この記事を読むと、次のことが分かります。
・技能実習生を採用する流れ
・技能実習制度に関与する人や機関
・技能実習制度の概要
・技能実習制度の今後
実務上、個別具体のトピックで悩むことが多いと思いますが、実は一つの課題には多くの周辺事項が存在しています。周辺事項も含めてまとまった情報を理解する、あるいは参照する方が、結果的な業務効率はアップします。
本ブログでは、毎日多数の問い合わせに対応している実績を基に、企業の担当者が押さえておくとよい情報を、分かりやすくかつ網羅的にお届けします。 ぜひ参考にしてください。
技能実習制度は1993年にスタートした制度で、当初は日本の労働関係法令が適用されない研修生として扱われたため、低賃金・長時間労働などの過酷な環境が問題視されていました。
その後研修生の人権を守るため法改正が続き、2010年には在留資格「技能実習」の創設、2017年には「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」の施行と、技能実習生の保護と適正な受入れ体制が強化されました。
政府の取り組みの結果、技能実習生数は2011年から2020年まで増加、近年はコロナ禍の影響を受けつつも若干の減少にとどまっています。
グラフ)在留資格別外国人労働者数の推移
厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和3年10月末現在)」,2022年1月28日公表,p2を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000887554.pdf(閲覧日:2022年11月10日)
2021年の調査では外国人労働者172万7,221人のうち技能実習生は35万1,788人と、全体の20.4%を占め、在留資格別では第3位[1]に位置しています。
このように技能実習生は身近な存在になっており、受入れを検討する企業も多いのではないでしょうか。しかし、初めて技能実習生を受入れる場合は、どこから初めてよいか不安に思うことがあるかと思います。
まずは、「人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転による国際協力を推進することを目的とする」(技能実習法第1条)という技能実習制度の根幹を理解することが大切です。正しい知識を持って、技能実習制度を適切に活用しましょう。
本稿では、技能実習制度の基礎知識を分かりやすく丁寧に解説します。
目次
1. 技能実習生の採用から実習修了までの流れ
技能実習生を採用する際の流れから見ていきましょう。
1-1. 技能実習生の採用から入国まで
技能実習生の採用は、監理団体を介して行われるのが一般的です。主なステップは以下の通りです。
1.監理団体へ技能実習生を受入れたいと申し込む
2.監理団体や送出機関からの紹介で、技能実習候補生と面接をする
3.採用が決まったら技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構(OTIT)に申請する
4.技能実習計画が認定されたら、出入国在留管理庁に在留資格認定証明書の交付申請をする
5.在外公館で交付された在留資格認定証明書を提示し、査証(ビザ)の発給を受ける
6. 技能実習生が日本に入国する
「技能実習計画」とは、どのような技能実習を行うのかを記載した計画書です。入国前の段階では、「技能実習1号」として実習を行うための計画を記載します。この技能実習計画について認定が得られないと、在留資格の取得申請ができず、技能実習生を入国させることができません(技能実習法第8条第1項)。
技能実習計画の認定を受けたら、技能実習1号の在留資格を取得するために出入国在留管理庁に在留資格認定証明書の交付を申請します。在留資格認定証明書が交付されたら、在外公館で提示し、査証(ビザ)を申請します。査証(ビザ)発給完了後、技能実習生は日本に入国できるようになります。
監理団体や送出機関、外国人技能実習機構といった用語については、2章で解説します。
1-2. 入国から入国後講習まで
技能実習生を受入れる企業は、技能実習生が日本での生活を安全かつ健康的に送れるように準備する必要があります。具体的には住居の確保や水道・電気・ガスなどの手続き、生活に必要な物品の手配などです。
技能実習生を保護する観点から、特に住居については、さまざまな条件が定められています。例えば、寝室については1人当たり4.5平方メートル以上を確保することや、採暖設備があることなどです。(出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度運用要領~関係者の皆さまへ~」(以下、「技能実習制度運用要領」),p98~101)。
技能実習制度では、技能実習生が入国したらすぐに実習を始められるわけではありません。最初の1カ月程度は、日本語や生活のルール、業務で必要な基礎知識などを学ぶ「入国後講習」を受けます。
監理団体を介して技能実習生を採用する場合は、監理団体が講習を行います。監理団体を介さない場合は、受入れる企業が講習を行うことが必要です。
1-3. 1号技能実習の開始から修了まで
入国後講習を終えたら、いよいよ技能実習が始まります。最初の1年間は技能実習1号の在留資格で実習を行いますが、在留期間を2年延長するためには実習期間中に「技能実習2号」への移行手続きが必要です。具体的には以下の通りです。
・「技能検定(基礎級)」または「技能実習評価試験(初級)」の受検
・技能実習2号として実習するための技能実習計画の認定申請
・技能実習2号へ在留資格を変更するための許可申請
技能実習2号に移行するためには、技能検定(基礎級)、または技能実習評価試験(初級)の実技・学科試験の合格が必要です。
技能実習2号に移行せず1年で帰国する場合でも、技能実習計画において、習得をさせる技能などに係る基礎級の技能検定、またはこれに相当する技能実習評価試験の実技試験および学科試験の合格を目標として掲げた場合には、いずれかの受検が義務付けられます。
ただし、技能実習計画において、習得をさせる技能などを要する具体的な業務ができるようになることおよび当該技能などに関する知識の習得を目標とした場合には、技能検定などの受検は義務付けられません(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則(技能実習法施行規則)第10条第1項第1号イ、ロ)。
