この記事を読むと、次のことが分かります。
・技能実習1号と
・技能実習2号、3号との違い
・技能実習1号の受入れ要件
・技能実習1号受入れの流れと企業の準備
・実習環境を工夫している企業の事例
・技能実習生の日本語対策について
技能実習1号とは、技能実習を目的とし来日する外国人が、実習の1年目に取得する在留資格です。入国後1年を超えない期間で、技能実習計画に基づいて技能などを習得するための業務に従事することが認められています。
技能実習1号の実習期間終了後、引き続き実習を行いたいときは技能実習2号へ移行します。
本稿では、技能実習1号の基礎知識や受入れるための要件・手続きについて解説し、実習環境を工夫している企業の事例を紹介します。技能実習生の受入れを検討されている企業の方はご一読ください。
目次
1. 技能実習1号は技能実習のスタート地点
この章では、在留資格「技能実習1号」の概要を解説します。
1-1. 在留資格「技能実習1号」とは
技能実習制度は、外国人の技能実習生が母国では学ぶことが困難な技能などを日本の企業で働きながら習得し、帰国後母国の経済発展に役立てることを目的としています。
技能実習1号は、技能実習制度で来日する外国人が入国の初年に取得する在留資格です。技能実習の在留資格は、技能実習1号から3号まであります。1号は1年目なので、技能実習のスタート地点といえます。
1-2. 技能実習1号の在留期間は?
技能実習1号の在留期間は1年または6カ月、法務大臣が指定する1年を超えない期間とされています。
技能実習1号の実習期間を終了した後も、在留資格を技能実習2号に移行することで実習期間の延長が可能です。なお、技能実習生として在留できる期間は最長5年です。
1-3. 技能実習1号の対象職種
技能実習1号では、技能実習生が母国で習得が困難である技能であれば、実習の対象となる職種に制限はありません。ただし、同じ作業の反復のみで習得でき、レベルアップが期待できない業務に従事することは認められていません。
一方、技能実習2号では実習の対象職種が決められています。ですから、1年以上日本で技能実習を行うことを想定している技能実習生は、初年次から技能実習2号に移行可能な職種に就く必要があります。
移行可能な職種については、7章で詳しく説明します。
1-4. 技能実習1号は何人まで受入れられる?
技能実習生の受入れ可能な人数は、実習実施者(受入れ企業)の規模と、技能実習生の在留資格の種類、受入れ方式によって上限が決められています(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則[技能実習法施行規則]第16条)。
実習実施者とは、技能実習生を受入れて実習を行う企業などのことです。また、受入れ方式とは、技能実習生の受入れ方のことで、「企業単独型」と「団体監理型」があります。詳しくは3章で解説します。
人数の上限に関しては基本人数枠が規定されていますが、介護、建設分野といった特定の職種・作業の技能実習の場合は、別途人数枠が定められています(技能実習法施行規則第16条第3項)。
特定の職種・作業の技能実習生の人数枠はこちらをご参照ください。
基本人数枠を下表にまとめました。
表)技能実習生の基本人数枠
実習実施者の常勤職員総数 | 技能実習生人数 |
301人以上 | 常勤職員総数の20分の1 |
201人以上300人以下 | 15人 |
101人以上200人以下 | 10人 |
51人以上100人以下 | 6人 |
41人以上50人以下 | 5人 |
31人以上40人以下 | 4人 |
30人以下 | 3人 |
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領 ~ 関係者の皆さまへ ~」,2023年4月公表, p120を基にライトワークス にて作成,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005219.pdf(閲覧日:2023年4月28日)
受入れ方式別の人数枠は以下の通りです。
図)技能実習1号の人数枠
団体監理型 | 基本人数枠 |
企業単独型A | 基本人数枠 |
企業単独型B | 常勤職員総数の20分の1 |
※企業単独型A:出入国在留管理庁長官および厚生労働大臣により企業単独型技能実習を継続的かつ安定的に行わせることができる体制を有すると認められたもの
企業単独型B:A以外のもの
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領 ~ 関係者の皆さまへ ~」,2023年4月公表,p120-121を基にライトワークス にて作成,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005219.pdf(閲覧日:2023年4月28日)
さらに、実習実施者が「優良な実習実施者」と認定されている場合、認定されていない場合に比べて人数枠が拡大します。「優良な実習実施者」とは、主務省令で定める基準に適合し「技能を習得させる能力などが高い」と認定された実習実施者のことです。認定を受けるには一定の要件があります。
優良な実習実施者について詳しくはこちら
優良な実習実施者の場合の人数枠は以下の通りです。
図)優良認定を受けた実習実施者における技能実習1号の人数枠
団体監理型 | 基本人数枠の2倍 |
企業単独型A | 基本人数枠の2倍 |
企業単独型B | 常勤職員総数の10分の1 |
※企業単独型A:出入国在留管理庁長官および厚生労働大臣により企業単独型技能実習を継続的かつ安定的に行わせることができる体制を有すると認められたもの
企業単独型B:A以外のもの
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領 ~ 関係者の皆さまへ ~」,2023年4月公表,p120-121を基にライトワークス にて作成,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005219.pdf(閲覧日:2023年4月28日)
ただし、いずれの場合も、常勤職員の総数を超えてはいけないことになっています。
2. 技能実習1号、2号や3号とどう違う?
