この記事を読むと、次のことが分かります。
・介護分野における外国人労働者の就労状況と課題
・介護分野で働ける6つの制度
・外国人介護職員の勤務に関する基本情報(配置基準、事業所の種類、夜勤の可否など)
・外国人労働者の受入れ前後に事業所側が取り組むべきこと
・外国人労働者の採用に当たって発生する手続きとコスト
実務上、個別具体のトピックで悩むことが多いと思いますが、実は一つの課題には多くの周辺事項が存在しています。周辺事項も含めてまとまった情報を理解する、あるいは参照する方が、結果的な業務効率はアップします。
本ブログでは、毎日多数の問い合わせに対応している実績を基に、企業の担当者が押さえておくとよい情報を、分かりやすくかつ網羅的にお届けします。
ぜひ参考にしてください。
介護業界における人手不足は深刻で、外国人労働者の採用は今後ますます増加していくものと思われます。企業の採用担当者は、外国人労働者の採用のポイントや、勤務開始後の体制の整え方について、把握しておく必要があるでしょう。
介護が対人業務であることを考えると、文化や言葉の面から外国人労働者を雇用することに不安が生じやすいところですが、人と人との関係だからこそ、国籍を超えた関係づくりが可能という面もあります。
外国人労働者と日本人スタッフが協働できる環境を整えられれば、外国人労働者も優秀な介護職員として第一線で活躍できる可能性が十分にあるでしょう。
本稿では、事業所側が知っておきたい介護分野で働くことができる在留資格や雇用の流れ、受入れ前後に取り組むべきこと、採用に必要なコスト・手続きについて解説します。「いつから配置基準に含まれるのか」「うちの事業所で雇用できるのか」など気になるポイントも解説するので、ぜひご一読ください。
目次
1. 介護分野における人材の現状と外国人労働者
日本は少子高齢化の影響で介護職員の需要が拡大しており、人手不足の状態が続いています。ここでは、介護分野における人材の現状と外国人労働者の就労状況について説明します。
1-1. 介護分野における人材の状況
介護職員の数はここ20年間で右肩上がりに増加しており、2019年には約211万人に達しました[1]。
図)介護職員数の推移
厚生労働省「別紙2介護職員数の推移」『第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について』,2021年7月9日公表を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.mhlw.go.jp/content/12004000/000804139.pdf(閲覧日:2022年8月17日)
しかし、人手不足の状況は依然として続いており、このままいくと2025年には約243万人(+約32万人)、2040年には約280万人(+約69万人)の介護職員の確保が必要[2]です。
図)介護職員の必要数の推移
厚生労働省「別紙1第 8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」『第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について』,2021年7月9日公表を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000207323_00005.html(閲覧日:2022年8月17日)
もはや日本国内だけでは不足する人手を確保できないため、日本政府は2019年に在留資格「特定技能」を新設するなど、介護分野における外国人労働者の受入れ拡大を推進してきました。
1-2. 介護分野における外国人労働者の就労状況
2021年の調査では医療、福祉に従事する外国人労働者は5万7,788人で、そのうち社会保険・社会福祉・介護事業に従事する人は4万1,189人です。総外国人労働者は172万7,221人のため、全体の3.3%が医療、福祉の分野に従事[3]していることが分かります。
3.3%というと少数のようですが、医療、福祉の分野では外国人労働者を受入れる事業所数の前年増加率が19.2%[4]で、コロナ禍においても需要が高い傾向にあります。
【医療、福祉の分野における外国人雇用事業所総数の推移】
厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和3年10月末現在)」,2022年1月28日を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000887555.pdf(閲覧日:2022年8月17日)
医療、福祉の分野に従事する外国人労働者のうち、最も多い在留資格は「身分に基づく在留資格」(2万4,106)で、2番目に技能実習(1万247)、3番目に「専門的・技術的分野の在留資格(在留資格「特定技能」を含む)」(9,783)[5]と続きます。
国籍別ではフィリピン人(1万4,704人)が最も多く、2番目がベトナム人(1万2,722人)、3番目が中国人(9,823人)[6]の順です。
1-3. 介護分野の労働市場で生じている課題
介護業界は慢性的な人手不足が続いていますが、背景に「雇用期間が短い」「募集費用が高い」など労働市場における課題があります。
介護職員は有期雇用である非正規職員の割合が高く、2018年の調査では介護職員は全体の39.8%、訪問介護員は全体の70.0%を非正規職員[7]が占めています。加えて介護職員は他の産業に比べて離職率が高い傾向にあり、中でも介護職員における非正規雇用者の離職率が高く、離職者のうち48.9%が1年未満で離職[8]しています。
図)離職した介護職員の勤続年数
厚生労働省「介護労働の現状と介護雇用管理改善等計画について」,p11を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000710388.pdf(閲覧日:2022年8月17日)
外国人労働者の場合は在留資格によって在留期間が限定されており、技能実習や特定技能(1号)では最長5年までしか働けません。
また、採用活動で求人サイトを利用すれば広告掲載料や紹介料などの費用がかかり、社内においては面接や入社準備、研修などで人件費が発生します。せっかく採用しても早期退職されてしまえばまた一からやり直しになるので、その分採用にかかるコストが増えてしまいます。
このように課題が多いことから、介護事業所の90.0%が「採用が困難である」と感じており、特に採用段階での人手不足感が強い[9]傾向にあります。
1-4. 介護分野における外国人労働者に特有の課題
