この記事を読むと、次のことが分かります。
・ジョブ型雇用の概要
・メンバーシップ型雇用との違い
・ジョブ型雇用のメリット・デメリット
・ジョブ型雇用導入のポイント
「ジョブ型雇用」とは、日本の従来の「メンバーシップ型雇用」に代わるものとして注目されている雇用スタイルです。働き方改革を踏まえたこれからの日本人の働き方、また、外国人雇用の観点からその必要性が高まっています。
それは一体なぜなのでしょうか?本稿では、ジョブ型雇用の概要や従来のメンバーシップ型雇用との違い、ジョブ型雇用のメリット・デメリット、外国人雇用との関係などについて、わかりやすく解説します。ぜひご参考にしてください。
1.ジョブ型雇用とは?わかりやすく解説
ここでは、ジョブ型雇用とはどのようなものか、日本での浸透状況や注目されている背景なども併せて、わかりやすく解説します。
1-1. ジョブ型雇用の大きな特徴は、仕事に人を当てること
ジョブ型雇用は、個々の人材が持っているスキルや資格、経験などを重視して採用する方法で、海外では主流の雇用スタイルです。
ジョブ型雇用で採用する場合、企業は業務の内容や目的などを明確に記載した「ジョブディスクリプション(職務記述書)」を用意し、これを求職者に示します。ジョブ型雇用でない場合も求人票などに業務内容を記載しますが、ジョブディスクリプションには一般的な求人票よりも詳細かつ明確に情報が記載されています。
まず定義された仕事があり、そこに適した人材を当てる、という考え方です。
ジョブ型雇用では、ジョブディスクリプションを活用し業務内容に合うスキルを持つ人を採用するため、専門性が高い人材を雇用することが可能です。
1-2. ジョブ型雇用は日本企業に浸透してきているのか?
新型コロナウイルスの流行によるテレワークの普及や働き方改革などが影響し、日本でもジョブ型雇用が注目されるようになりました。実際に導入している企業はまだ少ないものの、近年は有名企業も導入を公表しています。
富士通株式会社は2019年に「IT企業からDX企業への転換」を発表し、実現に向けた取り組みをスタートさせており[1]、三菱ケミカル株式会社は2019年から「主体的なキャリア形成」「透明性のある処遇・報酬」「多様性の促進と支援」を3本柱とする人事制度改革に着手しています[2]。
さらに、一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)と国公私立大学によって構成された「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」も、新卒採用にジョブ型雇用を取り入れる意向を発表しました[3]。
現段階ではまだ浸透しているとまではいえませんが、経団連の後押しもあり、今後導入企業は増えていくと予想されます。
1-3. ジョブ型雇用が注目されている背景とは
先ほど「新型コロナウイルスの流行によるテレワークの普及や、働き方改革などの影響でジョブ型雇用が注目され始めた」とお伝えしましたが、それらに加え以下のような背景もジョブ型雇用が注目される要因となっています。
・終身雇用制度の崩壊
・専門的なスキルを持つ人材の不足
・ダイバーシティの浸透
一つずつ見ていきましょう。
・終身雇用制度の崩壊
かつて日本では、企業が定年まで人材を雇い続ける「終身雇用制度」や、年齢や勤続年数によって給与が上がる「年功序列制度」が一般的でした。
ところが、経済の低迷により長く働いている人材の人件費が企業にとって重い負担となっていることや、少子高齢化により若手の労働力不足が深刻になっていることを受け、現在では終身雇用制度が崩壊しつつあります。
終身雇用制度においては、新卒で入社した人材を自社で育て上げるという雇用スタイルがマッチしていました。しかし、終身雇用制度でなくなると人材の流動性が高まり、転職が当たり前になるでしょう。
ジョブ型雇用で採用すれば、企業はスキルが高く即戦力となる人材を得られ、人材は自分のスキルに応じた働き方ができます。このように終身雇用制度が崩壊しつつある今、人材をイチから育成するのではなく、すでにスキルを持つ人を採用するジョブ型雇用への注目が高まっているのです。
・専門的なスキルを持つ人材の不足
現在、世界は第4次産業革命に入っています。AIやIoT、ビッグデータなどを用いた技術革新が進んでおり、これに伴い仕事内容にも変化が生じるといわれています。
日本での雇用が多かった「製造ラインの工員」「企業の調達管理部門」のような仕事は減少し、ITの専門的なスキルを持つ人材が必要になってくるでしょう。このような傾向は一部の企業に限ったことではなく、幅広い分野の企業で予想されています。
技術革新により、今までのようなゼネラリストではなく、スペシャリスト、特にITに精通した人材が求められる時代になるでしょう。しかし、現時点ですでにIT人材が不足しており、2030年には40~80万人の規模で不足すると試算されています[4]。
高いスキルを持つ人材の採用にはジョブ型雇用が適しているため、導入する企業が増えているのです。
・ダイバーシティの浸透
少子高齢化が深刻な日本では、今後15~64歳の生産年齢人口の減少が加速すると考えられています[5]。
