この記事を読むと、次のことが分かります。
・技能実習生の受入れ人数枠について
・団体監理型の技能実習生の受入れ人数枠
・企業単独型の技能実習生の受入れ人数枠
・「介護」職種における固有要件と技能実習生の受入れ人数枠
・「建設」職種における固有要件と技能実習生の受入れ人数枠
・優良な実習実施者に認定されることのメリット
実務上、個別具体のトピックで悩むことが多いと思いますが、実は一つの課題には多くの周辺事項が存在しています。周辺事項も含めてまとまった情報を理解する、あるいは参照する方が、結果的な業務効率はアップします。
本ブログでは、毎日多数の問い合わせに対応している実績を基に、企業の担当者が押さえておくとよい情報を、分かりやすくかつ網羅的にお届けします。
ぜひ参考にしてください。
受入れることができる技能実習生の人数は、企業の常勤職員総数やそれまでの技能実習の実績など、さまざまな条件によって変わります。もし、所定を超える人数が書かれた技能実習計画を提出した場合、認定は下りません。
本稿では、技能実習生を受入れるに当たって押さえておきたい、技能実習生の受入れ人数枠について解説します。「介護」職種や「建設」職種といった、他の職種とは違う受入れ人数枠について、また優良認定された場合の人数枠の変化についても解説するので、ぜひご覧ください。
1. 技能実習生の受入れ人数枠を知るためのポイント
技能実習制度において、受入れ人数枠が決まっている理由を解説します。
1-1. 人数枠が定められている背景
技能実習を行うためには、技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構(OTIT)に提出して認定される必要があります。この技能実習計画の認定基準の一つとして、「技能実習生の受入れ人数の上限を超えないこと[1]」があります。
人数枠の上限を超えた技能実習生の受入れを記載した技能実習計画は、外国人技能実習機構の認定を受けられないので、注意してください。
技能実習生の受入れ人数が認定基準の一つとして定められているのは、技能実習の目的である「開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転[2]」が確実に行われるように環境を整え、技能実習生の保護を図るためです。
適正な技能実習を実施するには、受入れる技能実習生の数を制限する必要があります。これが、技能実習生の人数枠が決まっている背景です。
1-2. 基本人数枠と常勤職員の数え方
技能実習生を受入れられる人数を、「基本人数枠」といいます。基本人数枠は、常勤職員の総数に応じて定められています。基準となる実習実施者の常勤職員の総数については、本社、支社、事業所を含めた企業全体(法人全体)の常勤の職員数を基に算出し、事業所ごとには算出しません。
なお、常勤職員数には、技能実習生と外国にある事業所に所属する常勤の職員は含まれませんが、「介護」も含めて原則として1号特定技能外国人は含まれます。ただし、「建設」のみ1号特定技能外国人は常勤職員数に含まれません。(建設分野の運用要領11頁)
そして、「常勤の職員」(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則[技能実習法施行規則]第16条)とは、技能実習の受入れ企業である実習実施者で継続的に雇用されている職員をいいます。
いわゆる正社員および正社員と同様の就業時間で継続的に勤務している日給月給者が念頭に置かれており、例えば、下記のいずれかに該当する場合は、常勤の職員として差し支えないとされています[3]。
(1)所定労働日数が週5日以上および年間217日以上であって、かつ、週所定労働時間が30時間以上であること
(2)雇用保険の被保険者であって、かつ、週所定労働時間が30時間以上であること
1-3. 技能実習生の受入れ方式「団体監理型」と「企業単独型」
技能実習には、「団体監理型」と「企業単独型」という2つの受入れ方式があります。
団体監理型は、事業協同組合や商工会などの非営利団体が「監理団体」として技能実習生を受入れ、傘下の企業や法人で技能実習を行う方式です。
一方、企業単独型は、日本の企業や法人が海外の現地法人や合弁企業、業務上の提携を行っているなど密接な関係を有する企業の職員を受入れて技能実習を実施する方式です。
2021年末時点、技能実習生の受入れは団体監理型が98.6%、企業単独型が1.4%となっています。こちらの数字から分かる通り、現在では団体監理型で技能実習を行う企業・法人がほとんどです。
このため、ほとんどの企業が、「団体監理型の場合の基本人数枠」を参照すればよいことになります。もちろん、この記事では「企業単独型の場合の基本人数枠」についても以下で解説します。
2. 技能実習1号・技能実習2号の受入れ人数枠
技能実習生の受入れ人数枠は、技能実習生の在留資格によっても変わります。ここでは、在留資格「技能実習1号」と「技能実習2号」の受入れ人数枠について解説します。
2-1. 技能実習1号・技能実習2号とは?