技能実習の在留資格には、「技能実習1号」「技能実習2号」「技能実習3号」と大きく3つの区分があります。実習1年目の在留資格が技能実習1号、2年目から3年目が技能実習2号、4年目から5年目が技能実習3号です。
それぞれに活動内容、在留期間、対象職種が定められており、違いを下表にまとめました。
表)技能実習1号、2号、3号の違い
活動内容 | 在留期間 | 対象職種 | |
技能実習1号 | 技能などを習得するための活動 | 1年以内(実習1年目) | 制限なし |
技能実習2号 | 技能などに習熟するための活動 | 2年以内(実習2〜3年目) | 対象職種のみ可能 |
技能実習3号 | 技能などに熟達するための活動 | 2年以内(実習4〜5年目) | 対象職種のみ可能 |
公益財団法人国際人材協力機構「外国人技能実習制度とは」を基にライトワークスにて作成,https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/(閲覧日:2023年4月28日)
技能実習1年目が終了した後も実習を続けたいときは、技能実習2号に移行します。技能実習3年目が終了した後、さらに実習を続けたいときは技能実習3号に移行します。
ただし、移行するためには要件を満たす必要があります。詳しくは、7章で解説します。
3. 技能実習1号の種類は2種類
ここでは、技能実習1号の種類について解説します。
技能実習生の受入れ方式には、「企業単独型」と「団体監理型」の2種類があります。国際人材協力機構(JITCO)によると、2021年末では、企業単独型が1.4%、団体監理型が98.6%となっています[1]。
技能実習1号においては、企業単独型は「技能実習1号イ」、団体監理型は「技能実習1号ロ」に区分されます。
3-1. 企業単独型の技能実習1号イ
企業単独型の受入れ方式では、日本の企業が自社の海外事業所や海外の取引先から外国人従業員を直接受入れて実習を行います。
3-2. 団体監理型の技能実習1号ロ
団体監理型の受入れ方式では、監理団体(商工会などの非営利団体)が技能実習生を受入れ、その監理団体と契約している実習実施者が実習を行います。
技能実習生の受入れについては、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご参照ください。
4. 技能実習1号の受入れ要件
ここでは技能実習1号の受入れ要件について解説します。
技能実習1号の在留資格を取得するには、申請者本人に係る要件を満たさなければなりません。また実習実施者には、技能実習生を受入れるに当たり義務付けられていることがあります。
4-1. 申請者本人に係る要件
申請者本人とは、技能実習1号の在留資格の交付申請をする技能実習候補者のことです。申請者本人に係る要件は、企業単独型と団体監理型に共通のものと、それぞれに対するものがあります。
・企業単独型と団体監理型共通の要件
(1)十八歳以上であること。
(2)制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとする者であること。
(3)本国に帰国後本邦において修得等をした技能等を要する業務に従事することが予定されていること。
(4)同じ技能実習の段階(第一号技能実習、第二号技能実習又は第三号技能実習の段階をいう。)に係る技能実習を過去に行ったことがないこと(やむを得ない事情がある場合を除く。)。
・企業単独型のみに係る要件
企業単独型技能実習に係るものである場合にあっては、申請者の外国にある事業所又は第二条の外国の公私の機関の外国にある事業所の常勤の職員であり、かつ、当該事業所から転勤し、又は出向する者であること。
・団体監理型のみに係る要件
(1)団体監理型技能実習に係るものである場合にあっては、本邦において従事しようとする業務と同種の業務に外国において従事した経験を有すること又は団体監理型技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること。
(2)団体監理型技能実習に係るものである場合にあっては、当該者が国籍又は住所を有する国又は地域の公的機関(政府機関、地方政府機関又はこれらに準ずる機関をいう。)から推薦を受けて技能実習を行おうとする者であること。
引用)出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領 ~ 関係者の皆さまへ ~」,2023年4月公表,p52-53,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005219.pdf(閲覧日:2023年4月28日)
このような要件を満たした技能実習候補者が、技能実習1号の在留資格の交付申請を行うことができます。
