試験の合格率[2]を見ると、2019年度は基礎級が90.6%、随時3級が25.9%、随時2級が3.3%です。この結果から、随時3級と随時2級は、基礎級に比べて難度が高いことが分かります。
2-2. 企業が満たすべき要件:技能実習3号の受入れは優良な実習実施者、監理団体のみ
企業が満たすべき要件は以下の通りです(技能実習法第9条、技能実習法施行規則第10条)。
(1)実習実施者が「優良な実習実施者」と認定されていること
(2)団体監理型の場合、監理団体が「優良な監理団体」と認定されていること
技能実習では、技能実習3号の実習生を受入れるときのみ、実習実施者が優良な実習実施者、監理団体が優良な監理団体と認定されている必要があります。
優良な実習実施者とは、以下のように規定されています(技能実習法第9条第10号)。
技能等の修得等をさせる能力につき高い水準を満たすものとして主務省令で定める基準に適合していること
優良な実習実施者と認定されるには、一定の要件を満たした上で、「優良要件適合申告書(実習実施者)」を外国人技能実習機構(OTIT)に提出する必要があります。
優良な実習実施者と認定されるため要件は、こちらをご参照ください。
さらに、団体監理型の場合は監理団体も優良な監理団体と認定されている必要があります。優良な監理団体とは、以下のように規定されています(技能実習法第25条第1項第7号)。
技能実習の実施状況の監査その他の業務を遂行する能力につき高い水準を満たすものとして主務省令で定める基準に適合していること
監理団体は「特定監理事業の許可を受けた団体」と「一般監理事業の許可を受けた団体」の2種類があります。このうち優良な監理団体は、一般監理事業の許可を受けた団体のことを指します。
既に契約している監理団体が優良な監理団体と認定されていなければ、技能実習3号の実習生を受入れる際に、認定を受けた監理団体への変更が必要です。
優良な監理団体は、外国人技能実習機構(OTIT)のホームページで検索することが可能です。
参考)
外国人技能実習機構(OTIT)|監理団体の検索はこちら
https://www.otit.go.jp/search_kanri/
3. 技能実習2号から技能実習3号に移行するときに企業が行う手続き
技能実習2号から技能実習3号に移行するときに、企業が行う手続きは以下の通りです。
・優良な実習実施者の認定申請
・技能実習3号の技能実習計画認定申請
・在留資格変更の申請
まず、優良な実習実施者の認定を受けるために、優良要件適合申告書(実習実施者)を外国人技能実習機構(OTIT)に提出します。
優良要件適合申告書について詳しくは、こちらをご参照ください。
優良な実習実施者の認定が下りたら、技能実習3号の技能実習計画の認定を外国人技能実習機構(OTIT)に申請します。
技能実習計画認定通知書の交付を受けた後、技能実習2号から技能実習3号への在留資格変更の申請を管轄の地方出入国在留管理局で行います。
4. 技能実習3号、一時帰国を行うときの注意点
技能実習2号から技能実習3号に移行する際は、母国への一時帰国が必要です。一時帰国の注意点は以下の4つです。
(1)期間
一時帰国の期間は、技能実習3号の技能実習計画の認定申請前に決定し、技能実習計画に記載する必要があります。また、一時帰国中は技能実習3号の実習期間に含まれません。
(2)時期
技能実習3号の実習開始後1年以内に一時帰国を行う場合、日本から出国する日が技能実習3号の実習開始後1年以内であれば、一時帰国後日本に入国する日が技能実習3号の実習開始後1年を経過していても差し支えありません。
(3)旅費
一時帰国の旅費は、監理団体(企業単独型であれば実習実施者)が負担する必要があります。技能実習2号と技能実習3号で監理団体や実習実施者が変わるときは、帰国の時期によってどちらの監理団体(企業単独型であれば実習実施者)が旅費を負担するかが変わります。
まず、帰国の時期が技能実習2号の実習修了後の場合、母国への帰国旅費は技能実習2号の期間を監理した監理団体(企業単独型であれば実習実施者)が、日本への渡航費用は技能実習3号の期間を監理する監理団体(企業単独型であれば実習実施者)が負担します。
帰国の時期が、技能実習3号の実習開始後の場合、技能実習3号の期間を監理する監理団体(企業単独型であれば実習実施者)が往復の旅費を負担します。
(4)一時帰国の期間が一定期間を超える場合
