「採用予定者の在留資格を確認したら「特定活動」と書いてあった。雇用しても問題ないのだろうか」
企業が外国人労働者を採用する場合、在留資格で許可されている活動に限り雇用することが可能です。そのため外国人労働者を採用する際は、在留資格の種類をしっかりと確認する必要があります。
法務省によると、在留資格は以下の4つに分類できます[1]。
・就労が認められる在留資格(高度専門職、技術・人文知識・国際業務、技能実習など)
・身分・地位に基づく在留資格(永住者、日本人の配偶者など)
・就労の可否は指定される活動によるもの(特定活動)
・就労が認められない在留資格(短期滞在、留学など)
特定活動は上記の分類のうち「就労の可否は指定される活動によるもの」に該当します。該当例としては、外交官の家事使用人やワーキングホリデーなどがあります。
しかし、それら以外にも特定活動に該当する活動はたくさんあり、活動の内容によって許可される在留期間も異なります。
企業の採用担当者としては、「自社の業務内容は特定活動の取得条件に該当するのか」「該当する場合、どのくらいの期間雇用できるのか」などを把握しておく必要があります。
今回は、特定活動の種類や許可されている在留期間、申請方法などを詳しく解説します。
[1] 法務省「在留資格一覧表」,https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Events/bdb/49facb9d51d120db/session_second_1.pdf(閲覧日:2022年4月7日)
目次
1. 特定活動の在留資格の外国人は雇用できる?
特定活動の在留資格の外国人を雇用することは可能です。しかし、特定活動の在留資格を持つ外国人であれば誰でも雇用できるわけではありません。
特定活動では、さまざまな活動が認められており、それらの活動に該当する場合にのみ、外国人を雇用することが可能です。
そのため企業の採用担当者は、特定活動の在留資格は他の在留資格とどのように違うのか、どのような活動が認められているのか、などを把握しておく必要があります。
外国人が日本に在留するためには、在留資格が必要であり、本人の立場や活動の内容に合わせて付与されます。しかし、外国人の活動は非常に幅広いため、全ての活動に在留資格をあてがうことは困難です。
そこで、「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動[2]」として、特定活動が設けられています。これは、法務大臣の許可で在留資格を付与するため、入管法を改正することなく、他の在留資格に該当しない活動に在留資格を付与することができます。
特定活動の在留期間は、5年・3年・1年・6カ月・3カ月、あるいは法務大臣が個々に指定する5年を超えない範囲の期間です。
[2] 入出国在留管理庁「在留資格「特定活動」」,https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/designatedactivities.html(閲覧日:2022年4月7日)
2. 特定活動の在留資格の主な活動
特定活動で認められている活動は多岐にわたります。今回は、聞きなじみのある活動と、外国人を雇用したい企業が知っておきたい活動をご紹介します。
・ワーキングホリデー
・インターンシップ
・造船労働
・特定情報処理活動
それぞれを詳しく解説します。
・ワーキングホリデー
ワーキングホリデーとは、休暇を過ごすことを目的とした旅行で、滞在資金を補うために海外での就労を認める制度です。この制度は、ワーキングホリデー制度の協定を結んでいる国同士のみで適用されます。
ワーキングホリデー制度を使って滞在する外国人には、特定活動の在留資格が付与されます。
留学の在留資格の場合、資格外活動の許可を得ると、基本的に週に28時間までの労働が認められますが、ワーキングホリデーに労働時間の制限はありません。
また、留学の在留資格の在留期間は最長で4年3カ月ですが、ワーキングホリデーの在留期間は最長で1年と定められています。
・インターンシップ
特定活動に基づくインターンシップは、海外の大学に通う学生が、日本の会社に勤務しながら実習を行うことを目的としています。
インターンシップの外国人を雇用するには、外国人が通う大学と雇用する企業との間でインターンシップの契約を行っている必要があります。日本でのインターンシップは、一年を超えない期間、また通算して当該大学の修業年限の二分の一を超えない期間内と定められています[3]。
・造船就労
