IT告示とは?外国人IT人材を検討中の企業必見!条件や雇用の流れなど

この記事を読むと、次のことが分かります。

・日本や海外で実施されるIT告示に該当する試験や資格
・IT告示に該当するとどのようなメリットがあるか
・IT告示の対象となる外国人材を雇用する流れ
・IT告示の対象となる外国人材を雇用する際の注意点

IT告示とは、法務省によるITに関する試験や資格の告示で、外国人材がそれらの合格者・取得者に該当すれば日本でIT人材として働きやすくなります。

本稿では、IT告示に該当するメリットや外国人材の受入れ方法、受入れ前の注意点など、企業が押さえておきたいポイントを解説します。IT告示に該当する試験・資格一覧もあるので、これから外国人IT人材の雇用を検討される方はぜひご一読ください。

1. IT告示とは在留資格取得の強い味方!

IT告示とは、法務大臣が定めるITに関する試験や資格の告示で、該当する試験・資格の合格者・取得者は、日本でIT人材として就労できる在留資格を取得しやすくなります

IT告示に該当する試験は、日本だけで実施されているわけではありません。海外でも相互認証を結んだ試験が実施されているので、海外でIT告示に該当する試験に合格していれば、日本の試験に合格していなくてもIT人材として日本で就労しやすくなるのです。

2. IT告示に該当するメリット

IT告示に該当する主なメリットには、以下の2点が挙げられます。

・ IT告示の対象者は技術・人文知識・国際業務の取得要件(学歴・実務経験)が緩和される
・ IT告示の対象者はポイント加算で高度人材と認められやすくなる

それぞれを詳しく見ていきましょう。

・IT告示の対象者は技術・人文知識・国際業務の取得要件(学歴・実務経験)が緩和される

外国人がIT人材として日本で働くためには、一般的に技術・人文知識・国際業務(技人国)在留資格を取得する必要がありますが、取得のためには「自然科学または人文科学の科目を専攻して大学を卒業」「自然科学または人文科学の科目を専攻して日本の専門学校を卒業」「10年以上の実務経験」のいずれかの要件を満たさなくてはなりません。

しかし、IT告示に該当する試験・資格の合格者・取得者であればこれらの要件が特例で緩和されるため、一定の学歴や実務経験がなくても技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得しやすくなります。

一定の学歴や実務経験がなくてもIT人材として就労できるため、企業にとっては採用の門戸を広げられるのがメリットです。ただし、技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得するためには「日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を外国人材が受けること」が条件とされています。

技術・人文知識・国際業務とは?
「自然化学もしくは人文科学の分野で専門的な知識や技術を習得し、それらを要する業務に従事する人」「母国の文化や感受性を活かした業務に従事する人」が取得できる在留資格です。IT分野の職種としては、システムエンジニアやプログラマー、技術者などが代表的です。

・IT告示の対象者はポイント加算で高度人材と認められやすくなる

技術・人文知識・国際業務の取得要件を満たした上でIT告示の試験に合格または資格を取得していると、高度人材ポイントが加算されるため「高度人材」と認められやすくなります。

高度人材とは専門的な技術や知識を持ち、日本の発展に貢献する外国人のことで、在留資格としては技術・人文知識・国際業務、研究、経営・管理、高度専門職などが該当します。

中でも高度専門職「高度人材ポイント制」学歴・職歴・年収などが高いレベルにあると評価された人にしか取得できません。そのため、高度専門職取得者を高度人材と呼ぶことが多く、本稿でも「高度人材=高度専門職取得者」と定義して解説していきます。

高度専門職の中では、「高度専門職1号ロ」がIT分野に該当します。IT告示に該当する試験・資格を1つ合格・取得していれば5点、複数合格・取得していれば10点加算され、その他の評価と合わせて70点以上獲得すると取得できます。

高度専門職1号ロのポイント加算例

IT企業でシステムエンジニアとして働く外国人材
・IT関連で職歴10年 20点
・IT告示に該当する2つの試験に合格 10点
・日本語能力試験でN2を取得 10点
・年収700万円 25点
・年齢36歳 5点
合計 20+10+10+25+5=70点

高度専門職1号ロの在留資格を取得可能

3. 高度人材が受けられる優遇措置

高度人材は日本の経済発展を促す存在として国を挙げて受入れが推進されており、出入国在留管理上の優遇措置が受けられます。高度専門職1号が受けられる優遇措置について見ていきましょう。