技能検定(基礎級)または技能実習評価試験(初級)は1号技能実習修了の2~3カ月前までに受検することが推奨されているため、1号技能実習計画の認定を受けた段階で受検を申請しておくとスムーズでしょう。
不合格の場合は、1回限り再受検が認められます。再受検の日程も考慮し、遅くても1号技能実習修了の6カ月前までには、技能検定(基礎級)または技能実習評価試験(初級)の受検を申請しましょう。
また、2号技能実習を開始する予定日の3カ月前までに、2号技能実習に関する技能実習計画の認定を申請しなければなりません。認定に必要な期間は2カ月程度とされていますが、これ以上かかることもあるのでゆとりをもって申請しましょう。
なお、2号(および3号)技能実習を行うためには、習得を目指す技能が「移行対象職種・作業」である必要があります。技能実習の職種・作業については、5章で詳しく解説しています。
技能実習計画が認定されたら、必要書類をそろえて地方出入国在留管理局に「在留資格変更許可申請」を行います。許可が下りるまでの日数は2週間~1カ月ほどが目安です。技能実習計画の認定後、早めに在留資格変更の許可申請を済ませておきましょう。
1-4. 2号技能実習修了まで
在留資格が技能実習2号に変更されれば、2年目、3年目も実習を継続できます。4年目以降も実習を続けたい場合は「技能実習3号」への移行が必要なため、2号技能実習期間中に以下の手続きを行います。
・「技能検定(随時3級)」または「技能実習評価試験(専門級)」の受検
・技能実習3号として実習するための技能実習計画の認定申請
・技能実習3号へ在留資格を変更するための許可申請
3号技能実習を始めるためには、技能検定(随時3級)、または技能実習評価試験(専門級)の実技試験に合格する必要があります。2号技能実習修了の2~6カ月前までに受検することが推奨されているため、技能実習2号の技能実習計画の認定を受けた段階で速やかに受検を申請しましょう。
遅くても、2号技能実習を修了する12カ月前までには申請を行うようにしてください。不合格の場合は2号技能実習期間中1回の再受検が可能です。
ちなみに技能実習2号としての実習修了後、技能実習3号へ移行せずに帰国することも可能です。この場合も、技能検定試験(随時3級)、または技能実習評価試験(専門級)の受検が義務付けられていますが(技能実習法施行規則第10条第1項第2号)、結果は問われないので不合格であっても帰国できます。
技能実習2号から技能実習3号に移行する場合も、技能実習計画の認定申請と在留資格変更許可申請が必要です。
技能実習計画の認定申請は実習開始予定日の6カ月前から可能で、原則として3号技能実習開始予定日の4カ月前までに3号技能実習に関する技能実習計画の認定申請を行います。認定後は速やかに、在留資格変更許可申請を行いましょう。
1-5. その後(3号技能実習、特定技能)
在留資格の変更が許可されたら、技能実習3号として4年目、5年目も実習を継続できます。ただし、技能実習3号に移行した技能実習生は、3号技能実習開始前1カ月以上、または3号技能実習開始後1年以内に1カ月以上1年未満帰国しなくてはなりません。
また、技能実習3号は実習修了までに「技能検定(随時2級)」または「技能実習評価試験(上級)」の実技試験を受検することが義務付けられています(技能実習法施行規則第10条第1項第3号)。遅くとも実習修了の12カ月前までには受検を申し込みましょう。
この試験は、3号技能実習を修了し帰国するために受検します。受検すれば、結果が合格であっても不合格であっても帰国できます。
2号技能実習を修了した人の中には、技能実習3号ではなく特定技能の在留資格に移行する人も少なくありません。特定技能とは介護や建設など人手不足が深刻な産業分野において、一定の専門性・技術を持つ外国人の就労を認める在留資格です。
技能実習2号から特定技能に移行するための要件は、2号技能実習を良好に修了し、2号技能実習の職種・作業で習得した技能と、特定技能へ移行した場合の業務内容に関連性があることです(出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(以下「上陸基準省令」)「特定技能1号」)。
通常、特定技能の在留資格を得るためには以下の要件を満たす必要があります。
(1)従事しようとする業務に必要な相当程度の知識又は経験を必要とする技能を有していることが試験その他の評価方法により証明されていること。
(2)本邦での生活に必要な日本語能力及び従事しようとする業務に必要な日本語能力を有していることが試験その他の評価方法により証明されていること。 (上陸基準省令「特定技能1号」)
2号技能実習を良好に修了し、2号技能実習の職種・作業で習得した技能と、特定技能へ移行した場合の業務内容に関連性がある場合、上記(1)(2)の取得要件が免除され、在留資格を「特定技能1号」に移行するだけで最長5年まで在留期間を延長できます。
一方、2号技能実習を良好に修了していても、2号技能実習の職種・作業で習得した技能と、特定技能へ移行した場合の業務内容に関連性が認められない場合は、(2)しか免除されません。よって移行には、必要な知識や技能を有していることを証明するため技能試験への合格が必要です。
技能実習生の希望を尊重し、適切な手続きを行うようにしましょう。
1-6. 帰国
実習期間を修了したら、技能実習生は帰国することになります。帰国する際に必要な主な手続きは以下の通りです。
【企業側が行う手続き】
・「外国人雇用状況の届出」をハローワークに提出する
・最終月の賃金は日割りで計算し、手渡しできるよう準備をする
・帰国前に年末調整を済ませ、所得税を清算する
・住民税を清算する
・社会保険喪失の手続きをする
・健康保険証や社員証などを回収する
【外国人材本人が行う手続き】
・市区町村へ転出届を提出する
・賃金振込み用の銀行口座を解約する
・携帯電話やインターネットなどを解約する
・「所属機関等に関する届出」を地方出入国在留管理局に提出する
・加入期間などの要件を満たしている場合、日本年金機構に厚生年金などの脱退一時金を請求する
