技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第10回)

2023年7月31日、「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」(座長・田中明彦国際協力機構理事長)の第10回会合が開かれました。中間報告書公表後3回目の開催となるこの会議では、2023年秋の最終報告書の取りまとめに向けて第8回会合で示された9つの論点のうち第5~9の論点について現状把握を深めるための資料等が配付されました。

参考)
出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第10回)」
https://www.moj.go.jp/isa/policies/policies/03_00072.html

1. 最終報告書の取りまとめに向けた論点

第9回会合では、最終報告の取りまとめに向けた論点を下記のように決定しました。

1 新たな制度及び特定技能制度の位置付けと両制度の関係性等【総論】

(1)新たな制度の位置付け(目的、基本的枠組み)
(2)特定技能制度の位置付け(変更の適否を含む。)
(3)新たな制度と特定技能制度の関係性(技能水準、家族帯同の在り方等両制度の在留資格制度全体における位置付けを含む。)
(4)企業単独型技能実習等の取扱い

2 人材育成機能や職種・分野等の在り方

(1)新たな制度における人材育成の在り方
(2)職種・分野の在り方
(3)新たな制度における技能評価の在り方(時期、具体的方策(試験等))
(4)技能評価を踏まえた活用方策
(5)人材育成機能の担保のためのその他の方策(処遇等適切かつ効率的な育成のための体制等の整備、職場への定着のインセンティブ付与等)

3 受入れ見込数の設定等の在り方

(1)新たな制度における受入れ見込数の設定の在り方(設定の可否を含む。)
(2)両制度における受入れ見込数の設定及び対象分野の設定(人手不足状況、労働市場への影響、人手不足への取組状況の確認、技能評価を含む。)における透明性や予見可能性のあるプロセスの在り方(制度の運用上の透明性確保を含む。)

4 転籍の在り方

(1)転籍の在り方(具体的方策(要件、時期、回数等))
(2)受入れ企業等が負担する来日時のコストや人材育成コストへの対応方策
(3)人権侵害や法違反等があった場合の救済の仕組み(事前把握方策等)
(4)転籍先を速やかに確保する方策(公私の機関(業所管省庁、ハローワーク等)の関与の在り方を含む。)

5 監理・支援・保護の在り方

(1)新たな制度における監理団体の要件(監理・支援・保護の要件の見直し)
(2)受入れ企業等の要件(適格性要件の見直し)
(3)優良な団体等(受入れ企業等、監理団体)へのインセンティブ付与方策(事業評価の公表を含む。)
(4)悪質な団体等への対応方策
(5)外国人技能実習機構の役割に応じた体制の整備等
(6)国、自治体、法テラス、弁護士会、NGO等の支援及び相談への関与の在り方(外国人技能実習機構との連携の在り方を含む。)

6 特定技能制度の適正化方策

(1)登録支援機関による支援の在り方(監理・保護機能を追加することの適否や登録制度であることの是非を含む。)
(2)優良な登録支援機関へのインセンティブ付与方策(事業評価の公表を含む。)
(3)悪質な登録支援機関への対応方策
(4)行政の指導監督体制の在り方

7 国・自治体の役割

(1)制度所管省庁の在り方・役割の見直し
(2)業所管省庁の役割の見直し(より良い受入れを後押しする役割を担う方向での見直し方策)
(3)自治体の役割(外国人が生活者として安心して暮らせるための相談体制を含めた環境整備等)

8 送出機関及び送出しの在り方

(1)送出機関の適正化等の在り方
(2)外国人の来日前の手数料負担を減少させる方策
(3)国際的なマッチング(職業紹介)機能の適正化方策(監理団体等の関与の在り方を含む。)

9 日本語能力の向上方策

(1)就労開始前の日本語能力担保方策(目的、具体的方策(試験、講習等))
(2)就労開始後の日本語能力向上の仕組み(目的、具体的方策(インセンティブ付与等)、日本語教育環境の整備)
(3)関係者の役割分担や負担費用の在り方

※ 留意点
上記の各論点を検討するに当たっては、現行制度から新たな制度に円滑に移行するための経過措置等の在り方についても併せて検討する。

第10回の有識者会議では、下記の5つの論点について現状を確認するための資料が配付されました。

・論点5:監理・支援・保護の在り方
・論点6:特定技能制度の適正化方策
・論点7:国・自治体の役割
・論点8:送出機関及び送出しの在り方
・論点9:日本語能力の向上方策

