ダイバーシティ&インクルージョンとは 考え方・進め方を徹底解説!

「ダイバーシッシュ」という言葉をご存知でしょうか。

これは、「ダイバーシティ」と、「体裁を取り繕ってごまかす」という意味のある「ホワイトウォッシュ」という単語を組み合わせた造語です。日本語にすると「見せかけのダイバーシティ」「似非ダイバーシティ」といった意味合いになります。

2019年に世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で発足した「Valuable500」という障害者雇用推進団体[1]が提唱し、一時話題となりました。

ダイバーシティが目指すのは、本来、属性に関わらず全ての人が労働に参画し、能力を発揮できる状態です。しかし、対外的にはこのように公言しながらも、実際には採用する人材を障がいの有無など表面的な属性でふるいにかけたり、マイノリティの従業員に対するマネジメントや環境面での配慮が欠如していたりといった企業が見られます。これを「Valuable500」は「ダイバーシッシュ」という表現で批判したのでした。

仮にダイバーシッシュという自覚がなくても、職場に形だけの多様性や、関連する制度だけを作り、実際には活用していないという企業は存在します。

こうしたダイバーシティの形骸化を防ぎ、組織により本質的な変化をもたらすよう作られたのが、ダイバーシティ&インクルージョンという概念です。

本稿では、ダイバーシティ&インクルージョンとは何か、メリットやプロセス、アクション等について、具体的にご紹介していきます。

ぜひ、参考にしてください。

[1] 同団体には現在、世界33カ国400社以上(内、日本企業は39社)の有力企業が加盟しています。

1. ダイバーシティ&インクルージョンとは

ダイバーシティは、日本語で「多様性」を意味します。インクルージョンは、「包括」です。ダイバーシティ&インクルージョンは、もともとあった「ダイバーシティ」という考え方に、あとから「インクルージョン」という言葉がついて成立した概念です。

ダイバーシティ&インクルージョンが意味するところは、バラバラにある多様性を包括してひとつにまとめること、です。より具体的には、従業員一人ひとりが個の違いを認め、尊重し、個性や才能を活か合いしながら協働している状態、また、そうした状態となるために行う組織の取り組み全般を指します。

ここで言う「個の違い」には、例えば以下のようなものがあります。

・性別
・年齢
・国籍
・人種
・身体的特徴
・性的指向
・性格
・価値観
・考え方
・宗教・信条
・コミュニケーションスタイル
・教育
・習慣
・キャリア・経験
・働き方 etc.

こうした「個の違い」の中から対象を個別に切り出し、日本で近年取り組みが進められているのが、以下のようなテーマです。

・女性の活躍推進
・外国人の雇用促進
・高齢者の活躍推進
・障害者の活躍推進
・LGBTへの理解促進
・多様な働き方・制度の整備

切り口は異なりますが、どのテーマに取り組む場合も組織には大きな変化が伴います。また、人事をはじめとする管理部門や当事者はもちろん、事業部門の幹部や管理職、一般の従業員に至るまで、全従業員の参画・協力が必要です。

例えば、女性の活躍推進で言えば、ただ単に女性の採用数や管理職への登用数を増やせば良いという訳ではありません。男女の違いを超え、互いに尊重し協働する組織となるためには、組織構造人事慣行、従業員一人ひとりの仕事の進め方・考え方まで、抜本的に見直しを図り、改革を進めていく必要があります。

そのため、ダイバーシティ&インクルージョンは、全従業員を巻き込んで組織全体の風土と慣行を変える、組織改革の1つであると言われています。

2. ダイバーシティ&インクルージョンが注目される背景

ダイバーシティ&インクルージョンが注目される背景には、以下2つの視点が関係しています。

・人間尊重の視点
・経済的な視点

・人間尊重の視点

1章で述べた通り、「個の違い」には性別や年齢、国籍から、価値観、コミュニケーションスタイル、働き方まで様々なものがあります。そして、その中には本人の意思で変えることができるものと、そうでないものがあります。

