技能実習生の在留資格を解説!企業が知っておくべき注意点とポイント

「技能実習生が増加していると聞くが、企業での受け入れは簡単なのだろうか?」

昨今、ベトナム、中国、フィリピンなどからの技能実習生が増加しており、農業、漁業、建築、食品製造、機械・金属関係、介護など、幅広い業種で活躍しています。

これらの業種に該当する企業では、「自社でも技能実習生の受け入れを検討してみよう」と、考えている人事担当者もいるでしょう。

外国人を雇用するには、国をまたぐ法律、労働環境の整備、外国人労働者特有の課題などに対応する必要があります。

特に、在留資格の申請・変更手続きは複雑です。技能実習生の場合、年次によって在留期間や行える仕事の範囲が異なります。

受け入れの検討を進めるにあたり、ぜひ技能実習生の在留資格の特徴を押さえておきましょう。

本稿では、技能実習生の在留資格について分かりやすく解説します。また、実際に技能実習生を受け入れる際の具体的な注意点やポイントについてもご紹介します。ぜひ受け入れ後の「想定外」を減らしていきましょう。

1. 技能実習生の在留資格とは

この章では、技能実習生が持つ在留資格について解説します。

1-1. 外国人技能実習制度について確認しよう

技能実習生とは、外国人技能実習制度を利用して来日する外国人のことを指します。

外国人技能実習制度の目的は、開発途上地域への技術移転を行うことです。外国人が出身国において習得が難しい技術を日本で学び、自国に持ち帰ることを目的としています。

外国人技能実習制度の大きな特徴として、技能実習の法律には、「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」とあります[1]。企業は、技能実習生は労働力の補填ではないという点を理解しておく必要があります。

1-2. 技能実習生の在留資格は3つ

技能実習生が持つ在留資格は「技能実習」と呼ばれます。技能実習の在留資格は以下の3つに分類されます。

表1)技能実習の在留資格の区分

在留資格在留期間
技能実習1号入国1年目
技能実習2号入国2~3年目
技能実習3号入国4~5年目

それぞれの在留資格について詳しく解説します。

1-2-1. 「技能実習1号」は初年度に付与される在留資格

技能実習1号」とは、来日した技能実習生が初年度に付与される在留資格です。この在留資格の目的は、技能等を習得することで、在留期間は1年です。

技能実習1号の在留資格を取得する要件には以下のものがあります[2]

・18歳以上であること
・外国人技能実習制度の趣旨を理解して、技能実習を行おうとする者であること
・母国に帰国後、習得した技能等を必要とする業務に従事する予定である者
・技能実習生の国や地域の公的機関から推薦を受けている者

技能実習1号から技能実習2号に移行するには、技能評価試験(技能検定基礎級相当)に合格する必要があります。この試験には実技試験と学科試験があります。技能実習2号に移行できる職種は85職種、156作業です(2021年3月16日時点)[3]

1-2-2. 「技能実習2号」を得ると2年間の在留期間がプラス

技能実習2号」は、技能実習1号で習得した技術やノウハウをさらに習熟させることを目的とした在留資格です。

この在留資格を得ると2年間の在留期間が与えられ、技能実習1号と合計すると3年間の在留が可能です。

企業と技能実習生が、さらに在留期間の延長を希望する場合、技能実習3号に移行する必要があります。技能実習3号に移行できる職種は77職種、135作業です(2021年3月16日時点)。

技能実習2号から技能実習3号に移行するには、3級技能検定または、これに相当する技能実習評価試験の実技試験への合格が必要です。

2章で詳しく解説しますが、技能実習2号を修了した時点で、技能実習3号ではなく「特定技能」の在留資格への移行も可能になります。

1-2-3. 「技能実習3号」は入国4~5年目に付与される在留資格

技能実習3号」は入国4~5年目の技能実習生に付与される在留資格です。

注意点として、技能実習3号に移行する際、技能実習生は一旦、母国に帰国しなければいけません。帰国のタイミングと期間は、第2号技能実習終了後または、第3号技能実習開始後1年以内に、1カ月以上または1年未満の帰国が必要です。