技能実習2号から技能実習3号へ在留資格変更許可申請中の技能実習生は、出入国管理及び難民認定法(入管法)第20条第5項に規定される「特例期間」(在留資格変更申請中に限り在留期間の満了日が最大2カ月延長されるもの)を活用して、みなし再入国許可により1カ月以上の一時帰国を行うことが可能です。
ただし、一時帰国の期間が45日を超える場合には、その後の在留資格変更許可申請の手続きが特例期間中に完了しない可能性があるため、新規入国の手続きを行うことが望まれています。
この場合、技能実習生は、一時帰国を終えて再入国した後、速やかに管轄の地方出入国在留管理局で技能実習3号の在留資格変更許可を受ける必要があります。
技能実習3号の実習開始後に一時帰国する技能実習生は、一時帰国の期間が3カ月を超える場合、地方出入国在留管理局において、技能実習3号の実習開始時に一時帰国するまでの在留期間が決定されます。
その場合、一時帰国後の入国は、在留資格認定証明書交付申請を行い、査証を取得して新規入国する必要があります。
5. 技能実習から特定技能1号に移行することも可能
技能実習2号の実習修了後に移行できる在留資格は、技能実習3号の他に特定技能1号もあります。また、技能実習3号の実習修了後に特定技能1号に移行することも可能です。ここでは、技能実習と特定技能の在留資格の違い、特定技能に移行する方法について解説します。
5-1. 在留資格「特定技能1号」とは
特定技能制度は、人手不足が深刻化する産業分野において、一定の専門性と技能を有する外国人を雇用することを目的としたものです。
特定技能の在留資格は、以下の2種類があります。
・特定技能1号
特定産業分野において、相当程度の知識や経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人に向けた在留資格
・特定技能2号
特定産業分野において、熟練した技能を要する業務に従事する外国人に向けた在留資格
このうち、技能実習2号および技能実習3号から移行が可能なのは、特定技能1号です。
特定技能の在留資格について詳しくはこちらをご覧ください。
5-2. 技能実習と特定技能、違いは何?
技能実習制度は、開発途上国へ技術移転を行うことによる国際貢献を目的としているため、技能実習生を人手不足解消の手段としてはいけないことになっています。
一方、特定技能制度は、国内の特定の産業・分野における人手不足の解消を目的としているため、労働力として外国人材を雇用することができます。
技能実習と特定技能の特徴を以下の表にまとめました。
特定技能 | 技能実習 | |
目的 | 人手不足の解消 | 国際貢献 |
就業可能な業務や分野 | 特定技能1号:12分野 特定技能2号:2分野 (2023年5月時点) | 技能実習2号:87職種159作業 技能実習3号:80職種144作業 (2023年3月31日時点) |
在留期間 | 特定技能1号:通算5年 特定技能2号:上限なし | 技能実習1号:1年以内 技能実習2号:2年以内 技能実習3号:2年以内(合計で最長5年) |
転職の可否 | できる | できない |
受入れ方法 | 受入れ企業が直接採用活動を行う | 大半が、仲介する団体を通して紹介される |
関与する団体 | 登録支援機関が関与することが多い | 送り出し機関・監理団体・外国人技能実習機構(OTIT)など |
受入れ人数の制限有無 | 制限なし (ただし、建設分野・介護分野は制限あり) | 制限あり |
家族帯同の可否 | 特定技能1号:できない 特定技能2号:配偶者・子に限りできる | できない |
このように、特定技能と技能実習は、基づく制度もその目的も異なります。技能実習から特定技能に移行する際は、技能実習生と実習実施者が違いをよく理解した上で行いましょう。
外国人を受入れる企業は、自社が置かれている状況に合わせて、どのような在留資格を持つ外国人を受入れるか判断しましょう。そのためには、在留資格に関して正しい知識が必要です。
ライトワークスでは、外国人材を雇用する企業の従業員に向けて、必要なリテラシーを身に付けるためのeラーニング教材を提供しています。ぜひ参考にしてください。
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5-3. 技能実習から特定技能1号へ移行するときの要件と手続き
技能実習の在留資格から特定技能1号に移行するための要件と手続きについて解説します。要件には、外国人本人に求められるものと受入れ機関に求められるものがあります。