例えば、白人、黒人といった人種による肌の色の違いや心身障害の有無、性的指向などは、変えようと思って変えられるものではありません。しかし、残念なことに、こうした変えることのできないその人の個性、特徴の一部で、その人全体が判断されてしまうことはまだまだ多くあります。そして最悪の場合、偏見や差別、不公平などにもつながります。

現代では、こうした変えられない「個の違い」によって尊厳が傷つけられることのないよう、思いやりのある公正な社会の構築が期待されています。

例えば、2015年には国連サミットでSDGsが採択されました。SDGsとは、「誰一人取り残さない」という理念の下、持続可能なより良い社会を作るために取り決められた、「ジェンダー平等」を含む17の世界共通目標[2]です。このSDGs達成には、多様な人材が互いに認め合い、受け入れ合う機会と風土を作り出すことが必須であると考えられています。

・経済的な視点

経済的な視点では、国と企業の2つが関係します。

まず国の立場では、国力の減退が背景にあります。国力とは、すなわち労働力です。永らく、日本では、日本人男性が労働の中心的な担い手となっていました。しかし、近年、労働人口の減少が喫緊の課題として注視されています。

働く人が減るということは、それだけ稼ぐ力も消費する力も少なくなるということです。稼ぎも消費も少なくなれば、それだけ経済は縮小し、国の税収は下がります。そのため、外国人や女性など、日本人男性以外の人材の就労・活躍を積極的に推し進めていくことで、労働力を確保し、国力の維持・回復を図ろうとする狙いがあります。

企業の立場では、国内外での生き残りをかけ、ダイバーシティ&インクルージョンを通じて競争力を高めようとする思惑があります。

例えば昨今、日本国内で目を引くのが、グローバル企業の台頭です。百貨店はAmazonに、喫茶店はスターバックスに、高級家具店はIKEAに、といった具合に、様々な業界で外国企業が国内マーケットの牽引役となっています。

ダイバーシティ&インクルージョンは、これら強力なグローバル企業の共通点の1つです。グローバル競争を勝ち抜いていくには、ダイバーシティ&インクルージョンの定着が、企業にとって最低限の標準装備となっているのです。

また、ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みの有無は、企業の資金調達力にも影響を及ぼし始めています。どういうことかと言うと、SDGsなどサステナビリティへの世界的な関心の高まりとともに、これまで、利益率などの財務的側面一辺倒だった世界中の投資家の判断基準に、環境問題や人権問題への取り組みと言った、非財務的側面が加味されるようになってきているのです。

例えば、FTSE4Good Global Indexは、企業の非財務的側面に着目した世界的に有名なインデックスです。「気候変動」「水利用」「生物多様性」「汚染と資源」「環境的サプライチェーン」「健康・安全」「労働基準」「人権と地域社会」「顧客に対する責任」「社会的サプライチェーン」「腐敗防止」「税の透明性」「リスク・マネジメント」「コーポレート・ガバナンス」の14テーマについて評価を行っています。

ダイバーシティ&インクルージョンはこれらテーマと深く関連するものであり、投資家の信頼を勝ち得てより多くの資金を集めるには、今や欠かせない要素となっています。

[2] SDGs17の目標:貧困、飢餓、保健、教育、ジェンダー、水・衛生、エネルギー、成長・雇用、イノベーション、不平等、都市、生産・消費、気候変動、海洋資源、陸上資源、平和、実施手段

3. ダイバーシティ&インクルージョンのメリットと注意点

以上のように、人権尊重、そして経済的な理由から注目が集まっているダイバーシティ&インクルージョンですが、企業の立場に立ってもう1歩踏み込んで考えてみると、どのようなメリットや注意点があるのでしょうか。それぞれ、具体的にみていきましょう。

3-1. ダイバーシティ&インクルージョンのメリット

企業がダイバーシティ&インクルージョンに取り組むメリットは、以下の4つが挙げられます。

・ 生産性の向上
・ 資金調達力の向上
・ 優秀な人材の確保
・ 定着率の向上

・ 生産性の向上

ダイバーシティ&インクルージョンは、企業の生産性を高めます。なぜなら、人材の多様性が増えることでより多角的な視点から議論、検討ができるようになり、アイディアの質を高めることができるからです。

