この記事を読むと、次のことが分かります。
・監理団体の役割とその種類
・監理団体と登録支援機関の違い
・適切な監理団体の選定方法
・監理団体の法律違反の事例
監理団体は、技能実習制度における「団体監理型」の技能実習で技能実習生の受入れに関する各種手続きや実習実施者(受入れ企業)への監査などを行い、技能実習をサポートする非営利団体です。「企業単独型」での技能実習生の受入れと比べると、2021年末の段階で98.6%の企業が「団体監理型」で技能実習生を迎えています[1]。
本稿では、技能実習制度を活用するほとんどの企業が関わる監理団体の役割、適切な選定方法などを解説します。
目次
1. 監理団体とは?送り出し機関と受入れ企業をつなぎサポートする機関
監理団体は、日本国外の技能実習生の送り出し機関と受入れ企業の取り次ぎや、技能実習生のサポートなどを行う非営利団体です。技能実習制度において重要な役割を担っています。
1-1. 監理団体が果たす役割
監理団体が果たす役割は以下の通りです。
・日本国外の送り出し機関と受入れ企業の取り次ぎ
・技能実習計画の作成指導
・技能実習生への入国後講習の実施
・受入れ企業への監査と訪問指導
・技能実習生の保護や支援
一つずつ解説します。
・日本国外の送り出し機関と受入れ企業の取り次ぎ
日本国外にある技能実習生の送り出し機関と契約・連携し、受入れ企業からの求職に応じて求人票の作成や面接の同行などを行います。
・技能実習計画の作成指導
受入れ企業による技能実習計画の作成を指導・サポートします。適切な技能実習計画を作成し提出しないと、外国人技能実習機構から技能実習の許可を得ることはできません。
・技能実習生への入国後講習の実施
来日した技能実習生に日本語や日本での生活に関する知識、また技能実習法や労働関係法令などの講習を行います。入国後講習は、実習を始める前に全て終了していなければいけません。
・受入れ企業への監査と訪問指導
受入れ企業が事前に提出した技能実習計画に沿って実習を行っているか、監査をします。3カ月に1回行う定期監査の他、実習が適切に行われていないと疑われる場合は臨時監査を行うこともあります。
また、監査とは別に受入れ企業に訪問指導を行うことがあります。これは技能実習1号の受入れ企業が対象で、1カ月に1回以上の頻度で行います。
・技能実習生の保護や支援
技能実習生の保護や支援も監理団体の重要な役割です。技能実習生の実習や日本での生活に関する相談を受け付けています。
このように、監理団体は技能実習制度において重要な役割を担っています。
団体監理型の技能実習の仕組みは、図にすると以下の通りです。
【技能実習 団体監理型 図】
公益財団法人 国際人材協力機構「外国人技能実習制度とは」を基にライトワークスにて作成,https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/(閲覧日:2022年12月15日)
監理団体の役割とは、送り出し機関と受入れ企業、そして技能実習生との仲介役と考えれば分かりやすいでしょう。監理団体として適切に業務を行わないと、国から改善命令が出されます。悪質な場合は、監理団体の許可が取り消されるケースもあります。
1-2. 特定監理団体と一般監理団体の違い
監理団体には、「特定監理団体」と「一般監理団体」の2種類があります。
特定監理団体は、技能実習1号・2号の技能実習に係る監理事業を行います。技能実習1号・2号とは、技能実習生の在留資格を指します。
一方、一般監理団体は技能実習1号~3号の技能実習に係る監理事業を行います。技能実習3号は技能実習2号を経て定められた試験に合格すると取得できる在留資格です。技能実習3号の監理や受入れは、優良な監理団体・受入れ企業にしか許可されていません。
一般監理団体として許可を受けるには、監査や支援体制などの業務を遂行する能力の水準が高いと認定されなければいけません。具体的には「優良要件適合申告書」の5つのチェック項目で6割以上の点数を獲得する必要があります[2]。
2. 監理団体と登録支援機関はどう違う?