技能実習1号、技能実習2号とは、技能実習の段階に沿って技能実習生に付与される在留資格です。
技能実習1号は、1号(団体監理型または企業単独型)技能実習を行う外国人が持つ在留資格(来日1年目)です。
ここから次のステップである2号(団体監理型または企業単独型)技能実習に移るためには、技能実習生向けの技能検定の「基礎級(実技と学科試験)」、またはこれに相当する技能実習評価試験を受検し、合格しなければなりません。
2号(団体監理型または企業単独型)技能実習は、前述の技能検定などに合格し、在留資格を技能実習2号に変更した技能実習生が行う技能実習です。来日2~3年目に当たり、技能のさらなる習熟を目的としています。
2-2. 団体監理型の受入れ人数枠
先に解説した通り、技能実習には団体監理型と企業単独型がありますが、2021年末では98.6%が団体監理型で技能実習を行っています。そこで、まずは団体監理型の受入れ人数枠についてご説明します。
団体監理型の技能実習では、下表の通り、受入れ可能な技能実習生の人数が定められています。
【団体監理型 受入れ可能人数枠】
技能実習1号(基本人数枠) | 技能実習2号 | |
常勤職員の人数 | 受入れ可能人数 | 受入れ可能人数 |
301人~ | 常勤職員の1/20 | 基本人数枠の2倍 |
201~300人 | 15人 | |
101~200人 | 10人 | |
51~100人 | 6人 | |
41~50人 | 5人 | |
31~40人 | 4人 | |
~30人 | 3人 |
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領」,2023年4月,p120-121を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.otit.go.jp/files/user/230517-101.pdf(閲覧日:2023年4月20日)
例えば、常勤職員が30人だった場合、1~4年目までに受入れることのできる技能実習生の人数構成は以下のようなイメージです。
【団体監理型 受入れ可能人数のイメージ】
JITCO「外国人技能実習制度とは」を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/(閲覧日:2023年4月20日)
このように、常勤職員が30人の事業所の場合、毎年技能実習1号を持つ実習生を3人、技能実習2号を持つ実習生を6人、計9人を上限として、人数を調整する必要があります。1年目から3人ずつ雇用した場合、3年目に上限に達し、その後は常勤職員数が増えない限り、上限いっぱいの状態が維持されます。
2-3. 企業単独型の受入れ人数枠
次に、企業単独型の場合を見てみましょう。企業単独型の技能実習での受入れ人数枠は、技能実習1号が常勤職員総数の1/20と決まっています。技能実習2号の場合は、常勤職員総数の1/10です。
【企業単独型 受入れ可能人数枠】
技能実習1号 | 技能実習2号 |
常勤職員総数の1/20 | 常勤職員総数の1/10 |
※出入国在留管理庁長官および厚生労働大臣により継続的かつ安定的に実習を行わせる体制を有すると認められた企業の場合は、団体監理型の人数枠と同じ
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領」,2023年4月,p120-121を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.otit.go.jp/files/user/230517-101.pdf(閲覧日:2023年4月20日)
例えば、常勤職員が千人の実習実施者の場合、1号技能実習生は50人まで、2号技能実習生は100人までとなります。
このように、受入れられる技能実習生の数は、団体監理型か企業単独型か、事業所の常勤職員は何人かなど、さまざまな条件で決められていますが、団体監理型・企業単独型ともに、超えてはならない人数も定められていますので、注意しましょう。
具体的には、1号技能実習生は常勤職員の総数、2号技能実習生は常勤職員の総数の2倍を超えてはなりません。
この章の最後にYes/Noチャートを用意していますので、受入れ可能人数の判断に利用してください。
2-4. 「介護」の固有要件と受入れ人数枠
介護職種での受入れ人数枠は、他の職種とは違う目線から定められています。
利用者の安全を第一とすべく、事業所単位で介護などを主な業務として行なう常勤介護職員の総数を基準として決められている点に注意が必要です(技能実習法施行規則第 16 条で定めている法人単位での人数枠は、介護職種には適用されません)。
また、介護職種でも企業単独型か団体監理型で受入れ可能な人数枠が違います。団体監理型の受入れ人数を表にしたので、まずはこちらをご覧ください。
【団体監理型 介護職種における技能実習生の人数枠】
事業所の常勤介護職員の総数 | 技能実習1号 | 全体(技能実習1・2号) |
1人 | 1人 | 1人 |
2人 | 1人 | 2人 |
3~10人 | 1人 | 3人 |
11~20人 | 2人 | 6人 |
21~30人 | 3人 | 9人 |
31~40人 | 4人 | 12人 |