介護分野で働く外国人労働者は試験によって一定の日本語能力を証明されているのが一般的ですが、誰もが最初から円滑にコミュニケーションをとれるとは限りません。人によっては口頭での申し送りを聞き取れなかったり、介護記録の読み書きができなかったりする場合もあります。
業務の効率化のためには介護技術の指導に加えて日本語の講習も必要になるので、日本人スタッフに比べて教育期間が長引く傾向があります。夜勤がある事業所の場合は合間を縫って指導を行うため、業務の負担になることが考えられるでしょう。
また、日本で介護職に従事しているからといって、日本で働き続けるとは限りません。「将来的には母国で介護職に従事したい」「母国で介護事業所を立ち上げたい」という外国人労働者もいるため、介護福祉士国家試験に合格後に帰国する人が少なくないのです。
一人前になった後に離職してしまうため、結果的に日本国内の介護職員の増加につながりにくいのが現状です。
[1] 厚生労働省「別紙2 介護職員数の推移」『第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について』,2021年7月9日公表,https://www.mhlw.go.jp/content/12004000/000804139.pdf(閲覧日:2022年8月17日)
[2] 厚生労働省「別紙1 第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」『第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について』,2021年7月9日公表,https://www.mhlw.go.jp/content/12004000/000804129.pdf(閲覧日:2022年8月17日)
[3] 厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和3年10月末現在)」,2022年1月28日,https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000887555.pdf(閲覧日:2022年8月17日)
[4] 厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和3年10月末現在)」,2022年1月28日,https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000887555.pdf(閲覧日:2022年8月17日)
[5] 厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和3年10月末現在)」,2022年1月28日,https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000887555.pdf(閲覧日:2022年8月17日)
[6] 厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和3年10月末現在)」,2022年1月28日,https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000887555.pdf(閲覧日:2022年8月17日)
[7] 厚生労働省「介護労働の現状と介護雇用管理改善等計画について」,p2,https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000710388.pdf(閲覧日:2022年8月17日)
[8] 厚生労働省「介護労働の現状と介護雇用管理改善等計画について」,p10、11,https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000710388.pdf(閲覧日:2022年8月17日)
[9] 厚生労働省「介護労働の現状と介護雇用管理改善等計画について」,p12,https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000710388.pdf(閲覧日:2022年8月17日)
2. 外国人労働者を介護分野で雇用するための6つの制度
外国人労働者を介護分野で雇用するためには6つの制度があり、どのルートで受入れるかによって就労期間や就労できる事業所の種類、仕事の内容などが変わります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
2-1. EPA(経済連携協定)
EPAとは、日本と特定の国の経済活動の連携強化を図るもので、日本はインドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国からEPA介護福祉士候補者を受入れています。雇用における主な特徴は下記の通りです。
【EPA介護福祉士候補者の特徴】[10]
EPAに基づく介護福祉士候補者の雇用 | |
介護福祉士の資格の有無 | 資格なし ただし、資格取得を目的としている |
在留期間の制限 | 入国から4年目に介護福祉士の国家試験を受験、合格すれば在留期間を更新しながら永続的な勤務が可能 不合格の場合は帰国 |
母国で取得した資格や学習経験の有無 | 看護系学校の卒業生または母国政府より介護士に認定されている |
日本語能力の目安 | 大多数は就労開始時点でN3(日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる)程度 入国時の要件はインドネシア、フィリピンはN5(基本的な日本語をある程度理解できる)以上、ベトナムはN3以上 |
受入れ調整機関による支援の有無 | JICWELSによる受入れ調整あり |
就労可能なサービス職種の制限 | 制限あり 介護福祉士の資格取得後は、一定条件を満たした事業所の訪問系サービスも可能 |
EPA介護福祉士候補者は一定の学習経験や資格を有するのが特徴で、母国で日本語研修を受け、日本語能力試験に合格してから入国します。日本語研修の前後にJICWELS(公益社団法人 国際厚生事業団)のマッチング支援を受け、就労先の介護事業所を決めるのが一般的です。
図)EPA介護福祉士候補者の雇用の流れ
厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」,p6を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000496822.pdf(閲覧日:2022年8月18日)
入国後は日本語や介護の基礎に関する研修を受け、介護事業所で働きながら介護福祉士の資格取得を目指します。
