この記事を読むと、次のことが分かります。
・外国人技能実習機構とはどのような機関か
・外国人技能実習機構の業務
・実際に外国人技能実習機構がどのように役割を果たしているのか
・外国人技能実習機構のウェブサイトが便利な点
「外国人技能実習機構(OTIT)」とは、技能実習を適正に実行するために重要な役割を果たしている機関です。技能実習生を受入れる企業は、外国人技能実習機構と深い関わりを持つことになります。
そこで本稿では、外国人技能実習機構の概要や業務について解説します。便利に使える外国人技能実習機構のウェブサイトについても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.外国人技能実習機構は適正な技能実習に重要な機関
外国人技能実習機構とは、技能実習制度において、適正な技能実習の実行と技能実習生の保護を目的とする機関です。2017年11月1日施行の「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」に基づいて、法務省・厚生労働省所管の認可法人として設立されました。
実習実施者である企業が外国人技能実習機構と関わるのは、主に以下の2つのシーンにおいてです。
・技能実習計画の申請や各種届け出など
・技能実習が適正かどうかを確認する実地検査
外国人技能実習機構の設立以前は、技能実習に関する全ての窓口は「地方出入国在留管理局」となっていましたが、現在は技能実習に関することは外国人技能実習機構が窓口となって対応しています。
また、以前は法的権限を持たない民間機関が行っていた実習実施者や監理団体への指導も、外国人技能実習機構が設立されたことで法令に基づいて実施できるようになりました。なお、外国人技能実習機構が担う業務については2章で詳しく解説します。
外国人技能実習機構は東京都をはじめ、愛知県や大阪府など計13カ所に事務所や支所があります。自社の都道府県に設置されていないと不安に感じるかもしれません。ですが、申請や届け出などは郵送でも対応しており、困ったときには電話での相談も可能です。どの地域であっても適切に活用できるような環境が整えられています。
2.外国人技能実習機構が担う業務は「窓口」と「監督・指導」
外国人技能実習機構は、以下のような業務を担っています。実習実施者としての企業が具体的に関わるのは、1つ目、2つ目、4つ目の業務でしょう。
・技能実習計画の認定
・実習実施者の届け出の受理
・監理団体からの申請の受理・許可に関する調査
・実習実施者・監理団体への報告要求と実地検査
・技能実習生に対する相談対応や援助
・技能実習に関する調査・研究
それぞれ紹介します。
・技能実習計画の認定
外国人技能実習機構は、実習実施者からの技能実習計画の認定申請を受け、法令に基づいた審査を行います。認定する場合は、技能実習計画認定通知書を交付します。
・実習実施者の届け出の受理
初めて技能実習計画の認定を受けた実習実施者には、実習実施者届出書の提出が義務付けられています。このとき窓口となるのが外国人技能実習機構です。その他、技能実習計画の変更時や技能実習の継続が難しくなったときに必要な届け出の提出も受け付けています。
・監理団体からの申請の受理・許可に関する調査
監理団体として活動するには、外国人技能実習機構の許可が必要です。外国人技能実習機構は、監理団体になろうとする方からの申請を受理する窓口としても機能しています。また申請を受理したら、その団体に許可を与えるかどうかの調査も行います。
・実習実施者・監理団体への報告要求と実地検査
外国人技能実習機構は、実習実施者や監理団体を監督・指導する立場としてもさまざまな業務を行っています。その一つが報告の要求です。年に1回、実習実施者には実施状況報告書、監理団体には事業報告書などの提出を義務付け、適正な技能実習が実施されているかを監督しています。
それに加え、外国人技能実習機構は実地検査も行います。実地検査とは、実際に受入れ企業や監理団体を訪問して適正に技能実習が行われているかを確認するものです。
実施検査には、実習実施者に対して3年に1回、監理団体に対して1年に1回定期的に行われる「定期検査」と、違反が疑われる際に随時行われる「臨時検査」の2種類があります。外国人技能実習機構は法令に基づき、実地検査を実施できる権限を持っているのです。
実地検査において法令違反があると認められた場合は、外国人技能実習機構が改善勧告や改善指導を行います。
・技能実習生に対する相談対応や援助
外国人技能実習機構は、実習実施者や監理団体に対応するだけでなく、技能実習生からの相談に応じたり援助をしたりもします。
・技能実習に関する調査・研究
外国人技能実習機構は、技能実習制度に関する調査や研究も行っています。調査結果や事例はウェブサイトで公表しています。