資料の内容を踏まえながら、論点5~9について、詳しく説明していきます。

2. 監理・支援・保護の在り方

論点5 監理・支援・保護の在り方
(1)新たな制度における監理団体の要件(監理・支援・保護の要件の見直し)
(2)受入れ企業等の要件(適格性要件の見直し)
(3)優良な団体等(受入れ企業等、監理団体)へのインセンティブ付与方策(事業評価の公表を含む。)
(4)悪質な団体等への対応方策
(5)外国人技能実習機構の役割に応じた体制の整備等
(6)国、自治体、法テラス、弁護士会、NGO等の支援及び相談への関与の在り方
(外国人技能実習機構との連携の在り方を含む。)

技能実習の監理団体による受入れ企業等に対する指導監督が不十分なケースが多いと指摘されています。中間報告は、人権侵害や不適切な就労を防止・是正できない監理団体は適正化・排除する必要があると指摘しています。

監理団体は、技能実習生を受け入れる企業等と技能実習生との間の雇用関係の成立をあっせんし、その後、受入れ企業等が技能実習を適正に実施できるように監査(3カ月に1回以上)や臨時監査を行います。また、技能実習生のさまざまな相談に対応するほか、やむを得ない事情で技能実習継続が困難となった場合に円滑に転籍(違う受入れ企業等に移ること)できるよう支援しなければなりません。しかし、このような監理業務や転籍支援業務を適切に実施できない監理団体も多く、技能実習制度の悪評や技能実習生の失踪を助長していると指摘されてきました。このため、中間報告は監理団体の監理・支援・保護の体制・能力などの要件の厳格化を提示しています。

第10回有識者会議で配られた資料によると、技能実習の受入れ企業等は2021年度で61,803機関あり、2015年度の約1.7倍です。業種としては、建設業と製造業で計73.3%です。一方、監理団体は2023年4月27日時点で3,626団体あり、92.5%が中小企業団体です。2021年度の監理団体3,505団体のうち複数の事業所を設けている団体は151団体(約5%)に過ぎません。

現行の技能実習制度では、技能実習の質を高めるために優良な実習実施者(受入れ企業等)と優良な監理団体を定めています。団体監理型と一部の企業単独型の実習実施者に対しては、技能実習生を除く常勤職員の数によって技能実習生の受入れ可能人数(基本人数枠)が決められていますが、優良な実習実施者になると、技能実習1号については基本人数枠の2倍、2号については4倍、3号については6倍の受入れが認められます。

現行制度で優良な実習実施者に認定されるには150点の配点のうち90点以上を取得する必要があります。150点のうち最も配点が高いのは技能習得実績(技能検定の合格率など)で70点、次に相談・支援体制(母国語相談員の確保、転籍の受入れ実績など)が45点、それ以外に技能実習生の待遇10点、法令違反・問題の発生状況5点などとなっています。また、監理団体の優良認定も同様に150点の配点のうち90点以上を取得する必要があり、配点項目には、監査やその他業務を行う体制、技能習得実績、相談・支援体制などがあります。

有識者会議は、新たな制度で監理団体の監理・支援のあり方や外国人保護のあり方を改善するために、監理団体の要件や優良な監理団体・受入れ企業の認定基準、こうした監理団体・受入れ企業へのインセンティブについて議論しています。

また、資料によると、2021年度までの3年間に外国人技能実習機構(OTIT)が実地検査を行った件数は、実習実施者に対しては計56,383件、監理団体に対しては計10,612件です。そして、2022年度までの3年間に団体監理型で許可や認定を取り消した件数は、実習実施者に関しては計365件、監理団体に対しては38件でした。実習実施者への認定取消理由で多いのは、労働関係法令違反、業務内容の齟齬、賃金不払いでした。

有識者会議は悪質な監理団体への対応や外国人技能実習機構(OTIT)の体制整備等についても検討しています。

3. 特定技能制度の適正化方策

論点6 特定技能制度の適正化方策
(1)登録支援機関による支援のあり方(監理・保護機能を追加することの適否や登録制度であることの是非を含む。)
(2)優良な登録支援機関へのインセンティブ付与方策(事業評価の公表を含む。)
(3)悪質な登録支援機関への対応方策
(4)行政の指導監督体制の在り方

