高度人材ポイント制とは?計算方法や採用の流れを【わかりやすく解説】

この記事を読むと、次のことが分かります。
・高度人材ポイント制の概要
・高度人材ポイント制で認定された高度人材が受けられる優遇措置
・高度人材ポイント制で認定された外国人材の特徴
・高度人材ポイント制の計算方法

高度人材ポイント制とは、外国人材の学歴や年収などをポイントで評価し、「高度人材」に認定する制度です。高度人材は高度な知識や技術を持つことから、積極的に採用する企業が増えています。

高度人材獲得のためには高度人材ポイント制の理解が必要不可欠のため、本稿で確認しておきましょう。

1. 高度人材ポイント制とは「高度人材」を認定するための制度

高度人材ポイント制とは、技術・人文知識・国際業務(技人国)や研究など就労できる在留資格を取得できる外国人材のうち、特に優秀な人をポイント制によって認定し、出入国在留管理上の取り扱いを優遇する制度です。

高度人材ポイント制では就労可能な在留資格を持つ外国人材の学歴や職歴、年収などを項目ごとにポイントで評価し、70点以上獲得した人を「高度人材」と認定します。高度人材に対しては出入国在留管理上の優遇措置を講じ、これにより日本での受入れ推進を目指しています。

高度人材とは専門的な知識と技術を有し、日本の経済成長やイノベーションの発展に寄与する外国人材のことで、在留資格研究、経営・管理、技術・人文知識・国際業務、高度専門職などさまざまです。

中でも高度専門職を高度人材と呼ぶことがあるため、本稿では「高度人材=高度専門職」と定義して解説していきます。

2. 高度人材ポイント制で認定された高度人材が受けられる優遇措置

高度専門職は「高度専門職1号」「高度専門職2号」に分けられ、高度専門職2号は高度専門職1号で3年以上活動した人が対象です。それぞれが受けられる出入国在留管理上の優遇措置を見ていきましょう。

2-1. 高度専門職1号が受けられる優遇措置

高度専門職1号が受けられる優遇措置は下記の通りです。

・複合的な在留活動の許可
・在留期間5年の付与
・在留歴3年または1年で永住許可申請が可能
・入国・在留手続きの優先処理
・配偶者の就労
・親の帯同
・家事使用人の帯同

・複合的な在留活動の許可

本来、外国人材の活動の範囲は在留資格ごとに制限されていますが、高度専門職1号の場合は複数の在留資格にまたがる活動が可能です。例えば、大学で研究をしながらベンチャー企業を立ち上げ、経営することもできます。

・在留期間5年の付与

在留期間は在留資格ごとに定められており、法律上の最長期間は5年です。技術・人文知識・国際業務など、他の在留資格で最初から5年の在留期間を得るのは簡単ではありませんが、高度専門職1号の場合は最初から一律で5年が付与され、更新も可能です。

・在留歴3年または1年で永住許可申請が可能

本来、永住許可を受けるためには10年以上の在留歴が必要ですが、高度専門職1号の場合は要件が緩和されます。要件は高度人材ポイント制で獲得した点数によって異なり、70点以上の場合在留期間3年以上80点以上獲得の場合在留期間1年以上で永住許可申請が可能です。

・入国・在留手続きの優先処理

出入国在留管理庁では高度専門職1号に関する入国・在留手続き他の在留資格よりも優先的に処理しています。入国手続き(在留資格認定証明書交付申請)は申請受理から10日以内在留手続き(在留期間更新許可申請、在留資格変更許可申請)は申請受理から5日以内が目安です。

・配偶者の就労

高度専門職1号の配偶者が特定活動の在留資格を取得すれば、教育、技術・人文知識・国際業務、研究、興行の在留資格に該当する就労活動を行えます。通常これらの在留資格を取得するためには学歴または職歴など一定の要件を満たす必要がありますが、高度専門職1号の配偶者であれば要件を満たす必要がありません。

ただし、配偶者が高度専門職1号と同居し、日本人と同等以上の報酬を受けることが条件です。

・親の帯同

現状、就労を目的とした他の在留資格で親の帯同は認められていません。しかし、高度専門職1号は「高度人材本人またはその配偶者の7歳未満の子を養育する場合」「妊娠中の高度人材の配偶者または高度人材本人の介助を行う場合」のいずれかに該当すれば、一定の要件の下、親の帯同が許可されます。