・複合的な在留活動の許容
・在留期間5年の付与
・永住許可要件の緩和
・配偶者の就労
・親の帯同の許容(一定の条件下に限る)
・家事使用人の帯同の許容(一定の条件下に限る)
・入国・在留手続きの優先処理

・複合的な在留活動の許容

外国人材は在留資格で認められた範囲内の活動しかできませんが、高度人材の場合は複数分野の在留活動が可能です。例えば、大学で研究者として働きながら、経営者として活動することもできます。

・在留期間5年の付与

高度人材は一律で入管法上最長である5年の在留期間が付与され、かつ期間の更新も可能です。

技術・人文知識・国際業務の在留期間は5年、3年、1年、3カ月のいずれかですが、初回から5年の在留期間が認められることはほとんどありません。在留期間は勤務先の企業の規模や安定性など総合的に審査されるため、多くの人は在留期間1年で申請し、延長のために更新手続きを重ねています。

高度人材であれば初回から5年の在留期間が付与されるため、企業にとっては優秀な人材に長く活躍してもらえるのがメリットです。

・永住許可要件の緩和

永住許可を得るためには原則「日本での在留期間が10年間以上あること」が求められますが、高度人材の場合は特例でこの条件が緩和されます。

例えば、高度人材ポイント制で80点以上獲得していれば在留期間1年、70点以上獲得していれば在留期間3年で永住許可を申請できます。どちらの場合も、他の在留資格に比べて早い段階で申請が可能です。

・配偶者の就労

高度人材の配偶者は、「特定活動」の在留資格を取得すれば、「教育」「研究」「技術・人文知識・国際業務」「興行」のいずれかの在留資格で認められた範囲の就労が可能です。

通常これらの在留資格は一定の学歴や職歴が要件となっていますが、高度人材の配偶者であれば学歴や職歴がなくても同様の仕事に就けるのがメリットです。

ただし、配偶者が高度人材と同居し、日本人と同等額以上の報酬を受けることが要件です。

・親の帯同の許容(一定の条件下に限る)

他の就労を目的とする在留資格では親を呼び寄せることは認められていませんが、「高度人材もしくはその配偶者の7歳未満の子(養子を含む)を養育する場合」「妊娠中の高度人材本人または配偶者の介助などを行う場合」は、一定の要件の下、親(養親を含む)の入国・在留が許可されます。

主な要件は「世帯年収(高度人材とその配偶者の年収の合計)が800万円以上」「高度人材と親の同居」で、入国・在留が許可されるのは高度人材またはその配偶者のどちらかの親に限られます。

・家事使用人の帯同の許容(一定の条件下に限る)

家事使用人の帯同は「法律・会計業務」「経営・管理」などの在留資格を持つ一部の外国人材にしか認められていませんが、高度人材が一定の要件を満たせば帯同が許可されます。

家事使用人の雇用は「海外で雇用していた家事使用人を引き続き雇用する場合」「それ以外の家事使用人を雇用する場合」「金融人材かつ高度人材が家事使用人を雇用する場合」の3パターンがあり、それぞれ「世帯年収1千万円以上」「家事使用人の報酬が月額20万円以上」など要件が定められています。

・入国・在留手続きの優先処理

高度人材は入国・在留審査が優先的に処理されるため、他の在留資格よりスピーディーに手続きが完了します。入国前審査に係る手続きは申請受理から10日以内、在留審査に係る手続きは申請受理から5日以内が目安です。

ちなみに、2022年7~9月の在留審査の平均処理期間を見ると、在留資格認定証明書の申請受理から交付までに高度専門職1号ロは平均16.7日、技術・人文知識・国際業務は平均36.2日[1]かかっています。

[1] 出入国在留管理庁「在留審査処理期間(日数)」,https://www.moj.go.jp/isa/content/001382978.pdf(閲覧日:2022年11月8日)

4. IT告示の対象となる外国人材を雇用する基本的な流れ

ここでは、海外在住の外国人をIT人材として雇用する際の基本的な流れをご紹介します。基本的には「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の場合と同じです。「採用活動」「内定・雇用手続き」「在留資格・ビザの申請」「来日・雇用開始」の4つのステップに分けて見ていきましょう。