需要に見合った商品やサービスをこれまでのように提供していくには、労働力の確保が急務です。そのような状況において多様な人材を確保したいと考える企業が増えたことで、「ダイバーシティ(多様性)」の考え方が浸透しつつあります。
今後、副業や兼業の他、介護や育児をしながらの在宅ワークなど、働き方の選択肢はますます広がるでしょう。加えて、労働力確保の観点からは、定年後の世代や外国人労働者の活躍も期待されています。柔軟な働き方を実現するには、成果を重視するジョブ型雇用が適しているのです。
以上が、ジョブ型雇用が注目されている背景です。日本の現状や将来を考えると、ジョブ型雇用は有効な雇用スタイルといえるでしょう。
1-4. ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用との違い
ジョブ型雇用と、日本で広く導入されている「メンバーシップ型雇用」を比較すると、以下のような点で違いがあります。
ジョブ型雇用 | メンバーシップ型雇用 | |
採用方法 | ・ジョブディスクリプションを活用し、入社後の業務を明確に提示 ・求職者のスキルに応じて採用 | ・新卒者を「総合職」として一括採用 ・入社後それぞれの部署に配属 |
仕事の範囲 | ・専門性がある ・限定的 | ・業務の内容が限定されない ・業務範囲が広い |
求められる人材 | 専門性の高いスペシャリスト | あらゆる業務ができるゼネラリスト |
キャリア | 基本的に転勤や異動はない | 多くの場合、転勤や異動が伴う |
給与 | 成果によって評価される | 役職・勤続年数に応じて、総合的に評価される |
人材育成 | 自主的なスキルアップが必要 | 企業が主体となって人材を育成 |
人材の流動性 | ・転職や解雇のハードルが低い ・流動性が高い | ・解雇や転職を想定していない ・流動性が低い |
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用では、採用段階からその方法が異なります。スキルに応じて採用するジョブ型雇用では、採用後の業務などについてジョブディスクリプションで明示することが必要です。
一方、メンバーシップ型雇用は日本従来の新卒一括採用をイメージするとわかりやすいでしょう。総合職として雇用し、その後社内研修などを経てそれぞれの部署に配属します。
ジョブ型雇用で採用された人材は、ジョブディスクリプションに記載されている業務に限定して携わり、自主的に専門性を高めることが求められるでしょう。
それに対し、メンバーシップ型雇用で採用された人材は、幅広い業務に取り組めるゼネラリストとして活躍することが期待されます。自主的にスキルアップするというよりも、企業が主体となって人材を教育し、スキルアップにつなげるのが主流です。
ジョブ型雇用は「仕事ありきで、仕事に人をつける」、メンバーシップ型雇用は「人ありきで、人に仕事をつける」といった考え方であり、これらは対照的な雇用スタイルなのです。
[1] 富士通株式会社「富士通が目指すDX企業とは? ~データ利活用部門のトップが語る,DXの価値~」,https://www.fujitsu.com/jp/about/resources/publications/technicalreview/2020-02/article05.html(閲覧日2022年11月11日)
[2] 三菱ケミカル株式会社「サステナビリティ・レポート2020」,p13-14,https://www.m-chemical.co.jp/csr/pdf/sr_mcc_2020_04-3.pdf(閲覧日2022年11月11日)
[3] 一般社団法人日本経済団体連合会「採用と大学教育の未来に関する産学協議会-「中間とりまとめと共同提言」概要及び現在の活動-」,2019年10月8日,p3,https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shushoku_katsudou/kanji_dai1/siryou9.pdf(閲覧日2022年11月11日)
[4] 経済産業省「参考資料(IT人材育成の状況等について)」,p5,https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/daiyoji_sangyo_skill/pdf/001_s03_00.pdf(閲覧日2022年11月17日)
[5] 経済産業省「2050年までの経済社会の 構造変化と政策課題について」,2018年9月,p4,https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/pdf/001_04_00.pdf(閲覧日2022年11月11日)
2.ジョブ型雇用のメリット
ここでは、ジョブ型雇用のメリットについて解説します。ジョブ型雇用のメリットとして、特に次の5つを挙げることができます。
・専門性の高い人材を採用できる
・生産性の向上が期待できる
・入社後のミスマッチが防げる
・スキルを磨きやすい
・外国人雇用とマッチする
一つずつ見ていきましょう。
・専門性の高い人材を採用できる
企業にとってのメリットとして「専門性の高い人材を採用できること」があります。
