この記事を読むと、次のことが分かります。
・特定技能2号の今後
・特定技能2号の対象となる分野
・特定技能2号の対象分野が拡大される時期
・特定技能1号から2号への移行によって変わること
・特定技能2号外国人を採用する企業に求められる要件
2023年6月9日、特定技能2号の対象分野が拡大することがほぼ確定となりました。現在は2分野しか認められていない特定技能2号ですが、今後は11分野に拡大されることになります。つまり、特定技能1号で認められている全ての分野で、長期就労が可能となるのです。
本稿では、特定技能2号における対象分野拡大の具体的な内容や、それに伴う変化について詳しく解説します。現段階ではまだ明らかになっていないこともあります。2号特定技能外国人の雇用を検討している場合は、今後の動きにも注目しておきましょう。
目次
1. 特定技能2号の対象分野は大幅に拡大する!現状と今後
2023年6月9日、特定技能2号の対象分野拡大が閣議決定されました。これにより、特定技能2号の対象分野拡大がほぼ確定となりました。
特定技能2号は、2019年4月に作られた在留資格で、高い技術力を持つ外国人が、建設もしくは造船・船用工業の分野で働くために必要です。建設および造船・船用工業の分野に限定されていることもあり、特定技能2号を取得した外国人は2022年12月末時点で8人と非常に少ない状況です[1]。
少子高齢化が進む日本では、現在、多くの業界・分野で人手不足が深刻化しています。人手不足を解消するために特定技能2号の対象分野を拡大しようとする動きは、以前からありました。人手不足に悩む業界から「特定技能2号の対象分野を拡大してほしい」という要望が出ていたのも事実です。
しかし、特定技能2号の在留資格は更新を繰り返すことで上限なく日本に滞在できるため、「事実上の移民政策につながる」といった意見もあり、慎重に議論されてきました。
この度の閣議決定で、政府は特定技能2号の対象分野拡大に向けて大きく歩みを進めることになります。特定技能2号の対象分野が拡大されると、人手不足に悩む業界において人材を確保しやすくなり、人手不足の解消につながると期待されています。
2. 特定技能2号対象分野拡大の具体的な内容
ここからは、特定技能2号における対象分野拡大の具体的な内容について見ていきましょう。
2-1. 特定技能2号の対象となる分野は計11に拡大
現在、特定技能1号の対象となっている分野は12あり、このうち特定技能2号の対象にもなっているのは、建設および造船・舶用工業(溶接区分)の2分野です。
それ以外の10分野のうち、介護以外の9分野が、特定技能2号の対象に追加されることになります。具体的には、ビルクリーニング、飲食料品製造業、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、農業、漁業、自動車整備、航空、宿泊、外食業です。
また現在は溶接区分のみが特定技能2号の対象となっている造船・舶用工業においても、全ての業務区分が特定技能2号の対象になります。
ただし、特定技能1号の対象分野のうち、介護だけは特定技能2号の対象になりません。その理由は、介護分野には専門的な技能が必要な「介護」という在留資格が存在するからです。
介護の在留資格は、介護福祉士資格を取得すると申請できます。介護福祉士として働く場合、在留期間を更新し続けることで事実上、制限なく日本に滞在できます。長期にわたって介護分野で働ける在留資格がすでにあるため、今回追加される特定技能2号の対象分野には含まれないということです。
2-2. 特定技能2号の対象分野が拡大される時期の見通し
特定技能2号の対象分野が拡大される時期は、現段階では未定です。省令などの改正が行われ、その施行にともない開始されることになっています。
なお、一部メディアによると、2023年秋には特定技能2号の技能水準を確認するための試験が始まり、2024年5月以降には、試験に合格した人の在留資格が特定技能2号へ移行される見通しとのことです。
今後、特定技能2号の対象分野拡大は着々と進んでいくと考えられます。2号特定技能外国人の雇用を検討している場合は、制度を正しく理解し、体制を整えておくとよいでしょう。
3. 特定技能1号から2号へ移行すると何が変わる?
在留資格を特定技能1号から2号へ移行すると、在留期間と家族帯同に関することが変わります。
特定技能1号の場合、在留期間は通算5年が上限です。一方、特定技能2号に移行すると、在留資格を更新すれば上限なく日本に滞在できるようになります。業務に精通し日本での生活に慣れている外国人材を長く活用できることは、受入れ企業にとって大きなメリットになるでしょう。
また特定技能1号の場合、自国にいる家族を呼び寄せることはできません。一方で、特定技能2号の場合は、配偶者と子どもに限り、日本に呼び寄せることが可能です。長年家族と離れて生活するのは、外国人にとって大きな負担になると想像されます。
特定技能2号を取得できれば、家族と生活しながら働けるため、外国人の生活や精神状態に安定をもたらすでしょう。受入れ企業にとっても長く安定的に働いてもらえることで、人手不足の解消につながりやすくなると考えられます。
このように特定技能1号から2号へ移行することで、外国人が日本で長期的に働きやすい環境が整います。受入れ企業としても、技能の高い人材を長期にわたって確保できる、安定的に働いてもらえるといったメリットが期待できるのです。
4. 特定技能2号の外国人を採用する企業が満たすべき要件とは
人手不足解消につながるのなら、自社でも2号特定技能外国人を雇用したいと考える企業もあるかもしれません。とはいえ、どのような企業でも特定技能2号を雇用できるわけではなく、満たさなければならない要件が定められています。
具体的には、特定技能基準省令第2条に規定されている基準を満たすことが必要です。また、その前提として特定技能雇用契約の内容(出入国管理及び難民認定法[入管法]第2条の5第1項、特定技能基準省令第1条)も規定に沿っていなければなりません。
例えば以下のような基準があります。
・自社で外国人が行う業務が、特定技能2号の対象分野であること
・外国人であることを理由に、労働条件や福利厚生などにおいて差別的な扱いをしないこと
・労働関係法令や社会保険関係法令などの法令に違反していないこと
受入れ企業に求められる要件は、項目ごとに細かく規定されています。「特定技能外国人受入れに関する運用要領」第5章も確認しておきましょう。
参考) 出入国在留管理庁|特定技能外国人受入れに関する運用要領はこちら https://www.moj.go.jp/isa/content/930004944.pdf
5. 特定技能制度は今後も見直される可能性が高い!