監理団体と登録支援機関はどちらも外国人労働者の支援を行いますが、支援対象者が異なります。監理団体は在留資格「技能実習」を持つ外国人労働者を支援し、登録支援機関は在留資格「特定技能」を持つ外国人労働者を支援します。
2-1. 技能実習生を支える監理団体
監理団体は技能実習生を支援します。例えば、監理団体には技能実習生が母国語で相談できる体制が整えられています。技能実習生に困っていることがあったらサポートするのも監理団体の役目です。
2-2. 特定技能外国人を支える登録支援機関
在留資格「特定技能」を持つ外国人労働者を支援する機関が登録支援機関です。特定技能と技能実習の大きな違いは、技能実習は「日本で技術を学び、出身国へ持ち帰ることによる国際協力」を目的としている一方、特定技能は「労働力不足の解消」を目的としている点です。
登録支援機関による特定技能外国人への支援内容は事前ガイダンスの提供や出入国の送迎、住居確保のサポートなどです。詳しくは関連記事をご覧ください。
3. 適切な監理団体を選定する方法
「技能実習生を迎えたい」と考えたとき、何を基準にして、どの監理団体を選ぶべきか迷ってしまうかもしれません。2022年12月現在、特定監理団体は約1,700団体、一般監理団体は約2千団体あります[3]。これらの中から適切な監理団体を選ぶための方法を解説します。
3-1. 選定に役立つ4つのポイント
監理団体を選定する際は、以下の4点を参考にするとよいでしょう。
・実績の多さ
・監理団体と受入れ企業の距離(直接訪問し合える監理団体が望ましい)
・対応業種と自社のマッチング(その監理団体がどの業種に強いか)
・外国人技能実習機構(OTIT)の検索機能の利用
参考)
外国人技能実習機構(OTIT)|監理団体の検索についてはこちら
https://www.otit.go.jp/search_kanri/
健全な監理団体を見極めるために、ヒアリングを行う方法もあります。次節でヒアリング方法を解説します。
3-2. 健全な監理団体か評価するためのヒアリング方法
受入れ後のサポートが適切に行われているかどうか確認することは、監理団体の見極めに有効な手段の一つです。監理団体は、技能実習生の生活などをサポートしなければいけません。技能実習生からの相談に適切に応じ、助言や指導などを行う必要があります。
また、特定技能1号の実習中は訪問指導として1カ月につき少なくとも1回以上、監理団体の職員が受入れ企業に赴いて技能実習の実施状況を確認します。このような監理団体の業務が適切に実行されているかも、監理団体を見極める上で重要です。
厚生労働省が監理団体のための監査チェックシート[4]を作成しているので、監査の際にこのようなチェックシートを活用しているか、監理団体に確認してみましょう。
4. 監理団体の違反事例 こんな監理団体に要注意!
先述の通り、適切に業務を行わない監理団体は、法務省および厚生労働省から改善命令を受けます。改善命令に従わない、また行為が悪質な場合には監理団体の許可を取り消されます。
ここでは、改善命令を受けたり、監理団体の許可を取り消されたりした事例をご紹介します。
4-1. 改善命令を受けた事例
改善命令を受けた例として、監理団体Aの事例を挙げます。
「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(技能実習法)によると、監理団体や受入れ企業が技能実習生のパスポートを管理してはいけません。
しかし、監理団体Aは技能実習生のパスポートなどを保管していたことから、「監理事業の適正な運営を確保するため」として改善命令を受けました[5]。
この事例ではパスポートなどを強制的に取り上げたのか、それとも善意で保管していたのか不明です。しかし、たとえ技能実習生から「預かってほしい」と言われても、監理団体はパスポートなどを預かってはいけません。善意で行ったことでも、改善命令を受けてしまいます。
また、監理団体が監査を適切に行っていなかったことから改善命令を受ける事例も多く見られます。傘下の受入れ企業に対する監査は監理団体の義務であり、必ず行わなければいけません。
4-2. 監理団体の許可を取り消された事例
監理団体の許可を取り消された事例も見てみましょう。
監理団体Bは、技能実習生から受入れ企業で暴行されていることについて相談を受けましたが、適切な対応を取りませんでした[6]。技能実習生が労働組合に保護され、この事柄が明るみに出た結果、法務省および厚生労働省は受入れ企業の実習計画の認定を取り消し、さらに監理団体の許可も取り消しました。
この監理団体は受入れ企業のために意図的に適切な対応を取らなかったことから、悪質性が高いと考えられます。この事件は全国ニュースになり、大きな話題となりました。
また、悪質なケースでは監理団体の代表者が逮捕されることもあります。
福岡県の監理団体Cは、技能実習生に対して解雇などの不利益をちらつかせ、携帯電話を没収して私生活を不当に制限した疑いで逮捕されています[7]。技能実習生に対する私生活の不当な制限は、技能実習法で禁止されている行為です。
改善命令を受けた、または監理団体の許可を取り消された監理団体は、出入国在留管理庁のホームページで公表されています[8]。改善命令を受けた管理団体の一覧表を活用し、適切に業務を行うか疑わしい監理団体の利用は回避するようにしましょう。
5. まとめ
監理団体は、技能実習制度における「団体監理型」の技能実習で技能実習生の受入れに関する各種手続きや受入れ企業への監査などを行い、技能実習をサポートする非営利団体です。
監理団体が果たす役割は、以下の通りです。
・日本国外の送り出し機関と受入れ企業の取り次ぎ
・技能実習計画の作成指導
・技能実習生への入国後講習の実施
・受入れ企業への監査と訪問指導
・技能実習生の保護や支援