・退職所得の選択課税制度を利用して脱退一時金の源泉所得税の還付を受ける
基本的な手続きは日本人従業員の場合と同じですが、外国人雇用状況の届出など外国人ならではの手続きもあります。外国人雇用状況の届出は、原則として技能実習生が雇用保険の被保険者である場合は離職日の翌日から10日以内、雇用保険の被保険者でない場合は離職日の翌月末日までに提出してください。
なお、届け出を怠ると30万円以下の罰金が科されるので注意しましょう(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)第40条第1項第2号)。
2. 技能実習生の採用に関与する機関
技能実習制度を活用して実習生を採用する際、さまざまな人や機関が関わります。ここからは、技能実習制度における関係者・関係機関をまとめて紹介します。
2-1. 技能実習生
技能実習生とは、技能実習制度を利用し、日本の公私の機関との雇用契約に基づいて当該機関の日本にある事業所において技能など(技能、技術または知識)の習得に係る業務に従事する外国人です。
団体監理型と企業単独型の技能実習があり、企業単独型による技能実習生を「企業単独型技能実習生」(技能実習法第2条第3項)、団体監理型による技能実習生を「団体監理型技能実習生」(技能実習法第2条第5項)といいます。団体監理型技能実習と企業単独型技能実習については、4章にて説明しています。
2022年6月末時点では、技能実習生32万7,689人のうち55.5%がベトナム人、12.0%がインドネシア人、11.0%が中国人となっており、アジア出身者が多くを占めています。職種別では建設や食品製造、機械・金属が多い傾向にありますが、農業や繊維・衣服、漁業など幅広い分野で活躍しています[2]。
2-2. 実習実施者
実習実施者とは、技能実習生を受入れる企業です。技能実習法において実習実施者(受入れ企業)の責務は、以下のように定められています(技能実習法第5条)。
実習実施者は、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護について技能実習を行わせる者としての責任を自覚し、第三条の基本理念にのっとり、技能実習を行わせる環境の整備に努めるとともに、国及び地方公共団体が講ずる施策に協力しなければならない。
このことからも分かる通り、実習実施者には適切な技能実習の実施と技能実習生の保護が義務付けられています。
2-3. 監理団体
監理団体(技能実習法第2条第10項)とは、技能実習生や実習実施者(受入れ企業)をサポートする非営利団体(事業協同組合など)です。
監理団体になるには、法律によって定められているさまざまな基準を満たし、法務大臣と厚生労働大臣に監理事業を行うことの許可を得ている必要があります(技能実習法第25条、同第23条第1項)。
監理団体による技能実習生や実習実施者へのサポートには、以下のようなことが挙げられます。
・外国の送出機関と連携し、技能実習生と実習実施者の取り次ぎをする
・採用に関する調整や手続きを行う
・技能実習生の入国後講習を実施する
・技能実習計画の作成を指導する
・実習が技能実習計画に沿って行われているか、監査・指導する
2-4. 外国の送出機関
外国の送出機関とは、技術を習得するために日本に在留したい外国人を現地で募集し、日本へ送り出す機関です。「技能実習制度運用要領」によると、以下のように定義付けられています。
技能実習生が国籍又は住所を有する国又は地域の所属機関や団体監理型技能実習生になろうとする者からの団体監理型技能実習に係る求職の申込みを本邦の監理団体に取り次ぐ者[3]
送出機関は以下のような役割を担っています。
・実習実施者(受入れ企業)の要望に合う技能実習生を選ぶ
・技能実習生を送り出す前に日本語やマナーなどの講習を実施する
・技能実習生の健康診断を実施する
・技能実習生のパスポート申請を行う
2-5. 外国人技能実習機構
外国人技能実習機構は、技能実習制度の適正な実施と技能実習生の保護のために作られた機関です。本部は東京にあり、全国13カ所に地方事務所や支所を設置して業務を行っています。
外国人技能実習機構は以下のような業務に携わっています。
・実習実施者(受入れ企業)が作成した技能実習計画を認定する
・「実習実施者届出書」を受理する
・監理団体の許可申請を受理し、申請内容の事実関係を確認する
・技能実習生からの相談に応じる
2-6. 出入国在留管理庁・厚生労働省
法務省の外局である「出入国在留管理庁」や「厚生労働省」といった国の機関も、技能実習制度には欠かせません。
これらの機関では、制度が適切に運用されるよう法整備を行ったり、運用についての指針を示したりしています。また、外国人の在留支援や相談窓口の設置なども行っています。
2-7. 外国の準備機関
外国の準備機関は、もともと送出機関と呼ばれていた機関です。2016年に行われた技能実習法の見直しに伴い、今まで送出機関と呼ばれていた機関が送出機関と準備機関に分けられました。
技能実習制度運用要領によると、外国の準備機関は以下のように定義されています。
外国の準備機関とは、技能実習生になろうとする者の外国における準備に関与する外国の機関をいい、例えば、外国で技能実習生になろうとする者が所属していた会社や、技能実習生になろうとする者を広く対象とするような日本語学校を経営する法人、旅券や査証の取得代行手続を行う者などが含まれます[4]。
送出機関との大きな違いは「技能実習生の求職申し込みを監理団体に取り次ぐかどうか」です。準備機関は、技能実習を希望する外国人が日本に来るための準備には関わりますが、監理団体への取り次ぎ業務は行いません。
3. 技能実習生を採用することの意味
実習実施者(受入れ企業)が技能実習生を採用することには、どのような意味があるのでしょうか。ここからは技能実習制度について掘り下げて解説します。
3-1. 技能実習制度とは
技能実習制度とは、開発途上の国や地域から外国人を受入れ、日本の企業で技術や技能を身に付けてもらう、そしてその技術や技能を自国に持ち帰り自国の発展に生かしてもらうための制度です。
技能実習制度の目的は、労働力の需給調整ではありません。技術や技能を開発途上の国や地域に移転し、国際貢献につなげることを目的としています。
3-2. 技能実習生を採用するメリット