4-2. 実習実施者の責務
実習実施者には、制度の趣旨を理解して技能実習を行わせようとすることが求められています(技能実習法施行規則第10条第2項第4号)。
また、技能実習生が実習に専念できるよう、環境を整える責務があります(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律[技能実習法]第5条第1項)。具体的には、以下のことが義務付けられています。
【実習実施者に関するもの】(技能実習法施行規則第12条・技能実習法第9条)
・各事業所に、技能実習責任者、技能実習指導員、生活指導員を選任する
・入国後講習の施設を確保する
・労災保険関係成立などの措置を行う
・帰国旅費の負担をする
・基準を満たす外国の送り出し機関から取り次ぎをする監理団体を利用する(団体監理型の場合のみ)
・人権侵害行為、偽変造文書の行使などを行わない
・法令違反時に報告を行う
・二重契約を行わない
・技能実習を継続的に行なうために必要な体制・設備を整える
・監理団体により、実習監理を受ける(団体監理型の場合のみ)
【技能実習生の待遇に関するもの】(技能実習法第9条・技能実習法施行規則第14条)
・技能実習生に対する報酬の額は、日本人が従事する場合と同等以上である
・適切な宿泊施設を確保する
・入国後講習の期間、食費、住居費などに対応する講習手当てを支給する
・監理費を技能実習生に負担させてはいけない
・技能実習生が負担する食費、居住費、光熱費などがある場合、実費に相当する金額であり、負担について技能実習生が十分に理解して合意している
参考)杉田昌平『改正入管法関連完全対応 法務・労務のプロのための外国人雇用実務ポイント』,ぎょうせい,2019,p88-103.
5. 技能実習1号を受入れるときに企業が行う手続きは?
ここでは、技能実習1号を受入れるときの流れと、実習実施者が行う手続きを解説します。
5-1. 準備は入国の半年前から!
技能実習1号の受入れは、海外に住んでいる外国人を日本に呼び寄せることになるので、さまざまな手続きが必要になります。実習実施者は、技能実習生を受入れる半年前から準備を開始します。
それでは、入国前の準備について解説します。
実習実施者が行う手続きの流れは以下の通りです。
1. 監理団体を決める(団体監理型のみ)
2. 求人申込みを行う
3. 候補者を選考する
4. 技能実習計画の作成と認定申請
5. 在留資格認定証明書交付申請と証明書交付
6. 入国
1. 監理団体を決める(団体監理型のみ)
団体監理型で技能実習生を受入れるときは、まず実習実施者が監理団体へ登録をします。2023年5月現在、監理団体の数は3千以上あります。この中から適切な監理団体を選んで登録しましょう。
適切な監理団体を選定する方法はこちらをご覧ください。
2. 求人申込みを行う
団体監理型は監理団体へ求人の申込みを行い、企業単独型は独自で求人を行います。
3. 候補者を選考する
技能実習候補者の面接をします。
4. 技能実習計画の作成と認定申請
採用が決まったら技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構(OTIT)に申請します。技能実習計画とは、技能実習の内容を記載したものです。技能実習計画の認定が得られないと、在留資格「技能実習1号」の交付申請ができません。
5. 在留資格認定証明書交付申請と証明書交付
技能実習計画が認定されたら、地方出入国在留管理局に在留資格認定証明書の交付を申請します。在留資格認定証明書の交付を受けた後、技能実習生の母国にある在外公館にて査証(ビザ)を申請します。団体監理型の場合、査証(ビザ)の申請は送り出し機関が行います。
送り出し機関とは、技能実習生を日本の監理団体に取り次ぐ役割を担っている機関です。詳しくはこちらをご覧ください。
6. 入国
技能実習生は、査証(ビザ)が発給されたら、日本に入国できるようになります。
5-2. 技能実習1号 入国後講習はマスト
技能実習生は、入国前に母国で日本語や日本の生活に関する講習を受けますが、入国後も「入国後講習」を受けなければなりません。講習時間は、入国前に要件を満たした講習を受けていれば「技能実習総時間の12分の1以上」、受けていなければ「技能実習総時間の6分の1以上」と定められています。
入国後講習では、主に以下の4つを学びます。
・日本語
・日本での生活一般に関する知識
・技能実習生の法的保護に必要な情報
・技能などを円滑に習得するための知識
この入国後講習は、団体監理型の場合は監理団体が行い、企業単独型の場合は実習実施者が行います。
6. 技能実習をスムーズに進めるには?事例を紹介