監理団体の役割は、送り出し機関と受入れ企業、そして技能実習生との仲介役と考えれば分かりやすいでしょう。
また、監理団体には「特定監理団体」と「一般監理団体」の2種類があり、監理を行える範囲が異なります。特定監理団体は技能実習1号・2号の技能実習に係る監理事業、一般監理団体は技能実習1号~3号の技能実習に係る監理事業を行います。
監理団体と同じく、外国人労働者を支援する役割を担っている機関に「登録支援機関」がありますが、支援する対象が違います。登録支援機関の支援対象は在留資格「特定技能」を持つ外国人です。
どの監理団体を活用すればよいのか迷う場合、以下の4点を参考にしてみてください。
・実績の多さ
・監理団体と実習実施企業の距離(直接訪問し合える監理団体が望ましい)
・対応業種と自社のマッチング(その監理団体がどの業種に強いか)
・外国人技能実習機構(OTIT)の検索機能の利用
受入れ後のサポートや訪問指導、監査など、監理団体の業務が適切に行われているか確認することも、監理団体の見極め方として有効です。
適切に業務を行わない監理団体は、法務省および厚生労働省から改善命令を受けます。もしその改善命令に従わない、また行為が悪質な場合には監理団体の許可を取り消されます。改善命令を受けたり監理団体の許可を取り消されたりした監理団体は、出入国在留管理庁のホームページで公表されています。
優良な監理団体は、技能実習生の受入れを考える企業にとって助言をもらえる良いパートナーになります。本稿により、監理団体について理解を深めることができたら幸いです。
[1] 公益財団法人 国際人材協力機構「外国人技能実習制度とは」,https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/(閲覧日:2022年12月9日)
[2] 公益財団法人 国際人材協力機構「外国人技能実習制度とは」,https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/(閲覧日:2022年12月9日)
[3] 外国人技能実習機構(OTIT)「監理団体の検索」,https://www.otit.go.jp/search_kanri/(閲覧日:2022年12月16日)
[4] 厚生労働省「監理団体による監査のためのチェックリスト」,https://www.mhlw.go.jp/bunya/nouryoku/gaikoku/dl/kannridantai.pdf(2022年12月12日)
[5] 出入国在留管理庁「公表情報(監理団体一覧、行政処分等、失踪者数ほか)」,https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/nyuukokukanri07_00138.html(閲覧日:2022年12月15日)
[6] 朝日新聞デジタル「ベトナム人実習生への暴行 監理団体の許可取り消し 相談に対応せず」, 2022年5月31日,https://www.asahi.com/articles/ASQ5000NCQ5ZUTIL03Q.html(閲覧日:2022年12月12日)
[7] 茅野雅弘「技能実習生監理団体関係者を逮捕~実習生の携帯電話を没収した疑い」,『NetIB-NEWS』,2020年3月27日,https://www.data-max.co.jp/article/34851(閲覧日:2022年12月12日)
[8] 出入国在留管理庁「公表情報(監理団体一覧、行政処分等、失踪者数ほか)」,https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/nyuukokukanri07_00138.html(閲覧日:2022年12月12日)
参考)
厚生労働省「第5章 監理団体の許可」, https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000178971.pdf(閲覧日:2022年12月9日)
厚生労働省「監理団体による監査のためのチェックリスト」,https://www.mhlw.go.jp/bunya/nouryoku/gaikoku/dl/kannridantai.pdf(2022年12月12日)
外国人技能実習機構(OTIT)「監理団体の検索」,https://www.otit.go.jp/search_kanri/(閲覧日:2022年12月16日)
公益財団法人 国際人材協力機構「外国人技能実習制度とは」,https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/(閲覧日:2022年12月15日)
出入国在留管理庁「公表情報(監理団体一覧、行政処分等、失踪者数ほか)」,https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/nyuukokukanri07_00138.html(閲覧日:2022年12月12日)
出入国在留管理庁「技能実習生の支払い費用に関する実態調査の結果について」,2022年7月26日公表,https://www.moj.go.jp/isa/content/001377469.pdf(閲覧日:2022年12月15日)
茅野雅弘「技能実習生監理団体関係者を逮捕~実習生の携帯電話を没収した疑い」,『NetIB-NEWS』,2020年3月27日,https://www.data-max.co.jp/article/34851(閲覧日:2022年12月12日)
朝日新聞デジタル「ベトナム人実習生への暴行 監理団体の許可取り消し 相談に対応せず」,2022年5月31日,https://www.asahi.com/articles/ASQ5000NCQ5ZUTIL03Q.html(閲覧日:2022年12月12日)