技能実習生が母国に帰国するための費用は監理団体(企業単独型であれば実習実施者)が負担します。

また、技能実習3号を受け入れることができるのは、優良な実習実施者並びに、優良監理団体に限られます。技能実習生を受け入れる企業と技能実習生を斡旋する監理団体双方が優良と認められない場合、技能実習2号から技能実習3号に移行することはできません。

優良な実習実施者および監理団体の要件
法務省「新たな外国人技能実習制度について」,P12-14,https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000204970_1.pdf(閲覧日:2022年1月5日)

[1]e-GOV 法令検索「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=428AC0000000089_20200330_429AC0000000014,(閲覧日:2021年12月17日)
[2] 厚生労働省「技能実習計画の認定等」,『技能実習制度 運用要領』,P53,https://www.mhlw.go.jp/content/000622693.pdf(閲覧日:2022年1月25日)
[3] OTIT外国人技能実習機構「移行対象職種情報」,https://www.otit.go.jp/ikoutaishou/(閲覧日:2022年1月25日)

2. 技能実習と特定技能の関係

技能実習と混同されがちな在留資格に「特定技能」があります。特定技能は2019年4月より新しい在留資格として導入されています。

技能実習と特定技能はどのように違うのでしょうか。詳しく解説します。

2-1. 技能実習と特定技能の違い

技能実習と特定技能の違いは以下の通りです。

表2)技能実習と特定技能の違い

技能実習特定技能
目的開発途上地域への技術移転人手不足の解消
在留期間技能実習1号:1年以内
技能実習2号:2~3年間
技能実習3号:4~5年間
特定技能1号:通算5年
特定技能2号:制限なし
転職基本的に不可可能
家族帯同不可特定技能1号:基本的に不可
特定技能2号:要件を満たせば配偶者および子の帯同が可能
受け入れ可能な業種技能実習2号:85職種、156作業
技能実習3号:77職種、135作業
(2021年3月16日時点)
特定技能1号:14分野
特定技能2号:2分野
(2021年11月現在)

技能実習と特定技能の違いの一つは、制度の目的です。

技能実習の目的は技術移転による国際貢献ですが、特定技能は人材不足を補うことが目的であり、特定の分野での専門性・技能を有する外国人を対象とした在留資格です。

技能実習には基本的に転職が認められていませんが、特定技能には認められています。また、家族の帯同の可否や、受け入れ可能な業種にも違いがあります。

2-2. 技能実習から特定技能への変更

技能実習生が特定技能への移行を希望する場合、技能実習2号を良好に修了した時点で、申請をすれば、試験を受けずに特定技能1号に移行することが可能です。

ただし、同業種の分野に限られます。つまり、特定技能1号の業種に該当しない職種の実習を修了している技能実習生は、特定技能1号に移行することはできません。

技能実習2号から特定技能に移行する手続きには、在留資格変更許可申請書や申請人のパスポートおよび在留カードなどを準備する必要があります。

特定技能1号の業務区分
出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」,P8-9,https://www.moj.go.jp/content/001326468.pdf(閲覧日:2022年1月25日)

3. 技能実習生を受け入れる際のポイント

技能実習生を受け入れる際のポイントは以下の通りです。

・受け入れ可能な技能実習生数を把握する
・「団体監理型」か「企業単独型」かを決める
・専任の責任者を配置する

それぞれを詳しく解説します。

3-1. 受け入れ可能な技能実習生数を把握する

希望すれば、企業は何人でも技能実習生を受け入れることができるわけではありません。技能実習制度を適切に運用するため、法務省よって技能実習生の受け入れ可能人数が以下のように規定されています[4]

表3)技能実習生の「基本人数枠」

実習実施者の常勤の職員の総数受け入れ可能な技能実習生数
301人以上常勤職員総数の20分の1
201人~300人15人
101人~200人10人
51人~100人6人
41人~50人5人
31人~40人4人
30人以下3人

上記の表からもわかるように、技能実習生の受け入れ可能人数は企業の職員の人数などによって決められています。加えて、優良基準適合者になると、通常よりも多くの人数の受け入れが認められます。

3-2. 「団体監理型」か「企業単独型」かを決める

外国人技能実習制度において、技能実習生の受け入れには2つの方法があります。

・団体監理型:事業協同組合や商工会などの監理団体が技能実習生を受け入れ、傘下の企業で技能実習を実施
・企業単独型:実習を実施する日本の企業などが、海外の現地法人や取引先の企業の職員を受け入れて技能実習を実施

