外国人労働者の受入れ制度 採用担当者が注意すべき法律の解説

この記事を読むと、次のことが分かります。

・在留資格に関する基礎知識
・外国人労働者に適用される労働法
・外国人労働者との雇用契約と社会保険
・入管法や外為法、出身国の法令に係る注意点


実務上、個別具体のトピックで悩むことが多いと思いますが、実は一つの課題には多くの周辺事項が存在しています。周辺事項も含めてまとまった情報を理解する、あるいは参照する方が、結果的な業務効率はアップします。
本ブログでは、毎日多数の問い合わせに対応している実績を基に、企業の担当者が押さえておくとよい情報を、分かりやすくかつ網羅的にお届けします。
ぜひ参考にしてください。

日本で働く外国人(入管法2条2号に同じ)は増加傾向にあります。厚生労働省が公表する労働施策総合推進法28条1項に基づく雇用状況の届出の結果によれば、2021年10月末時点で約173万人の外国人が日本で働いています。2008年時点では約48万人であったことから、この間、日本で働く外国人は約3.6倍になったことになります。

この背景には、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少により若年・未熟練労働者の採用が難しくなっていることや、企業のグローバル化により多様な人材を採用する必要が生じていること等が背景にあるものと思われます。

日本では、従来、豊富な労働力を擁していました。特に、若年・未熟練労働者については、集団就職に代表されるように、学校を卒業してからすぐに職場に接続する広域の職業紹介制度があったため、戦後の高度成長期という労働需要が強い時期でも、国内の労働移動によりその需要を満たし、外国人労働者の受入れを正面から行わなかったといえます。

しかし、1990年代に入り、高等学校の新卒者が減少し、国内での若年・未熟練労働者の採用が難しくなりました。その需要の一部が向かったのが外国人労働者の採用だと考えられます。

特に、2012年以降、技能実習生の数は増加傾向にあり、2019年には過去最高の41万972人を記録しました。そして、技能実習生の増加に伴い問題となっているのが、受入れ企業による法令違反です。

2021年に行われた労働基準監督機関の調査によると、監督指導した9036件の企業にて、6556件の法令違反が発覚しています。具体的な違反の内容は以下の通りです。

厚生労働省「技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況(令和3年)」を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27067.html(閲覧日:2022年8月24日)

この厚生労働省の公表している監督指導等の状況は、技能実習生を雇用する実習実施者だけが法令違反をしているように理解されることがあります。ですが、法令違反について監督指導等を受けた割合は、実習実施者の企業、日本企業全体でほぼ同じで、いずれも約70%にも上ります。

そのため、これらの問題は技能実習制度固有の問題ではなく、外国人労働者を雇用するすべての企業に関係があります。企業は、在留資格、労働法、雇用契約、外為法など、コンプライアンス問題を把握しておく必要があります。

本稿では、外国人労働者を雇用する際に知っておくべき法律について解説します。

1. 外国人労働者の雇用に関する法令の基礎知識

まず、外国人労働者の雇用に伴う基礎知識について解説します。

1-1. 在留資格って何?

在留資格とは、外国人が日本に滞在し、活動するための資格です。出入国在留管理庁のホームページによると、29の在留資格が存在します[1](2022年8月現在)。また、在留資格は、同時に一人一つしか持つことができません。

在留資格には、(1)就労できる在留資格(2)原則として就労できない在留資格があります。

表)在留資格の分類

分類在留資格
限定なく就労できる在留資格永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者
在留資格で認められた範囲で就労できる在留資格外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習
原則として就労できない在留資格文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在

就労できる在留資格には、日本人と同じく職種の限定がなく就労できる在留資格と、在留資格で認められた範囲でのみ就労できる在留資格があります。

上記の表でいうと、「永住者」や「日本人の配偶者等」の在留資格を持つ人は、どんな仕事でも就くことができます。一方、「高度専門職」や「技能実習」などの在留資格を持つ外国人は決められた範囲の仕事しか就くことができません。

また、原則として就労が認められていない在留資格、例えば「留学」などの在留資格でも、資格外活動許可を取得すれば、一定の制限内での就労が可能になります。

外国人が在留資格で認めている範囲外の仕事をすると不法就労活動に問われます。また、雇用した企業に対しては、不法就労助長罪に該当する可能性があり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金の対象になります。

企業が外国人労働者を雇用する際には、上記のように割り当てる仕事や活動の内容が在留資格によって認められているのかをしっかり確認しましょう。

1-2. 技能実習法は何を規定しているの?