・外国人本人に求められる要件
特定技能の在留資格を取得するには、特定技能の受入れ分野に該当する技能試験と日本語試験に合格している必要があります。ただし、以下の2つの要件を満たす場合は試験が免除されます。
(1)技能実習2号を良好に修了していること
(2)技能実習で実習した職種・作業の内容と、特定技能の業務に関連性があること
技能実習2号を良好に修了しているとは、技能実習を計画に従って2年10カ月以上修了していることをいいます。
また、技能実習と特定技能では、就業できる職種や作業が異なります。2023年5月時点、特定技能1号の在留資格で就業できるのは12分野です。技能実習で実習した内容と特定技能で従事する予定の業務に関連性があるか、事前に確認しておきましょう。
なお、技能実習で実習した内容と特定技能で従事する予定の業務に関連性がない場合は、移行後に就業する特定技能の分野の技能試験に合格する必要があります。
参考)
出入国在留管理庁|特定技能外国人が就業できる職種についてはこちら
https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri06_00103.html
・受入れ企業に求められる要件
特定技能外国人を受入れる企業には、以下のような要件[3]があります。
(1)外国人と結ぶ雇用契約(特定技能雇用契約)が適切であること(例:報酬額が日本人と同等以上)
(2)受入れ機関自体が適切であること(例:5年以内に出入国・労働法令違反がない)
(3)外国人を支援する体制があること(例:外国人が理解できる言語で支援できる)
(4)外国人を支援する計画が適切であること
次に、技能実習から特定技能へ在留資格を変更するときの手続きを解説します。
特定技能外国人の雇用には、外国人が技能実習・留学など、その他の在留資格を持って日本国内に既に在留している場合と、海外在住の外国人が特定技能の在留資格を持って新規で日本で就労する場合の2種類があります。
今回は、技能実習から特定技能へ移行するときなので、前者に該当します。この場合の移行の流れは以下の通りです。
(1)外国人と企業が雇用契約を結ぶ
賃金や労働時間などの労働条件を決定し、特定技能雇用契約を結びます。
(2)登録支援機関と委託契約を結ぶ(登録支援機関に外国人従業員の支援を委託する場合)
特定技能1号では、外国人が円滑に日本で仕事ができるように企業が支援しなければなりません。支援する内容は10項目あり、その全部または一部の実施を第三者に委託することができます。その委託先を登録支援機関といいます。
なお、委託するかどうかは任意ですが、支援の全てを委託する場合以外は受入れ機関が支援体制の基準を満たす必要がある点に注意しましょう。
登録支援機関について、詳しくはこちらをご覧ください。
(3)特定技能外国人の支援計画を策定する
外国人が特定技能1号の活動を円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上の支援の実施に関する計画(1号特定技能外国人支援計画)を作成します。
(4)在留資格変更許可申請を管轄の地方出入国在留管理局で行う
必要な添付資料が準備できたら、管轄の地方出入国在留管理局で在留資格変更許可申請を行います。主な添付資料は、受入れ機関の概要 ・特定技能雇用契約書の写し ・1号特定技能外国人支援計画 ・日本語能力を証明する資料 ・技能を証明する資料などです。
参考)
出入国在留管理庁|特定技能の在留資格を取得する際の申請書類はこちら
https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/10_00020.html
(5)就労開始
在留資格の変更が完了したら就労開始となります。
在留資格変更許可申請は、原則外国人本人が行うことになっています。しかし、企業が「申請等取次者」として承認を受けた場合、代わりに手続きを行うことができます。
なお、雇用する外国人の母国によって、追加で手続きが必要な場合があるので注意しましょう。
参考)
出入国在留監理庁|特定技能に関する各国別情報はこちら
https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri06_00073.html
6. まとめ