国際人材協力機構(JITCO)によると、2018年末時点で、技能実習生を受け入れている企業のうち、団体監理型が97.2%、企業単独型が2.8%となっています[5]

団体監理型で技能実習生を受け入れる場合、組合や監理団体への登録が必要です。受け入れたい技能実習生の数や雇用条件、実習内容などを監理団体に伝えます。

その後、監理団体は現地の送出機関と連絡を取り、条件に合う人材を企業に紹介します。

3-3. 専任の責任者を配置する

技能実習生を受け入れる企業には、以下の責任者の配置が求められています。

・技能実習責任者:技能実習に関わる職員の管理や実習の進捗状況を管理する責任がある。
・技能実習指導員:技能実習生を直接指導する役目がある。計画通りに実習が進んでいるか、技術を習得できているかを確認する。
・生活指導員:技能実習生の生活上の問題の解決を図る。

企業が技能実習生の受け入れを検討する場合、誰にどの責任者の役目を与えるか、事前に検討しておきましょう。

[4] 法務省「新たな外国人技能実習制度について」,https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000204970_1.pdf(閲覧日:2021年12月28日)
[5] JITCO「外国人技能実習制度とは」,https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/(閲覧日:2021年9月27日)

4. 技能実習生を受け入れる際の注意点

技能実習生を受け入れる際には以下の点に注意しましょう。

・優良な監理団体を選ぶ
・技能実習生に割り当てる業務内容に注意する
・雇用契約を締結する
・技能実習生が技能検定に合格できるようにサポートする

それぞれを詳しく解説します。

・優良な監理団体を選ぶ

監理団体型で技能実習生を受け入れる場合、監理団体選びが重要です。悪質な監理団体の中には、現地のブローカーとつながっている場合があります。

優良な監理団体は、外国人の技能実習の適正な実施と技能実習生の保護を目的とする、外国人技能実習機構(OTIT)のホームページで見つけることが可能です。

優良な監理団体の検索
OTIT外国人技能実習機構「監理団体の検索」,https://www.otit.go.jp/search_kanri/(閲覧日:2021年12月28日)

・技能実習生に割り当てる業務内容に注意する

外国人労働者は在留資格で定められた範囲の仕事しかすることができません。企業が外国人労働者に対して、在留資格の範囲外の仕事を割り当てると不法就労助長罪に問われ、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せされます[6]

技能実習生を受け入れる場合も同じです。例えば、ベトナムからの技能実習生にベトナム語の翻訳や通訳をさせることは不法就労助長罪になります。どのような業務を担当させるのか、事前にしっかりと確認しておきましょう。

参考)ライトワークスのeラーニング教材「外国人材採用企業向けシリーズ 入門編」
https://www.lightworks.co.jp/e-learning/9371

・雇用契約を締結する

企業が技能実習生を受け入れる場合、技能実習生と雇用契約を締結します。技能実習生を初めて受け入れる企業の場合、「実習生」という呼び名から、雇用契約を結ぶ必要はないと考えるかもしれません。

しかし、それは間違いです。企業は日本人労働者を雇用する場合と同じく、業務内容、作業時間、賃金、時間外労働、休日などを明確にして、労働基準法を遵守した雇用契約を締結する必要があります。

参考)ライトワークスのeラーニング教材「外国人材採用企業向けシリーズ 基礎編」
https://www.lightworks.co.jp/e-learning/9366

・技能実習生が技能検定に合格できるようにサポートする

1章で解説したように、技能実習生が在留期間を延長して企業で長く働き続けるには、技能検定に合格する必要があります。

外国人技能実習機構によると、技能実習1号を修了したときに受検する、基礎級程度の技能検定の合格率は実技・学科ともに約99%です。

技能実習2号を修了したときに受検する、3 級程度の技能検定の合格率は約92%。技能実習3号の修了時に受験する、2級程度の技能検定の合格率は約70%です[7]