2-2. 在留資格「介護」
介護福祉士の資格を有し、介護福祉士として登録(社会福祉士及び介護福祉法第42条)すると、「介護」の在留資格を取得できます。「介護」の主な特徴は下記の通りです。
【在留資格「介護」の雇用の特徴】[11]
在留資格「介護」の雇用 | |
介護福祉士の資格の有無 | 介護福祉士 |
在留期間の制限 | 5年、3年、1年または3カ月ごとに更新可能(入管法施行規則別表) |
母国で取得した資格や学習経験の有無 | 個人による |
日本語能力の目安 | 一部の養成校の条件はN2(日常的な場面で使われる日本語に加えて、より幅広い場面で使われる日本語を理解できる)程度 |
受入れ機関などによる義務的支援の有無 | なし |
就労可能なサービス職種の制限 | 制限なし |
「介護」は介護福祉士の資格を持ち、日本語能力試験N2以上に合格しているのが一般的なため、即戦力として期待できます。養成校ルートによって介護福祉士の資格を取得する留学生については、学生のうちからアルバイトとして勤務することも可能です。
図)在留資格「介護」の雇用の流れ
厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」,p7を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000496822.pdf(閲覧日:2022年8月18日)
上記の流れで雇用しますが、マッチングを支援する特別な機関はなく、事業所が自ら採用活動を行うか、日本人と同様に職業紹介会社を利用する必要があります。
2-3. 外国人技能実習制度
外国人技能実習制度は日本から外国への技能移転のための制度で、技能実習生にOJTを通じて日本の介護技術などを学んでもらい、母国の経済発展に役立ててもらうことを目的としています。
【外国人技能実習生の雇用の特徴】[12]
外国人技能実習生の雇用 | |
介護福祉士の資格の有無 | 資格なし ただし、実務要件などを満たせば受験可能 |
在留期間の制限 | 最長5年 介護分野の技能実習を2年10カ月良好に修了した技能実習生は「特定技能1号」に必要な試験が免除される |
母国で取得した資格や学習経験の有無 | 監理団体の選考基準による |
日本語能力の目安 | 入国時の要件はN4(基本的な日本語を理解できる)程度 |
受入れ調整機関による支援の有無 | 監理団体による受入れ調整あり |
就労可能なサービス職種の制限 | 制限あり 訪問系サービスは不可 |
受入れに当たっては監理団体を利用できるため、講習や調整の支援を受けることができます。
図)外国人技能実習生の雇用の流れ
厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」,p8を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000496822.pdf(閲覧日:2022年8月18日)
入国1年後の介護技能実習評価試験(初級)に合格すると追加で2年、3年後の介護技能実習評価試験(専門級・実技)に合格するとさらに2年就労期間を延ばすことができます。
その後は帰国し日本で習得した介護技術を母国に移転するため、母国で介護職に従事することが前提とされていますが、特定技能1号などに在留資格を変更することができれば、その後も日本で働くことができます。
2-4. 特定技能制度
特定技能制度とは人手不足が生じている産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人労働者を受入れるための制度です。在留資格は「特定技能1号」「特定技能2号」があり、介護分野では特定技能1号のみがあります。
【特定技能制度の雇用の特徴】[13]
特定技能の雇用 | |
介護福祉士の資格の有無 | 資格なし ただし、実務要件などを満たせば受験可能 |
在留期間の制限 | 最長5年 ただし、介護福祉士を取得すれば在留資格「介護」を取得し永続的な勤務が可能 |
母国で取得した資格や学習経験の有無 | 個人による |
日本語能力の目安 | 入国時の要件は ・ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力 ・介護の現場で働く上で必要な日本語能力 |
受入れ機関などによる義務的支援の有無 | 登録支援機関によるサポートあり |
就労可能なサービス職種の制限 | 制限あり 訪問系サービスは不可 |
特定技能1号は技能水準・日本語能力水準が一定レベルにあることが試験などによって証明されています(技能水準について「介護技能評価試験」への合格又はこれと同等以上の水準と認められるもの。日本語能力水準について「国際交流基金日本語基礎テスト」又は「日本語能力試験(N4以上)」に加え、「介護日本語評価試験」合格)[14]。
図)特定技能制度の雇用の流れ
厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」,p9を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000496822.pdf(閲覧日:2022年8月18日)
在留期間は最長5年ですが、介護福祉士の資格を取得し在留資格を「介護」に変更すれば、5年、3年、1年または3カ月ごとに更新可能です。
2-5. 特定活動(本邦大学卒業者)
「特定活動(本邦大学卒業者)」は日本の大学を卒業または大学院を修了し、高い日本語能力を持つ外国人が取得できる在留資格です。
【特定活動(本邦大学卒業者)の雇用の特徴】
特定活動(本邦大学卒業者)の雇用 | |
介護福祉士の資格の有無 | なし |
在留期間の制限 | 5年、3年、1年、6月または3カ月のいずれかの期間 更新可能(原則、初回在留期間更新許可時は1年) |
母国で取得した資格や学習経験の有無 | 個人による |
日本語能力の目安 | 日本の4年制大学の卒業および大学院を修了し、日本語能力試験N1(幅広い場面で使われる日本語を理解できる)またはBJTビジネス日本語能力テストで480点(限られたビジネス場面で日本語による適切なコミュニケーション能力がある)以上を有する ただし、日本の大学・大学院において「日本語」を専攻した者、日本の大学または大学院を卒業・修了し海外の大学・大学院において「日本語」を専攻した者は、日本語能力の要件を満たした者として取り扱う |
受入れ機関などによる義務的支援の有無 | なし |
就労可能なサービス職種の制限 | 制限あり |