外国人技能実習制度は、日本の技術や知識を外国人に教え、その技術を母国に移転することにより、開発途上国の経済発展を担う人づくりに寄与することを目的としています。

技能実習法が制定される前は、出入国管理及び難民認定法(入管法)が技能実習制度の根拠法令とされていました。しかしながら、技能実習の監理体制や技能実習生の保護が不十分であるなどの理由により、状況を改善するため、2017年に「技能実習法[2]」が制定されました。

技能実習法では、外国人技能実習機構による技能実習計画の認定が義務付けられ、適性と判断された場合のみ、技能実習生の受入れが可能になります。また、以前は実習実施者には届出の義務はありませんでしたが、技能実習法により、出入国在留管理庁および厚生労働大臣への届出が義務付けられました。

企業は、上記の技能実習法の趣旨や内容を正しく理解した上で、技能実習生を受入れる必要があります。

1-3. 外国人労働者にも適用される労働法

外国人労働者に対しても、労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法、労働組合法、男女雇用機会均等法などの労働関係法令が適用されます。

これらに加えて、厚生労働省が「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」を定めており、外国人労働者の募集や採用、適正な労働条件や安全衛生の確保などについての規定があります[3]

外国人だから、技能実習生だから「最低賃金を下回っても問題ない」「時間外労働をさせても残業代を払う必要はない」などという考えは誤っており、外国人労働者にも日本人と同じ労働法が適用されるということを覚えておきましょう。

[1] 出入国在留管理庁「在留資格一覧表」,https://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/qaq5.html(閲覧日:2022年8月4日)
[2] 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成二十八年法律第八十九号)
[3] 厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」,https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gaikokujin13/sisin01.html(閲覧日:2022年8月5日)

2. 外国人労働者を雇ったら

この章では、外国人労働者を雇用した際に知っておくべき情報を解説します。

2-1. 外国人労働者との雇用契約

労働基準法では、雇用契約書を書面で発行することは義務付けられていません。そのため、企業が雇用契約書を発行しなくても法令違反になることはありません。

しかし、労働基準法15条に基づき、使用者は労働者を雇入れるときに労働条件を通知することが義務付けられています。労働条件として通知することが必要なのは次の事項です。

一 労働契約の期間に関する事項
一の二 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
二 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
三 賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
四 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
四の二 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
五 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項
六 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
七 安全及び衛生に関する事項
八 職業訓練に関する事項
九 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
十 表彰及び制裁に関する事項
十一 休職に関する事項

上記の一号から四号までの事項については、使用者は労働者に対し原則として書面を交付して明示する必要があります(労基則5条3項、4項)。また、労働者からの希望がある場合は、ファクシミリ、電子メール等の方法によることも可能です(労基則5条4項)。
電子メール等には、ウェブメール等に加えて、携帯電話端末のメッセンジャーアプリケーションやソーシャルネットワーキングサービスのメッセージ機能も含みます(平成30年12月28日基発1228号15号)。このような通信手段を利用する場合、労働者に対して、労働者自身で書面に出力して保存するよう伝えるのが望ましいとされています(平成30年12月28日基発1228号15号)。

もちろん、日本人労働者と同様、外国人労働者にも労働条件を明示する必要があります。その場合は、母国語や平易な日本語を用いる等、当該外国人労働者が理解できる方法により明示するよう努めること、とされています(外国人雇用管理指針第4)。

労働条件通知書については、厚生労働省が多言語による労働条件通知書の様式を公表しています。また、技能実習制度及び特定技能制度では、雇用契約書や雇用条件書について多言語の参考様式が公表されています。

外国人労働者に労働条件を通知する際は、平易な日本語を用いた通知を作成したり、上記の様式を活用したりするなどして、相手が理解できる形で伝えるようにしましょう。

2-2. 外国人労働者の社会保険

外国人労働者も日本人労働者と同じく、条件を満たす場合、社会保険の対象となります。
雇用保険の加入条件は以下の通りです[4]

・31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること
・1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること

上記の条件を満たす場合は、雇用保険被保険者資格取得届を行う必要があります。

また、厚生年金保険と健康保険については、2022年10月1日から適用範囲が拡大されます。変更点は以下の通りです。

表)社会保険の適用枠の拡大について

2016年10月~2022年10月~
週労働時間20時間以上週労働時間20時間以上
月額賃金8.8万円以上月額賃金8.8万円以上
勤務期間1年以上見込み勤務期間2カ月超見込み
学生は適用除外学生は適用除外
従業員500人超の企業等従業員100人超の企業等

外国人労働者を雇用する場合は、条件を確認した上で、日本人労働者と同様に社会保険の手続きを行うと考えましょう。

2-3. 外為法にも注意!

