この記事を読むと、次のことが分かります。
・優良要件適合申告書とは何か
・優良要件適合申告書の書き方
・優良要件適合申告書の配点
・優良要件適合申告書が受理されることのメリットと注意点
「優良要件適合申告書」とは、実習実施者や監理団体が「優良」と認定されるために外国人技能実習機構に提出する書類です。「優良な実習実施者」と認められると、技能実習3号の受入れが可能となる他、受入れ可能な技能実習生の人数枠が増加します。
本稿では実習実施者が提出する優良要件適合申告書に関して、書き方や見落としがちな添付書類、配点などを解説します。優良要件適合申告書が受理された後の注意したい点についても解説しているので、ぜひお読みください。
1. 優良要件適合申告書とは何か?
優良要件適合申告書は、優良な実習実施者と認定されるために必要な書類です。詳しく説明します。
1-1. 優良要件適合申告書の概要
優良要件適合申告書は、優良な実習実施者と認定されるために実習実施者が外国人技能実習機構に提出する書類です。
「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」第9条第10号では、優良な実習実施者の要件に「主務省令で定める基準に適合していること」が挙げられています。この基準を満たしていることを申告するために、優良要件適合申告書を提出します。
1-2. 優良要件適合申告書の書き方
優良要件適合申告書の書き方については、外国人技能実習機構が公開している記載例を参照するとよいでしょう。
参考)
外国人技能実習機構|優良要件適合申告書の記載例はこちら
https://www.otit.go.jp/youshiki_01/
上記のページには、たくさんの様式が並んでいますので「優良要件適合申告書(実習実施者)」でページ検索をしてください。本体と別紙のフォーマット、そして記載例をダウンロードすることができます。
記載例から分かるように、注意すべきなのは以下の3つです。
・法人単位での実績を記載すること
・技能実習指導員と生活指導員の加点要件は全員の受講
・地域社会と技能実習生の共生推進も重要
・法人単位での実績を記載すること
複数の法人を運営していても、優良要件適合申告書は法人単位での実績を記載しなければいけません。
・技能実習指導員と生活指導員の加点要件は全員の受講
技能実習の実施において、技能実習指導員と生活指導員に講習を受ける義務はありません。しかし、直近過去3年以内に全ての技能実習指導員と生活指導員が受講していれば加点の対象となるため、受講が推奨されています。「全員」という点に注意してください。
・地域社会と技能実習生の共生推進も重要
地域社会と技能実習生の共生を促す取り組みも加点の対象です。技能実習生が孤立せず、地域に溶け込めるようサポートしましょう。
1-3. 優良要件適合申告書の添付書類
優良要件適合申告書に必要な添付書類を項目別にまとめました。
【優良要件適合申告書 必要な添付書類一覧】
項目 | 必要な添付書類 |
技能等の修得等に係る実績 | 合格者、不合格者、不受検者の氏名など記載した名簿(別紙として添付) |
技能実習を行わせる体制 | 受講者全員の受講証明書の写し(技能実習指導員または生活指導員に受講者がおり、加点として申告する場合) |
技能実習生の待遇 | 在籍する全ての技能実習生について個室が確保されていることを明らかにする資料(雇用契約書、宿泊施設の見取り図など) |
相談・支援体制 | ポータルサイトに登録した実習実施者の登録画面を印刷したもの |
外国人技能実習機構「「優良要件適合申告書(実習実施者)」(記載例)」を基にライトワークスにて作成,
https://www.otit.go.jp/files/user/%E2%96%A0%E7%AC%AC1-24%E5%8F%B7%E3%80%80%E5%84%AA%E8%89%AF%E8%A6%81%E4%BB%B6%E9%81%A9%E5%90%88%E7%94%
B3%E5%91%8A%E6%9B%B8%EF%BC%88%E5%AE%9F%E7%BF%92%E5%AE%9F%E6%96%BD%E8%80%85%EF%BC%89%201007.pdf(閲覧日:2023年3月9日)
優良要件適合申告書の提出には、技能実習生の名簿や技能実習指導員・生活指導員の受講証明書の写しなど、多数の添付書類が必要です。不備がないよう確認の上、提出しましょう。
2. 優良要件適合申告書で注意すべきこと
優良要件適合申告書を記入する前に、確認すべきことがあります。
2-1. 現在使用されている新様式と旧様式の大きな相違点
優良要件適合申告書の新様式と旧様式で大きく異なるのは「配点」です。2020年11月に要件項目の追加と配点の改正が行われ、2020年11月から2021年10月までの間は旧配点(120点満点中72点以上)と新配点(150点満点中90点以上)のいずれかを選択することが可能でした。
現在は新配点のみ適用される、新様式の優良要件適合申告書を提出しなければいけません。「優良要件適合申告書」とインターネットで検索すると、「旧配点と新配点のどちらかを選択できる」という旧様式の情報が掲載されていることがあるので注意が必要です。
2-2. 「技能等の取得等に係る実績」の配点が非常に高い
優良要件適合申告書で最も配点が高い項目は、「技能等の修得に係る実績」で最大70点です。実習実施者には、技能実習制度の大目的である「技能の習得」を援助することが求められています。よって、技能検定または技能実習評価試験に合格した技能実習生の人数が評価されるのは当然といえるでしょう。
