この記事を読むと、次のことが分かります。
・日本における外国人留学生の就職事情
・外国人留学生を採用する際の注意点
・外国人留学生を採用する方法
・外国人留学生の採用を成功させるためのポイント
昨今、優秀な人材の確保や人手不足の解消などを目的に、外国人留学生を採用する企業が増えています。
しかし、外国人留学生を初めて採用する企業にとっては、興味はあるものの、何をどうすればうまく採用・定着ができるのか、不安に感じられる部分もあるかもしれません。
大切なのは、1つずつ丁寧に理解し取り組んでいくことです。
この記事では、企業が外国人留学生を採用する際の注意点や方法、ポイントについて、事例を交えながら分かりやすく解説します。ぜひ、外国人従業員を含めた人事戦略の立案にお役立てください。
目次
1. 外国人留学生の就職事情
外国人留学生のうち、就職を目的に在留資格の変更を申請し許可された人は、2010年から2019年まで年々増え、2020年に若干減少したものの約3万人います。
文部科学省「外国人留学生の就職促進について」,2022年6月公表,p1を基にライトワークスにて作成,https://www.jasso.go.jp/gakusei/career/event/guidance/__icsFiles/afieldfile/2022/06/14/1mnka_gakuryu.pdf(閲覧日:2023年6月20日)
国籍は、中国、ベトナム、ネパール、韓国、スリランカが多く、就職先の業種は非製造業が87%、製造業が13%となっています。
変更後の在留資格として最も多いのは「技術・人文知識・国際業務」です。これは、全体の88%を占めています。この他、「教授」3%、「経営・管理」2%、「特定活動」3%、「医療」1%、「その他」3%となっています。
ちなみに、外国人留学生のうち、卒業後に日本での就職を希望する人は全体の約55%です。
日本での就職を希望する主な理由としては、「生活環境に慣れているから」(68%)や、「日本語力を活かせるから」(64.4%)といった、日本の生活環境や言語への親近感が挙げられています。
株式会社ディスコ「外国人留学生の就職活動状況に関する調査」,2022年8月公表,p3を基にライトワークスにて作成,https://www.disc.co.jp/wp/wp-content/uploads/2022/08/gaikokujinryugakusei_202208.pdf(閲覧日:2023年6月20日)
ただし、大学や大学院を卒業・修了した外国人留学生で実際に日本国内で就職した人は、全体の3~4割ほどにとどまっています。
文部科学省「外国人留学生の就職促進について」,2022年6月公表,p2を基にライトワークスにて作成,https://www.jasso.go.jp/gakusei/career/event/guidance/__icsFiles/afieldfile/2022/06/14/1mnka_gakuryu.pdf(閲覧日:2023年6月20日)
つまり、日本での就職を希望していながら、実際には就職に至っていない外国人留学生がいるということです。この原因として、外国人留学生の採用枠が少ないことや、日本独特の就職活動の難しさ、日本語能力の不足などが考えられています。
2. 既に外国人留学生を採用している企業、その理由は?
次に、日本企業が外国人留学生を採用する理由について見てみましょう。
株式会社ディスコの「外国人留学生/高度外国人材の採用に関する企業調査」によると、外国人留学生を採用する目的は、文系・理系ともに「優秀な人材を確保するため」が最も多くなっています。
株式会社ディスコ 「「外国人留学生/高度外国人材の採用に関する調査」(2022 年 12 月調査) 」,p4を基にライトワークスにて作成,https://www.disc.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/01/2022_kigyou-global-report.pdf(閲覧日:2023年6月20日)
その他、「外国人としての感性・ 国際感覚等の強みを発揮してもらうため」、「語学力が必要な業務を行うため」、「日本人社員への影響も含めた社内活性化のため」といった項目が上位に挙がっています。
この結果から、外国人ならではの強みを生かしつつ、社内に良い刺激を与えてほしいという企業の思惑がうかがえます。
なお、「日本国内の新卒採用だけでは充足できない数的補完のため」、「日本人では確保できない専門分野の人材を補うため」の2項目については、文系と理系で差があり、5ポイントほど理系の方が多い結果となりました。このことから、国内における研究者や技術者など理系人材の不足が示唆されます。