人材の持つスキルを重視して採用するジョブ型雇用では、その業務に必要な人材をピンポイントに採用することが可能です。専門的の高い人材を採用し育成することで、専門分野に特化したスペシャリストとしての活躍が見込めます。
・生産性の向上が期待できる
「生産性の向上が期待できる点」も企業にとっては大きなメリットです。
ジョブ型雇用で採用された人材は、自分の得意な分野で力を発揮できるため、高いモチベーションで仕事ができます。
また、事前に仕事を定義しているため、期待する成果もはっきりしており、企業が人材の評価をしやすい点も特徴です。評価された人材は、より一層のスキルアップを自主的に図り、ますます成果につなげることが可能です。このような良い流れを作ることができれば、生産性の向上が期待できます。
・入社後のミスマッチが防げる
ジョブ型雇用では、人材と企業の入社後のミスマッチを防げます。
ジョブ型雇用では、企業は業務内容や待遇などの詳細情報をジョブディスクリプションではっきりと提示します。その情報に納得した人を雇用するため、人材・企業のいずれもが入社後に「想像と違う」「こんなはずではなかった」と感じるリスクが少ないのです。
・スキルを磨きやすい
「自分が得意な分野に特化してスキルを磨ける」ということは、従業員にとって大きなメリットです。ジョブ型雇用では業務を限定して人材を採用します。業務に必要なスキルを磨くことに集中できるため、専門性を追求できるのです。
企業としても、限定的なスキルを伸ばすような育成を行えばよいため、高い技術力を持つスペシャリストを育成しやすいでしょう。
・外国人雇用とマッチする
ジョブ型雇用は外国人雇用ともマッチします。これは外国人労働者の仕事の内容が、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」が定める在留資格制度によって細かく管理されているためです。
外国人労働者は、自分が保有している在留資格で認められていない仕事をすることはできません。例えば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、エンジニア、通訳、営業、デザイナーなどの仕事に就くことができます。しかし、産業・サービスの現場で働くことは原則としてできません。
「技能実習」の在留資格では、技能実習に関する業務だけが許されており、事前に定められた実習計画に沿って実習が進められます。その計画にない業務に従事させると、不法就労となります。
このように、外国人労働者は在留資格によって仕事が定義されている、つまりジョブ型雇用で採用されているのです。そもそも海外ではジョブ型雇用が一般的なので、この形は外国人労働者にとってむしろなじみ深い雇用スタイルと言えます。
今後ますます労働力不足が深刻化することが予想される日本において、外国人労働者は貴重な労働力です。外国人の採用を検討している場合は、ジョブ型雇用の導入を積極的に検討することをおすすめします。
以上がジョブ型雇用のメリットです。今後必要性が増すスペシャリストを確保するために、ジョブ型雇用は非常に有効といえるでしょう。
3.ジョブ型雇用のデメリット
一方、ジョブ型雇用には以下のようなデメリットもあります。
・転職されやすくなる
・会社都合での転勤や異動をさせにくくなる
・エンゲージメントが高まりにくくなる
これらについても見ていきましょう。
・転職されやすくなる
高度なスキルを身に付けた人材にとって、自分の能力をより高く評価する企業や自分の能力を今以上に生かせる企業があれば、転職を考えることも当然です。
また、専門的なスキルを持つ人材はどのような企業にとっても魅力的なため、ヘッドハンティングをして優秀な人材を確保したいと考える企業も出てくるでしょう。
優秀な人材ほど転職を考える機会が増えるため、待遇の改善やエンゲージメントの強化が重要となるでしょう。
・会社都合での転勤や異動をさせにくくなる
ジョブ型雇用では、ジョブディスクリプションで示した業務に限定して採用します。そのため、別業務で人手が足りなくなったとしても、ジョブ型雇用で採用した人材をそこに転勤や異動させることができません。
もし経営方針の転換などで採用した業務がなくなった場合は、従業員を解雇することになります。日本では解雇に対するハードルが高いため、ジョブ型雇用に抵抗を感じる人もいるでしょう。
ちなみに、外国人労働者の場合、日本人と同じように異動をさせると入管法違反になる可能性があります。本人の在留資格で認められている業務範囲をよく確認しましょう。具体的な事例を4章でご紹介します。
・エンゲージメントが高まりにくくなる
ジョブ型雇用では、自分のスキルに合う業務や条件を求めて転職をすることは一般的です。また、個人として評価されるため、チームとしての意識が低下することも考えられます。そうなると、企業への帰属意識が薄れたり、部署内のチームワークが低下したりしてしまうかもしれません。
このようにジョブ型雇用にはデメリットもあります。「1社に長くとどまり、企業のために尽くす」という意識が薄れてしまいやすいため、企業は優秀な人材をいかに確保し続けるかが課題となりそうです。
4.外国人労働者に不法就労をさせた事例
外国人雇用においては、在留資格で認められている業務を正しく理解できていないと不法就労になってしまうケースがあります。
