在留カードの確認に注意!外国人採用時のポイントと事例【 アプリも】

この記事を読むと、次のことが分かります。
・日本に住んでいる外国人にとって、在留カードがどれほど大切なものなのか
・外国人を雇用する際、在留カードの確認が必要であること
・在留カードのどこをどのように確認すべきか
・在留カードの確認を怠るとどうなるのか
・在留カードの偽造・不備を発見した際の対応方法

中長期的に日本に在留する外国人が持っている「在留カード」には、名前や生年月日などの他、就労の可否や就労に大きく関与する在留資格が記載されています。

外国人を採用する際、企業はこの在留カードをしっかりと確認することが必要です。しかし実際には、確認を怠り罪に問われるケースも多く見られます。また近年、就労目的で在留カードを偽造する事案も増加しています。不法就労に加担しないためにも、在留カードについて十分に理解しておく必要があるでしょう。

本稿では、在留カードの概要に加え、企業が知っておくべきポイント注意点をまとめました。正しい知識を持つことが外国人の不法就労を防ぎ、同時に自社を守ることにもつながります。ぜひご一読ください。

1. 外国人の採用に当たって「在留カード」の確認が必要!

企業が外国人を採用する際、在留カードの確認が必要です。面接の段階で在留カードを提示してもらい、自社で働ける在留資格を持っているか、在留期間はいつまでかといったことを確認しておきましょう。

1-1. 在留カードとは「日本に滞在する外国人の身分証明書」

在留カードは、2012年7月からスタートした在留管理制度において交付されるようになりました。

中長期間にわたって日本に在留する外国人に対し交付されるもので、大きさは運転免許証と同じくらいです。名前・国籍・地域・生年月日・顔写真などに加え、就労の可否・在留資格・在留期間などが記載されています。また、在留カードにはICチップが内蔵されており、カードの記載事項が記録されています。

在留カードの主な役割は「日本に滞在する外国人の身分を証明すること」です。外国人は在留カードを提示することで、各種の行政サービスを受けられます。

外国人には在留カードを常に携帯することが義務付けられており、入国審査官や警察官などに求められた際は提示することが必要です。在留カードを携帯していない場合や、提示に応じない場合は罰則もあります。

1-2. 採用時に在留カードの確認が必要な理由

採用時に在留カードの確認が必要なのは、外国人が自社で働ける在留資格を持っているのかをチェックするためです。

在留カードに記載されている就労の可否・在留資格・在留期間を見れば、そもそも働けるのか、働ける場合どのような業務に就けるのか、いつまで在留が認められているのかといったことが分かります。外国人が適法に就労するために、これらを確認することが企業に求められているのです。

なお、在留カードの確認を怠り、就労資格を持たない外国人を雇用してしまうと、企業も罪に問われることがあります。実際に企業が不法就労助長罪に問われた事例を4章で紹介していますので、参考にしてみてください。

2. 企業が在留カードを確認する6つのポイント

企業が在留カードを確認する際のポイントは、以下の6つです。

・偽造されていないか
・在留カードの有効期限
・在留カードの番号が失効していないか
・就労制限の有無
・在留資格
・資格外活動許可の有無

一つずつ見ていきましょう。

・偽造されていないか

在留カードを確認する際には、まず偽造されたものでないかを入念にチェックする必要があります。というのも、就労目的で偽造在留カードが利用されるケースがあるからです。

偽造在留カードを所持・行使するのは出入国管理及び難民認定法(入管法)に違反する行為です。このような違反行為は2017年以降増加傾向が続いており、2020年には790件に上っています[1]

偽造在留カードの所持・行使といった犯罪が多発しているため、企業にも在留カードに関する正しい知識を持つことが求められているのです。

偽造在留カードかどうかを見極める方法として「目視によるチェック」があります。在留カードには以下のような偽造防止対策が施されています。

出入国在留管理庁「「在留カード」及び 「特別永住者証明書」の見方」を基にライトワークスにて作成,https://www.moj.go.jp/isa/content/930001578.pdf(閲覧日:2023年2月10日)

この5点を知っておけば、明らかな偽造在留カードを目視で見極めることができるでしょう。

また、出入国在留管理庁が提供する「在留カード等読取アプリケーション」を利用するのも一つの方法です。外国人本人の同意を得た上で在留カードを提示してもらい、アプリで在留カードを読み取ると、在留カードに内蔵されたICチップに記録されている情報を見られます。