外為法25条1項には「技術提供を伴う取引をする際に、経済産業大臣の許可を取らなければいけない」と明記されています。つまり、日本国内で行われる国境を越えない技術提供も輸出と同じく手続きを行い、許可を取る必要があるということです。

この点に関して、2022年5月1日の通達で以下のように変更が加えられました。

・変更前
居住者から非居住者に技術提供:許可必要
居住者から居住者に技術提供:許可不要

・変更後
居住者から非居住者への技術提供:許可必要
居住者から居住者への技術提供:特定の類型の場合、許可必要

上記の変更点により、日本の企業に所属する外国人労働者であっても、以下の類型に該当する場合、許可が必要となりました。

(1) 契約に基づき、外国政府・大学などの支配下にある者への提供
(2) 経済的利益に基づき、外国政府などの実質的な支配下にある者への提供
(3) (1)(2)の他、 国内において外国政府などの指示の下で行動する者への提供

外国人労働者を採用する際には、採用予定の人材が外為法の類型に該当するのか否かをしっかりと確認し、必要であれば許可の申請を行う必要があります。

2-4.勤務開始後の入管法

外国人労働者を採用した後も入管法に則った形で雇用を行う必要があります。特に以下の2つに注意しましょう。

・現場での研修(OJT)、ジョブローテーションは在留資格との整合に注意
・就労中に発生し得る入管法関連の手続きを漏らさない

・現場での研修(OJT)、ジョブローテーションは在留資格との整合に注意

外国人労働者の活動内容は、在留資格に規定されます。在留資格は入管法に基づいた資格制度であり、在留資格で認められていない仕事をさせてしまうと、本人は不法就労罪、企業側は不法就労助長罪に問われることになります。

よって、新卒採用であれ、中途採用であれ、外国人従業員に日本人の新人と同じ感覚で仕事にアサインすることは危険です。その外国人従業員が保有している在留資格で認められている仕事を把握した上で、必要な調整を行いましょう。

特に注意が必要なのは、産業・サービスの現場での業務(いわゆる現業)です。工場でのライン作業や飲食店での接客、レジ打ちなどが挙げられます。これらの業務は、技能実習や特定技能など、一部の在留資格において一定の条件下で認められていますが、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で専らこれらの業務を行うことは在留資格で認められた就労活動に該当しません。

日本の大学を卒業し、企業に就職する留学生は、多くが採用時に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得していますので、注意が必要です。

例えば製造業の場合、業務理解を目的として、入社後に一定期間製造現場での研修を行うことがあります。このような「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を有する人の入社時のOJTについては、入管からガイドラインが出ています。
ガイドライン「「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で許容される実務研修について」によれば、OJTによる研修期間に行う活動のみを捉えれば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当しない活動であっても、それが日本人の大卒社員等に対しても同様に行われる実務研修の一環であり、在留期間中の活動を全体として捉えて、在留期間の大半を占めるようなものでなく、相当性が認められる場合には、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格による活動として認められます。

また、ジョブローテーションについても注意が必要です。日本では、いわゆるメンバーシップ型の雇用が主流です。メンバーシップ型雇用とは、ポストを固定しポストに対応する職務を定義した上で当該職務を行うことができるスキルを持っている人を採用するというジョブ型の雇用ではなく、会社の社員(メンバーシップ)にふさわしい人を採用し、採用した後に職務を割り当てるという方式で、一括採用した新入社員を「会社のメンバー」として育てていく考え方です。特定の業務の専門性を高めるという業務のスペシャリストになるよりも、配置転換を通じて様々な業務を経験しながらゼネラリスト(会社のスペシャリスト)になることが重要視されます。

そのために日本企業が伝統的に行ってきた育成手法が、ジョブローテーションです。様々な部署で経験を積みながら、会社の事業を理解し、会社のためにオールラウンドに活躍できる人材を育てるには、効率的な仕組みといえるでしょう。

しかし、外国人労働者の場合、在留資格で担当できる職務が規定されています。このため、日本人従業員と同じ感覚でジョブローテーションをさせると、不法就労となってしまう可能性があるのです。