特定活動は留学生としての経験を通じて得た知識や能力などを活用することを要件としており、後述する「技術・人文知識・国際業務」に比べて幅広い業務に従事できます。介護事業所においては、外国人従業員や技能実習生への指導を行いながら、日本語を使って介護業務に従事することが可能です。
2-6. 技術・人文知識・国際業務
「技術・人文知識・国際業務(技人国)」とは、大学または日本の専門学校を卒業し、「自然科学または人文科学の知識や技術を要する業務」「外国人ならではの思考や感受性を必要とする業務」に従事するための在留資格です。
技術・人文知識・国際業務は、原則として産業・サービスの現場での業務が禁止されているため、介護職として勤務することはできません。
【介護事業所で働く技術・人文知識・国際業務の特徴】
技術・人文知識・国際業務の雇用 | |
介護福祉士の資格の有無 | なし |
在留期間の制限 | 5年、3年、1年または3カ月のいずれかの期間 更新可能 |
母国で取得した資格や学習経験の有無 | 個人による |
日本語能力の目安 | 個人による |
受入れ調整機関による支援の有無 | なし |
就労可能なサービス職種の制限 | 介護職としての仕事はできない |
そのため、技術・人文知識・国際業務の取得者が介護事業所で働く場合、大学で学んだ介護の知識を生かして施設案内を行ったり、総務や経理業務に就いたりするのが一般的です。
2-7. 留学生からの受入れ
日本の介護福祉士養成校や日本語学校で学ぶ留学生の場合、卒業後に「介護」または特定技能の在留資格で介護職に就くケースが大半です。
介護福祉士養成校の留学生で特に多いのが、介護事業所から奨学金を受けながら在学中にアルバイトとして働き、卒業後に「介護」の在留資格を取得して働き続けるパターンです。
介護福祉士養成校に通う留学生の場合、2027年3月31日までに卒業すれば介護福祉士の試験に合格しなくても卒業翌年度から5年間は介護福祉士として勤務できます。
日本語学校の留学生の場合は、在学中に特定技能の試験に合格し、特定技能1号として介護事業所で働くケースが少なくありません。
[10] 厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」,p2、3,https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000496822.pdf(閲覧日:2022年8月18日)
[11] 厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」,p2、3,https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000496822.pdf(閲覧日:2022年8月18日)
[12] 厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」,p2、3,https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000496822.pdf(閲覧日:2022年8月18日)
[13] 厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」,p2、3,https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000496822.pdf(閲覧日:2022年8月18日)
[14] 厚生労働省「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」,https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000507686.pdf(閲覧日:2022年12月20日)
3. 在留資格による違い
このように介護事業所において外国人労働者を受入れる場合、利用する制度やそれぞれの在留資格によってどのように雇用できるかが異なります。
ここでは、「配置基準で定められた人員数にいつからカウントされるか」「どのような事業所で受入れられるか」「夜勤はできるか」など気になるポイントを見ていきます。
3-1. 介護職員にカウントされる時期の違いに注意
介護事業所は「利用者・入所者何人に対して何人の介護職員が必要か」が人員配置基準で定められています。在留資格ごとの違いを確認しておきましょう。
【配置基準に含まれるまでの期間】[15]
EPA | 日本語能力試験N1またはN2合格者の場合は、雇用してすぐに配置基準に含められる その他の場合は雇用して6カ月たてば含められる |
介護 | 初日から配置基準に含められる |
技能実習 | 日本語能力試験N1またはN2合格者の場合は、雇用してすぐに配置基準に含められる その他の場合は雇用して6カ月たてば含められる |
特定技能 | 初日から配置基準に含められる (ただし、6カ月間受入れ施設におけるケアの安全性を確保するための体制が必要) |
その他 | 日本語能力試験N2以上合格者は、初日から配置基準に含められる 入国時に日本語能力試験N3に合格している者は、入国後6カ月経過すれば配置基準に含められる 入国後に日本語能力試験N3に合格した者は、取得後6カ月経過すれば配置基準に含められる なお、日本語能力試験N4以下の場合は、在留期間などに関わらず配置基準に含められない |
配置基準の人員確保のために外国人労働者を雇用したとしても、最初から技能のレベルが事業所側の求める基準に達しているとは限りません。現場の混乱を防ぐためにも、人員配置に余裕のある状態で採用活動を行い、受入れ後は外国人労働者をサポートすることが大切です。
3-2. 施設類型によっては受入れられない在留資格も
外国人労働者は、在留資格によって勤務できる介護事業所の種類が異なります。
【勤務できる介護事業所の種類】[16]
EPA | ・介護保険3施設(介護保険関係:定員30人以上)、認知症グループホーム、特定施設、通所介護、通所リハ、認知症デイ、ショートステイなど 訪問系サービスは不可 (介護福祉士の資格取得後は、一定条件を満たした事業所内では可能) |
介護 | 制限なし |
技能実習 | ・「介護」の業務が現に行われている事業所(介護福祉士国家試験の実務経験対象施設) ・訪問系サービスは不可 ・設立後3年を経過した事業所 |
特定技能 | ・「介護」の業務が現に行われている事業所(介護福祉士国家試験の実務経験対象施設) ・訪問系サービスは不可 |
在留資格「介護」以外は勤務できる介護事業所の種類に制限があるため、採用活動の際は自分たちの事業所で働けるかどうか在留資格をしっかり確認しましょう。
3-3. 夜勤はできる?