画面の表示内容とカードの表記が異なっていたり、適切な方法で読み取りをしているのにエラー表示が出たりする場合は偽造が疑われます。

なお、在留カード等読取アプリケーションのダウンロードは出入国在留管理庁のホームページからできます。

参考)
出入国在留管理庁|「在留カード等読取アプリケーション」についてはこちら
https://www.moj.go.jp/isa/policies/policies/rcc-support.html

・在留カードの有効期限

在留カードが本物であっても、有効期限が切れている場合はその外国人を採用できません。在留カードを確認する際は、カード表面の最下部に書かれた有効期限をしっかりと確認しましょう。

ただし、在留期間更新許可または在留資格変更許可を申請中の場合、有効期限が切れても直ちに無効となるわけではありません。在留期間満了日から2カ月、もしくは申請の処分が決まるまでのいずれか早い方の期間まで有効となります。

在留期間更新許可または在留資格変更許可の申請中は、在留カード裏面の「在留期間更新等許可申請欄」にその旨が記載されます。なお、オンラインで申請した場合は在留カード裏面への記載はありません。

在留期間更新許可や在留資格変更許可の申請中における在留カードの有効性を確認するには、次に紹介する「在留カード等番号失効情報照会」を利用してください。

・在留カードの番号が失効していないか

在留カードを確認する際は、表面右上に書かれた番号が失効していないかも確認します。在留カード等番号失効情報照会に在留カードの番号と有効期限を入力すると、その番号が有効かどうかが分かります。

ただし、実在する在留カードの番号が悪用されている場合もあるため、在留カードの有効性を判断するには番号の照会と併せて偽造防止策の確認をするなど、複数の方法を用いることが重要です。

参考)
出入国在留管理局|「在留カード等番号失効情報照会」についてはこちら
https://lapse-immi.moj.go.jp/ZEC/appl/e0/ZEC2/pages/FZECST011.aspx

・就労制限の有無

在留カード表面の真ん中辺りには「就労制限の有無」という欄があります。この欄に記載される内容と、その判断方法は以下の通りです。

記載文言判断方法
就労制限なし採用できる
在留資格に基づく就労活動のみ可業務内容が在留資格の範囲内であれば採用できる
指定書記載機関での在留資格に基づく就労活動のみ可採用できない(認定を受けた機関に限り採用可)
指定書により指定された就労活動のみ可パスポートに添付されている指定書の範囲内であれば採用できる
就労不可原則採用できないが、裏面の「資格外活動許可欄」の記載事項によっては採用できる

「指定書記載機関での在留資格に基づく就労活動のみ可」と記載されるのは「技能実習」の在留資格を持つ外国人です。技能実習生を採用できるのは外国人技能実習機構(OTIT)に認定された技能実習先に限定されるため、その他の企業では採用できません。

・在留資格

就労制限の有無の欄の左側には「在留資格」の欄があります。日本に在留する外国人は、在留資格によって活動範囲が定められています。特に就労制限の有無の欄に「在留資格に基づく就労活動のみ可」と記載されている場合は、自社での業務がその在留資格で認められているのか確認することが必要です。

例えば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人に、工場のライン作業や飲食店の接客業務を行わせることはできません。また「教育」の在留資格を持つ外国人が、運搬や配送などの業務に就くこともできません。

このように在留資格によっては就労に制限がある場合があります。企業としては、在留資格と就労できる業務について知っておく必要があるでしょう。

・資格外活動許可の有無

在留カード裏面の最下部には「資格外活動許可欄」があります。就労制限の有無の欄に「就労不可」と書かれている場合は、こちらの欄も確認しましょう。

資格外活動許可欄に以下のいずれかが記載されている場合は、記載の条件での就労が可能です。なお、(2)の場合は資格外活動許可書も確認しましょう。

(1)「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)」
(2)「許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動)」

以上の6点に注意して、在留カードを確認してください。

3. 在留カード、こんな点にも注意!

