特定技能と技能実習の違いを解説!【目的を理解して正しい制度利用を】

この記事を読むと、次のことが分かります。
・特定技能と技能実習の違い
・特定技能と技能実習の概要やメリット・デメリット
・技能実習から特定技能への移行要件
・在留資格について正しい知識を持つことの重要性

人手不足に悩んでいる企業の中には、「特定技能」と「技能実習」を天秤にかけ、どちらにするか検討するケースが見られます。しかし、特定技能技能実習は本来的に前提の異なる制度です。2つの在留資格について正しい知識を持ち、本質を理解することで、より目的に根差した、安定的な外国人雇用を実現することができます。

本稿では、特定技能と技能実習の違いを確認しながら、外国人雇用を検討する際に必要な考え方を整理していきます。「特定技能と技能実習、どちらが良いの?」という疑問に対する見解もお伝えしますので、参考にしていただければ幸いです。

1. 特定技能と技能実習の8つの違い

特定技能と技能実習の違いを一覧表にまとめました。

 特定技能技能実習
目的人手不足の解消国際貢献
就業可能な業務や分野特定技能1号:12分野 特定技能2号:2分野 (2023年4月時点)技能実習2号:87職種、159作業 技能実習3号:80職種、144作業 (2023年3月31日時点)
在留期間特定技能1号:通算5年 特定技能2号:上限なし技能実習1号:1年以内 技能実習2号:2年以内 技能実習3号:2年以内(合計で最長5年
転職の可否できるできない
受入れ方法受入れ企業が直接採用活動を行う大半が、仲介する団体を通して紹介される
関与する団体登録支援機関が関与することが多い送り出し機関・監理団体・外国人技能実習機構など
受入れ人数の制限有無制限なし (ただし、建設分野・介護分野は制限あり)制限あり
家族帯同の可否特定技能1号:できない 特定技能2号:配偶者・子に限りできるできない

項目別に詳しく見ていきましょう。

特定技能と技能実習の違い(1) 目的

特定技能と技能実習の根本的な違いがその目的です。特定技能は、日本国内での人材確保が難しい分野における人手不足の解消を目的としています。そのため特定技能外国人には、一定の技能や専門性が求められ、即戦力となることが期待されます。

一方、技能実習の目的は、開発途上国出身の外国人に日本の技術を学んでもらい、帰国後にその技術を自国の発展に生かしてもらうという国際貢献です。技術を習得するため実際に働きますが、働くことが目的なのではなく、技術の習得を目指す一つの手段であることを忘れないようにしましょう。

特定技能と技能実習の違い(2) 就業可能な業務や分野

特定技能と技能実習では、就業できる業務や分野に違いがあります。特定技能は分野別に就業できるかどうかが決まっています。特定技能で認められている分野数は、特定技能1号12分野特定技能2号2分野です。

一方、技能実習の場合は、職種や作業によって受入れの可否が決まっています。2023年3月末時点で認められている職種・作業数は、技能実習2号では87職種159作業技能実習3号では80職種144作業です。

農業や漁業、建設、製造業といった、特定技能と技能実習の両方で就業できる分野も多くありますが、カーペット製造やリネンサプライのように技能実習でしか認められていない職種や、航空機整備のように特定技能でしか認められていない業務もあります。

特定技能と技能実習の違い(3) 在留期間

特定技能と技能実習では、日本に在留できる期間も異なります。

特定技能の中でも1号と2号では在留期間が異なり特定技能1号の場合は、在留資格を更新することで通算5年間在留可能です。更新の頻度は1年・6カ月・4カ月のいずれかで、在留カードに記載されています。特定技能2号の場合、更新は必要ですが在留期間に上限はありません

技能実習の場合も1号は1年以内、2号・3号はそれぞれ2年以内と、在留期間が定められており、3号まで移行すれば通算で5年間在留できます。ただし在留資格を移行するには、移行できる職種であるか、試験に合格しているかなど、いくつかの要件を満たす必要があります。

特定技能と技能実習の違い(4) 転職の可否

転職できるかどうかも、特定技能と技能実習で異なる点です。

特定技能就労資格であるため、以下の要件のいずれかを満たせば転職が認められています

・転職先が同一分野であること
・転職先の分野・業務区分で求められる技能試験に合格すること

なお、他の分野から介護分野に転職する場合は、技能試験に加え「介護日本語評価試験」の合格も必要です。

一方、技能実習は就労目的ではないため、そもそも転職という考え方が存在せず、転職はできません。

ただし技能実習2号から3号へ移行するタイミングなら、実習先を変更することが可能です。また、受入れ企業の経営不振などで技能実習の継続が難しくなった場合にも、実習生が希望すれば、他の企業に転籍できます。いずれも実習先を変えることはできますが、職種を変えることはできません