特定活動では、外国人造船就労者に在留資格が付与されます。国土交通省の資料によると外国人造船就労者とは、造船分野技能実習を修了した者で、受入造船企業との雇用契約に基づく労働者と定義できます。在留期間は条件によって異なり、最長で3年と定められています[4]。
・特定情報処理活動
特定情報処理活動に該当するのは、一定の要件を満たしている外国人が、自然科学や人文科学に関する技術や知識を必要とする情報処理の業務に従事する場合です。
[3] 出入国在留管理庁「外国の大学の学生が行うインターンシップ」,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005575.pdf(閲覧日:2022年6月14日)
[4] 国土交通省「外国人造船就労者受入事業に関するガイドライン」,令和元年9月,https://www.mlit.go.jp/common/001307253.pdf,p11,20,21(閲覧日:2022年6月14日)
3. 特定活動の外国人を雇用する際の注意点
特定活動の外国人を雇用する際、以下の点に注意する必要があります。
・特定活動の内容を確認する
・外国人雇用状況の届け出をする
それぞれを詳しく解説します。
・特定活動の内容を確認する
特定活動にて許可されている活動の条件は、指定書で確認する必要があります。
在留する外国人が携帯する在留カードには、在留資格の種類や在留期間などが記載されています。しかし、特定活動の具体的な活動内容は記載されていません。そのため、指定書での確認が必要です。一般的に、指定書は外国人のパスポートに添付されています。
特定活動の種類はとても多く、許可されている活動の種類によって在留期間や就労できる業種が異なります。許可されていない活動で外国人を雇用した場合、不法就労助長罪に問われる可能性があるので注意が必要です。
・外国人雇用状況の届け出をする
特定活動の外国人の雇用に限ったことではありませんが、外国人を雇用する企業には外国人雇用状況を届け出る義務があります。この届け出はハローワークに提出する必要があり、義務を怠ると30万円の罰金が科せられることもあります。
なお、外国人雇用状況の届け出は、雇用時だけでなく離職時にも行う必要があります。
4. 特定活動の申請方法
特定活動の申請方法は2種類あります。
「出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動」と「告示特定活動」の場合は、入管法や法務大臣の告示によって、あらかじめ活動の種類が定められています。そのため、他の在留資格と同じく、入国前に在留資格証明書の交付申請をすることで取得できます。
一方で、「告示外特定活動」の場合は、個々の状況が異なるため、入国前に在留資格認定証明書は交付されません。そのため、特定活動以外の在留資格で入国して、入国後に在留資格変更許可申請を行う必要があります。
特定活動に限らず、外国人が在留資格の申請を行う際は、原則として申請人である外国人が出入国管理局に出頭して申請することになっています。しかし、本人が海外にいる場合や他の理由がある際は、雇用する企業が代理人として申請することが可能です。
在留資格認定証明書と在留資格変更許可の申請方法については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
5. 特定活動について詳しく知りたい人向け 特定活動の3つの種類
この章では、特定活動の詳細について解説します。
特定活動は以下の3つに分類されます。
・出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動
・告示特定活動
・告示外特定活動
それぞれを詳しく解説します。
5-1. 出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動
出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動とは、入管法で規定されている活動のことです。
これに分類される特定活動は3種類あります。
(1) 特定研究等活動
法務大臣によって指定される日本の企業、教育機関、政府機関における、研究や研究の指導などの活動
(2) 特定情報処理活動
自然科学または人文科学の分野に属する技術や知識を要する、情報処理に関わる業務に従事する活動
(3) 特定研究等家族滞在および特定情報処理家族滞在活動
特定研究等活動と特定情報処理活動で滞在する外国人の扶養を受ける配偶者、または子が日本で行う活動
5-2. 告示特定活動