外国人労働者は在留資格によって、下記の通り夜勤の有無が決められています。
【夜勤の有無】[17]
EPA | 介護福祉士の国家資格取得前:雇用して6カ月経過、もしくは日本語能力試験N1またはN2合格者であれば可能 ただし、事業所側が「介護福祉士候補者以外の介護職員を配置する」「緊急時のために介護福祉士候補者以外の介護職員などとの連絡体制を整備する」「介護福祉士候補者の学習時間への影響を考慮し、適切な範囲で夜勤を実施するよう配慮する」ことが求められる 介護福祉士の国家試験取得後:可能 |
介護 | 可能 |
技能実習 | 条件付きで可能 技能実習生以外の介護職員を同時に配置することが求められる他、業界ガイドラインにおいても技能実習生以外の介護職員と技能実習生の複数人で業務を行う旨を規定 また、夜勤業務などを行うのは2年目以降に限定するなどの努力義務を業界ガイドラインにより規定 |
特定技能 | 可能 |
いずれの場合も初めは日勤で業務を覚え、慣れてから夜勤に入るケースが多いです。
[15] 厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」,p10、11,https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000496822.pdf(閲覧日:2022年8月19日)
[16] 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「外国人介護職員の受入れと活躍支援に関するガイドブック」,2020年3月,p3,https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000678250.pdf(閲覧日:2022年8月19日)
[17] 厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」,p10、11,https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000496822.pdf(閲覧日:2022年8月19日)
4. 外国人労働者受入れ前のポイント
受入れ後のミスマッチを防ぐためには、外国人労働者本人だけでなく日本人スタッフにも伝えておくべきポイントがあります。ここでは、受入れ前に押さえておきたいポイントをご紹介します。
4-1. 外国人労働者に伝えておくべきこと
外国人労働者を受入れる際は、事業所の理念を説明した上で「どのような仕事をするか」「どのように仕事を進めていくか」詳しく説明することが大切です。業務に排泄介助が含まれることも、事前に説明しておきましょう。
あいさつや時間、「報連相」など、日本の職場の基本的なルールを教えておくことも必要です。食事のマナーや入浴習慣なども国によって異なるため、基礎知識として教えておくとよいでしょう。
4-2. 事業所の日本人スタッフに伝えておくべきこと
外国人労働者が活躍するためには日本人スタッフの協力が必要不可欠なので、受入れ前に採用の目的を事業所内で共有しておきましょう。日本人スタッフの中には外国人労働者の受入れに不安を覚える人が少なくありません。
日本人スタッフの意見に耳を傾けた上で、「なぜ外国人労働者を受入れるのか」「どのような体制で受入れるのか」「受入れに当たって日本人スタッフに期待していること」を丁寧に説明しましょう。
理解を促すためには、日本人スタッフ向けの研修やオリエンテーションを実施することも効果的です。
5. 外国人労働者受入れ後のポイント
外国人労働者に長く働いてもらうためには、彼らが働きやすい環境を整えることが重要です。ここでは、外国人労働者のキャリア支援や生活支援、文化的な配慮についてご紹介します。
5-1. 外国人労働者のキャリア
外国人労働者の中には、「介護事業所で後輩の面倒をみたい」「現場のリーダーになりたい」という高い目標を持つ人も多いので、彼らのキャリア志向を支援できるよう事業所内の制度を見直しましょう。
「ここで働いていても将来の見通しが立たない」と思われた場合、早期退職につながる可能性が高いです。離職を防ぐためにも、事業所内の評価基準や教育体制、昇格・昇給に至るまでの期間などを見直し、キャリアパスを明確に示しておくことが大切です。
将来の目標は受入れ時だけでなく定期的に確認し、「現時点でどの段階にいるのか」事業所内の評価基準に照らし合わせてフィードバックすると、仕事へのモチベーション維持につながるでしょう。
介護分野の外国人労働者は、大卒など一定の学歴がなくても介護福祉士の資格を取って在留資格を「介護」に変更すれば日本で在留期間の上限なく働くことができます。
介護分野の資格を持っていない人の場合、「初任者研修(必須ではない)→実務者研修+3年以上の実務経験(必須)→介護福祉士の資格試験→合格」の流れで介護福祉士になるのが一般的です。
外国人労働者が介護福祉士に合格すれば、事業所にとっては長期雇用できるだけでなく、「後輩の指導・教育係を任せられる」「リーダーを務めてもらえる」など人材育成につながるメリットもあります。
外国人労働者に介護福祉士の資格取得を促すには、彼らが技術を習得できるよう支援することが大切です。そのため、教育の際は技術面を指導するのはもちろん、「日常会話に必要な日本語」「介護業務に必要な日本語」「国家試験に必要な日本語」を本人の習熟度に合わせて教育することも求められます。
5-2. 生活支援
外国人労働者が安心して日本で働き続けられるよう、生活基盤を整える支援をすることも大切です。日本と外国では生活上のルールが異なる場合があるので、トイレやお風呂の使い方、食事の買い出しやゴミの出し方、電車・バスの使い方、騒音のマナーなど一般的な常識を教えておくとよいでしょう。