技能実習生は高い目標を持つ熱心な若者がほとんどです。そのような技能実習生が社内にいることで、雰囲気が明るくなったりコミュニケーションが活発になったりすることもあります。業務以外の部分でもメリットが期待できるでしょう。
3-3. 技能実習生を採用する際の注意点
技能実習生を採用する際、実習実施者(受入れ企業)は「技能実習生が技術や技能を学びに来ていること」を念頭に置き、適切にサポートするようにしましょう。技能実習生は業務を行いながら技術や技能を学ぶので、働き方にも注意が必要です。過度の時間外労働や賃金の未払いには特に注意し、労働関係法令を守ってください。
また、暴言や暴力、貴重品の取り上げなど、人権侵害となるような行為はあってはなりません。このような事態が一切起こらないよう、日本人従業員にも技能実習生の受入れを理解してもらい、技能実習生を温かく迎えられるよう努めましょう。
3-4. 技能実習生を採用するために必要な費用
入国の準備にかかる費用や入国後講習中の生活費など、技能実習生の採用に関わるほとんどの費用は実習実施者(受入れ企業)の負担となります。1人の採用に40~90万円ほど必要です。費用の目安にこれほどの幅があるのは、関与する送出機関や監理団体によって大きく費用が異なるためです。
参考として、監理団体が実習実施者から徴収する監理費の平均値を見ていきましょう。
図)監理費の平均値
初期費用 (一人当たりの徴収額) (n=631) | 定期費用(1号) (一人当たりの月額) (n=631) | 定期費用(2号) (一人当たりの月額) (n=631) | 定期費用(3号) (一人当たりの月額) (n=386) | 不定期費用 (一人当たりの徴収額) (n=631) |
341,402 | 30,551 | 29,096 | 23,971 | 154,780 |
(注1) 監理団体が技能実習法令に規定する監理事業(実習生のあっせん及び実習監理)を行う上で、通常要する費用として実習実施者から徴収する経費(実費に限る。)であり、職業紹介費・講習費・監査指導費等が該当する。
(注2) 用語の説明
〇初期費用:監理団体が実習実施者から、外国人技能実習生1名を受け入れる際に最初に徴収する監理費
〇定期費用:監理団体が実習実施者から、定期的にきまって徴収する監理費
〇不定期費用:監理団体が実習実施者から、費用の発生ごとに徴収する監理費
外国人技能実習機構「監理団体が実習実施者から徴収する監理費等の費用に係るアンケート調査について(結果の概要)」,2022年1月24日公表を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.otit.go.jp/files/user/220124-1.pdf(閲覧日:2022年11月8日)
初期費用には入国後講習にかかった費用など、定期費用には送出機関に支払う費用など、不定期費用には一時帰国にかかる費用などが含まれます。これらを合計すると、技能実習生1人につき技能実習2号(3年間)までに約141万円、技能実習3号(5年間)までに約198万円かかるのが平均です。
また、採用後は日本人を雇用した場合と同様、社会保険料や通勤のための交通費なども必要です。
4. 技能実習生を採用する方法
技能実習制度を利用して技能実習生を受入れる方法には、団体監理型と企業単独型の2つがあります。国際人材協力機構(JITCO)によると2021年末時点で、団体監理型の受入れが98.6%、企業単独型の受入れが1.4%となっており[5]、技能実習生の受入れはほぼ団体監理型で行われていることが分かります。
ここからは、それぞれの方法について詳しく解説しましょう。
4-1. 団体監理型
団体監理型技能実習は、日本の営利を目的としない法人(事業協同組合など)により受入れられて必要な講習を受けた技能実習生が、当該法人による実習監理を受ける日本の機関で業務に従事する制度です(技能実習法第2条第4項)。
図)団体監理型技能実習
「技能実習生を受入れたい」と考えた実習実施者(受入れ企業)は、監理団体に希望の人数や雇用条件、実習内容などを伝えます。そうすると、監理団体が現地の送出機関と連絡を取り、条件に合う人材を企業に紹介してくれるという仕組みです。
監理団体を利用する際は、あらかじめ登録などをしておく必要があります。また入会金や年会費、監理費などの費用もかかります。
例えば、事業協同組合が監理団体の許可を取得して監理団体として活動している場合、実習実施者は当該事業協同組合の組合員となり、監理団体である当該事業協同組合から実習監理などを受けることで、技能実習生の受入れが可能になります。事業協同組合の組合員になるには出資金が必要です。
これらは優秀な技能実習生を紹介してもらうには必要な費用といえますが、予算なども考慮し自社に最適な監理団体を選ぶことが大切です。
4-2. 企業単独型
企業単独型技能実習は、日本の機関の外国にある事業所などの職員が日本の当該機関に受入れられ、技能などを習得するため、日本の当該機関で講習を受けて、技能などに係る業務に従事する制度です(技能実習法第2条第2項)。つまり監理団体を経由せず、実習実施者(受入れ企業)が直接、技能実習生を受入れるということです。
図)企業単独型技能実習
そのため、実習実施者は人柄など技能実習生をよく知った上で受入れることができます。また監理団体を介さないので、入会金や年会費、監理費などの費用も発生しません。
なお、企業単独型で受入れた技能実習生は、帰国後も現地にある自社の支店や関連会社などで働きます。
5. 技能実習の職種・作業
技能実習生の受入れには、技能実習計画について認定を受けることが必要です。
認定を受けるためには、技能実習計画において、習得させる技能などが技能実習生の本国において習得困難なものであること(技能実習法第9条第1号)や、技能実習の目標および内容が基準に適合していること(技能実習法第9条第2号)が求められます。
このうち、技能実習の内容については、移転すべき技能と認められるか否かという観点から習得する技能などの基準が定められています(技能実習法施行規則第10条第2項)。これは、技能実習制度が労働力確保ではなく、人材育成を通じた開発途上国・地域への技能、技術または知識の移転による国際協力を推進するための制度であるからです。
ここからは職種や作業の観点から技能実習制度を解説します。