告示特定活動とは、法務大臣によって指定されている活動を指します。2022年3月16日に改定された告示特定活動の表を以下に記載します。
表)特定活動の告示(2022年3月16日改定)
特定活動の告示 | 在留資格の内容 |
3号 | 台湾日本関係協会職員及びその家族 |
4号 | 駐日パレスチナ総代表部の職員及びその家族 |
6号 | アマチュアスポーツ選手 |
7号 | アマチュアスポーツ選手の家族 |
9号 | インターンシップ |
10号 | 英国人ボランティア |
12号 | サマージョブ |
15号 | 国際文化交流 |
16~24および27~31号等 | 二国間の経済連携協定(EPA)看護師・介護福祉士関係 |
32号 | 外国人建設就労者 |
33号 | 高度専門職外国人の就労する配偶者 |
34号 | 高度専門職外国人またはその配偶者の親 |
35号 | 外国人造船就労者 |
36号 | 特定研究等活動 |
38号 | 特定研究等活動家族滞在活動 |
39号 | 特定研究等活動等の対象となる外国人研究者等の親 |
42号 | 製造業外国従業員受入事業における特定外国従業員 |
46号 | 本邦大学卒業者 |
47号 | 本邦大学卒業者の配偶者等 |
法務省「利用可能な在留資格(対象範囲)」,https://www.moj.go.jp/isa/content/001351658.pdf(閲覧日:2022年4月7日)
上記に該当する活動を行う外国人の場合、特定活動の在留資格が付与されます。なお、告示特定活動の種類は随時変更されるので、最新の情報を確認する必要があります。
5-3. 告示外特定活動
告示外特定活動とは、「出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動」と「告示特定活動」に該当せず、法務大臣が特別な事象により在留を認める活動です。
告示外特定活動には、以下のものがあります。
(1) 就職が決まらない留学生の就職活動
留学の在留資格で日本の大学や専門学校を卒業したものの、就職先が決まらない場合、引き続き就職活動を行うためとして、特定活動の在留資格が付与されることがあります。この場合、以下の2種類に分類されます。
・継続就職活動大学生
これは日本の大学や大学院、短大を卒業した外国人に適用されます。卒業前から行っている就職活動を引き続き行うことが条件です。
・継続就職活動専門学校生
これは日本の専門学校を卒業した外国人に適用されます。条件としては、卒業前から行っている就職活動を引き続き行うこと、履修の内容が技術・人文知識・国際業務など、就労可能なビザに関連すると判断されること、などがあります。
継続就職活動大学生と継続就職活動専門学校生の在留期間は原則として6カ月です。条件によっては、最長6カ月の在留期間の延長が許可されます。
注意点として、就職活動のための特定活動の在留資格を得ている外国人をアルバイトなどで雇用することはできません。外国人が資格外活動の許可を取得している場合、週28時間までの条件付きで雇用できます。
(2) 高齢の親の呼び寄せ
日本に在留する外国人の親が高齢の場合、人道上の配慮として呼び寄せが認められることがあります。しかし、親の呼び寄せが許可される明確な基準は公表されていません。一般的には、親が70歳以上であることや在留している外国人の扶養能力などが条件になるといわれています。
(3) 在留資格の申請が不許可になった場合
外国人が在留資格の更新や変更の申請を行っても不許可になることがあります。その場合、原則30日間の出国準備期間が付与されます。条件によっては4カ月程度の期間が与えられることもあります。
出国準備の期間が与えられている外国人は、原則として就労できません。出国準備期間中に就労しようとする外国人もいるため、特定活動の外国人を雇用する場合は在留資格の条件をしっかり確認する必要があります。
6. 特定活動の在留資格について相談したいとき
特定活動の外国人を雇用する際、在留資格を取得できる条件や申請方法、雇用条件などについて、疑問が浮かぶかもしれません。
そのようなときは、ハローワークや外国人雇用サービスセンターに相談するとよいでしょう。また、厚生労働省が管轄している、外国人雇用管理アドバイザー制度を利用することもできます。
これらの相談先の詳細や制度の利用方法については、以下の記事で解説しているのでぜひ参考にしてください。
7. まとめ
この記事では、特定活動の在留資格について解説しました。
企業は特定活動の在留資格を持つ外国人を、在留資格で許可されている活動に限り、雇用することができます。