このため、外国人労働者にはジョブ型雇用の考え方がなじみやすいといえます。雇用に際しては、外国人労働者に担当してもらいたい業務を事前に明確にした上で、必要な在留資格を取得できる人材を探しましょう。

・就労中に発生し得る入管法関連の手続きを漏らさない

外国人労働者が日本で生活している間も、入管法関連の手続きが必要なシーンがあります。基本的には本人が自分のライフイベントに合わせて行うものですが、会社の支援が必要なケースもあります。

入管法関連の手続きに漏れがあると、本人が働けなくなってしまう可能性があります。また、会社の側も不法就労助長罪に問われる可能性がありますので、しっかりリスクポイントを押さえておきましょう。具体的には、以下の6つです。

(1) 在留資格の更新
就労可能な在留資格の在留期間は「5年」「3年」「1年」が一般的です。在留期限が切れる前に「在留期間更新許可申請」を行う必要があります。

運転免許証の更新のように、事前にハガキなどで案内が来る仕組みはありません。本人がうっかり忘れてしまい、オーバーステイとなり、不法就労罪に問われるケースは多く発生しています。会社の側も、しっかり注意が必要です。

(2) 外国への渡航
在留資格を有する外国人労働者も在留期間中に海外渡航することは可能です。その際、再入国の許可を得る又はみなし再入国の許可を得ることをせず、単純に出国すると今持っている在留資格を喪失してしまいます。一時帰国する場合には、再入国の許可やみなし再入国の許可を得て、許可の期間内に日本に戻ることが必要です。

(3) 子供の出生
外国籍の子供が生まれた場合は、その子供の「在留資格取得許可申請」が必要になります。この場合、その子供には「家族滞在」等の在留資格が付与されます。

(4) 家族の呼び寄せ
就労可能な在留資格の場合、配偶者や子供を日本に呼び寄せることができる場合があります。高度専門職の場合は、一定の条件を満たすと親の呼び寄せも可能です。この場合、その家族について「在留資格認定証明書交付申請」が必要です。

「家族滞在」の在留資格で家族を呼び寄せる場合には、呼び寄せる側の外国人労働者に家族を扶養できる金額の収入があることが求められます。場合によっては、会社が扶養の金額を考慮して賃金を設定することが望ましいといえます。

(5) 永住
永住を希望する場合は「永住許可申請」が必要です。
永住の許可の際に日本に一定の期間居住したことが求められます。したがって、将来永住を希望する外国人労働者に対しては、海外転勤を命令するなど日本を離れることを業務として命じる場合には外国人労働者本人の永住を含めたキャリア展望を聞いた上で、本人の希望に沿った人事を行うことが望ましいといえます。

(6) 結婚・離婚
必要に応じて在留資格の変更を行います。例えば、就労系の在留資格で働いている外国人労働者が日本人と結婚した場合、在留資格を「日本人の配偶者等」に変更することができます。就労系の在留資格を保有する外国人労働者同士の場合は、在留資格の変更は必ずしも行わなければならないものではありません。

また、外国人労働者の結婚・離婚に際しては、会社の支援が必要なケースもあります。例えば、海外の拠点で働いている外国人労働者が結婚し、その後日本に転勤する場合、外国人労働者が家族と一緒に入国するためには、会社の従業員が家族の「在留資格認定証明書交付申請」の際に代理人になるケースが考えられます。

また、日本人と結婚し「日本人の配偶者等」の在留資格で働いていた外国人労働者が離婚した場合で、就労系の在留資格に変更しなくてはならない場合、就労系の在留資格に該当する業務に配置転換するなどの会社の支援が必要となります。

このように、外国人労働者は、採用された後も入管法に基づいた働き方、過ごし方をする必要があります。特に人事担当者は、採用後も外国人労働者への対応を現場任せにすることなく、外国人労働者が入管法に意図せず違反することがないようサポートするようにしましょう。

[4] 厚生労働省「雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!」,https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147331.html(閲覧日:2022年8月8日)

3. 外国人労働者の出身国の法令

外国人労働者の出身国に関する法規範には、送出国の法令、日本の法令、二国間協力覚書などの3つのレイヤーがあります。この章では、送出国の法令と二国間の覚書について解説します。