41~50人 | 5人 | 15人 |
51~71人 | 6人 | 18人 |
72~100人 | 6人 | 18人 |
101~119人 | 10人 | 30人 |
120~200人 | 10人 | 30人 |
201~300人 | 15人 | 45人 |
301人~ | 常勤介護職員の1/20 | 常勤介護職員の3/20 |
厚生労働省「技能実習「介護」における固有要件について」,p8を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000995757.pdf(閲覧日:2023年4月17日)
一方、企業単独型で行う介護職種の技能実習の場合、実習生の人数枠は、技能実習1号なら常勤介護職員の1/20、技能実習1号と2号を合わせた全体では常勤介護職員の3/20と定められています。
ただし、法務大臣および厚生労働大臣により継続的かつ安定的に実習を行わせる体制を有すると認められた企業の場合は、団体監理型の人数枠と同じになります。
また、介護職種では、日本語でのコミュニケーション能力が重要視されるため、追加要件として一定の日本語能力が求められます。具体的には、以下の通りです。
【介護職種における固有要件】[4]
技能実習1号:「日本語能力試験(JLPT)」のN4に合格している者その他これと同等以上の能力を有すると認められる者※技能実習2号:「日本語能力試験」のN3に合格している者その他これと同等以上の能力を有すると認められる者※
※日本語能力試験との対応関係が明確にされている日本語能力を評価する試験(例「J.TEST実用日本語検定」「日本語NAT‐TEST」)における日本語能力試験N4、N3に相当するものや「介護のための日本語テスト」に合格している者
利用者と適切なコミュニケーションを図るために、日本語能力は欠かせません。他の職種とは異なる点ですので、注意しましょう。
2-5. 「建設」の固有要件と受入れ人数枠
建設職種でも、固有の基準と受入れ人数枠が定められています。建設職種は、技能実習生の失踪者が分野別で最も多い職種であり、さまざまな注意が求められます。
建設職種で技能実習生を採用する際に知っておきたい課題に、安全ルールの徹底や技術・知識の習得があります。これらの課題には実効性のある対策が急務であることを受けて、2020年から建設キャリアアップシステムへの登録などの義務化、2022年からは固有の受入れ人数枠の規定が設けられました。
建設職種で技能実習生を受入れるには、以下の基準3点を全て満たす必要があります。
【技能実習を行わせる体制の基準】[5]
・ 申請者が建設業法第3条の許可を受けていること
・ 申請者が建設キャリアアップシステムに登録していること
・ 技能実習生を建設キャリアアップシステムに登録すること
1つずつ解説します。
・ 申請者が建設業法第3条の許可を受けていること
建設業法第3条は、建設業の許可を規定している条文です。建設業を営もうとする場合、軽微な建設・工事を請け負う場合以外、建設業の許可を受けなければなりません。
申請者が2つ以上の都道府県の区域に営業所を設ける場合は、国土交通大臣の許可が必要です。1つの都道府県の区域内で営業所を設ける場合は、都道府県知事の許可が必要となっています。
・ 申請者が建設キャリアアップシステムに登録していること
建設キャリアアップシステムとは、技能者一人一人の就業実績や資格を登録することで、技能の公正な評価や工事の品質向上を目指すシステムです。略して「CCUS」と呼称されます。申請者、つまり技能実習生の受入れ企業は、事業者としてCCUSに登録することが求められます。
・ 技能実習生を建設キャリアアップシステムに登録すること
CCUSに「技能者」として技能実習生を登録しなければ、建設職種で技能実習生を受入れることはできません。登録することで、技能実習生の技能の習得を可視化することができるようになっています。
一方、技能実習生の受入れ可能人数枠に関しては、申請者が技能実習計画の職種の欄において日本標準産業分類D-建設業を選択している場合に限り、通常の規則での上限に加え「技能実習生の数が常勤職員の総数を超えないこと」が定められています(国土交通省告示第269号第3条)。
なお、常勤の職員には、外国にある事業所に所属する常勤の職員、技能実習生、外国人建設就労者および1号特定技能外国人を含みません。
【団体監理型 建設職種における技能実習生の人数枠】
申請者の常勤の職員の総数 | 技能実習生の人数 |
301人~ | 申請者の常勤の職員の総数の1/20 |
201~300人 | 15人 |
101~200人 | 10人 |
51~100人 | 6人 |
41~50人 | 5人 |
31~40人 | 4人 |
~30人 | 3人 |
出入国在留管理庁・厚生労働省・国土交通省「特定の職種及び作業に係る技能実習制度運用要領 -建設関係職種等の基準について-」,2020年12月24日,p9を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001382133.pdf(閲覧日:2023年4月17日)
建設職種も介護職種以外の他職種と同じように、団体監理型の場合、1号技能実習生は上の表の人数、2号技能実習生はその2倍の人数まで受入れることができます。