許可を受けるための要件は「高度人材本人と親が同居すること」「高度人材の世帯年収が800万円以上あること」などです。なお、帯同が認められるのは、高度人材とその配偶者のいずれかの親に限られます。

・家事使用人の帯同

高度専門職1号は、経営・管理、法律・会計業務の在留資格取得者や外交官など、限られた人にしか認められていない外国人家事使用人の帯同が許可されています。

帯同できる家事使用人は、「海外で雇用していた家事使用人を引き続き雇用する」「それ以外の家事使用人を雇用する」「金融人材かつ高度人材が家事使用人を雇用する」の3つに分けられます。

ただし、帯同が認められるためには、高度専門職1号の世帯年収が1千万円以上など要件を満たすことが必要です。

2-2. 高度専門職2号が受けられる優遇措置

高度専門職2号は、高度専門職1号と同様の「永住許可要件の緩和」「配偶者の就労」「親の帯同」「外国人家事使用人の帯同」の他、下記の優遇措置も受けられます。

・ほぼ全ての就労を目的とした在留資格の活動を行える
・在留期間が無期限

・ほぼ全ての就労を目的とした在留資格の活動を行える

高度専門職2号は、高度専門職1号の活動と併せてほぼ全ての就労を目的とした在留資格の活動を行えます。具体的には、在留資格「教授」「芸術」「宗教」「報道」「法律・会計業務」「医療」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「興行」「介護」「技能」で許可された活動が可能です。

・在留期間が無期限

高度専門職2号は在留期間が無制限になるため、在留期間の更新手続きが不要です。同じく在留期間に定めがない永住者との違いは、高度専門職2号が高度人材として就労している限り在留期間が無期限になるのに対し、永住者は就労していなくても日本に永続的に在留できる点です。

3. 高度人材ポイント制導入の背景と近年の動き

高度人材の受入れ推進が経済戦略の一つに位置付けられたのは2008年6月からで、同年7月には「高度人材受入推進会議」が設置されました。

日本政府は2009年5月に取りまとめた報告書で、少子高齢化が進む日本の経済活力と潜在成長力を高めるためには高度人材を受入れ、イノベーションを創出することが重要との認識を示しました。この流れを受け、2012年5月からは優秀な外国人材をできる限り多く、長く受入れるために高度人材ポイント制がスタートします。

ここでは、高度人材ポイント制に関する近年の動きを、統計データを基に見ていきます。

3-1. 高度人材ポイント制による認定件数の推移

日本政府は「未来投資戦略2017」において、「2022年末までに2万人の高度人材の認定を目指すこと」を目標に掲げました。実際の達成状況をグラフで見ていきましょう。

グラフ)高度人材ポイント制の認定件数(累計)の推移

出入国在留管理庁「高度人材ポイント制の認定件数の推移」を基にライトワークスにて作成,https://www.moj.go.jp/isa/content/930003821.pdf(閲覧日:2022年12月6日)

高度人材の認定件数は右肩上がりに増加しており、2022年6月段階で3万4,726件と既に目標を達成しています。

このように高度人材が増加した背景には、高度人材ポイント制の見直しが行われたことが関係しています。具体的には、2013年に認定要件の緩和と優遇措置の拡充、2015年に在留資格「高度専門職」の新設(それ以前は在留資格「特定活動」だった)、2017年に永住許可申請要件の緩和とポイント加算項目の拡充が行われました。

これらのような高度人材ポイント制の見直しによって、認定を受けやすくなったり認定のメリットが増えたりしたことが高度人材の増加につながっているといえるでしょう。

3-2. 高度人材ポイント制で認定された外国人材の特徴

ここでは、2019年の総務省の調査結果を基に、高度人材ポイント制で認定された外国人材の特徴について見ていきます。

3-2-1. 国籍

高度人材の中で最も多いのは中国出身者で、全体の66.1%を占めます。

グラフ)高度人材の国籍・地域別の状況

総務省「高度外国人材の受入れに関する政策評価書」,2019年6月公表,p26を基にライトワークスにて作成,https://www.soumu.go.jp/main_content/000627735.pdf(閲覧日:2022年12月7日)