住まいの提供や契約の支援、家電、家具、調理器具などの用意、インターネット使用環境の整備など、生活必需品をそろえるためのサポートも必要です。
外国人労働者の中には病院に行くことを避ける人もいるので、病気やケガの際は受診するよう勧めたり、付き添って医師に症状を説明したりすることが必要な場合もあります。
また、異国での生活にストレスを感じる人もいるので、普段からコミュニケーションをとって信頼関係を築き、体調や精神面の変化はないか定期的に確認するのも重要です。サポート役の先輩職員を付けたり、母国出身の先輩と話せる機会を設けたりするなど、彼らが悩みを打ち明けやすい環境を提供しましょう。
5-3. 文化的な配慮
外国人労働者の文化や宗教によっては、食事や服装、お祈りなど生活習慣上の配慮が必要な場合があります。外国人労働者に安心して働いてもらうためには、彼らの文化や生活習慣を日本人スタッフに教育し、違いを尊重することが大切です。
特にイスラム教徒の場合「礼拝の時間があるか」「ヒジャブ(女性が頭や体を覆う布)を着用してよいか」を気にする傾向があるので、「事業所内に礼拝用のスペースを設ける」「ヒジャブの着用を認める」など配慮が必要です。
ラマダン(イスラム歴第9月の断食月に約30日間夜明けから日の入りまで断食・斎戒すること)には体調に問題がないか声掛けしたり、希望に合わせてシフトを調整したりするなど、健康面への配慮も求められます。
また、宗教によっては食べられない食材があるため、「食事の際は原材料を説明する」「事業所内で提供される食事は配慮したメニューを用意する」など、安心して食べられるよう工夫しましょう。
6. 外国人労働者を採用するためのコストと手続き
外国人労働者の雇用には日本人スタッフにはないコストや手続きが発生する場合があるので、視野に入れておくことが大切です。ここでは、受入れにかかるコストや採用後の手続きなどを解説します。
6-1. 採用するに当たってかかるコスト
前述の通り、外国人労働者を採用する際には求人サイトの広告掲載料や紹介料、面接や研修にかかる人件費など、日本人労働者と同様にコストが発生します。
JICWELSや監理団体、登録支援機関など受入れ調整機関を通して採用する場合も、委託費用が発生するため注意が必要です。
例えば、監理団体を通して技能実習生を受入れる場合、平均的に下記費用が発生します。
図)監理費の平均
初期費用 (一人当たりの徴収額) | 定期費用(1号) (一人当たりの月額) | 定期費用(2号) (一人当たりの月額) | 定期費用(3号) (一人当たりの月額) | 不定期費用 (一人当たりの徴収額) |
341,402 | 30,551 | 29,096 | 23,971 | 154,780 |
(単位:円)
外国人技能実習機構「監理団体が実習実施者から徴収する監理費等の費用に係るアンケート調査について(結果の概要)」,2022年1月24日公表を基にGlobal HR Strategyにて作成,https://www.otit.go.jp/files/user/220124-1.pdf(閲覧日:2022年8月21日)
監理費に含まれるのは、募集・選抜や外国人労働者への講習、監査・訪問指導、帰国にかかる渡航費などです。
実習修了までにかかる平均総額は、技能実習生1人につき技能実習2号(3年間)が約141万円、技能実習3号(5年間)が約198万円[18]となっています。
上記の費用に加えて生活面での支援や日本語教育など、日本人スタッフにはないコストが発生します。ただし、コストをかけた分、人員体制の強化やコミュニケーションの活性化など、介護サービスの質の向上につながる可能性が高いといえるでしょう。
6-2. 採用するに当たって必要な手続き
外国人労働者を採用する際は、在留資格の手続きや転入手続き、国保・年金加入などさまざまな手続きが必要です。
「1週間の所定労働時間が20時間以上」「31日以上の雇用見込みがある」など雇用保険の適用条件を満たしている場合は、「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出します。
併せて「雇用状況の届け出」の提出が義務付けられていますが、雇用保険の被保険者の場合は、雇用保険被保険者資格取得届で雇用状況の届け出の提出も完了します。
雇用保険の被保険者に該当しない場合は、「外国人雇用状況届出票(様式第3号)」の提出が必要です。
外国人労働者が日本に初めて住居地を決めたり、日本国内から引っ越してきたりした場合は、「住居地の届け出」を市区町村の窓口に外国人本人が提出する必要があります。外国人にとっては難しい手続きのため、スムーズに手続きできるよう支援するとよいでしょう。
また、在留期間の更新時期には本人が地方出入国在留管理局に「在留期間更新許可申請書」を提出することが義務付けられています。1日でも遅れると不法滞在になってしまうので、更新時期が近づいたら外国人労働者に周知し、早めに手続きするよう促しましょう。
[18] 外国人技能実習機構「監理団体が実習実施者から徴収する監理費等の費用に係るアンケート調査について(結果の概要)」,2022年1月24日,https://www.otit.go.jp/files/user/220124-1.pdf(閲覧日:2022年8月21日)
7. まとめ
日本は介護分野における人手不足対策として、外国人労働者の受入れ拡大を推進してきました。2021年の調査では外国人労働者172万7,221人のうち、3.3%が医療、福祉の分野に従事しています。コロナ禍でも、外国人労働者を受入れる医療、福祉分野の事業所数の前年増加率は19.2%あり、需要の高さが推察されます。