技能実習1号として来日する技能実習生の多くは、初めて日本に来る人です。日本の生活に慣れることが大変だったり、コミュニケーションがうまく取れないことによるトラブルがあったりします。
技能実習1号は入国前後に日本語の講習を受けますが、日本語のレベルは日本語能力試験(JLPT)のN5からN4くらいです。
N5はゆっくりと話される基本的な日本語をある程度理解できるレベルです。短い日常会話から、必要な情報を聞き取ることができます。N4は、ややゆっくり話される基礎的な日常会話がほぼ理解できるレベルです。基礎的な日常会話とは、あいさつ、買い物、道を聞くなどの場面で使われる会話です。
参考)
国際交流基金|日本国際教育支援協会「N1~N5:認定の目安」はこちらhttps://www.jlpt.jp/about/levelsummary.html
ですから、雇用条件に関することや仕事で使用する専門用語などは日本語で理解することが難しいこともあります。
それでは、技能実習をスムーズに進めるためには、どのようにしたらよいのでしょうか。技能実習生受入れに関して、先進的な取り組みを行っている実習実施者の事例を紹介します。
【事例1】九州地方の造船所の取り組み
ベトナム出身の外国人労働者や技能実習生を受入れている企業。
・安全指導、技術指導
ベトナム人の通訳スタッフが安全面の指導をアシスト。また、日本人技術者だけでなく先輩ベトナム人労働者が技能実習生の技術指導をアシスト。
・日本語の支援
ベトナム人の通訳スタッフを各事業所に配置し、日本語講習を行っている。日本語の上達を促すため、日本語資格習得者への報奨金制度も用意。
・就労状況などのフォローアップ
企業スタッフとの面談を3カ月ごとに実施。
・職住近接
地方都市のため、職場近くに安い寮費で住まいを準備。自転車を無償貸与するなど通勤にも配慮。
【事例2】千葉県の大工、とび、土木工事業者の取り組み
フィリピンなどからの外国人労働者や技能実習生を受入れている企業。
・就労環境
外国籍の人材も日本人と対等であり、同じ仕事に当たる同僚であるという考え方を持つよう共に努力する組織風土を醸成。
・日本語の支援
仕事でよく使用する単語を平仮名、ローマ字、英語で表記したリストを作成し、定着のためのテストを繰り返し実施。
・余暇の活動
地域行事やボランティアに参加し、日本の風習や地域住民との相互理解を深める。
このように、日本での就労・生活全般をサポートする取り組みが行われています。
言語面の支援では、事例1の企業のように通訳スタッフを配置することが難しい場合もあるでしょう。その際は、事例2の企業のように自社の仕事で使用する言葉を中心に支援をするのも方法の一つです。
また、日々のコミュニケーションに、技能実習生が理解しやすい「やさしい日本語」を取り入れるという方法もあります。
コラム:やさしい日本語とは
やさしい日本語とは、日本語の理解に関して何らかの困難を抱えている人のために配慮した日本語です。難しい言葉を簡単な言葉に言い替えたり、一文を短くしたりするなど、一般的に使われている日本語よりも簡単で分かりやすいため、外国人とのコミュニケーションにも活用されています。
やさしい日本語が考案されたきっかけは、1995年の阪神・淡路大震災です。震災があった地域には、日本人だけでなく多くの外国人も住んでいましたが、日本語も英語も十分に理解できず、災害時に必要な情報を受け取ることができなかった方が多くいました。
このことから、特に災害時などに情報を迅速に正確に伝える一つの手段としてやさしい日本語が考案され、その後全国に広まりました。
現在は、災害時の情報伝達だけでなく、日常生活におけるコミュニケーション手段として、役所や医療現場などさまざまな場面でやさしい日本語が取り入れられています。
やさしい日本語で話したり、文章を作成したりするコツを紹介しているホームページや、普通の日本語をやさしい日本語に変換するツールもあるので、ぜひ活用してみてください。
詳しくはこちらをご覧ください。
参考)
出入国在留管理庁・文化庁|やさしい日本語についてのガイドラインはこちら https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/pdf/92484001_01.pdf
その他、技能実習生に自主的に日本語を学習してもらうツールとして、eラーニング教材があります。ライトワークス社製の教材では、レベル別に日本語のフレーズが学べるようになっています。
参考)ライトワークス社製eラーニング「フレーズで単語を学ぶシリーズ」ガイドコンテンツ(日本語版)
学習画面イメージ(N4レベル)
技能実習生の受入れを検討されている企業の方へ
技能実習生の受け入れにあたって企業が把握しておくべき法律・雇用制度等について、1本3分程度のeラーニング教材で網羅的に学ぶことができます。
7. 技能実習1号の実習期間が終わるとどうなる?