出入国在留管理庁の「在留外国人統計」によると、2021年においても中国の高度専門職取得者は1号・2号合わせて1万309人と、最も多いことが分かっています[1]

3-2-2. 性別

ここからは、高度人材全体、中国出身者、その他の国の出身者のデータを比べていきます。まず高度人材全体の男女比は、男性が69.7%女性が30.3%です。

グラフ)高度人材の性別

総務省「高度外国人材の受入れに関する政策評価書」,2019年6月公表,p27を基にライトワークスにて作成,https://www.soumu.go.jp/main_content/000627735.pdf(閲覧日:2022年12月7日)

中国出身者の場合は女性の割合が36.5%のため、その他の国の出身者よりも女性が多いのが特徴です。

3-2-3. 年齢

高度人材全体の年齢30~34歳が40.2%と最も多く、2位の25~29歳の34.3%と合わせて全体の7割以上を占めています。

グラフ)高度人材の認定時における年齢

総務省「高度外国人材の受入れに関する政策評価書」,2019年6月公表,p27を基にライトワークスにて作成,https://www.soumu.go.jp/main_content/000627735.pdf(閲覧日:2022年12月7日)

一方、中国出身者の場合は25~29歳が43.0%と最も多く、その他の国の出身者に比べて若手が多いのが特徴です。

3-2-4. 学歴

高度人材全体の最終学歴大学院卒が77.4%と過半数を占め、最も多い52.8%が大学院(修士)卒です。

グラフ)高度人材の最終学歴

総務省「高度外国人材の受入れに関する政策評価書」,2019年6月公表,p30を基にライトワークスにて作成,https://www.soumu.go.jp/main_content/000627735.pdf(閲覧日:2022年12月7日)

大学院(博士)卒の割合はその他の国の出身者が34.9%、中国出身者が20.1%となっており、その他の国の出身者の方が多い傾向にあります。

最終学歴の専攻分野高度人材全体で自然科学の割合が64.0%と最も多く、中国出身者・その他の国の出身者の場合も同様です。

グラフ)高度人材の専攻分野

総務省「高度外国人材の受入れに関する政策評 価書」,2019年6月公表,p30を基にライトワークスにて作成,https://www.soumu.go.jp/main_content/000627735.pdf(閲覧日:2022年12月7日)

また、最終学歴となる教育機関が所在する国として、日本と回答した人は高度人材全体の54.4%で半数を超えます。

グラフ)最終学歴である教育機関が所在する国・地域

総務省「高度外国人材の受入れに関する政策評価書」,2019年6月公表,p31を基にライトワークスにて作成,https://www.soumu.go.jp/main_content/000627735.pdf(閲覧日:2022年12月7日)

中国出身者の場合は62.9%が日本に最終学歴となる教育機関があり、その他の国の出身者に比べて多くの割合を占めています。

3-2-5. 就労先

高度人材の認定を受ける際の就労先の業種を見ると、高度人材全体の27.4%がコンピューター関連サービスに従事しています。

グラフ)高度人材の認定に係る就労先の業種

総務省「高度外国人材の受入れに関する政策評価書」,2019年6月公表,p29を基にライトワークスにて作成,https://www.soumu.go.jp/main_content/000627735.pdf(閲覧日:2022年12月7日)

コンピューター関連サービスの割合は中国出身者が30.7%、その他の国の出身者が19.7%です。一方、教育、調査研究、金融保険などでは、その他の国の出身者の方が中国出身者よりも割合が多い傾向にあります。

3-2-6. 年収

高度人材全体の平均年収は757.7万円で、最も多い層は500万円台の19.8%です。

グラフ)高度人材の年収

総務省「高度外国人材の受入れに関する政策評価書」,2019年6月公表,p29を基にライトワークスにて作成,https://www.soumu.go.jp/main_content/000627735.pdf(閲覧日:2022年12月7日)

中国出身者の平均年収は633.9万円500万円台の層最も多い(25.3%)一方、その他の国の出身者は平均年収1,041.2万円で1千万円台の層が32.2%と中国出身者よりも多い傾向にあります。