アイディアの質が高まれば、例えば、より時間やお金のかからない効率的な方法を見つけ出したり、顧客の潜在的なニーズに応える、付加価値の高いサービスや商品を生み出すことができるようになったりします。

・ 資金調達力の向上

ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みは、企業の資金調達力を高めます。理由は、2章で述べた通り、企業の株主である投資家の判断基準に、近年、ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みなど、非財務的側面が加味されるようになったからです[3]

社会や環境に悪影響を及ぼしている企業は、将来的なブランドイメージの低下が懸念されています。ブランドイメージの低下は、すなわち、採用難や業績の下落、大手の機関投資家や金融機関の資金引き上げのリスクがある、と判断されます。

SDGsが世界の潮流となっている今、時世を読み、ダイバーシティ&インクルージョンをはじめ社会的責任にしっかりと向き合えている企業こそ、サステナビリティが高い相応しい投資先として評価してもらうことができるのです。

・優秀な人材の確保

ダイバーシティ&インクルージョンに取り組むことで、企業は優秀な人材を確保しやすくなります。理由は、2つあります。

1つは、雇用の門戸が広くなるためです。人の意識を変え、仕事の在り方を見直し、組織の体制を整えることで、例えば、育児や介護で時間的制約のある人材や外国人など、これまで雇用の網から漏れてしまっていた人たちを、戦力として受け入れることができるようになります。

理由のもう1つは、求職者の企業イメージの向上です。近年、働きやすさの向上に向けた企業の取り組みやその成果は、テレビや新聞など、度々マスメディアで特集やランキングとして取り上げられています。一方、求職者もまた、「働きやすさ」「活躍のしやすさ」といった項目を企業選びの指標としてチェックするようになっています。

人材獲得競争が過熱化する中、良い人を採用したければ、企業もまた、良い企業として求職者に認知・選択してもらわなければなりません。ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みは、企業の魅力度を高め、求職者の就業意欲を掻き立てる強い武器となるのです。

・ 定着率の向上

ダイバーシティ&インクルージョンは、人材の定着率向上につながります。なぜなら、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組むことで、従業員それぞれに適した働き方を提示できるようになるからです。

これまで、日本の人事制度の多くは、フルタイムの日本人健常者の男性を前提に設計・運用されていました。しかし、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組むことは、自ずとその前提をひっくり返すことになります。より広範な人材を対象に制度や文化を構築し直すことで、出産・育児や介護など、突発的なライフイベントによる退職を回避することができるようになります。

また、ダイバーシティ&インクルージョンが浸透した組織では、従業員はただキャリアを継続できるだけでなく、自分の強みや能力を活かしながら働くことができます。結果的に、仕事にやりがいを感じやすくなり、エンゲージメントの向上につながります。

3-2. ダイバーシティ&インクルージョンの注意点

ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む際の注意点としては、以下が挙げられます。

・ 推進活動の停滞
・ 即効性の追求
・ 一時的な生産性の低下

・ 推進活動の停滞

1章でご説明した通り、ダイバーシティ&インクルージョンは組織変革の1つです。組織を根底から大きく変えていくには、それなりのエネルギーが求められます。組織変革のエネルギー源は、何といっても従業員一人ひとりの危機意識、つまり、「組織も自分もこのままでいてはまずい」という想いです。

特に、変革にエンジンをかける経営層や、変革のアクセルにもブレーキにもなりうる管理職の危機意識は重要です。エンジンとアクセルが機能しなければ車が進まないのと同様、経営層と管理職の危機意識がなければ、せっかく始めたダイバーシティ&インクルージョン推進もすぐにストップしてしまいます。そのため、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む際は、まずは、経営層から管理職、一般の従業員に至るまで、しっかりと危機意識を共有することが大切です。

ポイントは、客観的データを活用することです。人事関連のデータやサーベイ、インタビューの結果などを提示しながら、あくまでも企業目線で、「なぜダイバーシティ&インクルージョンが必要なのか」、「なぜ変わらなければならないのか」を論理的に説明していくと、納得感が得られやすくなります。