ここでは、技能実習1号の実習期間が終わるとどうなるかについて解説します。
7-1. 実習期間を延長したい場合は技能実習2号へ
技能実習1号の実習期間の後、技能実習生は帰国、または実習期間を延長することができます。帰国するときは、帰国の手続きを行います。実習期間を延長するときは、技能実習2号へ移行します。
ただし、技能実習2号に移行するには要件があります。
7-2. 技能実習2号への移行要件と手続き
技能実習2号への移行要件は次の2つです。
(1)技能実習1号と同一の実習実施者の下で、同一の技術などについて実習を受けること
技能実習2号へ移行できる職種・作業は、省令で定められています。移行対象職種の種類は、2023年3月31日時点で87職種159作業です。
移行対象職種の詳細は以下で確認できます。
参考)
公益財団法人国際人材協力機構|技能実習制度の職種・作業についてはこちら https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/occupation.html
(2)技能検定基礎級もしくは技能評価試験初級に合格すること
試験は学科と実技があり、どちらも合格しなければなりません。技能実習1号が修了する 2カ月前までに受検することが推奨されています。前もって試験対策が必要になるので、忘れずに準備しておきましょう。
次に、移行の手続きについて解説します。
・技能実習2号の技能実習計画認定申請と認定通知書の交付
技能実習生の入国時に申請した技能実習計画は技能実習1号のものなので、改めて技能実習2号の技能実習計画を作成し、認定申請を行います。原則として、技能実習2号の実習開始予定日の3カ月前までに申請を行うことが必要です。
技能実習計画の認定は外国人技能実習機構(OTIT)に申請します。技能実習計画の作成は、技能実習生が入国してから6カ月後ごろを目安に準備を始めましょう。
技能実習2号の技能実習計画が認定されたら、認定通知書が交付されます。
・在留資格変更の申請
管轄の地方出入国在留管理局で、技能実習1号から技能実習2号への在留資格変更の申請を行います。標準審査期間は2週間とされていますが、実習生の在留期間満了日を確認し、余裕を持って申請をするようにしましょう。
このように、技能実習2号へ移行するときは、技能実習1号の実習期間が終わる前に準備が必要です。準備が間に合わず、技能実習生の在留期間満了日を過ぎてしまわないように注意しましょう。
8. まとめ
技能実習1号とは、技能実習を目的とし来日する外国人が実習の1年目に取得する在留資格です。入国後1年を超えない期間で、技能実習計画に基づいて技能などを習得するための業務に従事することが認められています。
技能実習1号では、技能実習生が母国で習得が困難である技能であれば、実習の対象となる職種に制限はありません。ただし、同じ作業の反復のみで習得でき、レベルアップが期待できない業務に従事することは認められていません。
技能実習生の受入れ可能な人数は、実習実施者の規模と、技能実習生の在留資格の種類や受入れ方式によって上限が決められています。
技能実習1号においては、団体監理型と企業単独型Aは基本人数枠、企業単独型Bは常勤職員総数の20分の1です。優良な実習実施者の場合さらに人数枠が拡大し、それぞれ2倍の人数を受入れることができます。ただし、いずれの場合も常勤職員の総数を超えてはいけません。
技能実習1号は、受入れ方式によって企業単独型の技能実習1号イ、団体監理型の技能実習1号ロに区分されます。
企業単独型では、日本の企業が自社の海外事業所や海外の取引先から外国人従業員を直接受入れて実習を行います。一方、団体監理型は、監理団体(商工会などの非営利団体)が技能実習生を受入れ、その監理団体と契約している実習実施者が実習を行います。
技能実習1号の申請者に係る受入れ要件は以下の通りです。
・企業単独型と団体監理型共通の要件
(1)十八歳以上であること。
(2)制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとする者であること。
(3)本国に帰国後本邦において修得等をした技能等を要する業務に従事することが予定されていること。
(4)同じ技能実習の段階(第一号技能実習、第二号技能実習又は第三号技能実習の段階をいう。)に係る技能実習を過去に行ったことがないこと(やむを得ない事情がある場合を除く。)。
・企業単独型のみに係る要件
企業単独型技能実習に係るものである場合にあっては、申請者の外国にある事業所又は第二条の外国の公私の機関の外国にある事業所の常勤の職員であり、かつ、当該事業所から転勤し、又は出向する者であること。
・団体監理型のみに係る要件
(1)団体監理型技能実習に係るものである場合にあっては、本邦において従事しようとする業務と同種の業務に外国において従事した経験を有すること又は団体監理型技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること。