しかし、外国人労働者は在留資格によって在留期間が決まっており、長く働けるとは限りません。また、介護分野の外国人労働者は一定の日本語能力を持つことが一般的ですが、人によっては日本語教育が必要な場合もあり、業務の負担になる恐れもあります。
一人前になった後に帰国してしまう人も多いため、結果的に日本国内の介護職員の増加につながりにくいのが現状です。
介護分野で外国人労働者を雇用する場合、下記いずれかのルートで受入れ可能です。
・EPA
・在留資格「介護」
・外国人技能実習制度
・特定技能制度
・特定活動(本邦大学卒業者)
・技術・人文知識・国際業務
・留学生からの受入れ
どのルートで受入れるかによって、介護福祉士の資格の有無、在留期間、日本語能力、受入れ調整機関によるサポートの有無、就労可能なサービスの制限などが異なります。
中でも在留資格「介護」は、「介護福祉士の資格を持つ」「日本語能力試験N2以上に合格が一般的」「就労可能なサービス職種の制限なし」のため、即戦力として期待できます。在留期間を5年、3年、1年または3カ月ごとに更新すれば、永続的な勤務も可能です。
ただし、マッチングを支援する特別な機関はないため、事業所が採用活動を行うか、職業紹介会社などを利用する必要があります。
留学生の場合は、卒業後に「介護」または特定技能の在留資格で介護職に就くケースが大半です。養成校ルートで介護福祉士の資格を取得する留学生については、学生のうちからアルバイト勤務することもできます。
「介護」以外の在留資格はいずれも就労可能なサービス職種に制限があり、中でも技術・人文知識・国際業務の場合は介護職としての勤務はできないので注意が必要です。技術・人文知識・国際業務の取得者が介護分野で働く場合は、施設案内や経理、総務などに就くのが一般的です。
また、受入れルートによって「人員配置基準にいつからカウントされるか」「どのような介護事業所で受入れられるか」「夜勤はできるか」なども異なります。
雇用後すぐに配置基準に含められるのはEPA(日本語能力N1、またはN2合格者)、「介護」、技能実習(日本語能力試験N1またはN2合格者)、特定技能(6カ月以上受入れ施設におけるケアの安全性確保のための体制が必要)です。その他ルートの場合も、日本語能力試験N2以上合格者は、初日から配置基準に含められます。
とはいえ、最初から事業所側が求める技能レベルをクリアしているとは限らないので、採用活動は人員配置に余裕のあるうちに行い、受入れ後は外国人労働者をサポートすることが大切です。
勤務できる介護事業所の種類は、在留資格「介護」以外は制限があるため、採用活動では「自分たちの事業所で働けるか」在留資格をしっかり確認しましょう。
例えば、EPAが勤務できるのは「介護保険3施設、認知症グループホーム、特定施設、通所介護、通所リハ、認知症デイ、ショートステイなど」「訪問系サービスは不可」ですが、技能実習の場合は「介護の業務が現に行われている事業所(介護福祉士国家試験の実務経験対象施設)」「設立後3年を経過した事業所」「訪問系サービスは不可」となっています。
夜勤の場合、在留資格「介護」と特定技能は可能、EPA、技能実習は条件付きで可能です。いずれの場合も初めは日勤で仕事を覚え、慣れてから夜勤に入るケースが多いといえます。
外国人労働者を受入れる際は、外国人労働者本人に「事業所の理念」「どのような仕事をするのか」「どのように仕事を進めるか」詳しく説明しましょう。「業務に排泄介助が含まれること」を伝えておくのも重要です。
国によって考え方が異なるため、「日本の職場の基本的なルール」「食事のマナーや入浴習慣」なども教えておくとよいでしょう。
日本人スタッフに対しては、「なぜ外国人労働者を受入れるのか」「どのような体制で受入れるのか」「受入れに当たって日本人スタッフに期待すること」を丁寧に説明し、不安を取り除くことが求められます。研修やオリエンテーションを実施するのも効果的です。
外国人労働者のキャリア志向を支援できるよう、事業所内の制度を見直すことも求められます。評価基準や教育体制、昇格・昇給に至るまでの期間を見直し、キャリアパスを明確に示してください。
外国人労働者はキャリア志向が強い傾向があり、将来の見通しが立たないと早期離職する可能性が高まります。評価基準に照らし合わせて定期的にフィードバックすると、仕事へのモチベーション維持につながるでしょう。
外国人労働者が介護福祉士の資格を取得できるよう、技術や日本語を教育することも重要です。介護福祉士に合格すれば在留期間の上限なく働けるため、事業所にとっては長期雇用できるだけでなく人材育成につながるメリットもあります。
外国人労働者が安心して日本で働き続けるためには、生活支援も必要不可欠です。トイレやお風呂の使い方、食事の買い出しやゴミ出しの仕方、電車・バスの使い方、騒音のマナーなど、日本の常識について教えておきましょう。
住まいの提供や契約の支援、インターネット使用環境の整備、病院受診時の付き添いなども、必要に応じてサポートしてください。「日常的にコミュニケーションをとる」「相談役の先輩職員を付ける」「母国出身の先輩と話せる場を設ける」など、悩みを打ち明けやすい環境づくりも求められます。
外国人労働者の文化や宗教によっては食事や服装、お祈りなど生活習慣上の配慮が必要な場合があります。例えば、イスラム教徒の場合は「事業所内に礼拝用スペースを設ける」「ヒジャブの着用を認める」「ラマダンには希望に合わせてシフトを調整する」「食事の際は原材料を説明する」など配慮が必要です。