例えば、技能実習の在留資格を持つインドネシア人を、この在留資格で認められていない作業(具体的には工場での板金塗装の作業)に従事させていた事例[6]や、技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つネパール人を食品工場で働かせていた事例[7]がありました。
在留資格で認められていない仕事に従事させると、本人は不法就労罪、雇用者は不法就労助長罪を問われることになるため、注意が必要です。
技術・人文知識・国際業務の在留資格の場合、例えば本社勤務の外国人労働者を、欠員補充のため一定期間店舗に派遣したといったケースがありがちです。接客や料理の盛り付け補助、レジ打ちなどが「産業・サービスの現場での業務」と見なされ、不法就労となってしまうのです。
日本人従業員なら、現場の応援に赴くことになんら違和感はないでしょう。しかし外国人労働者の場合は違います。こうした違法行為があると、在留資格の更新が認められないことがあるので、「うっかり」を含めてよくよく注意しましょう。
外国人労働者の雇用に当たっては、在留資格で行える仕事をしっかりと確認し、それ以外の業務をさせてはなりません。これは社内に周知徹底しておく必要があります。
[6] 警視庁「令和3年における組織犯罪の情勢 【確定値版】」,2022年3月公表,p69,https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/kikakubunseki/R03sotaijousei/R03sotaijousei.pdf(閲覧日2022年11月11日)
[7] 一般社団法人全国外国人雇用協会「入管法違反」,http://nfea.jp/nyukanihan(閲覧日2022年11月11日)
5.ジョブ型雇用を導入するために
ここでは、ジョブ型雇用を導入する際のポイントをご紹介します。導入推進の関係者は、以下の点に特に留意し、認識を合わせておくことが大切です。
・ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用について十分に理解する
・ジョブ型雇用の導入が全社的な取り組みであることを理解する
・ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用を共存させる方法も検討する
・既存従業員へわかりやすく説明する
それぞれ解説します。
・ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用について十分に理解する
まず、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用について十分に理解することが大切です。これらは対照的な雇用スタイルなので、今までメンバーシップ型雇用を続けてきた企業がジョブ型雇用を導入すると、マッチしない部分も多々あることでしょう。
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用それぞれの特徴をしっかりと理解し、どのようにジョブ型雇用を導入すればよいのかを検討してみてください。
メンバーシップ型雇用にも、人材の育成やエンゲージメントの面でメリットはあります。完全にジョブ型雇用に切り替えるのではなく、自社なりのバランスを摸索する手もあるでしょう。
・ジョブ型雇用の導入が全社的な取り組みであることを理解する
ジョブ型雇用を導入するには、ジョブディスクリプションの作成や評価制度の改定、ツールの導入などさまざまな対応が必要です。その上、導入にはコストもかかります。ジョブ型雇用を導入するためには膨大な業務が必要になるので、企業を挙げての取り組みが求められます。
・ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用を共存させる方法も検討する
ジョブ型雇用の導入を検討する企業は今後も増えていくでしょう。しかし上述のように、必ずしも「メンバーシップ型雇用がダメでジョブ型雇用が良い」ということではありません。企業風土や労働慣行にあった雇用スタイルを柔軟に取り入れることが大切です。
日本においては、海外のジョブ型雇用をそのまま取り入れるのではなく、部分的に取り入れている企業も多くあります。例えば、「勤続年数で評価しない」「ある年齢からは異動させず業務を限定する」といった取り入れ方です。
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用のメリット・デメリットに加え、企業風土なども十分に考慮し、どのような取り入れ方が良いのかを考えてみてください。
・既存従業員へわかりやすく説明する
ジョブ型雇用を導入する際、既存従業員に制度の変更点や特徴をわかりやすく説明することが大切です。ジョブ型雇用を導入するとさまざまな点で変更が生じるため、「今までと違う働き方がイメージできない」「正しく評価してもらえるのか」など既存従業員から不満が出ることもあるでしょう。
不満を放置しておくと、従業員のモチベーションが低下し、企業全体としてのパフォーマンスにも影響が出かねません。今いる従業員から合意を得られるよう丁寧な説明を心がけましょう。
このようにジョブ型雇用の導入を成功させるには、雇用スタイルについて十分に理解し、導入方法についてあらゆる角度から検討することが大切です。