まず、技能実習1号から技能実習3号までに共通する基準として、同一の作業の反復のみによって習得できるものではないことが求められます(技能実習法施行規則第10条第2項第1号イ)(5-3. 参照)。
これに加えて、技能実習2号および技能実習3号については、移行対象職種・作業であることが求められます(技能実習法施行規則第10条第2項第1号ロ)。
5-1. 移行対象職種・作業とは
移行対象職種・作業とは、技能実習1号から技能実習2号・技能実習3号に移行が認められている職種や作業を指します。
職種とは「さく井」「電気機器組立て」のようなおおまかな仕事の種類のことで、職種を細かく区別したものが作業です。例えばさく井には「パーカッション式さく井工事」「ロータリー式さく井工事」の作業といったように、使用する機器や方法の違いなどによって分類されています。
2022年4月25日時点での移行対象職種・作業の数は以下の通りです(技能実習法施行規則別表第2)[6]。
・農業関係:2職種6作業
・漁業関係:2職種10作業
・建設関係:22職種33作業
・食品製造関係:11職種18作業
・繊維・衣服関係:13職種22作業
・機械・金属関係:15職種29作業
・介護や印刷などその他:20職種37作業
・社内検定型:1職種3作業
合計:86職種158作業
5-2. 技能検定、技能実習評価試験とは
技能実習生向けの「技能検定」と「技能実習評価試験」は、いずれも技能実習生が習得した技術や技能を評価するための試験です。技能実習1号から技能実習2号、技能実習2号から技能実習3号に移行するには、所定の技能検定または技能実習評価試験に合格しなければなりません。
そもそも技能検定は技能実習生でなくても受検できる国家検定として、技能実習制度が導入される前からありました。しかし、技能検定だけでは技能実習の全ての分野をカバーすることは難しく、技能検定で評価できない部分を適正に評価するために技能実習評価試験が設けられたのです。
技能実習評価試験は「外国人自動車整備技能実習評価試験」「建設機械施工技能実習評価試験」のように、分野ごとに試験が実施され、技能検定と同様に合格すれば在留資格を移行することができます。
5-3. 移行対象ではない職種・作業でも技能実習生を採用できる?
技能実習1号として実習を行う際、必ずしも移行対象職種・作業である必要はありません。
技能実習1号の在留資格で1年以内の技能実習を認められるのは、習得をさせる技能などが技能実習生の本国において習得困難であることや、同一作業の反復のみで習得できるものではないことといった基準を満たす場合です[7]。
この場合は、技能検定や技能実習評価試験への合格を目指すというよりも、習得した技術を業務に活用できるようになることや知識を習得することを目的に実習を行います(技能実習法施行規則第10条第1項第1号ロ)。
5-4. 移行対象職種・作業で技能実習生を採用する際の注意点
移行対象職種・作業については、厚生労働省が公表している「審査基準」を満たす必要があります。審査基準では、必ず従事しなければならない「必須業務」や、必須業務と関連性がある「関連業務」「周辺業務」など、職種・作業に関して細かな要件が設定されています。
特に注意すべきは、これらの業務に割く時間です。それぞれの業務には以下のように従事する時間の割合が設定されています。
・必須業務:年間の実習時間全体の半分以上
・関連業務:年間の実習時間全体の半分以下
・周辺業務:年間の実習時間全体の3分の1以下
加えて、全ての業務において「安全衛生業務」を実施することが必要です。これについても、各業務の10分の1以上の時間を割くことが義務付けられていますので注意しましょう。
6. 技能実習生を採用できる人数枠
技能実習を適正に実施したり技能実習生を保護したりするために、実習実施者(受入れ企業)が採用できる技能実習生の人数には上限があります(技能実習法第9条第11号、技能実習法施行規則第16条)。
人数枠については、技能実習法施行規則第16条により原則型が規定されています。また、介護、建設分野といった特定の職種・作業に係る技能実習の場合は、別途人数枠が定められています(技能実習法施行規則第16条第3項)。
基本の人数枠は以下の通りです。
図)基本の人数枠
申請者の常勤の職員の総数 | 技能実習生の数 |
301人以上 | 申請者の常勤の職員の総数の20分の1 |
201人以上300人以下 | 15人 |
101人以上200人以下 | 10人 |
51人以上100人以下 | 6人 |
41人以上50人以下 | 5人 |
31人以上40人以下 | 4人 |
30人以下 | 3人 |
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度運用要領」,2022年10月公表,p120を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005219.pdf(閲覧日:2022年11月2日)
6-1. 優良認定を受けていない実習実施者の場合
実習実施者(受入れ企業)は、主務省令で定める基準に適合し「技能を習得させる能力などが高い」と評価された「優良な実習実施者」と、そうではない実習実施者に分けられます。優良な実習実施者と認められるためには、要件を満たした上で「優良要件適合申告書」を外国人技能実習機構に提出する必要があります。
優良認定を受けていない実習実施者が団体監理型で受入れを行う場合の人数枠は下図の通りです。
図)【団体監理型】優良認定を受けていない実習実施者の人数枠
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度運用要領」,2022年10月公表,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005219.pdf(閲覧日:2022年11月2日)
なお、上の図に「第3号」がないのは、優良認定を受けていない実習実施者は、技能実習3号を受入れることができないためです。技能実習3号を受入れるためには、実習実施者と監理団体、双方が優良認定を受けている必要があります。