(2)団体監理型技能実習に係るものである場合にあっては、当該者が国籍又は住所を有する国又は地域の公的機関(政府機関、地方政府機関又はこれらに準ずる機関をいう。)から推薦を受けて技能実習を行おうとする者であること。
また、実習実施者には、制度の趣旨を理解して技能実習を行わせようとすることが求められています(技能実習法施行規則第10条第2項第4号)。併せて、技能実習生が実習に専念できるよう、技能実習を行う体制・設備に関することや技能実習生の待遇に関することなど、さまざまな義務も課せられています。
技能実習1号の受入れ準備は、技能実習生を受入れる半年前から開始します。
入国までに実習実施者が行う手続きの流れは以下の通りです。
1. 監理団体を決める(団体監理型のみ)
2. 求人申込みを行う
3. 候補者を選考する
4. 技能実習計画の作成と認定申請
5. 在留資格認定証明書交付申請と証明書交付
6. 入国
入国後は、入国後講習を行う必要があります。講習時間は、入国前に要件を満たした講習を受けていれば「技能実習総時間の12分の1以上」、受けていなければ「技能実習総時間の6分の1以上」です。
実習実施者は技能実習をスムーズに進めるために、実習生の日本での就労、生活全般をサポートする取り組みを行います。やさしい日本語でのコミュニケーションやeラーニング教材での日本語学習支援もその一つです。
技能実習1号の実習期間が終了したら、技能実習生は帰国、または実習期間を延長することができます。実習期間を延長するときは、技能実習2号へ移行します。
移行の要件は、「技能実習1号と同一の実習実施者の下で、同一の技術などについて実習を受けること」と「技能検定基礎級もしくは技能評価試験初級の学科と実技に合格すること」です。
移行の手続きは、技能実習2号の技能実習計画の認定を外国人技能実習機構(OTIT)に申請します。認定通知書が交付されたら、管轄の地方出入国在留管理局で在留資格の変更申請を行います。
技能実習2号の実習期間終了後、さらに実習を続けたいときは、要件を満たした上で技能実習3号に移行します。
技能実習1号は、技能実習生にとって技能実習のスタート地点です。円滑に実習を開始できるように、実習実施者はしっかりと受入れ準備をしておきましょう。
[1]公益財団法人国際人材協力機構「外国人技能実習制度とは」, https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/(閲覧日:2023年4月28日)
参考)
外国人技能実習機構(OTIT),「監理団体の検索(Search for Japanese Supervising Organizations)」,https://www.otit.go.jp/search_kanri/ (閲覧日:2023年4月28日)
出入国在留管理庁・厚生労働省「外国人技能実習制度について」,2023年5月12日公表,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005177.pdf(閲覧日:2023年4月28日)
e-GOV「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=428M60000110003_20230131_505M60000110001(閲覧日:2023年4月28日)
e-GOV「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=428AC0000000089_20221001_504AC0000000012(閲覧日:2023年4月28日)
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領 ~ 関係者の皆さまへ ~」,2023年4月公表,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005219.pdf(閲覧日:2023年4月28日)
国土交通省「先進的な受け入れ企業の取り組み例①」,https://www.mlit.go.jp/common/001353841.pdf(閲覧日:2023年4月28日)
国土交通省「先進的な受け入れ企業の取組み例」,https://www.pref.chiba.lg.jp/seisaku/sonohoka/documents/01-06_houmu.pdf(閲覧日:2023年4月28日)
国際交流基金・日本国際教育支援協会「N1~N5:認定の目安」,『日本語能力試験 JLPT』,https://www.jlpt.jp/about/levelsummary.html(閲覧日:2023年4月28日)