「現業職の人材不足の解消にダイレクトに活用できるという特定技能。うちも検討できるだろうか?」
外国人労働者の在留資格で代表的なものには、「技能実習」「高度専門職」「技術・人文知識・国際業務」などがあります。ここに、2019年から「特定技能」が加わりました。
在留資格にはそれぞれ特徴があり、「技能実習」は開発途上国への技術移転を、「高度専門職」や「技術・人文知識・国際業務」は高度なスキルを持つ外国人材の確保を目的とした在留資格です。
一方で、現業職、つまり工場や作業場など、現場で働くための在留資格は、数年前まで存在しませんでした。しかし、少子高齢化による労働者不足が深刻化する現状に鑑みて、国は、現業における労働力不足の解消を目的とした在留資格を創設しました。それが、特定技能です。
特定技能の在留資格が導入されたのは、2019年4月です。「外国人労働者を雇用して人材不足を解消したい」と考える企業にとってはメリットの大きい在留資格となっており、実際に、この在留資格を持つ外国人の数は増え続けています。この傾向は今後も続くでしょう[1]。
企業が特定技能の在留資格を持つ外国人材を雇用するためには、政府が規定する条件を満たす必要があります。また、特定技能の外国人を雇用した後の特別なサポート体制を作る必要もあります。
本稿では、外国人を雇用して労働力不足を解消したいと願う企業向けに、特定技能の特徴やメリット、特定技能の外国人を受け入れる際の条件や、雇用時の注意点、採用方法などを詳しく解説します。
[1] 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表」,https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri07_00215.html(閲覧日:2022年2月21日)
目次
1. 外国人の在留資格 【特定技能】の特徴とは?
この章では、特定技能の特徴について解説します。
1-1. 主な目的は「労働力不足の解消」
特定技能は、労働力不足が深刻化する産業分野において、一定の専門性と技能を有する外国人を雇用することを目的とした在留資格です。
特定技能の在留資格が創設されるまでは、単純労働に該当する業務で外国人を雇用することはできませんでした。しかし、この在留資格では、単純労働に該当する業種・職種での外国人の雇用が可能となり、労働力不足の解消につながることが期待されています。
1-2. 特定技能と技能実習の違い
特定技能と技能実習には以下のような違いがあります。
・在留資格の目的
・就業できる業種
・受け入れ方法
それぞれを詳しく解説します。
・在留資格の目的
技能実習の在留資格は、開発途上国へ技術移転を行うことによる国際協力を目的としています。一方、特定技能は労働力不足の解消を目的としています。
特定技能では転職が可能ですが、技能実習では基本的に転職は認められていません。
・就業できる業種
特定技能と技能実習では、就業できる業種が異なります。
表)特定技能と技能実習の就労可能な業種
特定技能 | 技能実習 | |
---|---|---|
就業可能な業種 | 特定技能1号:14分野 特定技能2号:2分野 (2021年11月時点) | 技能実習2号:85職種、156作業 技能実習3号:77職種、135作業 (2021年3月16日時点) |
技能実習で受け入れ可能な業種であっても特定技能では不可の場合もあります。外国人の雇用を検討している場合、自社の業務内容がどれに該当するのか事前の確認が必要です。
・受け入れ方法
技能実習生を受け入れるには、企業単独型と団体監理型がありますが、ほとんどの企業が団体監理型で受け入れを行っています。この場合、技能実習生を受け入れるには、送り出し機関から人材を紹介してもらいます。
一方、特定技能の場合は、求人・採用方法に制限はなく、企業が直接人材を探し、採用することができます。どのように特定技能の外国人を募集・採用するかは4章で詳しく解説します。
2. 特定技能の在留資格で働ける職種分野
特定技能の在留資格は、特定技能1号と特定技能2号に分類されます[2]。
・特定技能1号:特定産業分野に属する、相当程度の知識または経験を必要とする技能に従事する外国人向けの在留資格
・特定技能2号:特定産業分野に属する、熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
特定技能1号と特定技能2号の違いを表にまとめました。
表)特定技能1号と特定技能2号の違い
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
---|---|---|
在留期間 | 1年、6カ月または4カ月ごとの更新、通算で上限5年まで | 3年、1年または6カ月ごとの更新 |
技能水準 | 試験などで確認(技能実習2号を良好に修了した外国人は試験など免除) | 試験などで確認 |