つまり、優良認定を受けていない実習実施者が4年以上技能実習生を雇用したい場合、自社が優良認定を受けたうえで、優良と判断されて一般監理事業の許可を受けている監理団体(以下「優良な監理団体」)による実習監理を受けることが必要です。
参考)「優良な監理団体」とは、技能実習の監査やその他の業務を遂行する能力を高く評価され、「一般監理事業」の許可を受けた監理団体です。技能実習生を4年以上の長期で受入れたい場合は、一般監理事業の許可を受けたの監理団体(優良な監理団体)を選びましょう。
優良認定されていない実習実施者が企業単独型で受入れる場合の人数枠は下図の通りです。団体監理型と同様に、技能実習2号までしか受入れることができません。
図)【企業単独型】優良認定を受けていない実習実施者の人数枠
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度運用要領」,2022年10月公表,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005219.pdf(閲覧日:2022年11月2日)
6-2. 優良認定を受けている実習実施者の場合
優良認定を受けている実習実施者(受入れ企業)が、一般監理事業の許可を有する監理団体(優良な監理団体)から実習監理を受けて団体監理型で技能実習生を受入れる場合、優良認定を受けていない場合に比べて人数枠が拡大します。具体的には、技能実習1号が基本人数枠の2倍、技能実習2号が基本人数枠の4倍です。
併せて、技能実習3号の受入れも可能になります。受入れられる人数は基本人数枠の6倍です。
図)【団体監理型】優良認定を受けている実習実施者×監理団体の場合の人数枠
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度運用要領」,2022年10月公表,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005219.pdf(閲覧日:2022年11月2日)
なお、実習実施者だけが優良認定を受けている場合は、人数枠の拡大や技能実習3号の受入れが認められません。これらが認められるには、実習実施者が優良認定を受けているとともに、監理団体も優良であると判断されて一般監理事業の許可を受けている優良な監理団体である必要があります。
優良認定を受けている実習実施者が企業単独型で受入れる場合の人数枠は、下図の通りです。企業単独型の場合、実習実施者が優良認定を受けていれば技能実習3号まで受入れることができます。
図)【企業単独型】優良認定を受けている実習実施者の人数枠
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度運用要領」,2022年10月公表,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005219.pdf(閲覧日:2022年11月2日)
ただし、団体監理型技能実習、企業単独型技能実習のいずれの場合も、以下の人数を超えてはなりません。
・ 技能実習1号:常勤職員の総数
・ 技能実習2号:常勤職員の総数の2倍
・ 技能実習3号:常勤職員の総数の3倍
6-3. 介護職の場合
介護職の場合は、一般的な業種と異なる人数枠が設けられています。採用できる技能実習生の人数は、以下のように事業所単位の常勤介護職員数によって細かく設定されています。
厚生労働省「技能実習「介護」における固有要件について」を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000182392.pdf(閲覧日:2022年11月2日)
6-4. 建設分野の場合
建設分野では、2022年4月1日より技能実習生の人数枠が見直されています。
これまでより受入れ人数が制限され、実習実施者(受入れ企業)が技能実習計画の業種の欄で日本標準産業分類D「建設業」を選択している場合に限り、規則で定める原則型(6-1. 6-2. 参照)の上限に加え、技能実習生の総数が常勤職員の総数を超えることができないこととされています(告示第3条)。
ただし、企業単独型技能実習にあって優良な実習実施者である場合、団体監理型技能実習にあって優良な実習実施者であり、かつ監理団体も優良な監理団体である場合については、「技能実習生の数が常勤職員の総数を超えないこと」という要件は課されず、規則で定める原則型(6-2. 参照)の通りとなります。
参考)
出入国在留管理庁・厚生労働省・国土交通省「特定の職種及作業に係る技能実習制度運用要領-建設関係職種等の基準について」,2019年8月公表,phttps://www.otit.go.jp/files/user/201225-1.pdf(閲覧日:2023年2月10日)
7. 技能実習制度の今後について
最後に、技能実習制度が今後どうなるのかについて触れておきましょう。
7-1. 見直し
日本で働きながら技術や技能を学ぶ技能実習制度には、開発途上の国や地域の人材を育成するという重要な目的があります。その一方で、国内での労働力不足が深刻な職種においては、労働力確保の手段となっている実態があるのも事実です。
2022年7月に法務大臣が、本来の目的と実態とのズレについて言及し、制度の見直しを検討する必要があると表明しています。
見直しの具体的な内容やスケジュールについては未定ですが、今後、制度が見直される可能性があります。見直しを検討していくに当たっては、技能実習制度が日本への人の移動の中で果たしていた役割を再認識する必要があるでしょう。
7-2. 今後について
技能実習制度は、日本に向けた人の移動の仕組みを社会のニーズに寄り添いながら形作ってきた制度であるといえます。誤解を受けることが多い制度ですが、悪い面だけではなく、技能実習制度が持っている保護の度合いや人材育成を中核に置いていることなど、良い面も含めて冷静に制度を捉える必要があります。
今後、日本がより多くの人材を外国から受入れるようになる中で、どういった制度が良いのか、社会全体で議論が必要な時期に差し掛かっているといえます。
8. まとめ
技能実習制度は技能、技術や知識を開発途上の国や地域に移転することによる国際協力を目的として運用されています。
技能実習制度を適切に利用し、技能実習生を採用するために、制度に関わる組織や名称の理解が不可欠です。技能実習制度は、多くの機関の連携の下で運用されています。