企業単独型の場合は、1号技能実習生は常勤職員の1/20、2号技能実習生は常勤職員の1/10です。ただし、出入国在留管理庁長官および厚生労働大臣により継続的かつ安定的に実習を行わせる体制を有すると認められた企業の場合は、企業単独型であっても団体監理型の人数枠と同じになります。
なお、先に解説した通り、技能実習生の総数が常勤の職員の総数を超えることはできませんので、注意してください。
参考)
建設キャリアアップシステム|事業者・技能者登録はこちら
https://www.ccus.jp/p/application
こちらの記事に、建設分野が抱える外国人材の課題を解説しています。ぜひご覧ください。
2-6. 受入れ可能人数のYes/Noチャート
受入れ可能な技能実習生の人数が分かりやすいように、これまでご説明した内容をチャートにしました。こちらをご覧ください。
【介護職種以外】
【介護職種】
3. 優良認定されると人数枠が増える!さまざまなメリット
技能実習制度において、「優良」と認定されると、受入れ人数枠の拡大などさまざまな恩恵があります。この章では、優良と認定された場合にあるさまざまなメリットを解説します。
3-1. 優良認定とは?技能実習3号の受入れも可能に
優良認定とは、受入れ企業の場合は「優良な実習実施者」、監理団体の場合なら「一般監理団体」として外国人技能実習機構に認められることです。
受入れ企業が優良と認定されるには、技能実習の大目的である技能の習得に係る能力があるか、技能実習生に適切な生活環境を提供しているかなど、さまざまな項目を満たす必要があります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
優良な実習実施者、または一般監理団体として認定されると、「技能実習3号」の受入れが可能になります。
技能実習3号は、技能実習4~5年目に該当する技能実習生に付与される在留資格です。3号技能実習生は、技能のさらなる熟達を目的として実習を行っています。現場の戦力としても期待できますが、技能実習の本懐を忘れずに、技能の向上に力を貸すようにしましょう。
3-2. 優良認定されている場合の人数枠
優良と認定された場合、受入れることができる技能実習生の人数枠も変わります。
団体監理型で監理団体・実習実施者ともに優良と認定されている場合、2章で解説した基本人数枠を基準として、技能実習1号なら基本人数枠の2倍、技能実習2号なら基本人数枠の4倍、技能実習3号なら基本人数枠の6倍の人数、技能実習生を受入れることができます。
以下の表をご覧ください。
【団体監理型 優良基準適合者の場合】
技能実習1号(基本人数枠) | 技能実習1号 | 技能実習2号 | 技能実習3号 | |
常勤職員の人数 | 受入れ可能人数 | 優良基準適合者の受入れ可能人数 | ||
301人~ | 常勤職員の1/20 | 基本人数枠の 2倍 | 基本人数枠の 4倍 | 基本人数枠の 6倍 |
201~300人 | 15人 | |||
101~200人 | 10人 | |||
51~100人 | 6人 | |||
41~50人 | 5人 | |||
31~40人 | 4人 | |||
~30人 | 3人 |
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領」,2023年4月,p120-121を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.otit.go.jp/files/user/230517-101.pdf(閲覧日:2023年4月20日)
また、企業単独型についても、優良認定されると受入れ人数枠が増えます。以下の表をご覧ください。
【企業単独型 優良基準適合者の場合】
技能実習1号 | 技能実習1号 | 技能実習2号 | 技能実習3号 |
受入れ可能人数(優良認定されていない場合) | 優良基準適合者の受入れ可能人数 | ||
常勤職員総数の1/20 | 常勤職員総数の1/10 | 常勤職員総数の1/5 | 常勤職員総数の3/10 |
※出入国在留管理庁長官および厚生労働大臣により継続的かつ安定的に実習を行わせる体制を有すると認められた企業の場合は、団体監理型の人数枠と同じ
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領」,2023年4月,p120-121を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.otit.go.jp/files/user/230517-101.pdf(閲覧日:2023年4月20日)
このように、優良認定されると受入れ可能人数が大幅に多くなります。ただし、技能実習1号・技能実習2号を持つ実習生と同じように、3号技能実習生にも超えてはいけない人数が定められており、常勤職員の総数の3倍を超えることはできないので注意しましょう。
例えば、団体監理型で技能実習を行っている、常勤職員が30人の実習実施者が優良認定されると、1~6年目までに受入れることのできる技能実習生の人数構成は以下のようなイメージです。