4. 高度人材ポイント制は活動類型ごとに異なる

高度人材の活動内容「高度専門職1号イ(高度学術研究活動)」「高度専門職1号ロ(高度専門・技術活動)」「高度専門職1号ハ(高度経営・管理活動)」の3つに分かれ、それぞれポイントの計算方法が異なります。

3つの活動類型の主な活動内容は下表の通りです。

【高度専門職の3つの活動類型】

在留資格活動内容職種例
高度専門職1号イ法務大臣が指定する日本の公私の機関との契約に基づいて、大学などの教育機関で教育活動、民間の研究所などでの研究活動、研究の指導などを行うことができる
また、これらの活動と併せて、教育や研究の成果と関連する事業を自ら経営することもできる(高度学術研究活動)
大学教授、研究者、科学者など
高度専門職1号ロ法務大臣が指定する日本の公私の機関との契約に基づいて、自然科学や人文科学に関する専門的な知識・技術を必要とする業務に従事する活動を行うことができる
また、これらの活動と併せて関連する事業を自ら経営することもできる(高度専門・技術活動)
医師、弁護士、高度なIT技術者など
高度専門職1号ハ法務大臣が指定する日本の公私の機関において、事業の経営や管理に従事する活動を行うことができる
またはこれらの活動と併せて関連する事業を自ら経営することもできる(高度経営・管理活動)
会社経営、弁護士事務所・監査法人事務所などの経営・管理など

前述の通り、高度専門職1号として3年以上活動を行った人は、高度専門職2号に在留資格を移行できます。

その他移行の条件となるのは、「高度人材ポイント制で70点以上を取得」「高度専門職1号ロ、高度専門職1号ハは報酬が年額300万円以上」「素行が善良」「法務大臣から在留することが日本の利益に貢献すると判断されること」などです。

5. 高度人材ポイントの計算方法

高度人材ポイント制では、前述の通り学歴や職歴、年収、年齢などを項目ごとにポイントで評価する他、日本語能力卒業した学校などによってはボーナスポイントが付与されます。

ここでは、学歴、職歴、年収など基本的な項目に関するポイント計算方法を見ていきます。

5-1. 高度専門職1号イ(高度学術研究活動)

高度専門職1号イの場合、下記計算表で獲得ポイントを算出します。

図)高度人材ポイント制における高度専門職1号イの計算方法

項目基準点数
学歴
(注1)
博士学位(専門職学位を除く)30
修士または専門職学位20
大卒またはこれと同等以上の教育(博士、修士学位を除く)10
複数の分野で2つ以上の博士、修士、専門職学位(注2)5
(注1)最終学歴が対象(例えば、博士と修士両方の学位を有する場合は30点)
(注2)学位の組み合わせを問わず、専攻が異なることが分かる資料(学位記または学位証明書で確認できない場合は成績証明書)を提出
職歴
(従事しようとする教育、または研究、研究の指導に係る実務経験)
7年以上15
5~6年10
3~4年5
年収30歳未満30~34歳35~39歳40歳以上
1千万円以上1千万円以上1千万円以上1千万円以上40
900~1千万円未満900~1千万円未満900~1千万円未満900~1千万円未満35
800~900万円未満800~900万円未満800~900万円未満800~900万円未満30
700~800万円未満700~800万円未満700~800万円未満25
600~700万円未満600~700万円未満600~700万円未満20
500~600万円未満500~600万円未満15
400~500万円未満10
年齢
(申請時点の年齢)
30歳未満15
30~34歳10
35~39歳5
研究実績発明者として特許を受けた発明が1件以上20
2つ以上に該当する場合は25
入国前に外国政府から補助金、競争的資金などを受けた研究に3回以上従事
学術論文データベースに登載されている学術雑誌に掲載された論文が3本以上
※責任著者であるものに限る
その他法務大臣が認める研究実績

出入国在留管理庁「ポイント計算表参考書式」を基にライトワークスにて作成,https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/newimmiact_3_evaluate_index.html(閲覧日:2022年12月8日)

5-2. 高度専門職1号ロ(高度専門・技術活動)