在留カードの確認方法について紹介してきましたが、その他にも注意すべき点があります。思わぬトラブルを防ぐためにも、十分に理解しておきましょう。

3-1. 必ず原本の在留カードを確認する

在留カードを確認する際、必ず原本の提示を求めてください。在留カードのコピーや写真で、偽造・改ざんを判断するのは困難です。もしその在留カードが偽造されたものだった場合、原本を確認していなかった企業も入管法違反に問われることがあります。

原本なら、その場で在留カードに施された5つの偽造防止対策をチェックできたり、在留カード等読取アプリケーションを利用できたりするので、偽造されたものでないかしっかりと確認できるでしょう。

3-2. 在留カードを扱う際、個人情報に配慮する

在留カードには個人情報が記載されています。もちろん外国人の個人情報も、個人情報保護法の対象です。

在留カードを確認する際は、個人情報を扱っている認識を持ち、十分に配慮する必要があります。在留カードの提示を求める際に本人の同意を得ることや、本人の同意なく第三者に情報を開示しないことなど、個人情報の扱い方に注意しましょう。

なお本人の同意を得ていれば、在留カードをコピーし社内で保管することも可能です。この場合も、個人情報が記載されていることを念頭に置いて保管方法を検討しましょう。

4. 在留カードの確認不足で企業が「不法就労助長罪」に問われるリスクも!

採用時に在留カードの確認を怠ると、企業も不法就労助長罪に問われることがあります。外国人の不法就労を助長したとして、企業が摘発されるケースも相次いでいます。ここでは、実際に不法就労助長罪に問われた事例を紹介しましょう。

4-1. ウーバーイーツ

料理の宅配を行う「ウーバーイーツ」は、在留資格などを確認せず、不法残留の外国人を働かせていたとして不法就労助長罪に問われました。ウーバーイーツが関連した不法就労の摘発件数は、2020年の警視庁管内だけで184件に上ります[2]

外国人を配達員として登録する際、同社は身分証や写真の送付を求めていたものの、原本の確認や本人との照合をしていませんでした。ブローカーが他人の身分証などで作成したアカウントを利用した人や、他人の在留カードを撮影して提出した人など、多くの不法就労者が全国各地で摘発されています。

4-2. 人材派遣会社A

人材派遣会社Aは、在留資格などを十分に確認せず、不法残留や資格外活動の外国人を事業所に派遣したため、不法就労助長罪で書類送検されました。

同社では外国人に対し、本人と面接して在留カードの原本確認を行っていましたが、該当外国人が提出したのは在留カードのコピーでした。そのため「コピーではなく原本を確認させてほしい」と依頼したものの提出を先伸ばしにされ、結局在留カードの原本を確認できなかったようです。

同社では、提出された在留カードのコピーに記載された番号が失効していないかを確認していたようですが、番号自体は有効なものだったため、偽造であると見極められませんでした。

4-3. 人材派遣会社B

人材派遣会社Bでは、コロナ禍の非常事態宣言下において、採用時の接触を減らしており、外国人に在留カードの写真を送付することを依頼しました。ところが、この在留カードの在留期間が書き換えられていたため、不法残留の外国人を事業所に派遣したとして同社代表者が書類送検されました。

警察に経緯を説明したところ、故意であろうと過失であろうと、原本の確認を怠ったのなら違反に該当する旨の説明を受けました。

入管法第73条の2の不法就労助長罪の規定には、不法就労助長罪に該当する条件に続き、「知らないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。」という記述があります(入管法第73条の2第2項)。

つまり、原本の確認をしなかったことは、同項の「過失」に該当するため、知らなかった(故意でなかった)ことは理由にならず、不法就労助長罪が適用されたということです。

いずれも、在留カードの原本の確認がいかに大事かを物語る事例といえます。

5. 在留カードの偽造・不備を発見した場合の対応

在留カードを確認している段階で、偽造や不備に気付くことがあるかもしれません。偽造を発見した場合は、最寄りの地方出入国在留管理局に連絡しましょう。地方出入国在留管理局へは、メールや電話、直接訪問などで情報を提供できます。

参考)
出入国在留管理庁|不法滞在・偽装滞在外国人に関する情報提供についてはこちら
https://www.moj.go.jp/isa/consultation/report/index.html

また、在留カードの有効期限が切れているなど在留カードの不備を発見した場合は、「在留カードが適正でないと採用できないこと」を外国人に伝え、地方出入国在留管理局へ相談するよう促しましょう。

参考)
出入国在留管理庁|在留カードの有効期間の更新申請についてはこちら
https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri10_00011.html

6. まとめ

企業が外国人を採用する際、在留カードの確認が必要です。面接の段階で在留カードを提示してもらい、自社で働ける在留資格を持っているのか、在留期間はいつまでかといったことを確認しておきましょう。