配点は、過去3技能実習事業年度における基礎級程度の技能検定などの学科および実技試験(受検対象は技能実習1号)の合格率が95%以上で最大20点、同期間内における2・3級程度の技能検定などの実技試験(受検対象は3級が技能実習2号、2級が技能実習3号)の合格率が80%以上で最大40点です。
なお、技能実習事業年度とは、4月1日から翌年3月31日までを区切りとする技能実習に関する事業年度を指します。
さらに、過去3年間の2・3級程度の技能検定などの学科試験の合格実績(級で分けず、人数の合算)が2人以上で5点、技能検定などの実施に協力した場合に5点が加わります。
技能検定または技能実習評価試験の合格は、技能実習生が技能を習得した証しです。実習実施者は「技能などの移転による国際協力の推進」という技能実習制度の目的を正しく理解することが求められます。
コラム:技能実習生向け技能検定の概要
技能実習生向け技能検定は、基礎級、随時3級、随時2級に分かれています。技能実習を1年以上継続する予定がある場合、技能実習計画には技能検定、またはそれに相当する技能実習評価試験への合格を目標として記載する必要があります(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則 第10条)。
技能実習生は技能検定または技能実習評価試験に合格しない限り、在留資格が移行できません。在留資格の移行とは、技能実習1号から2号へ、あるいは技能実習2号から3号への移行を指します。
技能実習1号から2号への移行には技能検定(基礎級)または技能実習評価試験(初級)の学科および実技試験、技能実習2号から3号への移行には技能検定(随時3級)または技能実習評価試験(専門級)の実技試験への合格が必要です。
また、技能実習3号では実習修了までに技能検定(随時2級)または技能実習評価試験(上級)の実技試験を受検し、合格を目指します。
2021年時点で、技能検定または技能実習評価試験を経て技能実習2号・3号へ移行できるのは85職種156作業です。これらの職種は、技能実習生に長期間にわたって技能の向上を目指してもらうことができます。
3. 確認!優良要件適合申告書が受理されたら
優良要件適合申告書が受理されることで得られるメリットを解説します。
3-1. 技能実習3号の受入れが可能になる
優良要件適合申告書が受理されると、優良な実習実施者と認定され、技能実習3号の技能実習生が受入れ可能になります。技能実習3号は、入国して4、5年目の技能実習生が持つ在留資格です。
技能実習3号の技能実習生は、それまでの実習で技能などを習熟しており、さらなる技能の向上が見込まれます。技能実習1号・2号での各試験に合格している人材なので、その技能は母国で充分役立つものとなっているでしょう。
また、技能実習の場でも貴重な人材となる可能性があります。しかし、技能実習制度は労働力の需給調整ではなく、国際貢献・国際協力の視点から創設されたものです。制度本来の目的に沿って、技能実習生の母国での活躍を願い、技能実習に専念できる環境の整備に努めましょう。
3-2. 技能実習生の受入れ人数枠が拡大する
優良な実習実施者と認定されると、技能実習生の受入れ人数枠が増加します。
受入れることができる技能実習生の基本人数枠は、実習実施者の常勤職員総数によって定められています。例えば、団体監理型での技能実習1号・2号の人数枠は下表の通りです。
【団体監理型 受入れ可能な基本人数枠】
実習実施者の常勤職員総数 | 受入れ可能な技能実習1号の人数(「基本人数枠」) | 受入れ可能な技能実習2号の人数 |
301人以上 | 常勤職員総数の20分の1 | 基本人数枠の2倍 |
201~300人 | 15人 | |
101~200人 | 10人 | |
51~100人 | 6人 | |
41~50人 | 5人 | |
31~40人 | 4人 | |
30人以下 | 3人 |
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領 ~ 関係者の皆さまへ ~」,2021年8月公表,p120を基にライトワークスにて作成,https://www.otit.go.jp/files/user/210801%20%E5%85%A8%E4%BD%93%E7%89%88.pdf(閲覧日:2023年3月10日)
優良な実習実施者と認定されると、この基本人数枠を基準として受入れることができる人数が、以下のように増えます。
技能実習1号:基本人数枠の2倍
技能実習2号:基本人数枠の4倍
技能実習3号:基本人数枠の6倍
このように、受入れることができる技能実習生の人数が大幅に増加します。
4. 注意!監理団体の変更が必要な可能性
優良要件適合申告書が受理され、優良な実習実施者と認定されたとしましょう。この際に許可される技能実習3号の受入れを行う場合、技能実習のパートナーとなる監理団体を変更する必要に迫られる可能性があります。
監理団体には「特定監理事業の許可を受けた監理団体」と「一般監理事業の許可を受けた監理団体」の2種類があります。特定監理事業で監理が認められているのは、技能実習1号・2号です。対して、一般監理事業では技能実習1号・2号・3号の監理が認められています。
したがって、特定監理事業の許可を受けた監理団体を技能実習のパートナーに選んでいた場合、技能実習3号を受入れるのなら一般監理事業の許可を受けた監理団体への変更が必要です。
5. まとめ
優良要件適合申告書は、優良な実習実施者と認定されるために実習実施者が外国人技能実習機構に提出する書類です。実習実施者が主務省令で定める基準を満たしていることを申告するために提出します。