技能実習3号は、技能実習2号の実習を修了した後、実習期間を延長する場合に移行する在留資格です。実習4年目から5年目に取得し、技能実習2号で習得した技能などの熟達を図るための活動を行います。
受入れ方式によって、企業単独型の技能実習3号イと、団体監理型の技能実習3号ロに区分されます。
在留期間は、法務大臣が指定する2年を超えない期間とされています。また、技能実習3号の在留資格で実習できる職種・作業は主務省令で定められており、現在80職種144作業(2023年3月31日時点)あります。
技能実習3号の受入れ可能な人数は、以下の通りです(技能実習法施行規則第16条)
表)団体監理型・企業単独型Aにおける技能実習生(技能実習3号)の受入れ上限人数
実習実施者の常勤職員総数 | 技能実習生の人数 |
301人以上 | 常勤職員総数の10分の3 |
201人以上300人以下 | 90人 |
101人以上200人以下 | 60人 |
51人以上100人以下 | 36人 |
41人以上50人以下 | 30人 |
31人以上40人以下 | 24人 |
30人以下 | 18人 |
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領 ~ 関係者の皆さまへ ~」,2023年4月公表,p120-121を基にライトワークス にて作成,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005219.pdf(閲覧日:2023年5月30日)
企業単独型Bにおける技能実習3号の実習生の受入れ上限人数は、常勤職員総数の10分の3です。ただし、技能実習3号においては、いずれの場合も技能実習生数が常勤職員総数の3倍を超えてはならないとされています。
技能実習2号から技能実習3号へ移行するときの要件は以下の通りです(技能実習法第9条、技能実習法施行規則第10条)。
・本人が満たすべき要件
(1)技能実習2号と同一の技術などについて実習すること
(2)技能実習の内容が、移行対象職種・作業であること
(3)技能検定3級、または技能実習評価試験専門級の実技試験に合格すること
(4)母国に一時帰国すること
・企業が満たすべき要件
(1)実習実施者が「優良な実習実施者」と認定されていること
(2)団体監理型の場合、監理団体が「優良な監理団体」と認定されていること
また、技能実習2号から技能実習3号に移行するときに、企業が行う手続きは以下の通りです。
・優良な実習実施者の認定申請をする
・技能実習3号の技能実習計画認定を外国人技能実習機構(OTIT)に申請する
・在留資格変更を管轄の出入国在留管理局に申請する
前述の通り、技能実習2号から技能実習3号に移行する際は、技能実習生の一時帰国も必要です。期間や時期、旅費負担など、技能実習に関する法令に従って一時帰国を行いましょう。
技能実習2号の実習修了後に移行できる在留資格は、技能実習3号の他に特定技能1号があります。
特定技能制度は、人手不足が深刻化する産業分野において、一定の専門性と技能を有する外国人を雇用することを目的としたものです。
特定技能の在留資格は、特定技能1号と特定技能2号の2種類がありますが、技能実習2号および技能実習3号から移行が可能なのは、特定技能1号です。
技能実習と特定技能は、基づく制度の目的が異なります。技能実習制度が開発途上国へ技術移転を行うことによる国際貢献を目的としている一方、特定技能制度は国内の特定の産業・分野における人手不足の解消を目的としています。
各在留資格の違いは、下表の通りです。
特定技能 | 技能実習 | |
目的 | 人手不足の解消 | 国際貢献 |
就業可能な業務や分野 | 特定技能1号:12分野 特定技能2号:2分野 (2023年5月時点) | 技能実習2号:87職種159作業 技能実習3号:80職種144作業 (2023年3月31日時点) |
在留期間 | 特定技能1号:通算5年 特定技能2号:上限なし | 技能実習1号:1年以内 技能実習2号:2年以内 技能実習3号:2年以内(合計で最長5年) |
転職の可否 | できる | できない |
受入れ方法 | 受入れ企業が直接採用活動を行う | 大半が、仲介する団体を通して紹介される |
関与する団体 | 登録支援機関が関与することが多い | 送り出し機関・監理団体・外国人技能実習機構(OTIT)など |
受入れ人数の制限有無 | 制限なし (ただし、建設分野・介護分野は制限あり) | 制限あり |