3. 注意!ただ採用するだけでは働けない外国人留学生
外国人留学生は、日本人と同じようにただ採用されただけでは働くことができません。なぜなら、外国人留学生が持つ在留資格「留学」は原則として就労が認められていない(資格外活動の許可を受ければ週28時間以内の就労は可能)からです。
外国人留学生が就職するには在留資格の変更が必要ですが、定められた範囲で就労が認められる在留資格は種類によって行える業務が決まっています。せっかく良い人材を採用できても、その人材が自社で行ってほしい業務に必要な在留資格を取得できなければ、期待していた役割を担ってもらうことができません。
そのため、外国人留学生を採用する際は、まずは自社で行ってほしい業務を明確にし、必要な在留資格を特定しておくことが大切です。その上で、選考中の人材がその在留資格を取得できそうか否か、要件を確認し、採否を判断するようにしましょう。
4. 外国人留学生を採用する方法
実際に外国人留学生を採用している企業は、どのようにして採用活動をしているのでしょうか。ここでは、ルートを大きく4つに分けてご紹介します。
・第三者からの紹介
・就職イベントへの参加
・求人の掲載
・インターンシップの実施
・第三者からの紹介
まずは、第三者からの紹介です。第三者からの紹介では、知人や既存の外国人従業員、大学教授といった個人から紹介を受ける場合と、共同研究を行っている研究室や現地の送り出し機関、就職支援事業者、人材紹介会社などから紹介を受ける場合の2パターンがあります。
・就職イベントへの参加
2つ目は、就職イベントへの参加です。例えば、人材紹介会社が主催する合同面接会や、国内外の大学や商工会、JETRO、ハローワーク、地方自治体などが主催する就職説明会への参加が挙げられます。
(参考)
日本貿易振興機構(ジェトロ)|イベントカレンダーはこちら https://www.jetro.go.jp/hrportal/events.html
・求人の掲載
3つ目は、求人の掲載です。掲載先の候補としては、自社の採用サイトや新卒向けの求人媒体の他、外国人向けの求人媒体や外国人留学生のいる大学・専門学校、ハローワークなどが挙げられます。
なお、人種や国籍を限定して求人募集をすることは法律で禁じられています。「国籍不問」「外国人歓迎」といった文言も認められないため、注意が必要です。
・インターンシップの実施
最後は、インターンシップの実施です。地方自治体やNPO法人などが展開する外国人留学生向けのインターンシップ事業や、職業訓練校・大学などが展開しているインターンシッププログラムを通じて受入れを行います。
なお、外国人留学生向けのインターンシップを実施する際は、場合により地方自治体などから補助金を受けられる可能性があるので事前に確認しておきましょう。
参考)
AIESEC|海外インターン生の受入れについてはこちら
https://www.aiesec.jp/outgoing
経済産業省 |国際化促進インターンシップ事業についてははこちら
https://internshipprogram.go.jp/
東京外国人雇用サービスセンター|留学生インターンシップ制度の案内はこちら
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-foreigner/news_topics/_119734/_119735.html
四日市市|四日市市海外人材確保支援事業補助金についてはこちら
https://www.city.yokkaichi.lg.jp/www/contents/1001000001353/index.html
5. 外国人留学生の採用を成功させる12のポイント
最後に、厚生労働省など政府が公表する「外国人留学生の採用や入社後の活躍に向けたハンドブック~実践企業に学ぶ12の秘訣~」より、外国人留学生の採用を成功させるための12のポイントをご紹介します。
5-1. 人物像の具体化
1つ目のポイントは、人物像の具体化です。何のために外国人留学生を採用するのか、どのような能力や役割を期待するのかを明確にしておきます。
そうすることで、より効率的に採用活動を進めることができ、入社後のミスマッチや早期離職を防ぐことができます。
例えば、動画制作・情報発信を行うariTV株式会社は、外国人留学生を採用する目的を「外国語で外国人目線の情報発信を行うため」と定め、採用活動をスタートさせました。
その後、入社した外国人従業員が独創的なアイディアで新規事業の創出に貢献したことから、求める人物像に「これまでにないものの見方・考え方ができ、何事にも意欲的に取り組めること」を追加して採用活動を行っています。