日本語能力水準 | 生活や業務に必要な日本語能力を試験などで確認(技能実習2号を良好に修了した外国人は試験など免除) | 試験などでの確認は不要 |
家族の帯同 | 基本的に認められない | 要件を満たせば可能(配偶者、子) |
受け入れ機関または登録支援機関による支援 | 対象 | 対象外 |
それぞれを、さらに詳しく詳しく解説します。
2-2-1. 特定技能1号
特定技能1号は、14の産業分野での受け入れが可能です。在留資格を取得するには、技能試験や日本語試験への合格が必要です。
表)特定技能1号の基準表
技能試験 | 日本語試験 | |
介護 | 介護技能評価試験 | 国際交流基金日本語基礎テスト、または日本語能力試験N4以上。加えて、介護日本語評価試験 |
ビルクリーニング | ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験 | 国際交流基金日本語基礎テスト、または日本語能力試験N4以上 |
素形材産業 | 製造分野特定技能1号評価試験 | |
産業機械製造業 | ||
電気・電子情報関連産業 | ||
建設 | 建設分野特定技能1号評価試験など | |
造船・舶用工業 | 造船・舶用工業分野特定技能1号試験など | |
自動車整備 | 自動車整備分野特定技能評価試験など | |
航空 | 特定技能評価試験(航空分野:空港グランドハンドリング、航空機整備) | |
宿泊 | 宿泊業技能測定試験 | |
農業 | 農業技能測定試験 | |
漁業 | 漁業技能測定試験(漁業、または養殖業) | |
飲食料品製造業 | 飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験 | |
外食業 | 外食業特定技能1号技能測定試験 |
※表は以下を参考にライトワークスで作成
出入国在留管理庁「特定技能制度とは」,『特定技能総合支援サイト』,https://www.ssw.go.jp/about/ssw/(閲覧日:2022年2月4日)
2-2-2. 特定技能2号
特定技能2号では、以下の分野での受け入れが可能です。
・建設
・造船・船用工業
2022年1月現在、出入国在留管理庁のサイトでは、特定技能2号に移行するための試験内容については明示されていません[3]。今後、特定技能2号の運用が実用化されるにつれて明確にされていくと思われます。
[2] JITCO「在留資格「特定技能」とは」,https://www.jitco.or.jp/ja/skill/(閲覧日:2022年2月16日)
[3] 出入国在留管理庁「特定技能制度とは」,『特定技能総合支援サイト』,https://www.ssw.go.jp/about/ssw/(閲覧日:2022年2月4日)
3. 特定技能の外国人を雇用するメリット
特定技能には、以下のようなメリットがあります。
・即戦力の人材を雇用できる
・受け入れ人数に制限がない
詳しく解説します。
・即戦力の人材を雇用できる
外国人が特定技能の在留資格を取得するには、各分野で決められている技能試験と日本語能力試験に合格する必要があります。
一定の知識やノウハウがなく、かつ日本語が話せない外国人を雇用して教育するのは簡単ではありません。特定技能の外国人を雇用すると、短期間で即戦力となる人材の確保が期待できます。
・受け入れ人数に制限がない
特定技能では、建設と介護以外の分野であれば受け入れ人数の制限はありません。外国人を雇用することで労働力不足の解消を図りたい企業にとっては大きなメリットとなります。
建設分野での、特定技能の受け入れ人数に関しては以下のように規定されています。
特定技能1号の在留資格で受け入れる外国人の数と、特定活動の在留資格で受け入れる外国人の数の合計が、特定技能所属機関の常勤の職員の総数を超えないこと。
国土交通省「建設分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」,https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001330631.pdf(閲覧日:2022年2月9日)
つまり、社長と従業員を含めて3人しか常勤職員がいない場合、特定技能の外国人は3人までしか受け入れることができません。
また介護分野に関しては、以下のように規定されています。
事業所で受け入れることができる1号特定技能外国人は、事業所単位で、日本人などの常勤介護職員の総数を上限とすること 。
法務省「介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」,https://www.moj.go.jp/isa/content/930004961.pdf(閲覧日:2022年2月9日)