4-1. 採用活動

まずは自社の方向性や課題を踏まえた上で、どのような外国人IT人材が必要かイメージを明確化しましょう。

IT分野は英語可にすると募集が増える傾向にあるので、最初から高い日本語能力を求めないことをおすすめします。業務内容や入社後の伸びしろなども踏まえて、最低限どのくらいの日本語能力が必要か適切なレベルを設定しましょう。

求める人物像が定まったら、採用ルートを検討します。IT人材の場合は、「人材紹介会社の利用」「就職情報サイトの利用」「現地説明会の実施」「インターンシップの実施」が代表的な採用ルートです。

選考では外国人材の学歴や職歴保有するスキルや資格などを確認し、技術・人文知識・国際業務の在留資格の取得要件を満たしているか確認してください。なお、海外の外国人材をインターン生として受入れる場合は、特定活動の在留資格が必要です。

4-2. 内定・雇用手続き

採用が決まったら、賃金や業務内容、雇用期間、労働条件などを説明した上で労働条件通知書兼承諾書内定通知書交付し、雇用契約を締結します。母国語や英語など、外国人材本人が理解できる言語で説明することが大切です。社内ルールを理解してもらうために、就業規則も一緒に配布するとよいでしょう。

4-3. 在留資格・ビザの申請

雇用契約を締結したら、地方出入国在留管理局(地方入管)に在留資格認定証明書交付申請を行います。結果が出るまでには1~3カ月かかるのが一般的なため、この間に「現地の日本語学校に通ってもらう」「入社前研修を受けてもらう」など知識やスキルの習得を促すのがおすすめです。

地方入管から在留資格認定証明書が交付されたら外国人材に送付し、本人に現地の日本大使館または領事館ビザを申請してもらいます。

4-4. 来日・雇用開始

ビザが発給されたら外国人材が来日し、入国審査官にビザを提示して上陸審査を受けます。問題がなければ上陸が許可され、在留カードが交付されます(出入国港が成田、羽田、中部、関西、新千歳、広島、福岡空港以外の場合は、後日交付)。

在留資格認定証明書交付から3カ月以内に入国することが義務付けられているので、期日を過ぎないように入国してください。

外国人材が雇用保険の被保険者に該当する場合は、雇入れ日の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出します。外国人材の雇用では「雇用状況の届出」の提出が義務付けられていますが、雇用保険の被保険者に該当する場合は雇用保険被保険者資格取得届だけで手続きが完了します。

雇用保険の被保険者に該当しない場合は雇入れ日の翌月末日までに「外国人雇用状況届出票(様式第3号)」をハローワークに提出してください。

また、外国人材が日本で初めて住居地を決めたり、日本国内で引っ越しをしたりした場合は、住居地を決めた日から14日以内に「住居地変更の届出」を本人が市区町村の窓口に提出する必要があります。

5. IT告示の対象となる外国人材の在留資格申請手続き

ここでは、IT告示の対象となる外国人材を雇用する際に必要な在留資格申請手続きについて、確認していきます。代表的な雇用パターンごとに、必要な手続きを整理しました(各手続きの進め方は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格と同じ)。

5-1. 海外在住の外国人をIT人材として採用する場合

これは、4章でご紹介した典型的なパターンに該当します。IT告示の対象者で技術・人文知識・国際業務を取得できる見込みの人材を採用したら、地方入管に在留資格認定証明書の交付を申請し、交付された証明書を本人に送付します。本人が証明書持参の上、現地の日本大使館または領事館で申請すれば、ビザが発給されます。

その後、在留資格認定証明書交付から3カ月以内に外国人材が来日し、就労スタートです。

5-2. 留学生をIT人材として新卒採用する場合

留学生IT人材として新卒採用する場合は、在留資格を「留学」から技術・人文知識・国際業務に変更する必要があります。変更の主な要件は以下の通りです。

・技術・人文知識・国際業務の対象となる業務に就くこと
・大学・専門学校で専攻した科目と就職後の業務に関連性があること
・素行不良がないこと
・日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を受けること
など

専門学校卒業者は大学卒業者に比べて審査が厳しく、在学中に学んだ知識や技術を直接生かせる仕事でなければ許可が下りない傾向にあります。

しかし、IT告示に該当する試験や資格の合格者・取得者となれば、専門学校卒業者と大学卒業者の区別はありません。そのため、専門学校在学中に合格や取得を目指す留学生は少なくありません。