特定技能と技能実習の違い(5) 受入れ方法

特定技能と技能実習では、外国人を受入れる方法も異なります。

特定技能の場合、募集から採用まで企業が直接行います。特定技能外国人を募集するために、日本語学校などと提携したり人材紹介会社を活用したりといったさまざまなアプローチを行い、採用後は外国人と雇用契約を結びます。

一方、技能実習で外国人を受入れる方法は以下の2つです。

企業単独型:自社の海外支店や関連企業などで勤務する外国人を呼び寄せ、技能実習生として受入れる方法
団体監理型:監理団体を通して技能実習生を受入れる方法

2021年末では、団体監理型での受入れが98.6%、企業単独型での受入れが1.4%となっており、ほとんどのケースで団体監理型となっています[1]。団体監理型の場合、企業が直接技能実習生を募集するのではなく、海外の送り出し機関と提携している監理団体から紹介してもらうのが一般的です。

特定技能と技能実習の違い(6) 関与する団体 

企業が外国人を受入れる際にはさまざまな団体が関与しますが、特定技能と技能実習では関与する団体が異なります。

特定技能の場合、団体を関与させなくても特定技能外国人を受入れることが可能です。とはいえ、特定技能1号の外国人のサポートをする登録支援機関が関与していることも多く、受入れ企業の約8割が登録支援機関を利用しています[2]

そもそも特定技能1号の外国人を受入れる場合、受入れ企業には、外国人がスムーズに業務や生活ができるよう支援することが義務付けられています。自社で全てを行うのは難しいケースには委託することが認められており、その委託先が登録支援機関です。

具体的には、出入国在留管理庁長官の登録を受けた団体や行政書士、社労士などが登録支援機関として機能しています。

関与する団体が少ない特定技能に対し、技能実習では以下のように複数の団体が関与します。

送り出し機関・技能実習生の送り出し国に存在する機関 ・人材の募集・選抜などを行い、監理団体に人材を紹介する ・送り出し国で行う入国前講習も実施する
監理団体・日本に存在する機関 ・技能実習生をサポートする ・受入れ企業に対し、技能実習計画書の作成指導や監査などを行う
外国人技能実習機構(OTIT)・法務省・厚生労働省が所管する認可法人 ・技能実習計画の認定などを行う

以上のように、特定技能と技能実習では、関与する団体数や団体の種類がまったく異なっています。

特定技能と技能実習の違い(7) 受入れ人数の制限有無

特定技能と技能実習では、受入れ人数に制限があるかどうかも異なります。特定技能の場合、建設分野と介護分野を除き、受入れ人数に制限はありません

一方、技能実習の場合、受入れ人数に制限が設けられています。これは、技能の移転をスムーズにするために適切な指導が大切であると考えられているからです。受入れ可能な人数は、受入れ企業の規模や優良認定の有無、受入れ方法によって異なります。

特定技能と技能実習の違い(8) 家族帯同の可否

在留資格における家族帯同とは、在留資格を有する外国人が自身の家族を日本に呼び寄せることができるかどうかを意味します。家族帯同については、技能実習特定技能1号では認められていません。つまり家族を母国に残した状態で、日本に在留することになります。

家族帯同が認められているのは、特定技能2号のみです。ただし、特定技能2号の外国人が呼び寄せることができる家族は配偶者と子どもに限られます。

2. 改めて確認!特定技能と技能実習の基本知識

本章では、特定技能と技能実習の基本的な知識について改めて確認します。

2-1. 特定技能の概要とメリット・デメリット

特定技能は2019年4月から導入された制度です。この制度により、製造業や建設など人手不足が深刻な分野において、外国人を労働者として雇用することが認められるようになりました。

特定技能外国人を採用するメリットには、即戦力となる人材を確保できることが挙げられます。特定技能の在留資格を得るには、規定の日本語能力試験に合格することや相応の知識・技能を持っていることが必要です。日本語や業務がある程度できる人材であるため、即戦力として期待できます。