特定技能制度については以前より見直しの必要性が認識されており、2022年12月から2023年6月の間に計8回の「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が開催されました。
この会議では、外国人を日本の産業や経済を支える一員であるとし、そのような外国人を適正に受入れるために必要であろう制度の見直しについて議論しています。具体的には、外国人が中長期的に活躍できる制度の構築や、受入れ見込み数の設定プロセスの透明化といったことが議論されているようです。
外国人の人権に配慮し、外国人が技能を最大限発揮できるよう、制度の見直しが進められています。
今後も多様性に富んだ社会の実現に向けて、特定技能制度の見直しが行われる可能性は高いと思われます。外国人を雇用したいと考えている企業の担当者は、新しい情報をしっかりとキャッチアップできるよう努めましょう。
6. まとめ
2023年6月9日、特定技能2号の対象分野拡大が閣議決定されました。これにより、特定技能2号の対象分野拡大がほぼ確定となりました。
少子高齢化が進む日本では、現在、多くの業界・分野で人手不足が深刻化しています。人手不足を解消するために特定技能2号の対象分野を拡大しようとする動きは以前からありましたが、慎重論もあり議論が重ねられてきました。
この度の閣議決定で、政府は特定技能2号の対象分野拡大に向けて大きく歩みを進めることになります。
特定技能2号の対象になるのは、ビルクリーニング、飲食料品製造業、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、農業、漁業、自動車整備、航空、宿泊、外食業の9分野です。
造船・舶用工業においても、全ての業務区分が特定技能2号の対象となり、特定技能1号で認められている12分野のうち11分野が特定技能2号に移行できるようになります。
特定技能1号の対象分野でありながら唯一特定技能2号の対象にならないのが、介護分野です。その理由は、介護分野で長期にわたって働ける在留資格「介護」がすでにあるからです。
特定技能2号の対象分野が拡大される時期は、現段階では未定です。省令などの改正が行われ、その施行にともない開始されることになっています。
在留資格を特定技能1号から2号へ移行すると、在留期間と家族帯同に関することが変わります。
特定技能1号の場合、在留期間は通算5年が上限です。一方、特定技能2号に移行すると、在留資格を更新すれば上限なく日本に滞在できるようになります。
また特定技能1号の場合、自国にいる家族を呼び寄せることはできません。一方で、特定技能2号の場合は、配偶者と子どもに限り、日本に呼び寄せることが可能です。
このように特定技能1号から2号へ移行することで、外国人が日本で長期的に働きやすい環境が整います。受入れ企業としても、技能の高い人材を長期にわたって確保できる、安定的に働いてもらえるといったメリットが期待できるのです。
2号特定技能外国人を雇用したいと考える企業は、特定技能基準省令第2条に規定されている基準を満たすことが必要です。またその前提として、特定技能雇用契約の内容(入管法第2条の5第1項、特定技能基準省令第1条)も規定に沿っていなければなりません。
特定技能制度については以前より見直しの必要性が認識されており、「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が計8回開催されています。この会議では、外国人の人権に配慮し、外国人が技能を最大限発揮できるよう、制度の見直しが進められています。
今後も多様性に富んだ社会の実現に向けて、特定技能制度の見直しが行われる可能性は高いと思われます。2号特定技能外国人の雇用を検討している場合は、今後の動向にも注目しておきましょう。
[1] 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数(令和4年12月末現在)概要版」,https://www.moj.go.jp/isa/content/001389884.pdf(閲覧日:2023年6月13日)
参考)
読売新聞「外国人労働者の特定技能「2号」、ビル清掃・農業・外食など11分野へ拡大…自民党が了承」,2023年5月23日,https://www.yomiuri.co.jp/politics/20230523-OYT1T50138/(閲覧日:2023年6月13日)
読売新聞「永住の道も開ける特定技能「2号」、11分野へ拡大を閣議決定」,2023年6月9日,https://www.yomiuri.co.jp/politics/20230609-OYT1T50114/(閲覧日:2023年6月13日)
NHK「事実上無期限に滞在できる「特定技能2号」業種拡大案 自民了承」,2023年5月23日,https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230523/k10014075591000.html(閲覧日:2023年6月13日)
出入国在留管理庁「在留資格「介護」」,https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/nursingcare.html(閲覧日:2023年6月13日)
出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議 」,https://www.moj.go.jp/isa/policies/policies/03_00033.html (閲覧日:2023年6月13日)
出入国在留管理庁「中間報告書(概要)(技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議)」,2023年5月11日,https://www.moj.go.jp/isa/content/001395647.pdf(閲覧日:2023年6月13日)
出入国在留管理庁「特定技能2号の対象分野の追加について(令和5年6月9日閣議決定)」,https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/03_00067.html(閲覧日:2023年6月13日)