1章で確認いただいたように、特定技能は人材不足を解消するために、ダイレクトに活用できる在留資格であると言えます。
4. 特定技能の外国人を雇用できる企業の条件
この章では、特定技能の外国人を雇用する企業に求められる条件について解説します。
4-1. 受け入れ機関が満たすべき基準
特定技能の外国人を受け入れる企業には以下のような条件があります[4]。
受け入れ機関に求められる条件
(1)労働、社会保険および租税に関する法令を遵守していること
(2)1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
(3)1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
(4)欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないことなど)に該当しないこと
(5)特定技能外国人の活動内容に係る文書を作成し,雇用契約終了日から1年以上備えておくこと
(6)外国人などが保証金の徴収などをされていることを受入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと
(7)受入れ機関が違約金を定める契約などを締結していないこと
(8)支援に要する費用を,直接または間接に外国人に負担させないこと
(9)労働者派遣の場合は,派遣元が当該分野に係る業務を行っている者などで,適当と認められる者であるほか,派遣先が1~4の基準に適合すること
(10)労災保険関係の成立の届出などの措置を講じていること
(11)雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること
(12)報酬を預貯金口座への振込などにより支払うこと
(13)分野に特有の基準に適合すること
上記以外にも、さまざまな基準があり、出入国在留管理庁のホームページから確認できます。雇用を検討する前に、確認しておくことをお勧めします。
特定技能の外国人を雇用する際の基準
出入国在留管理庁「在留資格「特定技能」について」,2019年7月,p17-19,https://www.meti.go.jp/press/2019/08/20190809002/20190809002-1.pdf(閲覧日:2022年2月9日)
4-2. 1号特定技能外国人支援計画の作成
特定技能1号の外国人を雇用する企業には、「1号特定技能外国人支援計画」を作成する義務があります。この支援計画には、職業生活や日常生活に関する支援が記載されており、外国人が円滑に仕事ができるようにサポートする目的があります。支援内容と具体的な支援方法をまとめました[5]。
表)1号特定技能外国人支援計画の内容
支援内容 | 具体的な支援方法 |
---|---|
事前ガイダンスの提供 | 仕事の内容、労働条件、入国手続などについて、対面またはテレビ電話などで説明する |
出入国する際の送迎 | 入国時および帰国時に空港へ送迎する |
適切な住居の確保に係る支援・生活に必要な契約に係る支援 | 外国人が住居を確保できるよう、連帯保証人になる、または社宅を提供する。銀行口座の開設や携帯電話の契約をサポートする |
生活オリエンテーションの実施 | 日本のルールやマナー、災害時の対応などを説明する |
日本語学習の機会の提供 | 日本語教室の入学支援や、日本語学習教材の情報提供などを行う |
相談または苦情への対応 | 仕事や私生活における相談、苦情に関して、外国人が理解できる言語で対応する |
日本人との交流促進に係る支援 | 地域住民との交流の場に関する情報を提供し、各行事への参加を促す |
特定技能雇用契約を解除される場合の転職支援 | 受け入れ企業側の都合により雇用契約を解除する場合、転職先を探すサポートをする |
定期的な面談の実施、行政機関への通報 | 支援の責任者または担当者が、外国人と定期的に面談し、労働基準法やその他の法令違反がないかを確認する |
上記の支援内容を自社で提供することが難しい場合、登録支援機関に支援の一部、または全てを委託できます。
[4] 出入国在留管理庁「在留資格「特定技能」について」,2019年7月,https://www.meti.go.jp/press/2019/08/20190809002/20190809002-1.pdf(閲覧日:2022年2月9日)
[5] 法務省「1号特定技能外国人支援に関する運用要領-1号特定技能外国人支援計画の基準について」,2019年3月,https://www.moj.go.jp/isa/content/930004553.pdf(閲覧日:2022年2月10日)
5. 特定技能の外国人を雇用する際の注意点
特定技能の外国人を雇用する際は、以下の点に注意しましょう。
・特定技能雇用契約の締結
・行うべき各種届出
詳しく解説します。
5-1. 特定技能雇用契約の締結