高度専門職1号ロの場合、下記ポイント計算表で獲得ポイントを計算します。

図)高度専門職1号ロのポイント計算表

項目基準点数
学歴
(注1)
博士学位(専門職学位を除く)30
経営管理に関する専門職学位(MBA、MOT)25
修士または専門職学位20
大卒またはこれと同等以上の教育(博士、修士学位を除く)10
複数の分野で2つ以上の博士、修士、専門職学位(注2)5
(注1)最終学歴が対象(例えば、博士と修士両方の学位を有する場合は30点)
(注2)学位の組み合わせを問わず、専攻が異なることが分かる資料(学位記または学位証明書で確認できない場合は成績証明書)を提出
職歴10年以上20
(従事しようとする業務に係る実務経験)7~9年15
5~6年10
3~4年5
年収
(注)
30歳未満30~34歳35~39歳40歳以上
1千万円以上1千万円以上1千万円以上1千万円以上40
900~1千万円未満900~1千万円未満900~1千万円未満900~1千万円未満35
800~900万円未満800~900万円未満800~900万円未満800~900万円未満30
700~800万円未満700~800万円未満700~800万円未満25
600~700万円未満600~700万円未満600~700万円未満20
500~600万円未満500~600万円未満15
400~500万円未満10
(注)年収が300万円に満たないときは、他の項目の合計が70点以上でも高度専門職とは認められない
年齢
(申請の時点の年齢)
30歳未満15
30~34歳10
35~39歳5
研究実績発明者として特許を受けた発明が1件以上15
入国前に外国政府から補助金、競争的資金等を受けた研究に3回以上従事
学術論文データベースに登載されている学術雑誌に掲載された論文が3本以上
※責任著者であるものに限る
その他法務大臣が認める研究実績
資格従事しようとする業務に関連する日本の国家資格(業務独占資格または名称独占資格)を保有、またはIT告示に定める試験に合格もしくは資格を保有1つ保有で5
複数保有で10

出入国在留管理庁「ポイント計算表参考書式」を基にライトワークスにて作成,https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/newimmiact_3_evaluate_index.html(閲覧日:2022年12月8日)

ポイント付与の対象となる国家資格「取得することでその資格に係る業務ができるもの」または「資格保有者であることを示す呼称を使用できるもの」です。例えば、弁護士、医師、公認会計士、技術士などが挙げられます。

5-3. 高度専門職1号ハ(高度経営・管理活動)

高度専門職1号ハでは、下記計算表を使ってポイントを計算します。

図)高度専門職1号ハのポイント計算表

項目基準点数
学歴
(注1)
経営管理に関する専門職学位(MBA、MOT)25
博士、修士、専門職学位20
大卒またはこれと同等以上の教育(博士、修士学位を除く)10
複数の分野で2つ以上の博士、修士、専門職学位(注2)5
(注1)最終学歴が対象(例えば、大学卒業後に経営管理に関するMBA、MOTの授与を受けた場合は25点)
(注2)学位の組み合わせを問わず、専攻が異なることが分かる資料(学位記または学位証明書で確認できない場合は成績証明書)を提出
職歴
(事業の経営または管理に係る実務経験)
10年以上25
7~9年20
5~6年15
3~4年10
年収(注)3千万円以上50
2,500~3千万円未満40
2千~2,500万円未満30
1,500~2千万円未満20
1千~1,500万円未満10
(注)年収が300万円に満たない場合は、他の項目の合計が70点以上でも高度専門職とは認められない
地位代表取締役、代表執行役または代表権のある業務執行社員10
取締役、執行役または業務執行社員5

出入国在留管理庁「ポイント計算表参考書式」を基にライトワークスにて作成,https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/newimmiact_3_evaluate_index.html(閲覧日:2022年12月8日)

高度人材ポイント制では年齢や年収など変動する項目も評価されますが、高度専門職の取得要件となるのは「申請時にポイントの合計が70点以上に達しているか」です。後に年齢が上がったり年収が下がったりして70点を下回ったとしても、高度専門職の在留資格を今すぐ喪失することはありません