中間報告は、特定技能外国人に対する支援を適切に行えない登録支援機関についても厳しく適正化・排除する必要があると指摘しています。

第10回有識者会議の配付資料によると、特定技能外国人を受け入れている機関は2022年9月末時点で21,413機関あり、都道府県別では、愛知、大阪、東京、茨城、北海道の順です。また、2023年4月末時点で登録支援機関は8,137機関で、そのうち会社組織が55.1%、中小企業事業協同組合が25.9%です。これらのうち受入れ機関と支援委託契約を結んでいるのは半分の4,069機関だけでした。

さて、2021年の特定技能外国人の行方不明は76人で、内訳は農業23人、飲食料品製造業22人、建設14人などとなっています。また、出入国在留管理庁の外国人在留総合インフォメーションセンターが2022年度に相談を受けた480,779件のうち特定技能外国人からの相談は9,342件でした。相談内容別では、在留カード・届出関係、在留資格認定証明書、永住申請、再入国、資格外活動などに続き特定技能制度(登録支援機関含む)に関する相談が8番目に多く、5,653件でした。

現在、登録支援機関が登録を受けるための要件は、機関自体が適切であること(5年以内に出入国・労働法令違反がないなど)と外国人を支援する体制があることです。出入国在留管理庁に登録を申請し、認められれば、登録支援機関として特定技能外国人の入居サポートや生活オリエンテーション、公的手続きへの同行、相談・苦情への対応などを行います。

有識者会議は最終報告に向けて、登録支援機関によるこうした支援のあり方を再検討するとともに、登録支援機関に対する行政の指導監督体制についても見直します。また、優良な登録支援機関へのインセンティブや悪質な登録支援機関への対応についても検討します。

4. 国・自治体の役割

論点7 国・自治体の役割
(1)制度所管省庁の在り方・役割の見直し
(2)業所管省庁の役割の見直し(より良い受入れを後押しする役割を担う方向での見直し方策)
(3)自治体の役割(外国人が生活者として安心して暮らせるための相談体制を含めた環境整備等)

団体管理型の技能実習を所管する官庁は法務省と厚生労働省で、特定技能1号を所管する官庁は法務省、外務省、厚生労働省、国家公安委員会と各分野の所管省庁です。特定技能外国人を受け入れる前提として、分野別の所管省庁は生産性向上や国内人材確保に向けた取組を行うこととされています。

第10回有識者会議の資料によると、例えば、外食業分野では、生産性向上の取組として、セルフオーダーシステムやキャッシュレス化によるサービスの省力化▽店舗運営業務のICT化による業務の省力化・省人化――などが行われ、行政はこういった優良事例や生産性向上に向けた手引き等を広く周知しています。また、国内人材確保の取組としては、女性・高齢者を含む多様な人材を確保・維持するため、物理的な作業負担の軽減や安全対策の強化、有給休暇の取得日数の増加、勤務延長や再雇用制度を設ける企業の割合が増えています。

中間報告は、各省庁の産業政策として、外国人労働者から日本が就労先として選んでもらえるように、業界団体と連携して各業界での受入れの適正化をはかるべきだとしています。

また、中間報告は地方自治体についても、外国人が安心して働き暮らせる環境整備などの役割に言及しています。出入国在留管理庁は、在留手続や雇用、医療、福祉、出産・子育て、子供の教育等の生活にかかわる情報や相談場所を在留外国人に提供する一元的相談窓口の設置・運営に取り組む地方公共団体に「外国人受入環境整備交付金」を交付しています。また、出入国在留管理庁はそのような相談窓口の設置・運営に関する地方公共団体からの相談対応や情報提供などを担当する「受入環境調整担当官」126人を全国各地に配置しています。

5. 送出機関及び送出しの在り方

論点8 送出機関及び送出しの在り方
(1)送出機関の適正化等の在り方
(2)外国人の来日前の手数料負担を減少させる方策
(3)国際的なマッチング(職業紹介)機能の適正化方策(監理団体等の関与の在り方を含む。)

技能実習の送出機関は外国の人材会社です。多くの場合、日本の監理団体から技能実習生の求人を受けると、その求人への応募者を集め、受入れ企業等または監理団体による採用面接を経て、合格者に日本語教育を施したり、監理団体と協力して渡航に向けた手続きを行います。日本に入国してからも、技能実習生とつながりは残り、受入れ企業等から毎月、管理費を受け取ります。