なお、日本語能力に関しては、入社後に高めていけばよいとして、選考段階では重視していません。
5-2. 社内共有
2つ目のポイントは、社内共有です。採用活動を始める前に、人事担当者や現場の従業員などを含め、社内全体で採用方針をしっかりと共有しておきます。
現場の従業員に対し、事前に経営者や人事担当者が丁寧に説明を行っておくことで、採用した外国人留学生の円滑な受入れにつながります。
例えば、空調機器の製作、販売などを行う新晃工業株式会社は、外国人留学生を採用するに当たり、人事担当者が現場の従業員に向けて外国人留学生を採用する目的や外国人留学生に期待する役割などを丁寧に説明しました。
さらに、直属の上司となる従業員には外国人材の教育方針についても説明を行い、結果、外国人留学生を現場で円滑に受入れることができました。これは、採用された外国人留学生の入社後の育成・活躍にもつながっています。
5-3. 採用方針・実績の公表
3つ目のポイントは、採用方針・実績の公表です。採用要件や昇級・昇格などを含めたキャリアプランを明示したり、自社のホームページや説明会などで、入社した外国人留学生の活躍状況を紹介したりします。
そうすることで、外国人留学生が入社後の具体的なイメージを持てるようになり、企業が求める人材からの応募を獲得しやすくなります。
例えば、産業設備や生産財の販売などを行う三共精機株式会社は、海外での事業展開に向け外国人留学生の採用を決断しました。社長自ら就職説明会などのイベントへ登壇し、外国人従業員の活躍を紹介することで、海外事業に関心のある外国人留学生からの応募数が増え、採用につながっています。
5-4. 知る機会の創出
4つ目のポイントは、知る機会の創出です。外国人留学生向けの就職説明会や企業交流会への参加、インターンシップの受入れなどを積極的に行います。
外国人留学生と企業が事前によく知り合う機会を設けておくことで、お互いに、入社後どのような活躍ができるか、具体的なイメージを持てるようになります。
例えば、情報通信業のアンデックス株式会社は、産学官連携の外国人インターンシップ事業へ参加しました。参加に当たっては、インターン生の関心に沿った内容を企画したり、現場の従業員へインターン生受入れの目的や指導の留意点を説明したりすることで、社内の外国人留学生への理解を促しました。
インターン生のうち1人はインターンシップ後も定期的に同社に遊びに来るなど、交流が続いたとのことです。インターンシップやその後の交流を通じ、宗教上必要な配慮について知ったり、ベンチャー企業ならではの魅力を伝えたしたりしながら、相互理解を深め、採用に至りました。
5-5. 柔軟な採用選考
5つ目のポイントは、柔軟な採用選考です。外国人留学生の採用では、一律に高い日本語能力などを求めるのではなく、期待する役割や職種に応じて要件を定めましょう。
また、選考する際も日本語能力試験や日本語での筆記試験の結果にこだわらず、専門性やスキルに着目します。専門性やスキルを適切に見極めるには、外国人留学生が自ら説明できる機会を設けるとよいでしょう。
これらにより、採用候補者の対象範囲が広がり、業務に真に必要な専門性やスキルを持った人材の採用につながります。
例えば、計測サービス・コンテンツサービス業のクモノスコーポレーション株式会社は、 海外での事業立ち上げに必要な人材の要件として、柔軟な発想と適応力を設定しました。
日本語能力については業務の安全を確保するために最低限必要なレベルとし、検定結果ではなく面接時のコミュニケーションで評価を行っています。
こうした日本語能力にとらわれすぎない柔軟な採用選考は、漢字圏出身者と非漢字圏出身者間で生じる不公平な評価を防ぎ、人材の適正な見極めにつながっています。
コラム < これからの日本人に求められる「やさしい日本語」力 >
少子高齢化が進む日本では、今後、外国人労働者がますます増えていくと予想されます。そのような中で近年注目されているのが、「やさしい日本語」です。
「やさしい日本語」とは、日本語の理解やコミュニケーションに関して何らかの困難を抱えている人のために配慮した日本語のことです。
例えば、「明日行けないので行ってください」という文章は主語がないため、外国人からすると理解しにくいでしょう。ここに、「明日、私は行けません。あなたが行ってください」と主語を加えます。すると、外国人にも分かりやすい「やさしい日本語」となります。
「やさしい日本語」を使うことは、日本人従業員と外国人従業員のコミュニケーションを活発化させ、生産性の向上やイノベーションの創出につながります。
在留外国人の多くは、中国やベトナム、韓国など、英語も日本語も母語としない国の出身者です。「英語か日本語か」ではなく、共通語の新たな選択肢として「やさしい日本語」を検討してみてはいかがでしょうか。