3-1. 送出国の法制度

送出国ごとに異なる法制度であるため、外国人労働者を採用する際には、事前に送出国の法令を確認する必要があります。例えばベトナムの場合、送出機関は「契約に基づいて外国で働くベトナム人労働者に関する法律(69/2020/QH14)」に基づいて、許可を受けなくてはいけません。また、送出機関等が外国人労働者から徴収する手数料についても同法に規定されており、規定以上の額を請求することはできません。加えて、外国人労働者の負担が少なくなる仕組みを継続的に考えることが重要です。

その他に、送出国を出国するために一定の手続きが必要となる国や査証を取得するために一定の手続きが必要な国、海外の法人が直接採用活動を行うことを禁止している国があります。

送出国の法令に注意を払わないと、知らず知らずのうちに法令違反をしてしまったり、採用した外国人労働者が送出国を出国できず日本に来ることができなかったりする可能性があります。企業は、日本国内の法制度だけでなく、送出国の法制度についても一定の理解を有することが重要です。

3-2. 二国間協力覚書

技能実習制度や特定技能制度では、適正な受入れを行うため日本が送出国との間で覚書を締結しています。

例えば、特定技能制度の二国間協力覚書によっては、国ごとに異なる手続きが設けられている場合もあり、出身国に合わせた対応が必要となります。

雇用時に上記の制度を利用する場合には、対応する二国間協力覚書の内容を確認するようにしましょう。

4. まとめ

この記事では、外国人労働者を雇用する際に関係する法令について解説しました。

外国人労働者を雇用する際には、割り当てる仕事や活動の内容が在留資格によって認められているのかを確認しなければなりません。認められていない仕事をさせた場合、外国人労働者は不法就労活動に、企業は不法就労助長罪に問われ、罰せられる可能性があります。

技能実習生を受入れる企業には、技能実習法が適用されます。技能実習法では、技能実習計画の認定を受けることや、実習実施者が出入国在留管理庁および厚生労働大臣へ届け出ることが義務として定められています。

さらに、外国人労働者にも日本人と同じ労働法が適用されます。外国人だから、技能実習生だから「最低賃金を下回っても問題ない」「時間外労働をさせても残業代を払う必要はない」などという考えは誤っているということです。

また、外国人労働者を雇用する場合には、日本人と同様、各種手続きが必要です。

雇用時には、外国人労働者に対して労働条件を明示する必要があります。その際には、外国人労働者が理解できるように、平易な日本語を用いた通知を作成したり、国が公表する様式を活用したりしましょう。

加入条件を満たせば、社会保険の対象でもあります。その場合、日本人労働者と同様に社会保険の手続きを行わなければなりません。

さらに、外国人労働者を雇用する際には、採用予定の人材が外為法の類型に該当するのか否かを確認し、必要であれば許可の申請を行う必要があります。

外国人労働者は、採用された後も、入管法に基づいた働き方、過ごし方をする必要があります。そのため、特に人事担当者は、採用後も外国人労働者への対応を現場任せにすることなく、外国人労働者が意図せず入管法に違反することがないようにサポートすることが必要です。特に、次の2点に注意しましょう。

・現場での研修(OJT)、ジョブローテーションは在留資格との整合に注意
・就労中に発生し得る入管法関連の手続を漏らさない

さらに、企業は、ここまで見てきた日本の法令だけでなく、外国人労働者の送出国の法令についても一定の理解を有しておかねばなりません。送出国の法令に注意を払わないと、知らず知らずのうちに法令違反をしてしまったり、採用した外国人労働者が送出国を出国できず日本に来ることができなかったりする可能性があります。

また、技能実習制度や特定技能制度を利用する場合には、対応する二国間協力覚書の内容を必ず確認するようにしましょう。

外国人労働者を受入れる企業は、関連する法令や制度など正しく理解し、日本人と同様に外国人労働者にとって働きやすい環境を整備していく必要があります。コンプライアンスを徹底し、グローバル人材が安心して活躍できる職場を目指しましょう。

参考)
e-GOV法令検索「労働基準法」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049(閲覧日:2022年8月5日)
厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」,https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gaikokujin13/sisin01.html(閲覧日:2022年8月5日)
厚生労働省「雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!」,https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147331.html(閲覧日:2022年8月8日)
出入国在留管理庁「在留資格一覧表」,https://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/qaq5.html(閲覧日:2022年8月4日)
警視庁「令和2年における組織犯罪の情勢」,2021年4月,p70, 72,https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/kikakubunseki/sotaikikaku09/R02sotaijyousei.pdf
(閲覧日:2022年8月9日)

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