在留資格を変更するには、留学生本人が地方入管、同支局(成田・中部・関西空港支局を除く)、または出張所に出向き、在留資格変更許可申請を行います。

審査では、提出書類に基づいて、次のような点がチェックされます。

・本人に学歴や経歴に相応する技術・知識があるか
・従事しようとする職務が本人の技術・知識を生かせるものか
・本人の処遇は適当か
・採用企業に安定性・継続性があるか
・本人の職務を活かせる機会が提供されるか
など

また、雇用先企業によってはIT告示に該当する試験または資格の合格証書・資格証書を提出が必要になります(IT系の専門学校を卒業し、専門士または高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書を提出した場合は不要)。

書類は企業側が準備するもの、大学や専門学校側が準備するものなど複数あるため、4月入社に間に合うよう余裕を持って申請することが重要です。受付を開始は原則として卒業年の1月(東京出入国在留管理局・大阪出入国在留管理局では前年の12月)からで、審査には1~3カ月ほどかかるため、採用を出した時点で留学生に手続きを促すとよいでしょう。

在留資格の変更が無事許可されれば、就労スタートです。

5-3. 国内で働く外国人をIT人材として採用する場合

既に国内で働いている技術・人文知識・国際業務の在留資格の外国人をIT人材として採用する場合は、在留資格の変更が生じないため在留資格に関する手続きは不要です。

一方で、高度専門職の場合は就労できる機関が指定されているため、転職に当たって在留資格の変更が必要です。在留資格変更許可申請が必要になるので、注意しましょう。

また、技術・人文知識・国際業務、高度専門職いずれも場合も、本人が地方入管に「所属(契約)機関に関する届出」を提出する必要があります。この届け出は、就労系の在留資格で日本に中長期滞在する外国人が転職・退職した際に義務付けられているもので、前職を退職してから14日以内に提出しなければなりません。

技術・人文知識・国際業務の場合、転職後の在留資格更新をスムーズに進めるためにも「就労資格証明書」を取得するのがおすすめです。就労資格証明書とは、現在の在留資格で自社の業務を行えるか、ひと目で確認できる書類のことです。

就労資格証明書を取得していないと、在留資格更新のタイミングまで技術・人文知識・国際業務の活動範囲と自社の業務内容が本当に一致しているか明確には分かりません。そのタイミングで不一致が発覚した場合、在留資格の更新が不許可となってしまいます。

在留資格の更新が不許可になれば外国人材は離職することになり、不法就労として処罰の対象となるリスクが高まります。このような事態を防ぐためにも、転職者を雇用する際は本人地方入管就労資格証明書を取得してもらうとよいでしょう。

なお、外国人材の在留資格が自社の業務内容と一致しない場合は、在留資格変更許可申請で在留資格の変更が必要です。

6. IT告示の対象となる外国人材を採用する際の注意点

外国人材は日本人に比べて終身雇用になじみが薄く、転職を繰り返してキャリアアップを目指す傾向にあります。そのため、外国人材に「自分のキャリアにとってプラスになる」と判断されなければ、優秀な外国人IT人材を獲得することはできません。ここでは、外国人IT人材を採用する際の注意点について解説します。

6-1. ジョブ型雇用でキャリアパスを明示

日本では入社後の仕事を明確に限定しない「メンバーシップ型雇用」が一般的ですが、海外では仕事内容を明確に限定する「ジョブ型雇用」が主流のため、これまでの採用方式を見直すのがおすすめです。

ジョブ型雇用は採用段階で入社後の業務内容を具体的にイメージできるため、外国人材にとっては希望の仕事を見つけやすくなります。一方、企業にとっては求めるITスキルを持つ人材をピンポイントで雇用できるため、スキルを延ばすことに注力できるのがメリットです。

入社後のミスマッチを防ぐためには、採用段階でジョブディスクリプションを活用し、キャリアパスを明示することも重要です。ジョブディスクリプションとは職務内容や権限の範囲、必要なスキル・知識などを記載した職務記述書のことで、海外では採用や人事評価の際に一般的に使われています。

ジョブディスクリプションで入社後の役割や目標を明確にすれば、公平な人事評価が可能になり、外国人材のモチベーションアップにもつながります。外国人材は日本の評価制度に不満を持つ傾向にあるので、受入れ前に全従業員の評価基準を見直し、昇給や昇進の条件を分かりやすくするとよいでしょう。