・ 即効性の追求

ダイバーシティ&インクルージョンには生産性の向上など様々なメリットがある一方で、そのメリットが企業収益の向上と言った成果として表れるには時間がかかります。ハーバード大学ビジネススクール名誉教授で、変革的リーダーシップで有名なジョン・コッター氏は、組織変革の成功には、強力なリーダーシップと最低でも数年間の時間が必要と述べています。

もちろん、数年間全く成果が上がらないというわけではなく、例えば、従業員の勤務態度の向上やモチベーションアップなど、個人レベルでの変化は短期でも実感しやすい部分です。しかし、マーケットシェアや収益性など組織全体の財務的な成果を求めるなら、長期的な視点で根気強く取り組むことが必要です。早期の成果を期待しすぎてモチベーションが下がらないよう、あらかじめ長期戦となることを踏まえておくと良いでしょう。

・ 一時的な生産性の低下

ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む過程では、一時的に生産性が低下することがあります。それは、多くの日本企業でこれまでスムーズな意思伝達の土台とされてきた「同一性」や「均一の価値観」が崩れることで、社内に軋轢や対立が起こるためです。

人の属性や価値観が多様化すれば、それだけコミュニケーションは複雑になります。例えば、会議で異なる意見ばかりが出れば、その分調整に時間がかかります。外国人など母国語が違えば、たとえ同じ日本語を話していても、いつも以上に誤解やミスコミュニケーションは生じやすくなります。

ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む際は一時的な生産性の低下も考慮し、アサーションやコンフリクトマネジメント、異文化理解などをテーマにした研修等を取り入れていくと良いでしょう。

[3] ESG投資:企業の3つの非財務的側面(環境:Environment、社会:Social、ガバナンス:Governance)に着目して行う投資。

4. ダイバーシティ&インクルージョンのプロセス 

ダイバーシティ&インクルージョンの浸透プロセスは、次の4つの段階があります。

(1) 抵抗
(2) 同化
(3) 分離
(4) 統合

(1) 抵抗

まず始めが、「抵抗」の段階です。ダイバーシティ&インクルージョンに対してマイナスイメージが強く、お金や手間など目先のコストが優先され、導入に非常に消極的です。たとえ導入していても、経営戦略の一部と言うよりは、名目だけの対処療法的な施策にとどまります。結果的に、なかなか成果に繋がらないまま単発的な取り組みに終わってしまったりします。旧態依然とした企業に多く見られる段階です。

(2) 同化

次は、「同化」の段階です。法律遵守を目的に、不公平や差別が起こらないよう、違いをなくすことに気を配ります。例えば、女性を「総合職」と「一般職」にわけ、総合職の女性には男性と同じように残業・転勤・長時間労働をさせ、男女の差を埋めようとするのが「同化」です。女性の働き方の選択肢は増えますが、あくまで既存の組織文化に従わせるため、個々の違いは活かされません。表面的な多様性にとどまり、経営成果には繋がりにくい状態です。

(3) 分離

3番目は、「分離」です。この段階では、企業のイメージアップや顧客ニーズへの対応力向上など、ダイバーシティのプラスの効果に気付き、違いを活かす方向に動き始めます。例えば、多様な人が働きやすい仕組みや制度を作ったり、マーケティングや商品開発など、女性は女性に向いた仕事に、外国人には外国人に向いた仕事に、というように、適材適所への配属を行ったりします。

個人をひとつの属性で分類し、決まった仕事に当て込めていくこのスタイルは、組織が安定している時にはうまく機能します。しかし、現在のように変化が激しい時代には、組織も柔軟に対応していけるよう、より多面的に個人を評価しその才能を十分に活かしていくことが求められます。

(4)統合

最後は、「統合」の段階です。ダイバーシティ&インクルージョンを競争優位の武器として捉え、経営戦略の一部に組み込んで実行します。人の多様性にとどまらず、業務プロセスやシステム、風土など、組織の隅々に至るまで見直し、様々なバックグランドを持つ従業員が、安心して働き、自由に発言できる雰囲気が保たれています。

以上が、ダイバーシティ&インクルージョンの4つの浸透プロセスです。日本でダイバーシティ&インクルージョンが叫ばれるようになって数年が経過しましたが、依然として、抵抗や同化、分離段階の企業は多く見受けられます。日本全体にダイバーシティ&インクルージョンが浸透するまでは、もう少し時間がかかりそうです。