特定技能雇用契約とは、特定技能の外国人と雇用する企業との間で結ばれる契約です。この契約の内容については、出入国管理及び難民認定法で規定されており、以下の点に注意する必要があります[6]。
・労働時間
特定技能の外国人の所定労働時間は、日本人従業員と同等であるべきです。外国人だからという理由で不当に長時間働かせることは禁止されています。
・労働賃金
特定技能の外国人の報酬額については、「日本人が従事する場合の報酬額と同等以上であること」と定められています[7]。雇用している日本人の報酬額が、最低賃金を上回っている場合、特定技能の外国人を最低賃金で働かせるのは特定技能雇用契約に反する行為です。
・人種による差別
企業は特定技能の外国人に対して、報酬や職業訓練の実施、福利厚生施設の利用など、その他の待遇について差別的な扱いをしてはなりません。
5-2. 行うべき各種届出
特定技能の外国人を雇用する企業は出入国在留管理庁に対して、随時または定期に各種届出を行う必要があります。
届出をしなかったり、虚偽の届出をしたりした場合は罰則の対象になるので注意が必要です。随時と定期の届出の内容は以下の通りです[8]。
随時届出
・雇用契約を締結・変更・終了したときの届出
・支援計画の内容を変更したときの届出
・支援委託契約を締結・変更・終了したときの届出
・特定技能外国人の受け入れが継続困難となったときの届出
・出入国または労働法令への不正行為があったことを知ったときの届出
定期届出
・受け入れ状況に係る届出
・支援実施状況に係る届出
・活動状況に係る届出
特定技能の外国人を雇用する場合、必要な届出を忘れないように注意しましょう。
[6]e-GOV法令検索「出入国管理及び難民認定法」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326CO0000000319(閲覧日:2022年3月22日)
[7] e-GOV法令検索「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=431M60000010005(閲覧日:2022年2月10日)
[8] 出入国在留管理庁「届出手続」,https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri10_00002.html(閲覧日:2022年2月10日)
6. 特定技能の外国人を雇用するプロセス
この章では、以下の点について解説します。
(1)特定技能の外国人の募集
(2)特定技能の申請方法
(3)技能実習から特定技能への移行方法
(4)特定技能から他の在留資格への移行方法
6-1. 特定技能の外国人の募集
特定技能制度では、企業が直接採用活動を行います。海外のエージェントを利用したり、国内のハローワークで外国人の紹介を受けたりする方法があります。
また、出入国在留管理庁は、ホームページで特定技能の外国人を採用したい企業の求人情報を掲載しており、求職している外国人とのマッチングをサポートしています。
特定技能の外国人の求人掲載
出入国在留管理庁「マッチングについて」,『特定技能総合支援サイト』,https://www.ssw.go.jp/about/matching/(閲覧日:2022年2月14日)
6-2. 特定技能の申請方法
企業が特定技能の外国人を採用するときの申請方法は以下の2つに分類できます。
・在留資格認定証明書交付申請:これから日本に入国する外国人の申請
・在留資格変更許可申請:日本に在留している外国人の申請
在留資格認定証明書交付申請と在留資格変更許可申請では、申請の方法が異なります。出入国在留管理庁のホームページに申請に必要な書類が記載されており、ダウンロードすることもできます。
また、申請書類への記載例も見ることができるので事前に確認しておくとよいでしょう。
申請に必要な書類
・在留資格認定証明書交付申請
出入国在留管理庁「在留資格認定証明書交付申請「特定技能」(これから日本に入国される外国人の方)」,https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri07_00196.html(閲覧日:2022年2月14日)
・在留資格変更許可申請
出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請「特定技能」(すでに日本に在留している外国人の方で,特定技能への移行を希望している方)」,https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri07_00197.html(閲覧日:2022年2月14日)
申請書の記載例
・在留資格認定証明書交付申請
出入国在留管理庁「在留資格認定証明書交付申請書」,https://www.ssw.go.jp/about/files/pdf/001300621.pdf(閲覧日:2022年2月14日)