6-2. 定着率アップのために社内制度を見直す

外国人IT人材は定着率の低さが課題とされており、定着率アップのためには彼らが働きやすいよう社内制度を見直すことが求められます。

快適に協働するためには、外国人材と日本人従業員が文化や価値観の違いを理解し、互いに歩み寄ることが重要です。日本人従業員に対しては受入れの目的を事前に説明し、コンプライアンスを遵守する意識を醸成しましょう。

外国人材が孤立しないよう、メンター制の導入など相談体制の整備も必要です。特に社長や役員直轄の相談窓口を設けると、柔軟かつスピーディーな対応が可能になるでしょう。外国人材から改善してほしいことを相談されたら実際に検討し、改善することで外国人材の企業への信用度もアップします。

「住環境を整備する」「生活必需品を準備する」「銀行口座の開設に付き添う」など生活面でサポートすることも有効です。

また、外国人材が信仰する宗教によってはお祈りや断食の習慣があるので、「お祈りスペースを設ける」「断食期間中は勤務時間を調整する」など配慮も求められます。

7. IT告示に該当する試験一覧

最後に、日本と海外で実施されているIT告示に該当する試験を一覧で見ていきましょう。

7-1. 日本でIT告示に該当する試験

日本でIT告示に該当する試験・資格は下記の通りです。下記のうち現行試験として実施されているのはイとロで、情報処理安全確保支援士試験に合格した人は情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)の資格を取得できます。

【日本でIT告示に該当する試験】[2]

一 我が国における試験で次に掲げるもの
イ 情報処理の促進に関する法律(昭和四十五年法律第九十号)に基づき経済産業大臣が実施する情報処理安全確保支援士試験

ロ 情報処理の促進に関する法律に基づき経済産業大臣が実施する情報処理技術者試験のうち次に掲げるもの
1. ITストラテジスト試験
2. システムアーキテクト試験
3. プロジェクトマネージャ試験
4. ネットワークスペシャリスト試験
5. データベーススペシャリスト試験
6. エンベデッドシステムスペシャリスト試験
7. ITサービスマネージャ試験
8. システム監査技術者試験
9. 応用情報技術者試験
10. 基本情報技術者試験
11. 情報セキュリティマネジメント試験

ハ 通商産業大臣又は経済産業大臣が実施した情報処理技術者試験で次に掲げるもの
1. 第一種情報処理技術者認定試験
2. 第二種情報処理技術者認定試験
3. 第一種情報処理技術者試験
4. 第二種情報処理技術者試験
5. 特種情報処理技術者試験
6. 情報処理システム監査技術者試験
7. オンライン情報処理技術者試験
8. ネットワークスペシャリスト試験
9. システム運用管理エンジニア試験
10. プロダクションエンジニア試験
11. データベーススペシャリスト試験
12. マイコン応用システムエンジニア試験
13. システムアナリスト試験
14. システム監査技術者試験
15. アプリケーションエンジニア試験
16. プロジェクトマネージャ試験
17. 上級システムアドミニストレータ試験
18. ソフトウェア開発技術者試験
19. テクニカルエンジニア(ネットワーク)試験
20. テクニカルエンジニア(データベース)試験
21. テクニカルエンジニア(システム管理)試験
22. テクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)試験
23. テクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験
24. 情報セキュリティアドミニストレータ試験
25. 情報セキュリティスペシャリスト試験

7-2. 海外でIT告示に該当する試験

海外で実施される試験では、下記がIT告示に該当します。

【海外でIT告示に該当する試験】[3]


国名試験名
フィリピン共和国フィリピンにおける試験で次に掲げるもの
イ フィリピン国家情報技術標準財団(PhilNITS)が実施する試験のうち次に掲げるもの
1. 本情報技術者(Fundamental Information Technology Engineers)試験
2. 応用情報技術者(Applied Information Technology Engineers)試験

ロ フィリピン・日本情報技術標準試験財団(JITSE Phil)が実施した基本情報技術者(Fundamental Information Technology Engineers)試験
タイ王国タイにおける試験で次に掲げるもの
イ 国立科学技術開発庁(NSTDA)が実施する試験のうち次に掲げるもの
1. 基本情報技術者(Fundamental Information Technology Engineers)試験
2. 応用情報技術者(Applied Information Technology Engineers)試験