合格率を見ると難易度はさほど高くないと判断できますが、全く対策を講じていない状態では合格は難しいでしょう。

企業は技能実習生が技能検定に合格できるように、学習環境を整えることが期待されています。

[6] e-GOV法令検索「第七十三条の二」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326CO0000000319(閲覧日:2021年12月28日)
[7] 外国人技能実習機構「令和元年度における技能実習の状況について(概要)」,令和3年10月1日,https://www.otit.go.jp/files/user/211001-701.pdf(閲覧日:2022年1月5日)

5. まとめ

今回は技能実習生の在留資格について解説しました。

技能実習生が持つ在留資格は「技能実習」と呼ばれます。技能実習の在留資格は以下の3つに分類されます。

・技能実習1号
・技能実習2号
・技能実習3号

技能実習1号」とは、来日した技能実習生の初年度に付与される在留資格で、在留期間は1年です。

技能実習2号」は、技能実習1号で習得した技術やノウハウをさらに習熟させることを目的とした在留資格で、2年間の在留期間が付与され、技能実習1号と合計すると3年間の在留が可能です。

技能実習3号」は入国4~5年目の技能実習生に付与される在留資格です。

技能実習と特定技能の違いの一つは、制度の目的です。技能実習の目的は技術移転による国際貢献ですが、特定技能は人材不足を補うことが目的です。

技能実習生が特定技能への移行を希望する場合、技能実習2号を良好に修了した時点で、特定技能1号に移行することが可能です。

企業が技能実習生を受け入れる際のポイントは以下の通りです。

・受け入れ可能な技能実習生数を把握する
・団体監理型または企業単独型かを決める
・専任の責任者を配置する

技能実習制度を適切に運用するため、法務省によって技能実習生の受け入れ可能人数が規定されています。企業の職員数が多いほど、多くの技能実習生を受け入れることができます。加えて、優良基準適合者になると、通常よりも多くの人数の受け入れが認められます。

団体監理型で技能実習生を受け入れる場合、組合や監理団体への登録が必要です。受け入れたい技能実習生の数や雇用条件、実習内容などを監理団体に伝えます。

技能実習生を受け入れる企業には、以下のような責任者の配置が求められています。

・技能実習責任者
・技能実習指導員
・生活指導員

企業は技能実習生の受け入れを検討する場合、誰にどの責任者の役目を与えるか、事前に検討しておきましょう。

技能実習生を受け入れる際の注意点は以下の通りです。

・優良な監理団体を選ぶ
・技能実習生に割り当てる業務内容に注意する
・雇用契約を締結する
・技能実習生が技能検定に合格できるようにサポートする

外国人技能実習制度は、技能実習生と受け入れ企業双方にとってメリットのある制度です。

お互いがWin-Winの関係となるため、在留資格の区分や在留期間、企業が行うべき準備など、今回の情報を参考していただけると幸いです。

参考)
法務省「新たな外国人技能実習制度について」,https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000204970_1.pdf(閲覧日:2022年1月5日)
厚生労働省「第4章 技能実習計画の認定等」,https://www.mhlw.go.jp/content/000622693.pdf(閲覧日:2022年1月5日)
OTIT外国人技能実習機構「移行対象職種情報」,https://www.otit.go.jp/ikoutaishou/(閲覧日:2022年1月5日)
OTIT外国人技能実習機構「第3号技能実習移行時における一時帰国要件の柔軟化について」,https://www.otit.go.jp/files/user/190906-6.pdf(閲覧日:2022年1月5日)
e-GOV 法令検索「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=428AC0000000089_20200330_429AC0000000014(閲覧日:2021年12月17日)
JITCO「外国人技能実習制度とは」,https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/(閲覧日:2021年9月27日)
OTIT外国人技能実習機構「監理団体の検索」,https://www.otit.go.jp/search_kanri/(閲覧日:2022年1月5日)
e-GOV法令検索「第七十三条の二」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326CO0000000319(閲覧日:2021年12月28日)
厚生労働省「技能実習計画の認定等」,『技能実習制度 運用要領』,P53,https://www.mhlw.go.jp/content/000622693.pdf(閲覧日:2022年1月25日)
OTIT外国人技能実習機構「移行対象職種情報」,https://www.otit.go.jp/ikoutaishou/(閲覧日:2022年1月25日)
出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」,P8-9,https://www.moj.go.jp/content/001326468.pdf(閲覧日:2022年1月25日)

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