また特定技能の場合、国内在留・海外在住問わず外国人を採用できたり、募集や採用の手段を企業が決められたりと、採用の選択肢が多彩です。選択肢が多い分、企業のニーズに合った人材を探しやすいことも想定されます。

一方で、受入れ企業にとって課題と感じるのは、手続きの難しさや受入れ後の対応です。特定技能外国人を受入れた企業は、在留資格の申請手続きや受入れ後の支援、地方出入国在留管理局への報告などを行う必要があります。業務以外の手間が発生する点はデメリットといえるかもしれません。

2-2. 技能実習の概要とメリット・デメリット

技能実習は「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」に基づく制度です。「特定技能と技能実習の違い(1)」でも解説したように、日本の技能や知識を開発途上国に移転させることを目的としています。

技能実習生を受入れることで、社内が活性化するメリットがあります。高い志を持つ技能実習生の影響を受け、日本人従業員の労働意欲がアップするなど、社内の雰囲気が良くなることも考えられるでしょう。

一方、技能実習のデメリットには、受入れコストがかかることや、日本語能力や業務に関する技能が低い傾向があることなどが挙げられます。団体監理型で技能実習生を受入れるには、送り出し機関や監理団体といった組織が企業と技能実習生とを仲介します。そのため受入れにコストがかかってしまうのです。

また技能実習生には、日本語や業務に関する技能の水準が設けられていません(介護職種を除く)。そのため受入れ企業からは、「コミュニケーションが難しかった」「技能を教えることが想定外に多かった」という声が挙げられることもあります。

2-3. 技能実習から特定技能へ移行可能

技能実習生は、特定技能へ在留資格を移行することができます。ただし、技能実習2号の実習を良好に修了していることが要件なので、移行できるのは技能実習2号もしくは3号に限られます。技能実習1号から特定技能へ移行することはできません。

技能実習2号を良好に修了しているとは、技能実習を2年10カ月以上修了していることに加え、以下のいずれかを満たした状態を意味します。

技能実習検定3級、もしくは同程度の技能実習評価試験に合格している
・技能実習生に関する評価調書がある

通常、特定技能1号の在留資格を取得するには、「日本語能力を確認する試験」と「技能を確認する試験」の両方に合格することが必要です。ただし、以下の2つの要件を満たす場合はこれらの試験が免除されます。

・技能実習2号を良好に修了している
・技能実習2号の職種・作業の内容と、特定技能の業務に関連性がある

つまり、上記2つの要件を満たした技能実習2号もしくは3号修了者は、試験を受けることなく、特定技能へ在留資格を移行できます。

なお、技能実習2号・3号で活動している人が、実習計画を中断して特定技能の在留資格を得ることは認められていません。

3. 在留資格を正しく理解できていない企業は多い!

外国人を雇用している企業でも、在留資格について正しく理解できていないケースは多いようです。ここでは、2021年1月27日~2月26日に大阪府で実施された調査を紹介します。

外国人を雇用している企業157社に外国人の在留資格を尋ねたところ、「技能実習」が54.1%と最も多く見られました。一方で、外国人を雇用する理由として「人手不足への対応」を挙げた企業が7割弱に上り、技能実習の本来の目的である「技能や技術の移転による国際貢献」を挙げた企業は22.3%にとどまりました。

この結果から、人手不足解消のために技能実習生を活用している企業が一定数あることが推測されます。

また、外国人採用についての課題を尋ねたところ、「在留資格や手続きに関する正確な情報が分からない」と回答した企業が21.9%でした。外国人を実際に雇用している企業であっても、在留資格に関して正しく理解できていないケースがあるようです。

外国人を雇用する際は、外国人労働者と受入れ企業とのミスマッチを防ぐためにも、制度を正しく理解することが大切です。制度を正しく理解することで、外国人材をより活用しやすくなったり、労働力確保の選択肢を増やしたりすることができるでしょう。

参考)
大阪府|「外国人雇用事業者等アンケート調査結果」はこちら
https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/37320/00398618/210630gaikokujinjigyousya.pdf

4. 「特定技能と技能実習、どちらが良い?」に対する見解

「特定技能と技能実習はどちらが良い?」という声は多く聞かれます。しかし本来、特定技能と技能実習とはまったく別の制度であるため、比較してどちらが良いというものではありません

本稿で解説してきたように、技能実習は「人材育成によって技能などの移転を行う国際協力の推進制度」であり、特定技能は「特定の産業・分野における人手不足に対応するための即戦力人材の採用制度」です。