ロ 国立電子コンピュータ技術センター(NECTEC)が実施した基本情報技術者(Fundamental Information Technology Engineers)試験
ベトナム社会主義共和国ベトナムにおける試験で次に掲げるもの
イ ハイテクインキュベーショントレーニングセンター(HITC)が実施する試験のうち次に掲げるもの
1. 基本情報技術者(Fundamental Information Technology Engineers)試験
2. 応用情報技術者(Applied Information Technology Engineers)試験

ロ ベトナム情報技術試験訓練支援センター(VITEC)又はベトナム訓練試験センター(VITEC)が実施した試験のうち次に掲げるもの
1. 基本情報技術者(Fundamental Information Technology Engineers)試験
2. ソフトウェア開発技術者(Software Design & Development Engineers)試験
3. 応用情報技術者(Applied Information Technology Engineers)試験
ミャンマー連邦共和国ミャンマーにおけるミャンマーコンピュータ連盟(MCF)が実施する試験のうち次に掲げるもの
イ 基本情報技術者(Fundamental Information Technology Engineers)試験
ロ 応用情報技術者(Applied Information Technology Engineers)試験
マレーシアマレーシアにおけるマルチメディア技術促進本部(METEOR)が実施する基本情報技術者(Fundamental Information Technology Engineers)試験
モンゴル国モンゴルにおけるモンゴル国立ITパーク(NITP)が実施する試験のうち次に掲げるもの
イ 基本情報技術者(Fundamental Information Technology Engineers)試験
ロ 応用情報技術者(Applied Information Technology Engineers)試験
バングラデシュ人民共和国バングラデシュにおけるバングラデシュコンピュータ評議会(BCC)が実施する試験のうち次に掲げるもの
イ 基本情報技術者(Fundamental Information Technology Engineers)試験
ロ 応用情報技術者(Applied Information Technology Engineers)試験
シンガポール共和国シンガポールにおけるシンガポールコンピューターソサイエティ(SCS)が認定するCertified IT Project Manager(CITPM)
大韓民国韓国における韓国産業人力公団が認定する資格のうち次に掲げるもの
イ 情報処理技師(Engineer Information Processing)
ロ 情報処理産業技師(Industrial Engineer Information Processing)
中華人民共和国中国における試験で次に掲げるもの
イ 中国工業和信息化部教育与考試中心が実施する試験のうち次に掲げるもの
1. 系統分析師(システム・アナリスト)
2. 信息系統項目管理師(インフォメーション・システム・プロジェクト・マネージャ)
3. 系統架構設計師(システム・アーキテクト)
4. 軟件設計師(ソフトウェア設計エンジニア)
5. 網絡工程師(ネットワーク・エンジニア)
6. 数据庫系統工程師(データベース・システム・エンジニア)
7. 程序員(プログラマ)

ロ 中国信息産業部電子教育中心又は中国工業和信息化部電子教育与考試中心が実施した試験のうち次に掲げるもの
1. 系統分析員(システム・アナリスト)
2. 高級程序員(ソフトウェア・エンジニア)
3. 系統分析師(システム・アナリスト)
4. 軟件設計師(ソフトウェア設計エンジニア)
5. 網絡工程師(ネットワーク・エンジニア)
6. 数据庫系統工程師(データベース・システム・エンジニア)
7. 程序員(プログラマ)
台湾台湾における財団法人資訊工業策進会(III)が実施した試験のうち次に掲げるもの
イ 軟体設計専業人員(ソフトウェア・デザイン・アンド・ディベロップメント・IT・エキスパート)試験
網路通訊専業人員(ネットワーク・コミュニケーション・IT・エキスパート)試験
ロ 網路通訊専業人員(ネットワーク・コミュニケーション・IT・エキスパート)試験
ハ 資訊安全管理専業人員(インフォメーション・システム・セキュリティー・IT・エキスパート)試験

なお、IT告示には該当しませんが、インドではDOEACC Aレベル試験、DOEACC Bレベル試験、DOEACC Cレベル試験という試験が実施されており、合格すれば大学などと同等以上の教育を受けたと法務省から見なされます。そのため、IT告示と同様にIT人材として日本で働ける在留資格を取得しやすくなります。

[2] 出入国在留管理庁「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令の技術・人文知識・国際業務の在留資格に係る基準の特例を定める件」,2020年7月20日公表,https://www.moj.go.jp/isa/laws/nyukan_hourei_h09.html(閲覧日:2022年11月14日)
[3] 出入国在留管理庁「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令の技術・人文知識・国際業務の在留資格に係る基準の特例を定める件」,2020年7月20日公表,https://www.moj.go.jp/isa/laws/nyukan_hourei_h09.html(閲覧日:2022年11月14日)