企業が在留カードを確認する際のポイントは、以下の6点です。

偽造されていないか
・在留カードの有効期限
・在留カードの番号が失効していないか
就労制限の有無
在留資格
資格外活動許可の有無

また、在留カードに関して企業が注意すべき点は以下の2つです。

・必ず原本の在留カードを確認する
・在留カードを扱う際、個人情報に配慮する

在留カードの確認を怠ると、企業が「不法就労助長罪」に問われるリスクがあります。実際に多くの企業が不法就労助長罪で摘発されています。自社を守るためにも、在留カードの原本確認を徹底しましょう。

在留カードを確認している際、偽造の疑いがある在留カードに気付いた場合は、最寄りの地方出入国在留管理局に連絡しましょう。また、在留カードの有効期限が切れているなど在留カードの不備を発見した場合は、該当外国人に不備を伝え出入国在留管理局へ相談するよう促しましょう。

在留カードについて理解を深め、外国人を適法に採用するために本稿を役立てていただければ幸いです。

[1] 警察庁組織犯罪対策部「令和2年における組織犯罪の情勢【確定値版】」,2021年4月公表,https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/kikakubunseki/sotaikikaku09/R02sotaijyousei.pdf(閲覧日:2023年2月10日)
[2] 日本経済新聞「ウーバーイーツ日本法人を書類送検 不法就労助長疑い」,2021年6月22日,https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE2225K0S1A620C2000000/(閲覧日:2023年2月10日)

参考)
出入国在留管理庁「Answer(Q1~Q77)」,https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/newimmiact_4_q-and-a_page2.html(閲覧日:2023年2月10日)
東京労働局「外国人雇用に関するQ&A」,https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/riyousha_mokuteki_menu/jigyounushi/13-01-19-4_test.html(閲覧日:2023年2月10日)
出入国在留管理庁「就労資格の在留諸申請に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)」,2022 年 12月公表,https://www.moj.go.jp/isa/content/001344550.pdf(閲覧日:2023年2月10日)
出入国在留管理庁「新しい在留管理制度がスタート!」,https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/newimmiact_1_index.html(閲覧日:2023年2月10日)
警察庁組織犯罪対策部「令和2年における 組織犯罪の情勢 【確定値版】」,2021年4月公表,https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/kikakubunseki/sotaikikaku09/R02sotaijyousei.pdf(閲覧日:2023年2月10日)
出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリケーション サポートページ」,https://www.moj.go.jp/isa/policies/policies/rcc-support.html(閲覧日:2023年2月10日)
出入国在留管理庁「特例期間とは?」,https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/tokureikikan_00001.html(閲覧日:2023年2月10日)
農林水産省「「在留カード」及び「特別永住者証明書」の見方」,https://www.maff.go.jp/j/keiei/foreigner/attach/pdf/index-47.pdf(閲覧日:2023年2月10日)
出入国在留管理庁「在留カード等番号失効情報照会」,https://lapse-immi.moj.go.jp/ZEC/appl/e0/ZEC2/pages/FZECST011.aspx(閲覧日:2023年2月10日)
出入国在留管理庁「「在留カード」はどういうカード?」,https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/newimmiact_4_point.html(閲覧日:2023年2月10日)
法務省入国管理局「外国人を雇用する事業主の皆様へ」,https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11655000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu-Gaikokujinkoyoutaisakuka/0374_2.pdf(閲覧日:2023年2月10日)
警視庁「外国人の適正雇用について」,https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/anzen/live_in_tokyo/tekiseikoyo.html(閲覧日:2023年2月10日)
個人情報保護委員会「外国に居住する外国人の個人情報についても、個人情報保護法による保護の対象になりますか。」,https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q1-6/(閲覧日:2023年2月10日)
日本経済新聞「ウーバーイーツ日本法人を書類送検 不法就労助長疑い」,2021年6月22日,https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE2225K0S1A620C2000000/(閲覧日:2023年2月10日)
埼玉新聞「派遣会社を書類送検 不法残留ベトナム人を不法就労させる 在留資格の確認不十分/県警」, 2020年2月5日,https://www.saitama-np.co.jp/news/2020/02/05/05_.html(閲覧日:2023年2月10日)
朝日新聞DIGITAL「在留カード「原本不確認は違反」も 雇い主へ捜査相次ぐ」,2021年8月20日,https://www.asahi.com/articles/ASP8M6JYSP8KUHMC002.html(閲覧日:2023年2月10日)

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