【団体監理型 優良認定されたときの受入れ可能人数のイメージ】
JITCO「外国人技能実習制度とは」を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/(閲覧日:2023年4月20日)
このイメージのように、優良認定されると受入れられる技能実習生の人数が大幅に増えます。
職種ごとに見ると、優良認定されている場合、介護職種は人数枠が増え、建設職種は技能実習生受入れ人数の規定が免除されます。
3-3. 異なる形態の技能実習を同時に行う場合の人数枠
企業が、団体監理型と企業単独型による受入れを同時に行う場合や、 一般監理事業の許可を有する監理団体(一般監理団体)と特定監理事業の許可を有する監理団体(特定監理団体)の複数の監理団体から技能実習生を受入れる場合も考えられます。
ここでは、優良認定の基準に適合する実習実施者が、特定監理団体から団体監理型で1号技能実習生を受入れており、その後、一般監理団体の実習監理を受けるとして技能実習計画の認定申請をした場合の人数枠についてご説明します。
例えば、常勤職員の総数が30人の実習実施者については、基本人数枠は3人であり、優良な実習実施者と認定され、一般監理団体から受入れる場合の人数枠は6人となります。
当該実習実施者が、既に特定監理団体から実習監理を受けるとして団体監理型で1号技能実習生を3人受入れた後、一般監理団体から実習監理を受けるとして団体監理型による技能実習計画の認定申請をしたとしましょう。
当該実習実施者が優良認定されれば、団体監理型における1号技能実習生の受入れ人数枠は基本人数枠の2倍(6人)となるため、既に受入れている3人に加えて、さらに3人の1号技能実習生の受入れが可能となります。
4. まとめ
技能実習制度では、適正な技能実習の実施のため、技能実習生の受入れ人数の上限が定められています。これを基本人数枠といい、常勤職員の総数によって変動します。常勤職員の総数は、事業所ごとではなく、本社、支社、事業所を含めた企業全体(法人全体)の常勤の職員数を基に算出されます。
受入れ人数枠の考え方は、技能実習生の受入れ方式である団体監理型と企業単独型で、若干異なります。
団体監理型の受入れ人数枠は、以下の通りです。
【団体監理型 受入れ可能人数枠】
技能実習1号(基本人数枠) | 技能実習2号 | |
常勤職員の人数 | 受入れ可能人数 | 受入れ可能人数 |
301人~ | 常勤職員の1/20 | 基本人数枠の2倍 |
201~300人 | 15人 | |
101~200人 | 10人 | |
51~100人 | 6人 | |
41~50人 | 5人 | |
31~40人 | 4人 | |
~30人 | 3人 |
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領」,2023年4月,p120-121 を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.otit.go.jp/files/user/230517-101.pdf(閲覧日:2023年4月20日)
年ごとに上の表に沿った人数を受入れていくこととなります。
企業単独型の受入れ人数枠は、以下の通りです。
【企業単独型 受入れ可能人数枠】
技能実習1号 | 技能実習2号 |
常勤職員総数の1/20 | 常勤職員総数の1/10 |
※出入国在留管理庁長官および厚生労働大臣により継続的かつ安定的に実習を行わせる体制を有すると認められた企業の場合は、団体監理型の人数枠と同じ
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領」,2023年4月,p120-121を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.otit.go.jp/files/user/230517-101.pdf(閲覧日:2023年4月20日)
なお、「介護」と「建設」の職種では、業界特有の事情から、特有の人数枠や規定が設けられています。
介護職種において、団体監理型で受入れる場合の人数枠は以下の通りです。
【団体監理型 介護職種における技能実習生の人数枠】
事業所の常勤介護職員の総数 | 技能実習1号 | 全体(技能実習1・2号) |
1人 | 1人 | 1人 |
2人 | 1人 | 2人 |
3~10人 | 1人 | 3人 |
11~20人 | 2人 | 6人 |
21~30人 | 3人 | 9人 |
31~40人 | 4人 | 12人 |
41~50人 | 5人 | 15人 |
51~71人 | 6人 | 18人 |
72~100人 | 6人 | 18人 |
101~119人 | 10人 | 30人 |
120~200人 | 10人 | 30人 |
201~300人 | 15人 | 45人 |
301人~ | 常勤介護職員の1/20 | 常勤介護職員の3/20 |
厚生労働省「技能実習「介護」における固有要件について」,p8を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000995757.pdf(閲覧日:2023年4月17日)