5. ダイバーシティ&インクルージョン推進の具体的アクション

本章では、ダイバーシティ&インクルージョン推進に必要な具体的なアクションについてご説明します。ステップは、大きく分けて3つあります。

ステップ1 推進活動の準備
ステップ2 全社への情報共有
ステップ3 施策の実践・定着

ステップ1 推進活動の準備

まず始めに推進活動の準備を行います。具体的には、以下の3つに取り組みます。

ステップ1-1 ビジョンの策定

なぜ、何のためにダイバーシティ&インクルージョンに取り組むのか、どのような状態を目指すのか、活動の目的と自社の目指す姿を明確にします。

なお、1章で述べた通り、ダイバーシティ&インクルージョン推進は、組織改革の1つです。あくまで組織の持続的成長を促すために行うものであり、策定したダイバーシティ&インクルージョンのビジョンは、既にある組織のビジョン・戦略と必ずリンクするよう注意します。

例えば、「一人一人がイキイキと働ける組織をつくる」など、情緒的でどの会社にも当てはまるようなビジョンは、組織を変えていく上で欠かせない経営者や現場の理解を得るには、説得力が足りません。自社にとっての必要性が十分に伝わるよう、自社のビジネスとの関連性を明確にしながら、ビジョンを策定していくことが重要です。

ステップ1-2 行動計画の策定

策定したビジョンを元に、いつ、何に取り組むのかを行動計画に落とし込んでいきます。
まずは、制度や仕組みの状況を客観的に測定した定量的データや、アンケート調査やヒアリングなど定性的なデータを活用しながら、現状の課題を洗い出した上で、取り組み内容を検討していきます。

主な施策としては、以下の3つのアプローチがあります。

(1) 制度・仕組みの整備

目的育児や介護、障がいなどによって、働く時間や場所に制約のある人材が、継続的に活躍できる環境を整備する
施策例法定の内容を超える出産・育児休暇制度
出産・育児支援金の給付
看護休暇制度
有給休暇や代休の時間単位での取得
職場復帰支援制度
事業所内託児所
フレックス/短縮勤務制度
週3、4日勤務など勤務日数の選択制度
学期間勤務(子供の長期休暇などに合わせた無給休暇の取得)
公正で透明性の高い評価制度の構築
時間的制約下でも継続可能な職域の開発
ジョブディスクリプションの作成
ジョブシェアリング
テレワーク
地域限定の勤務制度
配偶者の転勤に合わせた人事異動
経営トップからのメッセージの発信
ネットワーキング・コミュニティづくりの支援(イベントや社内SNS等)
従業員が互いの家族やバックグランドを知り合う機会の創設(ファミリーデイなど)
etc.

(2) 意識改革

目的従業員一人ひとりがダイバーシティ&インクルージョンとは何かを正しく理解し、自分事としてその意義や必要性を認識できるようにする
施策例[4]講演
研修
eラーニング
パネルディスカッション
座談会
ワークショップ
社内報の発行
ポスターの掲示
対話の機会の創出(フューチャーセッションやワールドカフェ、ランチミーティングなど)
etc.

(3) スキルアップ

目的従業員同士がお互いの違いを認め尊重し合いながら、能力を最大限に発揮できるチームを作るためのスキルを身に付ける
施策例下記テーマに関する研修、ワークショップ、eラーニング等

コンフリクトマネジメント、アサーション、チームビルディング、ファシリテーション、コミュニケーション、タイムマネジメント、ストレスマネジメント、ロジカルシンキング
ステップ1-3 推進体制の構築