5-6. 入社前支援
6つ目のポイントは、入社前支援です。外国人留学生が安心して入社し円滑に業務をスタートできるよう、在留資格の申請、住宅の確保、日本語能力や必要な技術を習得するための学習などについて支援を行います。
例えば、ホテル運営などを行う九州教具株式会社は、入社に向け遠方から引越してくる外国人留学生に対し、入居する住宅の敷金・礼金を企業側で負担したり、毎月定額(通勤費上限額相当)の特別手当を支給したりしています。
また、土地勘がない人には総務の担当者が住居探しや家財道具などの調達を手伝ったり、同社が代わりに住居を借り上げたりしています。
5-7. 日本人従業員の教育
7つ目のポイントは、日本人従業員の教育です。外国人留学生との効果的なコミュニケーションを学べるよう、配属先の上司や同僚に研修やガイダンスを実施したり、外国人従業員とのミーティングといった学ぶ機会を提供したりします。
日本人特有の曖昧な表現ではミスコミュニケ―ションが生じやすいことを理解し、伝え方を改善することで、業務を円滑に進められるようになります。
例えば、専門・技術サービス業の株式会社エイワイテックでは、毎週、チームごとに業務内容などについて発表を行うミーティングを開催しています。
各チームにはベトナム人従業員が1人ずつ配置されており、日本人従業員と協力して発表の準備や議事録の作成を行っています。日本人従業員は分かりやすい日本語でゆっくりと説明することを意識するようになり、それが業務においても浸透してきているとのことです。
5-8. 配属先の納得感
8つ目のポイントは、配属先の納得感です。外国人留学生を配属する際は、本人の希望や適性を踏まえて配属先を決定します。配属先が本人の希望と異なる場合は、配属の意図・意義を丁寧に説明し、理解を得られるようにしましょう。
双方合意の上で配属先を決めることは、離職を防ぎ、モチベーション高く活躍してもらうことにつながります。
例えば、精密・電子事業や環境事業などを展開する株式会社荏原製作所では、外国人従業員を対象にした面談を入社1~2年目と3年目以降で2段階に分けて実施しています。
第1段階では、日常の不安や企業への要望を母国語でインタビューし、聴き取った内容を社内制度(帰国費用補助、有給休暇の増加、キャリアマネジメントプログラムなど)へ反映させています。
第2段階では、年に1度、キャリアマネジメントの一環として人事の担当者が今後のキャリアの希望をヒアリングし、実現のためのアクションプランを作成しています。
さらにキャリア支援窓口も開設することで、外国人従業員のキャリアパスの悩みに丁寧に対応しています。
5-9. 交流機会
9つ目のポイントは、交流機会です。慣れない職場や地域社会での外国人従業員の不安感や疎外感を和らげるため、さまざまな人との交流機会を設けたり、メンター制度の導入や社外相談窓口の活用など相談しやすい環境を整備したりしましょう。
例えば、建築施工・管理業の株式会社タケウチ建設では、外国人従業員がどのようなことを考え、何に困っているかを知るため、随時社長が声をかけて話を聞き、その人の成長に必要な環境を提供するようにしています。
また、企業として参加している地域の祭り「やっさ踊り」で外国人従業員がリーダーを務めたり、外国人従業員の提案で地域のフットサルチームと交流試合を行ったりするなど、外国人従業員と地域住民がお互いに親交を深める機会も積極的につくっています。
5-10. キャリア形成支援
10個目のポイントは、キャリア形成支援です。明確なキャリア展望を持っていることが多い外国人従業員に対し、スキルアップにつながる仕事の機会を提供したり、キャリア展望を踏まえた学びの支援を行ったりします。
成長や学びの機会を十分に確保することで、外国人従業員のモチベーションアップや早期離職の防止につながります。
例えば、5-8でもご紹介した株式会社荏原製作所では、キャリアパスが明確になるよう、人事制度を従来の年功序列型から実力主義型に変更しました。管理職要件に認定試験を導入したことで、これまでおよそ36歳以降が該当するとされていた管理職に28歳の外国人従業員が登用されるケースも出てきています。
5-11. 客観的な評価
11個目のポイントは、客観的な評価です。透明性の高い制度を整備し、客観的に評価・処遇の決定を行ったり、評価のポイントや達成すべき目標などについて丁寧にフィードバックをしたりします。
これらにより、評価・処遇に対する外国人従業員の納得感が高まり、モチベーションの維持やさらなる成長につながります。
例えば、製造・小売業の株式会社サイマコーポレーションは、スキルマップを作成し設定したポイントの達成度で給与を決める仕組みを構築しました。