企業単独型の場合、技能実習生の人数は技能実習1号なら常勤介護職員の1/20、技能実習1号と2号を合わせた全体では常勤介護職員の3/20と定められています。
ただし、法務大臣および厚生労働大臣により継続的かつ安定的に実習を行わせる体制を有すると認められた企業の場合は、団体監理型の人数枠と同じになります。
建設職種においては、安全ルールの徹底や技術・知識の習得という重要課題を背景に、次のような独自の受入れ基準が設けられています。
・ 申請者が建設業法第3条の許可を受けていること
・ 申請者が建設キャリアアップシステムに登録していること
・ 技能実習生を建設キャリアアップシステムに登録すること
人数枠については、申請者が技能実習計画の職種の欄において日本標準産業分類D-建設業を選択している場合に限り、通常の規則での上限に加え「技能実習生の数が常勤職員の総数を超えないこと」が定められています。人数枠の詳細は、下表をご参照ください。
【団体監理型 建設職種における技能実習生の人数枠】
申請者の常勤の職員の総数 | 技能実習生の人数 |
301人~ | 申請者の常勤の職員の総数の1/20 |
201~300人 | 15人 |
101~200人 | 10人 |
51~100人 | 6人 |
41~50人 | 5人 |
31~40人 | 4人 |
~30人 | 3人 |
団体監理型の場合、1号技能実習生は上の表の人数、2号技能実習生はその2倍の人数まで受入れることができます。
企業単独型の場合は、1号技能実習生は常勤職員の1/20、2号技能実習生は常勤職員の1/10です。ただし、出入国在留管理庁長官および厚生労働大臣により継続的かつ安定的に実習を行わせる体制を有すると認められた企業の場合は、団体監理型の人数枠と同じになります。
なお、技能実習生の総数が常勤の職員の総数を超えることはできません。常勤の職員には、外国にある事業所に所属する常勤の職員、技能実習生、外国人建設就労者および1号特定技能外国人は含まれない点に注意しましょう。
受入れ人数のシミュレーション用に、YES/NOチャートをご紹介しました。ぜひ2-6をご参照ください。
なお、技能実習制度では、受入れ企業あるいは監理団体を「優良」と認定する仕組みがあり、優良認定を受けると受入れ人数枠が拡大されるメリットがあります。
団体監理型で監理団体・実習実施者ともに優良認定を受けている場合、受入れ人数枠は以下の通りです。
【団体監理型 優良基準適合者の場合】
技能実習1号(基本人数枠) | 技能実習1号 | 技能実習2号 | 技能実習3号 | |
常勤職員の人数 | 受入れ可能人数 | 優良基準適合者の受入れ可能人数 | ||
301人~ | 常勤職員の1/20 | 基本人数枠の 2倍 | 基本人数枠の 4倍 | 基本人数枠の 6倍 |
201~300人 | 15人 | |||
101~200人 | 10人 | |||
51~100人 | 6人 | |||
41~50人 | 5人 | |||
31~40人 | 4人 | |||
~30人 | 3人 |
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領」,2023年4月,p120-121を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.otit.go.jp/files/user/230517-101.pdf(閲覧日:2023年4月20日)
企業単独型で優良認定を受けた場合の受入れ人数枠は、以下の通りです。
【企業単独型 優良基準適合者の場合】
技能実習1号 | 技能実習1号 | 技能実習2号 | 技能実習3号 |
受入れ可能人数(優良認定されていない場合) | 優良基準適合者の受入れ可能人数 | ||
常勤職員総数の1/20 | 常勤職員総数の1/10 | 常勤職員総数の1/5 | 常勤職員総数の3/10 |
※出入国在留管理庁長官および厚生労働大臣により継続的かつ安定的に実習を行わせる体制を有すると認められた企業の場合は、団体監理型の人数枠と同じ
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領」,2023年4月,p120-121を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.otit.go.jp/files/user/230517-101.pdf(閲覧日:2023年4月20日)
企業が、団体監理型と企業単独型による受入れを同時に行う場合や、一般監理団体と特定監理団体、複数の監理団体から技能実習生を受入れる場合も考えられます。
例えば、優良認定の基準に適合する実習実施者が、既に特定監理団体による団体監理型で1号技能実習生を受入れた後、一般監理団体による団体監理型でも受入れるために技能実習計画の認定申請をしたとしましょう。
この場合、当該実習実施者が優良認定されれば、基本人数枠の2倍まで1号技能実習生を追加で受入れることが可能となります。
自社に適用可能な人数枠を把握した上で、適正な技能実習計画を作成しましょう。