どのような体制でダイバーシティ&インクルージョンを導入していくのか、推進リーダーは誰にするのかを決定します。推進体制は、以下の4種類があります。

(表1)推進体制のパターン

組織形態傾向メリットデメリット
経営者率先型比較的規模が小さく、経営者の強いコミットメントがある場合に採用される傾向がある・経営者の医師がそのまま施策に反映される
・決断が早くすぐに取り組める
・変更など柔軟に対応できる
・従業員の声を反映できるような場を設け、経営者の独断にならないようにする
総務人事主導型職種が比較的少ない企業は人事部門の中に責任者を配置し人事施策と連動して推進する・人事・労務に関する情報が集まっているので、話し合いがスムーズで選択や検討が容易に行える
・人事・労働制度の設計や改定などと直結した施策を検討しやすい
・経営トップのサポートが必須
・制度の整備だけに終わらず、現場を変えるような施策を広範囲に展開する
・経営者と従業員をつなぐ役割が不可欠
専門組織設置型経営とトップと連動したダイバーシティ専門組織を新設して推進する職種が多様であり機能部門が縦割り傾向の強い組織は、専門部署を設けることで組織横断的に対応することが可能になる・専門部署だけがやればよいという意識に陥りがちな点に留意する
・各部門に良き理解者(ダイバーシティファシリテーターなど核となる人材)を増やす
プロジェクトチーム型全職場からメンバーを募集して推進する・従業員の声を横断的に聞くことができる
・メンバーに当事者意識や積極的な参加姿勢が生まれる
・最大の敵は「やらされ感」
・自律的な活動ができるような環境づくりや支援が必要
・事務局は裏方に徹し、プロセス管理をしっかりする役割を担う

(荒金雅子『多様性を活かすダイバーシティ経営 実践編』一般財団法人日本規格協会,2014年,P48-49を元に作成)

ステップ2 全社への問題共有

準備が整ったら、いよいよ推進活動の口火を切ります。すなわち、「なぜ、何のために取り組むのか」、「取り組むことで、将来どうなりたいのか」、「いつ、何をしていくのか」、ダイバーシティ&インクルージョン導入の目的や目標、行動計画を全従業員に向け発信していきます。発信の方法には様々な形があり、例えば以下のような方法は、関心の薄い従業員も含め、全従業員に対して活動への理解・浸透を促すのに有効とされています。

・経営トップからの直々メッセージ
・評価指標の新設
・キャッチコピーの掲示
・タウンホールミーティング等の対面コミュニケーション

いずれも、活動の意義と組織の本気度をどれだけ伝えられるかがポイントとなります。全従業員への周知を徹底し、対話を通じて一人でも多くの理解・共感を得ていくことで、次のステップをよりスムーズに進めることができます。

ステップ3 施策の実践・定着

全社への問題共有が終わった後は、ステップ1で作成した行動計画に沿って、1つずつ施策を展開していきます。その際、ダイバーシティ&インクルージョンの目標を部や個人評価に組み込むと、現場も巻き込みやすくなり、活動の停滞・形骸化を防ぐことができます。また、現場と継続的にコミュニケーションをとりながら、好事例を集めたり紹介したりすることも、活動のモチベーションにつながります。ホームページやプレスリリース等で、取り組みや成果を社外に見える化することも有用です。

[4] 出典:荒金雅子,『多様性を活かすダイバーシティ経営 実践編』,一般財団法人日本規格協会, 2014年,P98

6. ダイバーシティ&インクルージョン推進で見るべきポイント

1章で述べた通り、ダイバーシティ&インクルージョンで扱う「個の違い」には、年齢や性別、国籍から価値観、コミュニケーションスタイルまで、様々なものがあります。そして、制度や環境を整え、組織に色々な年代、国、思考の人を迎え入れることは、ダイバーシティ&インクルージョンの貴重な初めの一歩となります。

しかし、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む上で最も大切なことは、意見に多様性があることです。年齢や性別、国籍など目に見える違いを社内にいくら増やしても、そこから多様な意見が出てこなければ、企業がダイバーシティ&インクルージョンの真価を実感することは難しいでしょう。

意見の多様性は、お互いに相手を受容し尊重することから始まります。もちろん、ここで言う相手とは、外見的な部分だけを言うのではありません。考え方や宗教、性的指向まで、目に見えない深層的な部分をも含みます。この、目に見えない深層的な部分から相手を受け入れ、認めることで初めて、場への信頼や安心感が生まれ、自由な議論が交わされるようになります。