家族帯同の可否 | 特定技能1号:できない 特定技能2号:配偶者・子に限りできる | できない |
このように、特定技能と技能実習では基づく制度もその目的も異なるため、技能実習から特定技能に移行する際は、十分違いを理解した上で行いましょう。
技能実習の在留資格から特定技能1号に移行するための要件は以下の通りです。
・外国人本人に求められる要件
(1)技能実習2号を良好に修了していること
(2)技能実習で実習した職種・作業の内容と、特定技能の業務に関連性があること
・受入れ企業に求められる要件
(1)外国人と結ぶ雇用契約(特定技能雇用契約)が適切であること(例:報酬額が日本人と同等以上)
(2)受入れ機関自体が適切であること(例:5年以内に出入国・労働法令違反がない)
(3)外国人を支援する体制があること(例:外国人が理解できる言語で支援できる)
(4)外国人を支援する計画が適切であること
技能実習から特定技能へ、在留資格を変更するときの流れは以下の通りです。
(1)外国人と企業が雇用契約を結ぶ
(2)登録支援機関と委託契約を結ぶ(登録支援機関に外国人従業員の支援を委託する場合)
(3)特定技能外国人の支援計画を策定する
(4)在留資格変更許可申請を管轄の地方出入国在留管理局で行う
(5)在留資格の変更完了後、特定技能外国人として就労開始
なお、雇用する外国人の母国によって、追加で手続きが必要な場合があるので注意しましょう。
技能実習3号での実習は、技能実習生として在留できる最後の期間です。技能実習生の進路について助言できるよう、企業の担当者も外国人雇用に関する知識を身に付けておきましょう。
[1] 大阪府職業能力開発協会「《表1》技能検定随時試験の等級区分、試験対象者」,
https://www.osaka-noukai.jp/DL/exam/zuiji-toukyuukubun.pdf(閲覧日2023年5月31日)
[2] 厚生労働省「令和元年度「技能検定」実施状況」,2020年7月31日公表,
https://www.mhlw.go.jp/content/11806001/000653258.pdf(閲覧日2023年5月31日)
[3] JITCO「在留資格「特定技能」とは」,
https://www.jitco.or.jp/ja/skill/(閲覧日:2023年5月31日)
参考)
e-GOV「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=428M60000110003_20230131_505M60000110001(閲覧日:2023年5月31日)
e-GOV「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=428AC0000000089_20221001_504AC0000000012(閲覧日:2023年5月31日)
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領 ~ 関係者の皆さまへ ~」,2023年4月公表,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005219.pdf(閲覧日:2023年5月31日)
外国人技能実習機構「第2号から第3号へ移行する際の実習先変更支援の実施」,https://www.otit.go.jp/files/user/docs/300207-03.pdf(閲覧日:2023年5月31日)
外国人技能実習機構「第3号技能実習移行時における一時帰国要件の柔軟化について」,https://www.otit.go.jp/files/user/190906-6.pdf(閲覧日:2023年5月31日)
法務省「特定技能制度に関するQ&A」,https://www.moj.go.jp/isa/content/930006254.pdf(閲覧日:2023年5月31日)
出入国在留管理庁「特定技能 ガイドブック ~特定技能外国人の雇用を考えている事業者の方へ~」,https://www.moj.go.jp/isa/content/930006033.pdf(閲覧日:2023年5月31日)
出入国在留管理庁「特定技能外国人に必要な条件について」,『特定技能総合支援サイト』,https://www.ssw.go.jp/about/requirement/(閲覧日:2023年5月31日)