特定技能と技能実習は目的も中身も異なる制度であるため、自社が置かれている状況に合わせてより良いと判断できる方を選びましょう。

5. まとめ

特定技能と技能実習の違いは以下の通りです。

 特定技能技能実習
目的人手不足の解消国際貢献
就業可能な業務や分野特定技能1号:12分野 特定技能2号:2分野 (2023年4月時点)技能実習2号:87職種、159作業 技能実習3号:80職種、144作業 (2023年3月31日時点)
在留期間特定技能1号:通算5年 特定技能2号:上限なし技能実習1号:1年以内 技能実習2号:2年以内 技能実習3号:2年以内(合計で最長5年
転職の可否できるできない
受入れ方法受入れ企業が直接採用活動を行う大半が、仲介する団体を通して紹介される
関与する団体登録支援機関が関与することが多い送り出し機関・監理団体・外国人技能実習機構など
受入れ人数の制限有無制限なし (ただし、建設分野・介護分野は制限あり)制限あり
家族帯同の可否特定技能1号:できない 特定技能2号:配偶者・子に限りできるできない

特定技能は2019年4月から導入された制度です。この制度により、人手不足が深刻な分野において、外国人を労働者として雇用することが認められるようになりました。

特定技能の外国人を採用するメリットは以下の点です。

即戦力となる人材を確保できる
採用の選択肢が多彩である

特定技能の外国人を採用するデメリットは以下の点です。

手続きが難しい
・業務以外の手間が発生する

一方、技能実習は「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」に基づく、日本の技能や知識を開発途上国に移転させることを目的とした制度です。

技能実習の外国人を採用するメリットは以下の点です。

・社内の活性化が期待できる

技能実習の外国人を採用するデメリットは以下の点です。

・受入れにコストがかかる
日本語能力や業務に関する技能が低い傾向がある

技能実習2号もしくは3号修了者は、以下の要件を満たしていれば、通常必要な「日本語能力を確認する試験」と「技能を確認する試験」を受けることなく、特定技能へ在留資格を移行することができます。

・技能実習2号を良好に修了している
・技能実習2号の職種・作業の内容と、特定技能の業務に関連性がある

在留資格を正しく理解することは難しく、実際に外国人を雇用している企業でも正しく理解できていないケースは多いようです。

「特定技能と技能実習はどちらが良い?」という質問も聞かれますが、これらは本来目的も中身も異なる制度であるため、自社が置かれている状況に合わせてより良いと判断できる方を選ぶ必要があります。

自社に合う制度を正しく判断するためには、制度を十分に理解することが欠かせません。本稿が制度の理解を深めるための一助となりますことを願っています。

[1] JITCO「外国人技能実習制度とは」,https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/(閲覧日:2023年5月22日)
[2] 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「出入国在留管理庁「外国人材受入支援体制の強化事業」事業報告書~概要版~」,2021年3月31日,p5,https://www.moj.go.jp/content/001357399.pdf(閲覧日:2023年5月22日)

参考)
出入国在留管理庁「新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」,https://www.moj.go.jp/isa/content/930004251.pdf(閲覧日:2023年5月22日)
出入国在留管理「特定技能外国人受入れに関する運用要領」,2023年4月,https://www.moj.go.jp/isa/content/930004944.pdf(閲覧日:2023年5月22日)
外国人技能実習機構「技能実習制度 移行対象職種・作業一覧」,https://www.otit.go.jp/files/user/230331_%E8%81%B7%E7%A8%AE%E4%B8%80%E8%A6%A7.pdf(閲覧日:2023年5月22日)
法務省・厚生労働省「外国人技能実習制度について」,https://www.otit.go.jp/files/user/210801_102.pdf(閲覧日:2023年5月22日)
JITCO「在留資格「特定技能」とは」,https://www.jitco.or.jp/ja/skill/(閲覧日:2023年5月22日)
出入国在留管理庁「特定技能外国人に必要な条件について」,『特定技能総合支援サイト』,https://www.ssw.go.jp/about/requirement/(閲覧日:2023年5月22日)
出入国在留管理庁「特定技能 ガイドブック ~特定技能外国人の雇用を考えている事業者の方へ~」,https://www.moj.go.jp/isa/content/930006033.pdf(閲覧日:2023年5月22日)
出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」,https://www.moj.go.jp/isa/content/930006254.pdf(閲覧日:2023年5月22日)

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