・在留資格変更許可申請
出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請書」,https://www.ssw.go.jp/about/files/pdf/001300623.pdf(閲覧日:2022年2月14日)
6-3. 技能実習から特定技能への移行方法
技能実習2号を良好に修了した技能実習生は、特定技能の在留資格に変更することができます。変更の際は、技能実習の内容が特定技能へ移行した後の業務と一致しているかどうかを確認する必要があります。
特定技能では14の分野での就労が認められていますが、それらに合致する内容の技能実習を修了している場合、技能試験を受けることなく特定技能への移行が可能です。
しかし、技能実習生が特定技能の分野とは合致しない内容を修了している場合、技能試験への合格が必要です。なお、この場合も、日本語能力試験を受験する必要はありません。
技能実習から特定技能への移行申請をする際は、4-2で解説した「在留資格変更許可申請」を行います。
6-4. 特定技能から他の在留資格への移行方法
特定技能から、他の在留資格に移行するという方法もあります。
技能実習から特定技能の在留資格に変更し、その後、特定技能から就業可能な他の在留資格に移行することにより、継続雇用が可能になります。
例えば、特定技能の外国人が、技術・人文知識・国際業務の在留資格の取得条件をクリアしている場合、在留資格の移行が可能です。
技術・人文知識・国際業務の取得条件は以下の通りです。
・学歴要件:大学または専門学校の卒業
・実務経験:10年以上
特定技能の外国人が、技術・人文知識・国際業務の移行を行う場合も「在留資格変更許可申請」を行います。
7.まとめ
本稿では、特定技能の在留資格について解説しました、
特定技能は、労働力不足が深刻化する産業分野において、一定の専門性と技能を有する外国人を雇用することを目的とした在留資格です。
特定技能と技能実習には以下のような違いがあります。
・在留資格の目的
・就業できる業種
・受け入れ方法
技能実習の在留資格の目的は、開発途上国へ技術移転を行うことによる国際協力ですが、特定技能は労働力不足の解消を目的としています。また、就業できる業種については、技能実習では受け入れ可能でも、特定技能では不可の業種があります。
団体監理型で技能実習生を受け入れる場合、送り出し機関から人材を紹介してもらいます。しかし、特定技能の場合は、求人・採用方法に制限はなく、企業が直接人材を探し、採用することができます。
特定技能の在留資格には、特定技能1号と特定技能2号があります。
・特定技能1号:特定産業分野に属する、相当程度の知識または経験を必要とする技能に従事する外国人向けの在留資格
・特定技能2号:特定産業分野に属する、熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
特定技能1号では、14の産業分野での受け入れが可能です。在留資格を取得するには、技能試験や日本語試験への合格が必要です。
特定技能2号では、建設と造船・船用工業の分野での受け入れが可能です。
特定技能の外国人を雇用するメリットには以下のものがあります。
・即戦力の人材を雇用できる
・受け入れ人数に制限がない
外国人が特定技能の在留資格を取得するには、技能試験と日本語能力試験に合格する必要があります。企業にとって、短期間で即戦力となる人材の確保が期待できます。
特定技能の在留資格では、建設と介護以外の分野であれば受け入れ人数の制限はありません。外国人を雇用することで労働力不足の解消を図りたい企業にとっては大きなメリットとなります。
特定技能の外国人を雇用する企業には、1号特定技能外国人支援計画の作成が義務付けられています。この支援計画には、職業生活や日常生活に関する支援が記載されており、外国人が円滑に仕事ができるようにサポートする目的があります。
特定技能の外国人を雇用する際の注意点として、以下のものがあります。
・特定技能雇用契約の締結
・行うべき各種届出
特定技能雇用契約とは、特定技能の外国人と雇用する企業との間で結ばれる契約です。労働時間や賃金などの基準を守り、外国人に対して差別的な扱いをしてはならないことが規定されています。
特定技能の外国人を雇用する企業は出入国在留管理庁に対して、随時または定期に各種届出を行う必要があります。届出をしなかったり、虚偽の届出をしたりした場合は罰則の対象になるので注意が必要です。
特定技能の外国人を雇用するプロセスとして以下の点を解説しました。
(1)特定技能の外国人の募集
(2)特定技能の申請方法
(3)技能実習から特定技能への移行方法
(4)特定技能から他の在留資格への移行方法
特定技能制度では、企業が直接採用活動を行います。海外のエージェントを利用したり、国内のハローワークで外国人の紹介を受けたりする方法があります。