8. まとめ

IT告示とは法務大臣が定めるITに関する試験や資格の告示で、該当の試験は日本と海外で実施されています。外国人材がいずれかの試験に合格、または資格を取得していれば、IT人材として日本で働くための在留資格を取得しやすくなります

具体的な話をすると、IT告示の対象者は「技術・人文知識・国際業務の取得要件(学歴・実務経験)が緩和される」「ポイント加算で高度人材と認められやすくなる」のがメリットです。

IT人材として就労する場合、技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得するのが一般的ですが、取得のためには「大学または専門学校卒業」「10年以上の実務経験」など要件を満たさなくてはなりません。

しかし、IT告示の対象者であれば学歴や実務経験がなくても技術・人文知識・国際業務を取得できるため、企業にとっては採用の門戸を広げることができます。

また、IT告示に該当する試験・資格は1つで5点、2つ以上で10点の高度人材ポイント加算されるため、高度人材と認められやすくなるのもメリットです。

高度人材とは高度な知識や技術を有し、日本の発展に寄与する外国人のことで、主な在留資格としては技術・人文知識・国際業務、経営・管理、高度専門職などが該当します。

中でも高度専門職学歴・職歴・年収などをポイントで評価する「高度人材ポイント制」で70点以上に達した人にしか付与されず、高度専門職取得者を高度人材と呼ぶことがあります。本稿では「高度人材=高度専門職取得者」と定義して解説しています。

高度専門職の中では、「高度専門職1号ロ」がIT分野に該当し、下記の優遇措置を受けられます。

【高度専門職1号が受けられる優遇措置】
・複合的な在留活動の許容
・在留期間5年の付与
・永住許可要件の緩和
・配偶者の就労
・親の帯同の許容(一定の条件下に限る)
・家事使用人の帯同の許容(一定の条件下に限る)
・入国・在留手続きの優先処理

IT告示の対象となる海外在住外国人材技術・人文知識・国際業務採用する流れは、他の在留資格の場合と基本的には変わりません。

【雇用開始までの基本的な流れ】
・採用活動
・内定、雇用手続き
・在留資格、ビザの申請
・来日、雇用開始

選考では「一定の学歴職歴があるか」「保有するスキルや資格IT告示に該当しているか」などを確認し、技術・人文知識・国際業務の取得要件を満たしているか確認しましょう。

採用が決まったら労働条件通知書兼承諾書内定通知書交付し、雇用契約を締結します。就業規則も一緒に配布し、外国人材が理解しやすい言語で説明するとよいでしょう。

雇用契約を締結したら、地方入管に在留資格認定証明書の交付を申請します。在留資格認定証明書が交付されたら外国人材に送付し、本人に現地の日本大使館や領事館でビザを申請してもらいます。

ビザが発給されたら外国人材が来日し、いよいよ雇用開始です。受入れの際は社会保険の加入手続きの他、「雇用状況の届出」や「住居地変更の届出」などの外国人材ならではの書類の提出が義務付けられているため、忘れないようご注意ください。

技術・人文知識・国際業務の一般的な採用の流れを説明しましたが、「留学生をIT人材として新卒採用する場合」「国内で働く外国人をIT人材として採用する場合」は在留資格の手続きが異なります。

留学生IT人材として新卒採用する場合は、留学から技術・人文知識・国際業務在留資格変更する手続きが必要です。変更のためには「就業予定の業務が技術・人文知識・国際業務に該当するか」「就業予定の業務が在学中の専攻科目と関連するか」など要件を満たさなくてはなりません。

専門学校卒業者は大学卒業者よりも審査が厳しい傾向にありますが、IT告示の対象者であれば技術・人文知識・国際業務を取得しやすくなります。そのため、在学中にIT告示に該当する試験の合格や資格の取得を目指す留学生も少なくありません。

在留資格を変更する際は、留学生本人が地方入管や同支局、出張所などに行き、在留資格変更許可申請を行います。審査では、企業側が用意するもの、大学や専門学校が用意するものなど複数の書類が必要なため、4月入社に間に合うよう早めの手続きが重要です。

雇用先企業によっては、経歴の証明書としてIT告示に該当する試験・資格の合格証書、資格証書提出が必要な場合があります(IT系の専門学校を卒業し、専門士または高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書を提出した場合は不要)。書類を提出し、在留資格の変更が許可されれば就労スタートです。