このように外国人技能実習機構は「窓口」と「監督・指導」の業務を担い、技能実習制度を支えています。
3.技能実習計画が取り消された事例
これまで紹介した通り、外国人技能実習機構には実習実施者や監理団体を監督・指導する役割があります。実地検査で法令違反が認められた場合、勧告や指導に速やかに従わないと、技能実習計画の認定が取り消されることもあります。
大手自動車メーカーのケースでは、技能実習計画で必須業務となっていた溶接作業を行わせていなかったことを理由に、認定が取り消しとなりました。このように技能実習計画で必須の業務をさせていなかったり、計画と異なる業務を行わせていたりするという理由で認定を取り消される例は毎年複数件見られます[1]。
その他にも、技能実習生の人権を侵害する行為があったケースや虚偽の書類を提出したケースなどでも認定が取り消されています[2]。
技能実習計画の認定が取り消されると、実習実施者には以下のようなペナルティがあります。
・技能実習計画の認定が取り消されたことおよび事業者名が、厚生労働省のウェブサイト[3]で公表される
・認定が取り消された技能実習計画は実施できなくなる
・認定取り消しに伴い、技能実習生全員の実習が継続できなくなる
・取り消しを受けた日から5年間は、新たに技能実習生を受入れられなくなる
外国人技能実習機構は技能実習が適正に実行されているかを厳しく監督しています。違反が見られた場合、実習が行えなくなるだけでなく、企業イメージの低下も避けられません。実習実施者へのダメージは計り知れないでしょう。外国人技能実習機構から勧告や指導を受けた場合は、迅速に改善を図ることが大切です。
[1] 厚生労働省「別紙1技能実習計画の認定取消の内容」,https://www.mhlw.go.jp/content/11808000/000473490.pdf(閲覧日2022年11月25日)
出入国在留管理庁「技能実習法に基づく行政処分等の件数(令和3年11月末現在)」,https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/fiber/ginoujisshukyougikai/211220/4.pdf(閲覧日2022年11月25日)
[2] 厚生労働省「【別紙1から別紙22】監理団体の許可の取消し、技能実習計画の認定の取消し及び実習実施者に対する改善命令内容について」,https://www.mhlw.go.jp/content/11808000/000858221.pdf(閲覧日2022年11月25日)
厚生労働省「【別紙1から13】監理団体の改善命令の内容及び技能実習計画の認定の取消しの内容」,https://www.mhlw.go.jp/content/11808000/000916678.pdf(閲覧日2022年11月25日)
[3] 厚生労働省「技能実習計画の認定の取消しを行いました」,2020年10月23日,https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14245.html(閲覧日2022年12月2日)
4.技能実習生を受入れるなら外国人技能実習機構のウェブサイトは要チェック
技能実習生を受入れることが決まったら、外国人技能実習機構のウェブサイトをチェックしてみてください。実習実施者にとっても技能実習生にとっても、役立つ情報が掲載されています。
本章では、外国人技能実習機構のウェブサイトの便利な点を、実習実施者と技能実習生のそれぞれの視点から紹介します。
外国人技能実習機構のウェブサイトはこちら
外国人技能実習機構,https://www.otit.go.jp/
4-1. 実習実施者におすすめのポイント
外国人技能実習機構のウェブサイトからは、技能実習計画認定申請書や実習実施者届出書など、実習実施者が行うべき申請や届け出の様式をダウンロードできます。
引用元:外国人技能実習機構「様式」,https://www.otit.go.jp/youshiki/ (2022年11月時点)
用意されている様式を使えば、自社で作成するよりも簡単に書類をそろえられるので便利です。また、申請や届け出に必要な書類などがまとめて案内されているので、手続きに慣れていない方も正しく対応できるでしょう。
また、新型コロナウイルス感染症関連情報のような時事情報やお知らせ事項もこまめにアップデートされるため、技能実習生を受入れたら定期的に確認することをおすすめします。
4-2. 技能実習生におすすめのポイント
外国人技能実習機構のウェブサイトは、技能実習生へ向けた内容も充実しています。労働に関する法令や公的年金制度への加入について、税金の免除についてのお知らせなど、日本で働く際に知っておくべき情報が詳しく掲載されています。