企業が特定技能の外国人を採用するときの申請方法には、「在留資格認定証明書交付申請」と「在留資格変更許可申請」があります。
これから日本に入国する外国人の申請の場合は、在留資格認定証明書交付申請を行います。一方、日本に在留している外国人の申請の場合は、在留資格変更許可申請を行います。
技能実習2号を良好に修了した技能実習生は、特定技能の在留資格へ変更が可能です。ただし、技能実習の内容と特定技能へ移行後の職種が一致している必要があります。
特定技能の外国人が、例えば技術・人文知識・国際業務の在留資格の取得条件をクリアしている場合、在留資格を移行することも可能です。
特定技能の外国人の雇用は、労働力不足を補う手段となり得ます。しかし、同時に外国人労働者に対して手厚いサポートを提供する必要もあり、企業は募集や雇用を計画的に進める必要があります。
ぜひ今回の記事を参考に、特定技能の在留資格についての理解を深めていただけると幸いです。そして、自社での外国人労働者の受け入れが成功することを願っています。
参考)
JITCO「在留資格「特定技能」とは」,https://www.jitco.or.jp/ja/skill/(閲覧日:2022年2月16日)
出入国在留管理庁「特定技能制度とは」,『特定技能総合支援サイト』,https://www.ssw.go.jp/about/ssw/(閲覧日:2022年2月4日)
国土交通省「建設分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」,https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001330631.pdf(閲覧日:2022年2月9日)
法務省「介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」,https://www.moj.go.jp/isa/content/930004961.pdf(閲覧日:2022年2月9日)
出入国在留管理庁「在留資格「特定技能」について」,2019年7月,https://www.meti.go.jp/press/2019/08/20190809002/20190809002-1.pdf(閲覧日:2022年2月9日)
e-GOV法令検索「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=431M60000010005(閲覧日:2022年2月10日)
法務省「1号特定技能外国人支援に関する運用要領-1号特定技能外国人支援計画の基準について」,2019年3月,https://www.moj.go.jp/isa/content/930004553.pdf(閲覧日:2022年2月10日)
出入国在留管理庁「届出手続」,https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri10_00002.html(閲覧日:2022年2月10日)
出入国在留管理庁「マッチングについて」,『特定技能総合支援サイト』,https://www.ssw.go.jp/about/matching/(閲覧日:2022年2月14日)
出入国在留管理庁「在留資格認定証明書交付申請「特定技能」(これから日本に入国される外国人の方)」,https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri07_00196.html(閲覧日:2022年2月14日)
出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請「特定技能」(すでに日本に在留している外国人の方で,特定技能への移行を希望している方)」,https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri07_00197.html(閲覧日:2022年2月14日)
出入国在留管理庁「在留資格認定証明書交付申請書」,https://www.ssw.go.jp/about/files/pdf/001300621.pdf(閲覧日:2022年2月14日)
出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請書」,https://www.ssw.go.jp/about/files/pdf/001300623.pdf(閲覧日:2022年2月14日)
出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表」,https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri07_00215.html(閲覧日:2022年2月21日)