ダイバーシティ&インクルージョン推進でつまずく理由の1つは、受容と尊重に基づく意見の多様性が不足しているからです。都度、多様な意見は出ているか、受容的な話しやすい雰囲気は作られているかを確かめながら進めるようにしましょう。まずは、ダイバーシティ&インクルージョンを推し進める推進チームからチェックしてみるのも良いでしょう。

7. まとめ

いかがでしたでしょうか。

ダイバーシティ&インクルージョンとは、従業員一人ひとりが個の違いを認め、尊重し、個性や才能を活か合いしながら協働している状態、また、そうした状態となるために行う組織の取り組み全般を指します。

例えば、日本では、近年以下のテーマについて取り組みが進められています。

・女性の活躍推進
・外国人の雇用促進
・高齢者の活躍推進
・障害者の活躍推進
・LGBTへの理解促進
・多様な働き方・制度の整備

ダイバーシティ&インクルージョンは、全従業員を巻き込んで組織全体の風土と慣行を変える、組織改革の1つであると言われています。

ダイバーシティ&インクルージョンが注目される背景には、人間尊重の視点経済的な視点の2つがあります。

企業がダイバーシティ&インクルージョンに取り組むメリットは、生産性の向上、資金調達力の向上、優秀な人材の確保、定着率の向上の4つです。

ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む際は、推進活動の停滞、即効性の追求、一時的な生産性の低下に注意が必要です。

ダイバーシティ&インクルージョンは、(1)抵抗、(2)同化、(3)分離、(4)統合の4段階を経て浸透していきます。

ダイバーシティ&インクルージョン推進に必要な具体的なアクションは、大きく分けて次の3つです。

ステップ1 推進活動の準備
ステップ2 全社への情報共有
ステップ3 施策の実践・定着

ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む上で最も大切なことは、意見に多様性があることです。意見の多様性は、お互いを受容し尊重することから始まります。都度、多様な意見は出ているか、受容的な話しやすい雰囲気は作られているかを確かめながら進めるようにしましょう。

ダイバーシティ&インクルージョンは、取り組むことで、組織の成長を大きく飛躍させる一生の財産となりえます。この記事が、御社のダイバーシティ&インクルージョンを次のステージへと進める布石となれば幸いです。

参考)
経済産業省,「ダイバーシティ経営の推進」https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/index.html(閲覧日:2021年10月7日)
外務省,「SDGsとは?」,『JAPAN SDGsAction Platform』
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html(閲覧日:2021年10月7日)
外務省 国際協力局 地球規模課題総括課,「持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて日本が果たす役割」https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/sdgs_gaiyou_202108.pdf(閲覧日:2021年10月7日)
株式会社クロスウィッシュ,「ダイバーシティ」,『SDGs SCRUM』
https://sdgs-scrum.jp/glossary/diversity/(閲覧日:2021年10月7日)
株式会社ニューラル,「FTSE4Good Index」,『Sustainable Japan』
https://sustainablejapan.jp/2017/05/08/ftse4good-index/26726 (閲覧日:2021年10月7日)
荒金雅子,『多様性を活かすダイバーシティ経営 基礎編』,一般財団法人日本規格協会, 2013年
荒金雅子,『多様性を活かすダイバーシティ経営 実践編』, 一般財団法人日本規格協会,2014年
リクルート HCソリューショングループ,『実践ダイバーシティマネジメント 何をめざし、何をすべきか』,英治出版,2008年
大久保幸夫,皆月みゆき『働き方改革 個を活かすマネジメント』,日本経済新聞出版社,2017年
日本財団,「世界最大規模の経営者ネットワーク「The Valuable 500」を支援」
https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/pr/2021/20210201-53255.html (閲覧日:2021年10月12日)
The Valuable 500, 「The Valuable 500」https://www.thevaluable500.com/ (閲覧日:2021年10月12日)
長谷川裕子,「diversish(見せかけのダイバーシティ)と言われないために」,『Linked in』(閲覧日:2021年10月12日)
男女共同参画局,「平成27年度事業:資本市場における女性の活躍状況の「見える化」と女性活躍情報を中心とした非財務情報の投資における活用状況に関する調査」, https://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/27mierukachosa.html (閲覧日:2021年10月14日)

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