ただし、高度専門職の在留期間更新時においても基準点を下回っている場合期間の更新はできません

6. 高度人材ポイント制のボーナスポイントについて

高度人材ポイント制では、年齢や年収などの基本項目の他にボーナスポイントがあるため、本人の経歴や勤務する機関の状況などによっては高度専門職を取得しやすくなります。

ここでは、高度人材ポイント制におけるボーナスポイントについて見ていきましょう。

図)高度人材ポイント制における特別加算の計算方法

項目基準点数
活動機関(1) イノベーション促進支援措置を受けている10
(2) (1)に該当する企業であって、中小企業基本法に規定する中小企業者10
(3) 国家戦略特別区域高度人材外国人受入促進事業の対象企業として支援を受けている10
試験研究費等比率が3%以上の中小企業5
資格従事しようとする業務に関連する外国の資格、表彰などで法務大臣が認めるものを保有5
日本語能力(1) 日本語専攻で外国の大学を卒業または日本語能力試験N1合格相当15
(2) 日本語能力試験N2合格相当
※日本の大学を卒業または大学院の過程を修了および(1)に該当する者を除く
10
各省が関与する成長分野の先端プロジェクトに従事10
出身大学日本の大学を卒業または大学院の過程を修了10
右記のいずれかの大学を卒業(注)(1) 以下の3つのランキングにおいて、2つ以上で300位以内に入っている外国の大学、またはいずれかにランク付けされている日本の大学
1.QS・ワールド・ユニバーシティ・ランキングス                 (クアクアレリ・シモンズ社)(英国)
2.THE・ワールド・ユニバーシティ・ランキングス                     (タイムズ社)(英国)
3.アカデミック・ランキング・オブ・ワールド・ユニバーシティズ      (上海交通大学)(中国)
10
(2) 文部科学省が実施するスーパーグローバル大学創成支援事業(トップ型およびグローバル化牽引型)において、補助金の交付を受けている大学
(3) 外務省が実施するイノベーティブ・アジア事業において「パートナー校」として指定を受けている大学
(注)「日本の大学を卒業または大学院の過程を修了」と重複しての加算が認められる
研修外務省が実施するイノベーティブ・アジア事業の一環としてJICAが実施する研修を修了したこと(注)5
(注)
・イノベーティブ・アジア事業の一環としてJICAが実施する研修であって、研修期間が1年以上のものを修了した者が対象
JICAの研修修了証明書を提出した場合、学歴および職歴などを証明する資料は原則として提出する必要はないが、職歴のポイントを加算する場合には別途職歴に関する資料の提出が必要
・日本の大学または大学院の授業を利用して行われる研修に参加した場合、「日本の大学を卒業または大学院の過程を修了」と重複して加算することは認められない
投資日本の公私の機関において行う貿易その他の事業に1億円以上を投資5
投資運用業などに係る業務に従事10

出入国在留管理庁「ポイント計算表参考書式」を基にライトワークスにて作成,https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/newimmiact_3_evaluate_index.html(閲覧日:2022年12月8日)

イノベーション促進支援措置を受けている中小企業」や「試験研究費等比率が3%以上の中小企業」に該当するのは、中小企業基本法第2条第1項の規定に該当する中小企業です。例えば、製造業の場合は「資本金額または出資の総額が3億円以下の会社、または常時使用する従業員が300人以下の会社および個人」が該当します。

また、「各省が関与する成長分野の先端プロジェクト」とは、IoTや再生医療などの成長分野で、諸官省庁が関与しているプロジェクトが対象です。該当するプロジェクトについては、出入国在留管理庁ホームページなどで確認できます。

7. まとめ

高度人材ポイント制とは、就労できる在留資格を持つ外国人材の学歴や職歴、年収などを項目ごとにポイントで評価し、70点以上獲得した人を「高度人材」と認定する制度です。

高度人材とは専門的な知識と技術を有し、日本の経済・イノベーションの発展に寄与する外国人材を指し、出入国在留管理上の優遇措置を与えることで積極的に受入れが推進されています。

高度人材に該当する在留資格は研究、経営・管理、技術・人文知識・国際業務、高度専門職、など複数ありますが、高度専門職を高度人材と呼ぶことがあるため、本稿では「高度人材=高度専門職」として解説していきます。