ポイントの達成度は、年2回の定期面談で社長と外国人従業員がスキルマップを参照しながら議論して決定します。こうすることで、給与アップのためにやるべきことを具体的に理解できるようにしています。
5-12. 社内制度の見直し
最後のポイントは、社内制度の見直しです。宗教上必要な配慮や冠婚葬祭といった各国特有の文化に柔軟に対応できるよう、休暇制度など必要な制度を整えます。
これにより、外国人従業員のモチベーションアップや家族の理解につながり、優秀な人材の活躍や定着が期待できます。
例えば、中古PCの卸売り・販売などを行うリングロー株式会社は、外国人従業員が一時帰国しやすいよう、「ルーツ休暇」と呼ばれる特別休暇制度を整備しました。入社4年目以上は最大10日間取得することができ、必要な交通費は企業負担です。
また、エジプト人従業員が設計した、日中の飲食を控えるイスラム教の断食月(ラマダン)に合わせたフレックス勤務制度も導入しています。昼休憩をカットするなど、ラマダンの期間の行動に合わせて勤務時間の設定が可能です。
6. まとめ
外国人留学生のうち、就職を目的に在留資格の変更を申請し許可された人は、2010年から2019年まで年々増え、2020年に若干減少したものの約3万人います。
一方で、日本での就職を希望していながら、実際には就職に至っていない外国人留学生も多くいます。この原因として、外国人留学生の採用枠が少ないことや、日本独特の就職活動の難しさ、日本語能力の不足などが考えられています。
日本企業が外国人留学生を採用する理由は、文系・理系ともに「優秀な人材を確保するため」、「外国人としての感性・ 国際感覚等の強みを発揮してもらうため」、「語学力が必要な業務を行うため」、「日本人社員への影響も含めた社内活性化のため」といった項目が上位に挙がっています。
この結果から、外国人ならではの強みを生かしつつ、社内に良い刺激を与えてほしいという企業の思惑がうかがえます。
なお、外国人留学生を採用する際は、まずは自社で行ってほしい業務を明確にし、必要な在留資格を特定しておくことが大切です。
外国人留学生が就職するには在留資格の変更が必要ですが、定められた範囲で就労が認められる在留資格は種類によって行える業務が決まっています。採用する外国人留学生が必要な在留資格が取得できなければ、期待していた役割を担ってもらうことができないため、注意が必要です。
外国人留学生を採用するルートは、以下の4つがあります。
・第三者からの紹介
・就職イベントへの参加
・求人の掲載
・インターンシップの実施
外国人留学生の採用を成功させるポイントは、全部で12個です。
1つ目は、人物像の具体化です。何のために外国人留学生を採用するのか、どのような能力や役割を期待するのかを明確にしておきます。
2つ目は、社内共有です。採用活動を始める前に、人事担当者や現場の従業員などを含め、社内全体で採用方針をしっかりと共有しておきます。
3つ目は、採用方針・実績の公表です。採用要件や昇級・昇格など含めたキャリアプランを明示したり、自社のホームページや説明会などで、入社した外国人留学生の活躍状況を紹介したりします。
4つ目は、知る機会の創出です。外国人留学生向けの就職説明会や企業交流会への参加、インターンシップの受入れなどを積極的に行います。
5つ目は、柔軟な採用選考です。外国人留学生の採用では、一律に高い日本語能力などを求めるのではなく、期待する役割や職種に応じて要件を定めましょう。
また、選考する際も日本語能力試験や日本語での筆記試験の結果にこだわらず、専門性やスキルに着目します。専門性やスキルを適切に見極めるには、外国人留学生が自ら説明できる機会を設けるとよいでしょう。
6つ目は、入社前支援です。外国人留学生が安心して入社し円滑に業務をスタートできるよう、在留資格の申請、住宅の確保、日本語能力や必要な技術を習得するための学習などについて支援を行います。
7つ目は、日本人従業員の教育です。外国人留学生との効果的なコミュニケーションを学べるよう、配属先の上司や同僚に研修やガイダンスを実施したり、外国人従業員とのミーティングといった学ぶ機会を提供したりします。
8つ目は、配属先の納得感です。外国人留学生を配属する際は、本人の希望や適性を踏まえて配属先を決定します。配属先が本人の希望と異なる場合は、配属の意図・意義を丁寧に説明し、理解を得られるようにしましょう。
9つ目は、交流機会です。慣れない職場や地域社会での外国人従業員の不安感や疎外感を和らげるため、さまざまな人との交流機会を設けたり、メンター制度の導入や社外相談窓口の活用など相談しやすい環境を整備したりします。