特定活動の主な活動には以下のものがあります。
・ワーキングホリデー
・インターンシップ
・造船就労
・特定情報処理活動
特定活動の外国人を雇用する際は以下の点に注意しましょう。
(1) 特定活動の内容を確認する
特定活動にて許可されている活動の条件は指定書にて確認する必要があります。一般的に、指定書は外国人のパスポートに添付されています。許可されていない活動で外国人を雇用した場合、不法就労助長罪に問われる可能性があるので注意が必要です。
(2) 外国人雇用状況の届け出をする
外国人を雇用する企業には外国人雇用状況を届け出る義務があります。義務を怠ると30万円の罰金が科せられることもあります。
特定活動の申請方法は2種類あります。
「出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動」と「告示特定活動」の場合は、入国前に在留資格証明書の交付申請をすることで取得できます。
「告示外特定活動」の場合は、特定活動以外の在留資格で入国して、入国後に在留資格変更許可申請を行う必要があります。
特定活動は以下の3つに分類されます。
(1) 出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動
入管法で規定されている活動のことです。これには、「特定研究等活動」「特定情報処理活動」「特定研究等家族滞在および特定情報処理家族滞在活動」が含まれています。
(2) 告示特定活動
法務大臣によって指定されている活動を指します。告示特定活動の種類は随時変更されるので、最新の情報を確認する必要があります。
(3) 告示外特定活動
「出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動」と「告示特定活動」に該当せず、法務大臣が特別な事象により在留を認める活動です。告示外特定活動には、以下の活動があります。
・就職が決まらない留学生の就職活動
留学の在留資格で日本の大学や専門学校を卒業したものの、就職先が決まらない場合、引き続き就職活動を行うためとして、特定活動の在留資格が付与されることがあります。
この種の在留資格を得ている外国人をアルバイトなどで雇用することはできません。外国人が資格外活動の許可を取得している場合、週28時間までの条件付きで雇用できます。
・高齢の親の呼び寄せ
日本に在留する外国人の親が高齢の場合、人道上の配慮として呼び寄せが認められることがあります。親が70歳以上であることや在留している外国人の扶養能力などが条件になるといわれています。
・在留資格の申請が不許可になった場合
外国人が在留資格の更新や変更の申請を行っても不許可になった場合、原則30日間の出国準備期間が付与されます。出国準備の期間が与えられている外国人は、原則として就労できません。
特定活動の在留資格の種類は多岐にわたり、許可されている在留期間もさまざまです。「在留資格を持っている=雇用できる」と、間違った理解をしていると法律違反になる可能性もあります。
本稿で解説したように、特定活動の外国人の雇用を検討する場合は、許可されている活動の内容をしっかりと確認しましょう。不明点があれば、外国人雇用の専門家に相談することも必要です。
ぜひ今回の記事を参考にしていただき、外国人労働者の雇用を成功させ、企業の成長につなげていきましょう。
参考)
法務省「利用可能な在留資格(対象範囲)」,https://www.moj.go.jp/isa/content/001351658.pdf(閲覧日:2022年4月7日)
出入国在留管理庁「特定活動」,https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/zairyu_henko10_21_10.html(閲覧日:2022年4月7日)
国土交通省「外国人造船就労者受入事業に関するガイドライン」,令和元年9月,https://www.mlit.go.jp/common/001307253.pdf(閲覧日:2022年4月7日)
出入国在留管理庁「在留資格一覧表」, https://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/qaq5.html(閲覧日:2022年4月7日)
国土交通省「外国人造船就労者受入事業に関するガイドライン」,令和元年9月,https://www.mlit.go.jp/common/001307253.pdf,p11,20,21(閲覧日:2022年6月14日)