今回の有識者会議では、送出機関への支払い費用に関する資料(出入国在留管理庁作成)も配付されました。それによると、技能実習生が来日前に母国の送出機関や仲介者に支払った費用の平均は542,311円でした。国別では、ベトナム688,143円、中国591,777円、カンボジア573,607円、ミャンマー287,405円、インドネシア235,343円、フィリピン94,821円となっています。こうした費用を調達するために来日前に借金をしている技能実習生は約55%、借金の平均額は547,788円でした。

また、特定技能外国人の仕事探しで仲介者を利用した人の割合は95%で、利用した機関は、技能実習で支援を受けていた監理団体、海外の送出機関、日本にある民間職業紹介事業者、知り合いの紹介、支援を受けている登録支援機関の順でした。こうした仲介者に支払う手数料を借金でまかなった人の割合は18%でした。

各国の海外移住労働者がどこの国に行っているかについての資料もあり、国別の移住先の割合は下記の通りでした。

ベトナム2022年台湾 41.5%日本 39.3%韓国 6.6%
インドネシア2022年香港 29.9%台湾 26.6%マレーシア 21.5%韓国 5.8%日本 2.9%
フィリピン2019年サウジアラビア 25.0%UAE 16.4%シンガポール 9.9%香港 9.6%日本 2.0%
中国2019年マカオ 13.7%香港 10.7%日本 8.5%シンガポール 7.5%
ミャンマー2019年タイ 72.1%マレーシア 23.8%日本 2.0%韓国 1.4%
カンボジア2020年タイ 80.9%日本 13.5%韓国 3.9%
ネパール2021-22年サウジアラビア 30.0%カタール 29.3%UAE 19.5%マレーシア 5.8%日本 0.9%

※インドネシアの日本のデータについては、技能実習生を含まない。

出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第10回)資料2-5」,p11を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.moj.go.jp/isa/content/001400509.pdf(閲覧日:2023年8月30日)

多くのアジア諸国では、近隣国や中東への移住労働が多く、ベトナム以外では日本への移住労働は限られています。日本への移住労働者を確保するため、訪日までに高額を要するベトナムなどについても、段階的に問題是正をはかり受入れ環境を改善していくことが必要であります。

6. 日本語能力の向上方策

論点9 日本語能力の向上方策
(1)就労開始前の日本語能力担保方策(目的、具体的方策(試験、講習等))
(2)就労開始後の日本語能力向上の仕組み(目的、具体的方策(インセンティブ付与等)、
日本語教育環境の整備)
(3)関係者の役割分担や費用負担の在り方

中間報告は、外国人労働者が日本での就労前に一定水準の日本語能力を持てるよう、日本語能力の要件化や来日後も日本語能力が段階的に向上するような仕組み作りを促しています。

現在、就労前の技能実習生に「技能実習の遂行や日常生活に不自由しない水準」の日本語教育を行う必要がありますが、内容や時間数の定めはありません(ただし、介護職種の技能実習生については、日本語能力試験N4以上等が条件)。来日後の日本語能力についても、介護職種の場合は技能実習2号への移行にN3以上合格などの条件がありますが、それ以外の職種には定めがありません。

また、受入れ企業等による来日後の技能実習生への日本語学習支援も教育の内容や時間数についての定めがなく、こちらは任意となっています。ただし、実施した場合「優良な実習実施者」や「優良な監理団体」に認定されるための加点にはなります。

特定技能1号については、日本語能力試験N4以上または日本語基礎テストの合格が条件で、 技能実習2号を良好に修了した人はこれらの試験が免除されます。介護分野の特定技能外国人には介護日本語評価試験の合格も必要ですが、介護職種の技能実習2号を良好に修了した人等は免除されます。

中間報告は、新制度における就労開始前後の日本語教育の改善などについて言及し、そのための費用は受入れ企業等の負担とし、国や自治体が支援を行うことを提案しています。

7. まとめ

第10回有識者会議では、最終報告に向けた9つの論点のうち第5~9の論点についてさまざまな資料が示されました。資料を踏まえた各論点の検討結果がどうなるか注目されます。
9つの論点は下記の通りです。

・新たな制度及び特定技能制度の位置付けと両制度の関係性等【総論】
・人材育成機能や職種・分野等の在り方
・受入れ見込数の設定等の在り方
・転籍の在り方
・監理・支援・保護の在り方
・特定技能制度の適正化方策
・国・自治体の役割
・送出機関及び送出しの在り方
・日本語能力の向上方策

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