快適に協働するためにも、外国人労働者の文化や風習を日本人スタッフに教育し、違いを尊重することが求められます。
外国人労働者を採用する際には、求人サイトの広告掲載料や紹介料、面接や研修にかかる人件費など、日本人労働者と同様にコストが発生します。
EPAや技能実習制度、特定技能制度など、受入れ調整機関を通して採用する場合は、委託費用が発生するため注意が必要です。
例えば、監理団体を通して技能実習生を受入れる場合、1人当たり平均34万1,402円の初期費用がかかります。実習修了までにかかる平均総額は、技能実習2号(3年間)が約141万円、技能実習3号(5年間)が約198万円です。
ただし、コストをかけた分、人員体制の強化やコミュニケーションの活性化など介護サービスの質の向上につながる可能性が高いといえます。
採用する際は在留資格の手続きや転入手続き、国保・年金加入などさまざまな手続きが必要です。雇用保険の適用条件を満たしている場合は雇用保険被保険者資格取得届を、該当しない場合は外国人雇用状況届出票(様式第3号)をハローワークに提出しましょう。
雇用状況の届け出の提出も義務付けられていますが、雇用保険の被保険者の場合は、雇用保険被保険者資格取得届のみで雇用状況の届け出の提出も完了します。
外国人労働者が日本に初めて住居地を決めたり、日本国内から引っ越してきたりした場合は、住居地の届け出を市区町村の窓口に外国人本人が提出する必要があるため、スムーズに提出できるようサポートするのが有効です。
在留期間の更新時期には本人が地方出入国在留管理官署に在留期間更新許可申請書を提出することが義務付けられており、1日でも遅れると不法滞在になってしまいます。更新時期が近づいたら外国人労働者に周知し、早めに手続きするよう促しましょう。
ここまで、介護分野で外国人労働者を雇用する際に、押さえておきたいポイントを解説してきました。「複数の在留資格、国籍の外国人を雇用する場合労働条件がバラバラになる」「どうしたらうまく対応できるか知りたい」など、より実践的な対応策が知りたい方は、お気軽に弊社にお問い合わせください。
参考)
厚生労働省「別紙1第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」『第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について』,2021年7月9日,https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000207323_00005.html(閲覧日:2022年8月17日)
于洋「わが国における外国人介護人材の受け入れ政策の展開と課題」,2020年3月,https://libir.josai.ac.jp/il/user_contents/02/G0000284repository/pdf/JOS-18819001-1307.pdf(閲覧日:2022年8月17日)
厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和3年10月末現在)」,2022年1月28日,https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000887555.pdf(閲覧日:2022年8月17日)
厚生労働省「介護労働の現状と介護雇用管理改善等計画について」,https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000710388.pdf(閲覧日:2022年8月17日)
JITCO「在留資格「特定技能」とは」,https://www.jitco.or.jp/ja/skill/index.html(閲覧日:2022年8月18日)
BJTビジネス日本語能力テスト「レベルガイド」,https://www.kanken.or.jp/bjt/about/level_sample.html(閲覧日:2022年8月18日)
厚生労働省「留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学卒業者)についてのガイドライン」,2020年2月,https://www.moj.go.jp/isa/content/930005094.pdf(閲覧日:2022年8月18日)
出入国在留管理庁「在留資格「技術・人文知識・国際業務」」,https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/gijinkoku.html(閲覧日:2022年8月18日)
公益財団法人社会福祉振興・試験センター「資格登録(社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士)」,https://www.sssc.or.jp/touroku/info/info_keika.html(閲覧日:2022年8月18日)
総務省中部管区行政評価局「宗教的配慮を要する外国人の受入環境整備等に関する調査―ムスリムを中心として―の結果報告書」,2017年12月,https://www.soumu.go.jp/main_content/000521087.pdf(閲覧日:2022年8月21日)
厚生労働省「届出様式について」,https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/gaikokujin-koyou/07.html(閲覧日:2022年8月21日)