高度専門職は「高度専門職1号」「高度専門職2号」に分けられ、高度専門職1号で3年以上活動した人高度専門職2号を取得できます。それぞれが受けられる出入国在留管理上の優遇措置は下記の通りです。

【高度専門職1号が受けられる優遇措置】
・複合的な在留活動の許可
・在留期間5年の付与
・在留歴3年または1年で永住許可申請が可能
・入国・在留手続きの優先処理
・複合的な在留資格の許可
・配偶者の就労
・親の帯同
・家事使用人の帯同

【高度専門職2号が受けられる優遇措置】
・在留歴3年または1年で永住許可申請が可能
・配偶者の就労
・親の帯同
・家事使用人の帯同
・ほぼ全ての就労を目的とした在留資格の活動を行える
・在留期間が無期限

優秀な外国人材をできる限り多く、長く受入れるため、2012年5月から高度人材ポイント制がスタートしました。

「2022年末までに2万人の高度人材の認定を目指すこと」が目標とされ、2022年6月段階で認定件数3万4,726件と既に目標を達成しています。これには日本政府による制度の見直しによって、認定を受けやすくなったり認定を受けるメリットが増えたりしたことが関係しています。

それでは、どのような外国人材が高度人材の認定を受けているのでしょうか?主な特徴は下記の通りです。

国籍1位:中国(66.1%)
2位:アメリカ(4.6%)
性別男性:69.7%
女性:30.3%
年齢1位:30~34歳(40.2%)
2位:25~29歳(34.3%)
学歴1位:大学院(修士)卒(52.8%)
2位:大学院(博士)卒(24.6%)
最終学歴の専攻分野1位:自然科学(64.0%)
2位:社会科学(26.6%)
最終学歴である教育機関が所在する国・地域日本国内:54.4%
日本国外:42.2%
就労先1位:コンピューター関連サービス(27.4%)
2位:製造(23.4%)
年収1位:500万円台(19.8%)
2位:400万円台(17.0%)
平均年収:757.7万円

このことから、高度人材高学歴平均年齢が比較的若く、とりわけ中国出身者が多いことが分かります。

高度人材の活動内容「高度専門職1号イ(高度学術研究活動)」「高度専門職1号ロ(高度専門・技術活動)」「高度専門職1号ハ(高度経営・管理活動)」の3つに分けられ、主な職種としては下記が挙げられます。

在留資格職種例
高度専門職1号イ大学教授、研究者、科学者など
高度専門職1号ロ医師、弁護士、高度なIT技術者など
高度専門職1号ハ会社経営、弁護士事務所・監査法人事務所などの経営・管理など

高度人材ポイント制の計算方法は活動類型によって異なり、詳しいポイント計算表は出入国在留管理庁のホームページから確認できます。

高度人材ポイント制では、年齢や年収など変動する項目も評価されますが、申請時にポイントの合計が70点以上に達していれば高度専門職を取得できます。後に年齢や年収が変わり70点を下回ったとしても、すぐに高度専門職の在留資格を喪失することはありません

ただし、高度専門職の在留期間更新時においても70点以下の場合は期間の更新ができないため注意が必要です。

なお、高度人材ポイント制では年齢や年収といった基本項目の他に、本人の経歴や勤務機関の状況などによってボーナスポイントが加算されます。ボーナスポイントについても出入国在留管理庁のホームページで確認できるため、気になる方は確認してみてください。

[1] 出入国在留管理庁「在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表-2021年12月末」,https://www.moj.go.jp/isa/policies/statistics/toukei_ichiran_touroku.html(閲覧日:2023年2月3日)

参考)
出入国在留管理庁「高度人材ポイント制Q&A」,https://www.moj.go.jp/isa/content/930001663.pdf(閲覧日:2022年12月27日)
出入国在留管理庁「ポイント評価の仕組みは?」https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/newimmiact_3_evaluate_index.html(閲覧日:2022年12月8日)
出入国在留管理庁「【高度専門職外国人の家事使用人(家庭事情型)】在留資格変更許可申請」,https://www.moj.go.jp/isa/content/930001680.pdf(2022年12月5日)
総務省「高度外国人材の受入れに関する政策評価書」,2022年6月,https://www.soumu.go.jp/main_content/000627735.pdf(閲覧日:2022年12月7日)

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