10個目は、キャリア形成支援です。明確なキャリア展望を持っていることが多い外国人従業員に対し、スキルアップにつながる仕事の機会を提供したり、キャリア展望を踏まえた学びの支援を行ったりします。
11個目は、客観的な評価です。透明性の高い制度を整備し客観的に評価・処遇の決定を行ったり、評価のポイントや達成すべき目標などについて丁寧にフィードバックをしたりします。
最後は、社内制度の見直しです。宗教上必要な配慮や冠婚葬祭といった各国特有の文化に柔軟に対応できるよう、休暇制度など必要な制度を整えます。
本稿が、外国人留学生採用の一助となりましたら幸いです。
参考)
文部科学省「外国人留学生の就職促進について」,2022年6月公表,https://www.jasso.go.jp/gakusei/career/event/guidance/__icsFiles/afieldfile/2022/06/14/1mnka_gakuryu.pdf(閲覧日:2023年6月20日)
内閣官房「参考データ集」,2022年11月公表,https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyouikumirai/sozo_mirai_wg/dai6/siryou3.pdf(閲覧日:2023年6月20日)
株式会社ディスコ「外国人留学生の就職活動状況に関する調査」,2022年8月公表,https://www.disc.co.jp/wp/wp-content/uploads/2022/08/gaikokujinryugakusei_202208.pdf(閲覧日:2023年6月20日)
株式会社ディスコ 「「外国人留学生/高度外国人材の採用に関する調査」(2022年12月調査)」,https://www.disc.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/01/2022_kigyou-global-report.pdf(閲覧日:2023年6月20日)
Global HR Strategy「外国人労働者の受入れ制度 採用担当者に必要な実践的な情報を解説」,『外国人雇用相談室』,https://ghrlab.com/article/foreign-worker-system(閲覧日:2023年6月20日)
文部科学省 厚生労働省 経済産業省 外国人留学生の就職や採用後の活躍にむけたプロジェクトチーム「外国人留学生の採用や入社後の活躍に向けたハンドブック~実践企業に学ぶ12の秘訣~」,https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/ryugakusei_katsuyaku_pt/pdf/20200228_01.pdf(閲覧日:2023年6月20日)
株式会社パーソル総合研究所「留学生の就職活動と入社後の実態に関する定量調査 結果報告書」,2020年6月公表,https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/assets/foreign-students.pdf(閲覧日:2023年6月20日)
日本貿易振興機構(ジェトロ)「高度外国人材活躍推進ポータル」,https://www.jetro.go.jp/hrportal/forcompanies/adopt.html(閲覧日:2023年6月20日)
AIESEC「海外インターン生を受け入れる」,https://www.aiesec.jp/incoming (閲覧日:2023年6月26日)
経済産業省 「国際化促進インターンシップ事業」,https://internshipprogram.go.jp/(閲覧日:2023年6月20日)
東京外国人雇用サービスセンター「留学生インターンシップ制度のご案内」,https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-foreigner/news_topics/_119734/_119735.html(閲覧日:2023年6月20日)
独立行政法人日本学生支援機構「2020(令和2)年度外国人留学生進路状況・学位授与状況調査結果 」,2022年4月公表,https://www.studyinjapan.go.jp/ja/_mt/2022/04/date2020sg.pdf(閲覧日:2023年6月20日)
厚生労働省「事業主のみなさまへ 外国人雇用はルールを守って適性に」,https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001d8hv-att/2r9852000001dips.pdf(閲覧日:2023年6月26日)