また、漢字に振り仮名が付けられていたり、分かりやすい日本語で書かれていたりするのも特徴です。日本語の理解が難しい技能実習生向けに、以下の9カ国語にも対応しています(2022年11月時点)。
・中国語
・ベトナム語
・タガログ語
・インドネシア語
・タイ語
・カンボジア語
・ミャンマー語
・モンゴル語
・英語
さらに、「技能実習手帳」のアプリをダウンロードできることも便利な点です。技能実習手帳とは、技能実習に関連する法令や日本での生活に役立つ情報、困ったときの相談先などが掲載されたもので、入国の際、紙製のものが技能実習生に配布されます。
紙製の手帳も便利ではありますが、アプリには母国語で相談できる窓口やリアルタイムに確認できる災害情報など、アプリ限定の機能も備わっています。技能実習生を受入れた際には、技能実習手帳のアプリがあることを実習生に伝えるとよいでしょう。
5.まとめ
外国人技能実習機構とは、適正な技能実習の実行と技能実習生の保護を目的に設立された機関です。地方事務所・支所を含め、全国に13カ所設置され、どの地域であっても適切に活用できるような環境が整えられています。
外国人技能実習機構は、以下のような業務を担っています。
・技能実習計画の認定
・実習実施者の届出の受理
・監理団体からの申請の受理・許可に関する調査
・実習実施者・監理団体への報告要求と実地検査
・技能実習生に対する相談対応や援助
・技能実習に関する調査・研究
実習実施者が外国人技能実習機構と関わるのは、主に以下の2つのシーンにおいてです。
・技能実習計画の申請や各種届け出など
・技能実習が適正かどうかを確認する実地検査
実地検査で法令違反が認められた場合、速やかに勧告や指導に従わないと、技能実習計画の認定が取り消されることもあります。もし技能実習計画の認定が取り消されることになれば、実習実施者へのダメージは計り知れません。勧告や指導を受けた場合は、迅速に改善を図ることが大切です。
技能実習生を受入れることが決まったら、外国人技能実習機構のウェブサイトをこまめにチェックしましょう。
外国人技能実習機構のウェブサイトでは、以下のようなことができます。
・実習実施者が行うべき申請や届け出の様式をダウンロードできる
・技能実習生が日本で働く際に知っておくべき情報を得られる
・技能実習手帳のアプリがダウンロードできる
外国人技能実習機構のウェブサイトには実習実施者にとっても技能実習生にとっても役立つ情報が掲載されているので、ぜひ活用してみてください。
技能実習生を受入れる際は、正しく手続きをし、計画に沿った技能実習を実施することが必要です。外国人技能実習機構のウェブサイトなどをうまく活用し、適切に技能実習生を受入れましょう。
参考)
法務省・厚生労働省「外国人技能実習制度について」,2022年10月14日,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005177.pdf(閲覧日2022年11月24日)
外国人技能実習機構「外国人技能実習機構とは」,https://www.otit.go.jp/about/(閲覧日2022年11月24日)
外国人技能実習機構「実施状況報告書提出時の注意事項」,https://www.otit.go.jp/files/user/docs/300328-3-1.pdf(閲覧日2022年11月24日)
外国人技能実習機構「事業報告書の提出方法について」,https://www.otit.go.jp/files/user/220315-131.pdf(閲覧日2022年11月24日)
厚生労働省「技能実習計画の認定取消の通知と改善命令を行いました」,2019年1月25日,https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03368.html(閲覧日2022年11月24日)
厚生労働省「別紙1技能実習計画の認定取消の内容」,https://www.mhlw.go.jp/content/11808000/000473490.pdf(閲覧日2022年11月24日)
厚生労働省「技能実習法に基づく行政処分等を行いました」, 2022年3月25日,https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24679.html(閲覧日2022年11月24日)
厚生労働省「技能実習法に基づく行政処分等を行いました」,2021年11月26日,https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22351.html(閲覧日2022年11月24日)
外国人技能実習機構「技能実習生手帳」アプリをダウンロードしましょう!」,https://www.otit.go.jp/files/user/220525-911.pdf(閲覧日2022年11月24日)