既に国内で働いている技術・人文知識・国際業務の在留資格の外国人をIT人材として採用する場合は、在留資格の変更が生じないため在留資格に関する手続きは不要です。一方で、高度専門職の場合は、転職に当たって在留資格変更許可申請が必要になるので、注意しましょう。

その他、技術・人文知識・国際業務、高度専門職いずれも場合も、本人が地方入管に「所属(契約)機関に関する届出」を提出する必要があります。また、技術・人文知識・国際業務の場合、転職後の在留資格更新をスムーズに進めるためにも本人地方入管就労資格証明書を取得してもらうとよいでしょう。

なお、外国人材の在留資格が自社の業務内容と一致しない場合は、在留資格変更許可申請で在留資格の変更が必要です。

IT告示の対象となる外国人材を受入れる際は、「ジョブ型雇用でキャリアパスを明示」「定着率アップのために社内制度を見直す」など、これまでのやり方を見直すことが大切です。

海外では仕事内容を明確に限定する「ジョブ型雇用」が主流で、外国人材の多くはキャリアアップ志向が強い傾向にあります。

外国人材に「入社後のビジョンを描けない」と感じさせる企業は優秀な外国人材を確保しにくくなります。そうならないために、採用段階ジョブディスクリプションを活用して職務内容や権限の範囲、必要なスキル・知識、入社後の役割・目標などを明示するとよいでしょう。

外国人材は日本の評価制度に疑問を持つ傾向にあるので、併せて全従業員の評価基準を見直し、昇給や昇進の条件を分かりやすくすることも効果的です。

外国人IT人材に長く働いてもらうためには、社内制度の見直しも求められます。日本人従業員に対しては受入れの目的を事前に説明し、コンプライアンスを遵守する意識を社内に醸成しましょう。

外国人材が孤立しないよう、メンター制を導入するなど相談体制の構築も必要です。住環境の整備や生活必需品の準備など、生活面をサポートすることも有効です。

外国人材の信仰する宗教によってはお祈り断食などの習慣があるため、「お祈りスペースを設ける」「断食期間中は就労時間に配慮する」など戒律に応じた対応も求められます。

高度な知識やスキルを持つ外国人IT人材は、国際的な獲得競争の対象です。自社で優秀な人材を獲得するためにも、IT告示について理解し、具体的な人事戦略の立案に進みましょう。

参考)
出入国在留管理庁「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令の技術・人文知識・国際業務の在留資格に係る基準の特例を定める件」,2020年7月20日公表,https://www.moj.go.jp/isa/laws/nyukan_hourei_h09.html(閲覧日:2022年11月7日)
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「外国人 IT 技術者の日本での雇用に係る諸手続き【受入れ期間の留意事項を中心に】」,https://www.ipa.go.jp/files/000044980.pdf(閲覧日:2022年11月7日)
出入国在留管理庁,経済産業省商務情報政策局「外国人IT人材の在留資格と高度人材ポイント制について」,2020年1月23日,https://www.moj.go.jp/isa/content/930003139.pdf(閲覧日:2022年11月8日)
出入国在留管理庁「どのような優遇措置が受けられる?」,https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/newimmiact_3_preferential_index.html(閲覧日:2022年11月8日)
出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和元年5月31日改定)」,https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/nyukan_nyukan50.html(閲覧日:2022年11月8日)
出入国在留管理庁「【高度専門職外国人の就労する配偶者】在留資格変更許可申請」,https://www.moj.go.jp/isa/content/930001676.pdf(閲覧日:2022年11月8日)
出入国在留管理庁「出入国港での手続 / 市区町村での手続 / 地方出入国在留管理官署での手続」,https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/newimmiact_4_port-city.html(閲覧日:2022年11月9日)
出入国在留管理庁「在留資格「企業内転勤」」,https://www.moj.go.jp/isa/content/001368446.pdf(閲覧日:2022年11月9日)
法務省出入国在留管理庁「留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン」,https://www.jetro.go.jp/ext_images/jetro/activities/support/ryugakusei/pdf/report_20190228/4-5.pdf(閲覧日:2022年11月9日)
出入国在留管理庁「就労資格の在留諸申請に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)」,2021年3月公表,https://www.moj.go.jp/isa/content/001344550.pdf(閲覧日:2022年11月11日)

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