技能実習生は、技能実習制度を利用し、日本で技能や技術、知識を習得するために業務に従事する外国人です。その技能実習生を現地で募集するのが、送出機関です。技能実習生の求職申し込みを監理団体に取り次ぐ他、入国前に日本語やマナーの講習、健康診断などを行います。
なお、技能実習を希望する外国人が日本に来るための準備には関わりますが、求職申し込みの取り次ぎは行わない外国の機関は準備機関と呼ばれ、送出機関と区別されています。
技能実習生を受入れる企業は実習実施者といい、技能実習生が安全に業務に従事し、生活ができる環境を整える義務を負います。
一方、技能実習生や実習実施者をサポートするのが監理団体です。技能実習生と実習実施者の取り次ぎや技能実習生の採用に関する調整および手続き、技能実習が適切に行われているか定期的な監査、指導などを行います。
また、技能実習制度には、外国人技能実習機構や出入国在留管理庁、厚生労働省も関わっています。外国人技能実習機構の役割は、技能実習計画の認定、技能実習生の相談対応などです。出入国在留管理庁、厚生労働省は技能実習制度が適切に運用されるよう法整備などを行っています。
実習実施者が技能実習生を採用する際には、団体監理型と企業単独型のいずれかを選択します。団体監理型は実習実施者の要望に基づいて、監理団体が技能実習生の候補となる人材を紹介します。ただし、監理団体を利用する費用がかかります。
一方、企業単独型は監理団体を介さずに実習実施者が直接技能実習生を受入れます。そのため、監理団体に関連する費用はかかりません。
2021年末時点では、98.6%が監理団体型で技能実習生を受入れています。監理団体を介した技能実習生の採用から入国までの流れは以下の通りです。
まず、監理団体へ技能実習生の受入れを申し込み、技能実習候補生との面接を行います。採用する技能実習生が決まったら、技能実習計画書の作成と外国人技能実習機構への申請、出入国在留管理庁への在留資格認定証明書の交付申請、在外公館での査証(ビザ)の発給手続きを行う必要があります。
また、実習実施者は、住居の確保など、技能実習生が日本で安全かつ健康的に生活できる環境を準備する必要があります。
技能実習生は、実習を始める前に1カ月間ほど入国後講習を受けます。講習は監理団体型では監理団体が行いますが、企業単独型では実習実施者が行わなければなりません。
技能実習生の在留期間は最長で5年です。在留期間は、技能実習1号から2号、3号と、在留資格を移行することで延長されます。
まず、技能実習生は技能実習1号という在留資格で入国しており、在留は1年までと定められています。しかし、技能実習2号に在留資格を移行することで、在留期間を2年延長できます。
技能実習2号に移行するためには、「技能検定(基礎級)」あるいは「技能実習評定試験(初級)」の実技・学科試験への合格が必要です。技能実習生が試験に合格したら、技能実習2号の技能実習計画書の認定申請、在留資格変更許可申請を行いましょう。
なお、技能実習2号へ移行しない場合でも、技能実習計画で上述した試験の合格を目標に掲げた場合は受検が義務付けられます。一方、業務ができるようになることや知識の習得を目標とした場合、受検の義務はありません。
技能実習2号から技能実習3号に移行することで、さらに2年間、技能実習を続けることができます。また、技能実習2号から特定技能という在留資格に移行することも可能です。
技能実習3号に移行する場合は、該当技能実習生が「技能検定(随時3級)」または「技能実習評価試験(専門級)」の実技試験に合格した後、技能実習3号の技能実習計画の認定申請と在留資格変更許可申請が必要です。
なお、技能実習2号としての実習修了後、技能実習3号に移行せず帰国する場合も、上述した試験を受ける義務があります。しかし、結果は問われないため、不合格でも帰国できます。
技能実習3号に移行した技能実習生は、3号技能実習開始前1カ月以上、または3号技能実習開始後1年以内に1カ月以上1年未満の帰国が必要です。
また、3号技能実習修了までに「技能検定(随時2級)」または「技能実習評価試験(上級)」の実技試験の受検が義務付けられています。この受検は3号技能実習を修了し帰国するために行うもので、試験結果にかかわらず帰国できます。
一方、特定技能は人手不足が深刻な産業分野において、一定の専門性・技術を持つ外国人の就労を認める在留資格で、最長5年の在留が可能です。
技能実習2号から特定技能への移行には要件があり、2号技能実習を良好に修了している必要があります。
また、2号技能実習の業務内容と特定技能に移行した際の業務内容が関連している場合は技能試験と日本語試験が免除されますが、関連性がない場合は日本語試験のみ免除されるため、技能試験を受検し、合格しなければなりません。
技能実習を修了した技能実習生が帰国するに当たり、実習実施者と技能実習生本人にはそれぞれ行わなければならない手続きがあります。外国人雇用状況の届出は、日本人を雇う際には行わない手続きなので、忘れないようにしましょう。届け出を忘れると30万円以下の罰金が科せられる場合があります。
技能実習生を採用する際に気を付けるべきなのは、手続きに関することだけではありません。技能実習生への振る舞い・対応や必要な経費についても理解することが重要です。
技能実習生は、一人一人目標を持ち、技術や技能を学ぶために来日しています。それを念頭に置き、労働関係法令の順守はもちろんのこと、暴言や暴力、貴重品の取り上げといった人権侵害となる行為をしないなど、技能実習生が安心して技能実習に取り組める環境を整えましょう。
また、技能実習生の採用に関わる費用のほとんどは実習実施者の負担になります。入国の準備や入国後講習の費用など、1人の採用に40~90万円ほどかかります。
加えて、技能実習生の採用、ならびに実習期間の延長のためには技能実習計画と技能検定、技能実習評価試験についてより詳細に理解することも重要です。
技能実習計画の認定を受けるには、技能実習の職種・作業についても技能実習法や技能実習法施行規則などに沿っていなければなりません。
具体的には、習得させる技能などが技能実習生の本国において習得困難なものであること、同一の作業の反復のみによって習得できるものではないことが求められます。さらに、技能実習2号と技能実習3号においては、移行対象職種・作業であることも必要です。