[1] 出入国在留管理庁・厚生労働省「外国人技能実習制度について」,2023年7月24日,p11,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005177.pdf(閲覧日:2023年4月14日)
[2] 出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領~ 関係者の皆さまへ ~」,2023年4月,p21,https://www.otit.go.jp/files/user/230517-101.pdf(閲覧日:2023年4月14日)
[3] 出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領~ 関係者の皆さまへ ~」,2023年4月,p122,https://www.otit.go.jp/files/user/230517-101.pdf(閲覧日:2023年4月14日)
[4] 厚生労働省「技能実習「介護」における固有要件について」,p4,https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000995757.pdf(閲覧日:2023年4月17日)
[5] 国土交通省「建設分野における技能実習制度の背景・概要【技能実習制度(建設分野)】」,https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/tochi_fudousan_kensetsugyo_tk3_000001_00012.html(閲覧日:2023年4月18日)
参考)
出入国在留管理庁・厚生労働省「外国人技能実習制度について」,2023年7月24日,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005177.pdf(閲覧日:2023年4月14日)
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領」,2023年4月,https://www.otit.go.jp/files/user/230517-101.pdf(閲覧日:2023年4月17日)
出入国在留管理庁・厚生労働省「特定の職種及び作業に係る技能実習制度運用要領 -介護職種の基準について-」,2022年4月1日,https://www.mhlw.go.jp/content/000784763.pdf(閲覧日:2023年4月17日)
出入国在留管理庁・厚生労働省・・国土交通省「特定の職種及び作業に係る技能実習制度運用要領 -建設関係職種等の基準について-」,2020年12月24日,https://www.mhlw.go.jp/content/000784758.pdf(閲覧日:2023年4月17日)
厚生労働省「技能実習生の技能検定に関する注意点」,https://www.mhlw.go.jp/content/001078400.pdf(閲覧日:2023年4月17日)
厚生労働省「技能実習「介護」における固有要件について」,https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000995757.pdf(閲覧日:2023年4月17日)
国土交通省「建設分野における技能実習制度の背景・概要【技能実習制度(建設分野)】」,https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/tochi_fudousan_kensetsugyo_tk3_000001_00012.html(閲覧日:2023年4月18日)
国土交通省「建設分野の技能実習生に受入人数枠 建設キャリアアップシステム登録も義務化へ~失踪抑制に向け、技能実習等の基準を強化~」,https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo14_hh_000846.html(閲覧日:2023念4月18日)
国土交通省「建設業許可(建設業法第3条)」,https://www.mlit.go.jp/onestop/137/images/137-001.pdf(閲覧日:2023年4月18日)
建設キャリアアップシステム「CCUSについて」,https://www.ccus.jp/p/about(閲覧日:2023年4月18日)
e-Gov「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=405AC0000000076(閲覧日:2023年4月18日)
e-Gov「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=428AC0000000089_20221001_504AC0000000012(閲覧日:2023年4月20日)
JITCO「外国人技能実習制度とは」,https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/(閲覧日:2023年4月20日)
出入国在留管理庁「技能実習生の失踪者数(平成30年~、職種別)」,https://www.moj.go.jp/isa/content/001362002.pdf(閲覧日:2023年4月20日)