優良要件適合申告書の書き方は、外国人技能実習機構のホームページで公開されています。また、優良要件適合申告書の他に、技能実習生の名簿や技能実習指導員・生活指導員の受講証明書の写しといった添付書類が必要です。
優良要件適合申告書を記入する前に、確認すべきことがあります。2020年11月から2021年10月までの間は、旧配点(120点満点中72点以上)と新配点(150点満点中90点以上)のいずれかを選択することが可能でした。現在は新配点のみ適用される、新様式の優良要件適合申告書を提出しなければいけません。
優良要件適合申告書で最も配点が高い項目は、「技能等の修得に係る実績」で最大70点です。
配点は、過去3技能実習事業年度における基礎級程度の技能検定などの学科および実技試験(受検対象は技能実習1号)の合格率が95%以上で最大20点、同期間内における2・3級程度の技能検定などの実技試験(受検対象は3級が技能実習2号、2級が技能実習3号)の合格率が80%以上で最大40点です。
さらに、過去3年間の2・3級程度の技能検定などの学科試験の合格実績(級で分けず、人数の合算)が2人以上で5点、技能検定などの実施に協力した場合に5点が加わります。
技能検定または技能実習評価試験の合格は、技能実習生が技能を習得した証しです。実習実施者は「技能などの移転による国際協力の推進」という技能実習制度の目的を正しく理解することが求められます。
優良要件適合申告書が受理されると、優良な実習実施者と認定され、技能実習3号の受入れが可能になります。技能実習3号の技能実習生は、それまでの実習で技能などを習熟しており、さらなる技能の向上が見込まれます。
技能実習の場でも貴重な人材となる可能性がありますが、技能実習制度は労働力の需給調整ではなく、国際貢献・国際協力の視点から創設されたものです。制度本来の目的に沿って、適正に技能実習を進めましょう。
また、優良な実習実施者と認定されると、技能実習生の受入れ人数枠が増加します。団体監理型で受入れる場合、基本人数枠を基準として以下のように増えます。
技能実習1号:基本人数枠の2倍
技能実習2号:基本人数枠の4倍
技能実習3号:基本人数枠の6倍
優良要件適合申告書が受理され、優良な実習実施者と認定されたとしましょう。技能実習3号の受入れを行う場合、技能実習のパートナーとなる監理団体を変更する必要に迫られる可能性があります。
監理団体には、特定監理事業の許可を受けた監理団体と一般監理事業の許可を受けた監理団体の2種類があります。特定監理事業では技能実習1号・2号、一般監理事業では技能実習1号・2号・3号の監理が認められています。
したがって、特定監理事業の許可を受けた監理団体を技能実習のパートナーとして選んでいた場合、技能実習3号を受入れるのなら一般監理事業の許可を受けた監理団体への変更が必要です。
優良要件適合申告書は、優良な実習実施者と認定されるために必要不可欠な書類です。添付書類をそろえるなど、提出までに手間がかかりますが、受理されればさまざまな恩恵を受けられます。本稿を参照して、ぜひ優良要件適合申告書の作成を進めてください。
参考)
厚生労働省「技能実習生の技能検定受検にあたって」,https://www.mhlw.go.jp/content/000765976.pdf(閲覧日:2023年3月10日)
外国人技能実習機構「技能実習計画の認定申請/計画の変更関係」,https://www.otit.go.jp/youshiki_01/(閲覧日:2023年3月9日)
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領 ~ 関係者の皆さまへ ~」,2021年8月公表,https://www.otit.go.jp/files/user/210801%20%E5%85%A8%E4%BD%93%E7%89%88.pdf(閲覧日:2023年3月9日)
外国人技能実習機構「「優良要件適合申告書(実習実施者)」(記載例)」,https://www.otit.go.jp/files/user/%E2%96%A0%E7%AC%AC1-24%E5%8F%B7%E3%80%80%E5%84%AA%E8%89%AF%E8%A6%81%E4%BB%B6%E9%81%A9%E5%90%88%E7%94%B3%E5%
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外国人技能実習機構「加点表(実習実施者)」,https://www.otit.go.jp/files/user/201125-20.pdf(閲覧日:2023年3月10日)
外国人技能実習機構「よくあるご質問(技能実習計画の認定申請関係)」,https://www.otit.go.jp/files/user/statistics/201023-001.pdf(閲覧日:2023年3月10日)
公益財団法人 国際人材協力機構「外国人技能実習制度とは」,https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/(閲覧日:2023年3月10日)
e-Gov「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=428AC0000000089_20221001_504AC0000000012(閲覧日:2023年3月9日)
e-Gov「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=428M60000110003(閲覧日:2023年3月9日)