6.まとめ
ジョブ型雇用は、個々の人材が持っているスキルや資格、経験などを重視して採用する雇用スタイルです。まず定義された仕事があり、そこに適した人材を当てる考え方です。
海外で主流の考え方ですが、以下のような背景があり、日本でもジョブ型雇用が注目されるようになりました。
・新型コロナウイルスの流行によるテレワークの普及
・働き方改革
・終身雇用制度の崩壊
・専門的なスキルを持つ人材の不足
・ダイバーシティの浸透
これまで日本ではメンバーシップ型雇用が一般的でした。ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いは以下の通りです。
ジョブ型雇用 | メンバーシップ型雇用 | |
採用方法 | ・ジョブディスクリプションを活用し、入社後の業務を明確に提示 ・求職者のスキルに応じて採用 | ・新卒者を「総合職」として一括採用 ・入社後それぞれの部署に配属 |
仕事の範囲 | ・専門性がある ・限定的 | ・業務の内容が限定されない ・業務範囲が広い |
求められる人材 | 専門性の高いスペシャリスト | あらゆる業務ができるゼネラリスト |
キャリア | 基本的に転勤や異動はない | 多くの場合、転勤や異動が伴う |
給与 | 成果によって評価される | 役職・勤続年数に応じて、総合的に評価される |
人材育成 | 自主的なスキルアップが必要 | 企業が主体となって人材を育成 |
人材の流動性 | ・転職や解雇のハードルが低い ・流動性が高い | ・解雇や転職を想定していない ・流動性が低い |
ジョブ型雇用には以下のようなメリットがあります。
・専門性の高い人材を採用できる
・生産性の向上が期待できる
・入社後のミスマッチが防げる
・スキルを磨きやすい
・外国人雇用とマッチする
一方で、以下のようなデメリットもあります。
・転職されやすくなる
・会社都合での転勤や異動をさせにくくなる
・エンゲージメントが高まりにくくなる
外国人労働者を雇用する際は、在留資格制度を正しく理解できていないと不法就労になってしまうケースもあります。本人の持つ在留資格で行える仕事をしっかりと確認しておくことが大切です。
ジョブ型雇用を導入するポイントは以下の通りです。
・ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用について十分に理解する
・ジョブ型雇用の導入が全社的な取り組みであることを理解する
・ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用を共存させる方法も検討する
・既存従業員へわかりやすく説明する
注目度が高まっているジョブ型雇用ですが、全ての企業が導入すべきというものではありません。自社の状況や将来を踏まえ、適した雇用スタイルを検討してみてください。
参考)
三菱ケミカル株式会社「サステナビリティ・レポート2020」,p13-14,https://www.m-chemical.co.jp/csr/pdf/sr_mcc_2020_04-3.pdf(閲覧日2022年11月11日)
富士通株式会社「富士通が目指すDX企業とは? ~データ利活用部門のトップが語る,DXの価値~」,https://www.fujitsu.com/jp/about/resources/publications/technicalreview/2020-02/article05.html(閲覧日2022年11月11日)
経済産業省「2050年までの経済社会の 構造変化と政策課題について」, 2018年9月,https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/pdf/001_04_00.pdf(閲覧日2022年11月11日)
厚生労働省「外国人の方を雇い入れる際には、就労が認められるかどうかを確認してください。」,https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/anteikyoku/gairou/980908gai01.htm(閲覧日2022年11月17日)
一般社団法人全国外国人雇用協会「入管法違反」,http://nfea.jp/nyukanihan(閲覧日2022年11月11日)
Lightworks BLOG「ジョブ型雇用への道は一本ではない 課題や導入検討のポイントとは?」,2020年9月4日,https://research.lightworks.co.jp/job-employment(閲覧日2022年11月11日)
Lightworks BLOG「ジョブディスクリプションとは?課題から作成方法まで網羅的に解説」,2020年8月20日,https://research.lightworks.co.jp/job-description(閲覧日2022年11月11日)
Lightworks BLOG「メンバーシップ型雇用はダメなのか?論点や課題、可能性について解説」,2020年10月26日,https://research.lightworks.co.jp/membership-type-employment(閲覧日2022年11月11日)