移行対象職種・作業とは、技能実習1号から技能実習2号・技能実習3号に移行が認められている職種や作業です。職種はおおまかな仕事の種類を指し、それを細かく区別したものが作業です。2022年4月時点で86職種158作業が移行対象職種・作業に指定されています。
移行対象職種・作業で技能実習生を採用する場合は、厚生労働省が公表する審査基準を満たす必要があります。審査基準では、各業務に割く時間や安全衛生業務の実施などが定められています。
なお、技能実習1号で、1年以内の技能実習を行う場合は移行対象職種・作業である必要はありません。
技能検定、技能実習評価試験は、習得した技術や技能を評価するための試験です。技能実習評価試験は、技能検定だけでは評価できない部分を適正に評価するために設けられました。
技能実習1号から技能実習2号、技能実習2号から技能実習3号に移行するには、所定の技能検定または技能実習評価試験に合格しなければなりません。
また、実習実施者が採用できる技能実習生の人数には上限があります。人数枠については原則型が規定されていますが、介護、建設といった特定の職種・作業に係る技能実習の場合は別途定められています。
人数枠は、実習実施者や監理団体が優良認定を受けているかどうかによっても変わります。実習実施者が優良認定を受けるためには、要件を満たし、外国人技能実習機構に優良要件適合申告書を提出することが必要です。
監理団体型の場合は実習実施者と監理団体双方が、企業単独型の場合は実習実施者が優良認定を受けていれば技能実習3号を受入れることができます。
技能実習生は高い目標を持つ熱心な若者がほとんどです。技能実習生の採用には気を付けるべき点もありますが、技能実習生の受入れにより社内の雰囲気が明るくなったりコミュニケーションが活発になったりするといったメリットも期待できるでしょう。
技能実習制度の目的は技術や技能を開発途上の国や地域に移転し、国際貢献につなげることです。しかし、本来の目的に反し労働力確保の手段となっているケースもあり、制度の見直しが検討されています。どのような制度を構築していくべきなのか、社会全体で議論していく必要があるでしょう。
[1] 厚生労働省「別添3「外国人雇用状況」の届け出状況表一覧(令和3年10月末現在)」,2022年1月28日公表,別表1,https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_23495.html(閲覧日:2022年11月10日)
[2] 法務省・厚生労働省「外国人技能実習制度について」,2022年10月14日公表,p6,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005177.pdf(閲覧日:2022年11月10日)
[3] 出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度運用要領~関係者の皆さまへ~」,2022年4月公表,p 4,https://www.mhlw.go.jp/content/000899641.pdf(閲覧日:2022年11月2日)
[4] 出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度運用要領~関係者の皆さまへ~」,2022年4月公表,p4,https://www.mhlw.go.jp/content/000899641.pdf(閲覧日:2022年11月2日)
[5] JITCO公益財団法人国際人材協力機構「外国人技能実習制度とは」,https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/(閲覧日:2022年11月2日)
[6] 外国人技能実習機構「職種・作業について」,https://www.otit.go.jp/ikoutaishou/(閲覧日:2022年11月2日)
[7] 出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度運用要領 ~ 関係者の皆さまへ ~」,2022年10月公表,p45,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005219.pdf(閲覧日:2022年11月2日)
参考)
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度運用要領~関係者の皆さまへ~」,2022年 10月公表,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005219.pdf(閲覧日:2022年11月2日)
出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度運用要領~関係者の皆さまへ~」,2022年 4月公表,https://www.mhlw.go.jp/content/000899641.pdf(閲覧日:2022年11月2日)
厚生労働省「技能実習生の「技能検定」に関する注意点」,https://www.mhlw.go.jp/content/000983211.pdf(閲覧日:2022年11月2日)
JITCO公益財団法人国際人材協力機構「外国人技能実習制度とは」,https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/(閲覧日:2022年11月2日)
JITCO公益財団法人国際人材協力機構「技能実習制度の職種・作業について」,https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/occupation.html(閲覧日:2022年11月2日)
国土交通省「建設分野における受入れ基準の見直しについて」, https://www.mlit.go.jp/common/001297749.pdf(閲覧日:2022年11月2日)
法務省「法務大臣閣議後記者会見の概要」,https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00324.html(閲覧日:2022年11月2日)